-Castaway-
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#196 [◆vzApYZDoz6]
その様子を見ていたアリサが、少し意地悪く笑った。

アリサ「ふふっ、今どうやって逃げようか考えてるでしょー?」
バニッシ「別に考えてない」
アリサ「本当にー?でも残念ながら、今日はお祭りが終わるまで1人にはさせないからね!」

アリサが楽しそうにバニッシの前に回る。
バニッシは呆れながら、また後頭部を掻いた。

バニッシ「……今から家帰るんだけど」
アリサ「じゃ私も一緒に帰ろーっと」
バニッシ「本気かよ…」

⏰:08/01/03 16:23 📱:P903i 🆔:7ZY8twyc


#197 [◆vzApYZDoz6]
項垂れるバニッシを余所に、アリサは楽しそうに口笛を吹きながら、バニッシの家に向かう。
バニッシ達は集落の中心部の方に歩いていた。周りの景色は、最初は畑や田圃が多かったが、徐々に家が増えていく。
暫く歩いていると、周囲に比べ一際大きな家が見えてきた。

アリサ「はーっ、やっぱいつ見てもおっきい家よね」

⏰:08/01/03 18:01 📱:P903i 🆔:7ZY8twyc


#198 [◆vzApYZDoz6]
木を連ねて作られた塀に囲まれた大きな敷地の奥に、バニッシの住む大きな家が聳え立っている。
バニッシとアリサは共にパンデモの中でも高い身分の家系。特にバニッシはパンデモの最上流家系の一角を占める家の現当主だった。

バニッシ「まぁ…そうだな」
アリサ「てゆうか、中に入るのは初めてね。緊張するなー」
バニッシ「何でだよ」

バニッシが笑いながら玄関の扉を開け、中に入る。
長い廊下の奥の部屋、バニッシの部屋に入った。

⏰:08/01/03 22:37 📱:P903i 🆔:7ZY8twyc


#199 [◆vzApYZDoz6]
部屋には特に何もない。寝床のような床に藁が敷いてあるだけで、あとは服等が隅にたとんで置かれていた。
元々パンデモ自体が人里離れた山の中にあるので、文明の利器など存在しない。
アリサも何もない事を特に不思議がらなかった。

バニッシ「さてと…じゃあ俺寝るから時間になったら起こして」
アリサ「えっ…ちょっとそれじゃ、あたしはどうするのよ」
バニッシ「好きにしてな。祭り終わるまで俺から離れないんだろ」

そう言うと藁の上に横になり、眠り始めた。

⏰:08/01/03 22:51 📱:P903i 🆔:7ZY8twyc


#200 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「何それー!…ったくもー、信じられない!」

アリサは怒って喚くが、既に寝息を立てているバニッシは反応しない。
アリサは少し呆れたが、バニッシの隣に横座りになっりバニッシを見つめる。
静かに眠るその顔からは修練場の気迫は感じられない。何処か幼さも感じられる寝顔を、柔らかく微笑みながら眺めるアリサが、小さな溜め息をついた。

アリサ「…無防備に寝ちゃって」

壁に凭れて、静かに天井を眺める。
その表情はどこか嬉しそうな感じがした。
そのまま時間の経過を待つ内に、いつの間にか眠ってしまった。

⏰:08/01/03 23:33 📱:P903i 🆔:7ZY8twyc


#201 [◆vzApYZDoz6]
日が西に傾いた頃。
バニッシは家の炊事場の竈に火を着け、湯を湧かしていた。
文明の利器が存在しないパンデモでは、食品調理は火を起こすところから始まる。
程好い熱さになったところで鍋を竈から離す。急須のような物に熱湯を灌ぎ、それと壁に干してある短い草のような物、土で出来た深めのコップを持ち、部屋へ戻った。
三角座りで寝息を立てるアリサを余所に、急須のような物に干し草を入れてコップへ灌ぐ。その姿はまるで日本人が茶を淹れているようだ。
ゆっくりと飲み物を啜る横で、アリサが目を覚ました。

⏰:08/01/04 18:25 📱:P903i 🆔:ba3mTFuU


#202 [◆vzApYZDoz6]
バニッシが欠伸をしているアリサに話し掛ける。

バニッシ「やっと起きたか」
アリサ「……ん……あっ、おはよー…」

眠そうに目を擦るアリサに、呆れたように言った。

バニッシ「何がおはよーだ。起こせって言ったろ」
アリサ「へっ?………あー!!」

アリサが跳ね起き、慌て外を見る。
川の近く、普段なら集会場となっているところが、提灯の灯りでぼんやりとオレンジに光っている。姿は見えないが、太鼓を叩く音や笛の音が鳴り、時たま拍手や歓声が沸き起こる。恐らく今は、踊り子が舞を踊っているのだろう。

⏰:08/01/04 18:35 📱:P903i 🆔:ba3mTFuU


#203 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「もう始まって結構経ってるじゃん!!」
バニッシ「そうだな」

外を眺めていたアリサが部屋に視線を戻し、素っ気なく飲み物を啜るバニッシを睨んだ。

アリサ「いつ起きたのよ?」
バニッシ「さぁ…祭が始まる10分前ぐらい?」
アリサ「何で起こしてくれなかったのよー…」

項垂れながらその場にへたり込むアリサを見て、バニッシが楽しそうに鼻で笑った。

バニッシ「起こしてくれとは言われてないし」

バニッシが飲み物をすべて飲み終え、急須と土製のコップを持って部屋を出る。アリサはそれを眺めながら溜め息をついた。

⏰:08/01/04 18:44 📱:P903i 🆔:ba3mTFuU


#204 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「もー、自分が行きたくなかったから起こさなかったんだわ絶対…今から行っても遅いし…」

アリサが膝の中に顔を埋める。そんなに背が高くないアリサのその姿はかなり小さい。

アリサ(…今年こそ一緒に行きたかったのに…)

アリサは、一緒に行きたかったのに、寝てしまった自分に呆れ、溜め息混じりの笑みを溢した。

バニッシ「溜め息吐くと幸せが逃げますよー」

器具を片付けてバニッシが部屋に戻ってきた。

⏰:08/01/04 18:54 📱:P903i 🆔:ba3mTFuU


#205 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「それは嫌!」

アリサは少し慌てて、吐いた息を吸う素振りを見せる。

バニッシ「はははっ、ベタな事してんなよ」
アリサ「何よー、自分が振ってきたんじゃない」

からかうように笑うバニッシの態度に、少しふて腐れたように頬を膨らませる。別にバニッシに会えなくなる訳じゃない。また来年、一緒に行ければいい。
そんな事を考えていたアリサの顔は、既にいつもの表情に戻っていた。

アリサ「はーっ、それじゃあたしはそろそろ帰ろっかな」

⏰:08/01/04 19:04 📱:P903i 🆔:ba3mTFuU


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