-Castaway-
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#257 [◆vzApYZDoz6]
バニッシが迫る紙鳥をギリギリまで引き付け、後ろに跳ぶ。
紙鳥は地面に次々とぶつかり紙吹雪に戻ったが、半瞬も経たずに再び形を成し、隼の大群に戻った。今度はバニッシの四方を囲むように紙の嘴を向けた。

バニッシ「なかなか猪口才なスキルだな?」

バニッシが周りの紙隼を横目で一瞥しながら、面倒臭そうにクルサを見る。
クルサは相変わらず無言で無表情のまま。バニッシは一瞬腰を落とす。

バニッシ「そんなんで、俺に勝てると思ってるのか?」

足下を抉り、爆発的に駆け出した。

⏰:08/01/14 21:15 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#258 [◆vzApYZDoz6]
クルサとの距離は約10m。それをバニッシは一瞬で2mにまで詰め寄った。
駆け出したバニッシに平行するように紙隼の群が追うが、バニッシのスピードには追い付けない。紙隼を振り切り、クルサ目掛けて拳を振りかぶった。

クルサ「紙潜龍―――」

バニッシの視界から一瞬クルサが消えた。
次の瞬間に打ち出されたバニッシの拳は、しゃがんだクルサの頭上を通過する。
クルサの足下に置かれている青い袋の口は、バニッシに向いていた。

クルサ「―――カットアウト」

しゃがんで俯いたまま呟くクルサの前で、紙の龍がバニッシを飲み込んだ。

⏰:08/01/14 21:34 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#259 [◆vzApYZDoz6]
龍が空高くまで昇り、急降下した。
滝坪にいるかのような音をたてながら、まるで壷に吸い込まれるかのように袋に戻っていく。
龍の尻尾まで全て入りきった袋の上に、バニッシが仰向けに横たわっていた。

バニッシ「ぐっ…」
グラシア「おいおい、やられてるじゃないか。さっきの台詞はどうした?」

バニッシが顔を上げる。意地悪く顔を歪めるグラシアの隣のアリサと目があった。
アリサは反射的に目を逸らす。表情は明らかに曇っていた。
目の前にいるクルサは全く表情を変えず、地面の一点だけを見つめていた。

⏰:08/01/14 21:59 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#260 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは目を細めて溜め息をついた。
イルリナが行方不明になったのは、グラシアの仕業だろう。
アリサはグラシアに脅されてるに違いない。あんな奴に好き好んで付いていくなんてあり得ない。
クルサは何らかの方法で、グラシアに操られてるのだろう。
バニッシが拳を握り締め、ゆっくりと立ち上がった。

バニッシ「あんなアホ笑いする奴にいいようにされちゃ、たまんねぇだろ」

俯いて笑っていたグラシアが突然笑いをやめて、顔を上げる。

⏰:08/01/14 22:35 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#261 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「聞こえたぞ?なんならこの場で2人を殺してやっても…」
バニッシ「黙ってろアホ」

グラシアが言い終わる前に、バニッシが足下の青い袋を蹴り上げた。袋はグラシアの顔に被さる。
ずり落ちていく袋の下で、グラシアが眉間に皺を寄せて目を細めながら、唇の端を持ち上げた。

グラシア「…人を馬鹿にするのが好きみたいだな」
バニッシ「馬鹿にしてるんじゃない、アホにしてるんだよ」

バニッシは歯を見せて笑った。
表情だけ見ると、どうと言うことはなさそうだが、龍にやられた痛みからか腕を押さえている。
グラシアはそんなバニッシを一瞥して、呆れたような顔をした。

⏰:08/01/14 22:46 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#262 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「そんなボロボロで何ができる?強がりはよすんだな」
バニッシ「これぐらいどうってことはない」

バニッシは言いながら、1歩下がった。
体の調子に関してはグラシアの言う通りだ。先刻の攻撃で体のあちこちが痛い。
だが、このまま引き下がる訳にもいかない。

バニッシ「刺し違えてもお前は1発ぶん殴るぞ」
グラシア「やってみたまえ…出来るならな。やれ、クルサ」

グラシアの言葉に反応し、クルサが両手を前に突き出す。
グラシアの足元に落ちていた青い袋がクルサの背後で浮き上がり、口をバニッシに向けた。

⏰:08/01/14 22:57 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#263 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは溜め息をつきながら頭を掻いた。

バニッシ「操られるお前もお前だよ…まったく」

バニッシの背後で地面に伏し、静寂を保っていた紙隼のが、袋目掛けて飛び出した。
袋と紙隼の延長線上にいたバニッシが横に跳ぶ。バニッシの横を紙隼の群れが飛び去っていき、次々と袋に飛び込む。
紙隼が戻りきってから再び繰り出されるであろう紙吹雪の攻撃をを避けるべく、バニッシが後ろに跳ぼうとしたその時。

バン「兄ちゃん?」

修練場の入口から、バンのか細い声が聞こえてきた。

⏰:08/01/14 23:15 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#264 [◆vzApYZDoz6]
バンが、バニッシと対峙するように並ぶ3人に視線をずらした。

バン「あっ、アリサ姉ちゃんとクルサ兄ちゃんも…」
バニッシ「馬鹿…!何で来たんだ!」
グラシア「ほー、あれはお前の弟か?クルサ、あいつをやれ」

グラシアの嫌らしい声を聞いたバニッシが、バンの元へ駆け出す。
だがそれよりも早く、袋から紙龍が飛び出していた。紙龍が口を開けて、駆けるバニッシを軽々追い越した。

バニッシ「しまった!」
バン「うわっ!」

バンが突然の出来事に目を瞑る。

数秒後、何事もなく目を開けると、目の前にバンが知らない男が立っていた。

⏰:08/01/14 23:25 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#265 [◆vzApYZDoz6]
バンの元へ急がねばならないのに、先刻クルサにやられた怪我で早く動けない。
自分の横を紙龍が追い越していく。手を出して止められる筈もないだろう。
為す術もなく、龍が土埃を巻き上げてバンに襲い掛かかっていく。

その時、バンの前に人影が飛び込んだ。
飛び込んだかと思うと、袋に戻った時のように、人影に龍が吸い込まれていく。
その勢いで一層土埃が舞い、バンと謎の人影を完全に包んだ。

グラシア「誰だ今のは?」

グラシアが呟いた。その場の全員が土煙を見詰める中、バンとは別の声がした。

「スティーブがこの辺に迷い込んだんだが…お取り込み中だったかな?」

⏰:08/01/14 23:40 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#266 [◆vzApYZDoz6]
土煙が徐々に晴れていく。
しゃがみこんでいるバンの視線の先に、声の主が立っていた。

グラシア「ハルキン!貴様…!!」
「おお、誰かと思えばグラシアじゃないか。お前いつからこんな小さなガキ追い掛け回すようになったんだ?」

声の主は左手をポケットに突っ込んで、右手でバンの頭を撫でた。

(ハルキン。反ウォルサー組織『バウンサー』を設立し会長となるのは、この3年後です)

グラシア「何しに来たんだ!」
ハルキン「スティーブが迷い込んだって言っただろ。お前の脳味噌は猿以下か?」

余裕の表情で喋るハルキンとは対称的に、グラシアの顔ひきつっていた。

⏰:08/01/15 00:01 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


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