-Castaway-
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#262 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「そんなボロボロで何ができる?強がりはよすんだな」
バニッシ「これぐらいどうってことはない」

バニッシは言いながら、1歩下がった。
体の調子に関してはグラシアの言う通りだ。先刻の攻撃で体のあちこちが痛い。
だが、このまま引き下がる訳にもいかない。

バニッシ「刺し違えてもお前は1発ぶん殴るぞ」
グラシア「やってみたまえ…出来るならな。やれ、クルサ」

グラシアの言葉に反応し、クルサが両手を前に突き出す。
グラシアの足元に落ちていた青い袋がクルサの背後で浮き上がり、口をバニッシに向けた。

⏰:08/01/14 22:57 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#263 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは溜め息をつきながら頭を掻いた。

バニッシ「操られるお前もお前だよ…まったく」

バニッシの背後で地面に伏し、静寂を保っていた紙隼のが、袋目掛けて飛び出した。
袋と紙隼の延長線上にいたバニッシが横に跳ぶ。バニッシの横を紙隼の群れが飛び去っていき、次々と袋に飛び込む。
紙隼が戻りきってから再び繰り出されるであろう紙吹雪の攻撃をを避けるべく、バニッシが後ろに跳ぼうとしたその時。

バン「兄ちゃん?」

修練場の入口から、バンのか細い声が聞こえてきた。

⏰:08/01/14 23:15 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#264 [◆vzApYZDoz6]
バンが、バニッシと対峙するように並ぶ3人に視線をずらした。

バン「あっ、アリサ姉ちゃんとクルサ兄ちゃんも…」
バニッシ「馬鹿…!何で来たんだ!」
グラシア「ほー、あれはお前の弟か?クルサ、あいつをやれ」

グラシアの嫌らしい声を聞いたバニッシが、バンの元へ駆け出す。
だがそれよりも早く、袋から紙龍が飛び出していた。紙龍が口を開けて、駆けるバニッシを軽々追い越した。

バニッシ「しまった!」
バン「うわっ!」

バンが突然の出来事に目を瞑る。

数秒後、何事もなく目を開けると、目の前にバンが知らない男が立っていた。

⏰:08/01/14 23:25 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#265 [◆vzApYZDoz6]
バンの元へ急がねばならないのに、先刻クルサにやられた怪我で早く動けない。
自分の横を紙龍が追い越していく。手を出して止められる筈もないだろう。
為す術もなく、龍が土埃を巻き上げてバンに襲い掛かかっていく。

その時、バンの前に人影が飛び込んだ。
飛び込んだかと思うと、袋に戻った時のように、人影に龍が吸い込まれていく。
その勢いで一層土埃が舞い、バンと謎の人影を完全に包んだ。

グラシア「誰だ今のは?」

グラシアが呟いた。その場の全員が土煙を見詰める中、バンとは別の声がした。

「スティーブがこの辺に迷い込んだんだが…お取り込み中だったかな?」

⏰:08/01/14 23:40 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#266 [◆vzApYZDoz6]
土煙が徐々に晴れていく。
しゃがみこんでいるバンの視線の先に、声の主が立っていた。

グラシア「ハルキン!貴様…!!」
「おお、誰かと思えばグラシアじゃないか。お前いつからこんな小さなガキ追い掛け回すようになったんだ?」

声の主は左手をポケットに突っ込んで、右手でバンの頭を撫でた。

(ハルキン。反ウォルサー組織『バウンサー』を設立し会長となるのは、この3年後です)

グラシア「何しに来たんだ!」
ハルキン「スティーブが迷い込んだって言っただろ。お前の脳味噌は猿以下か?」

余裕の表情で喋るハルキンとは対称的に、グラシアの顔ひきつっていた。

⏰:08/01/15 00:01 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


#267 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「しかしお前がショタコンだったとは思いもしなかったな」
グラシア「…お前は本当に人を怒らせるのが得意な奴だよ」

怒りからか、グシラアの声は少し震えていた。
バニッシはそれを見て小馬鹿にしたように笑っていた。

ハルキン「そうか?お前が馬鹿なだけだろう」
グラシア「クルサ!やれ!」

ハルキンを指差し、叫ぶように指示する。
クルサが青い袋の口をハルキンに向けると、中から紙龍が飛び出した。

ハルキン「一度防がれた攻撃をまた使うか…だから馬鹿だと言うんだ」

⏰:08/01/15 00:31 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


#268 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンが右手でバンを下がらせながら、左手をポケットから抜いた。手を開き、前に突き出す。
襲い掛かった龍はまるで穴に飛び込むかのように、音も立てずに突き出された掌に頭から吸い込まれ消えていく。

ハルキン「まぁ、これはお前が食らってろ」

吸い込まれていくのと同時に、グラシアの眼前に紙龍が現れた。

グラシア「ぐあっ!」

紙龍は勢いよくグラシアを飲み込んで、修練場の壁となっている崖に激突した。

ハルキン「おいおい、支配してる人間の技にやられてどうする?」

ハルキンが冷ややかな目で笑った。
呆然とするバニッシを横目に、崖に埋まるグラシアにゆっくりと歩いていく。

⏰:08/01/15 00:47 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


#269 [◆vzApYZDoz6]
グラシアは瓦礫の中から、こちらに歩いてくるハルキンを見て、思案した。
クルサのスキルは他にもあるが、恐らく結果は同じだろう。
さっきから俯いたまま何も喋らないアリサは、命令を聞くかどうかすら分からない。
グラシアにとって、ここは一旦退くしかなかった。

グラシア「戻るぞクルサ!」

クルサが声に反応して、手を地面につける。アリサ、グラシア、クルサの3人の足下と頭上に、黒円が出現した。
アリサが顔を上げる。訳が分からず呆然としているバニッシと目があった。

⏰:08/01/15 01:06 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


#270 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「ねえ、あたしが今パンデモを出るとしたらどうする、って聞いたの…覚えてる?」

アリサが唐突に呟いた。

バニッシ「…ああ」

忘れてはいない。
あの問いかけ以降、1か月近くアリサに会うことがなかった。
ある種、最後に聞いた言葉だ。
質問の意味はもう分かっている。

アリサ「…じゃあ、どうする…?」

バニッシが問いかけに険しい顔をしたのを見て、アリサが悲しそうに俯く。
その周りを、徐々に黒い円柱が覆っていった。

⏰:08/01/16 01:28 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


#271 [◆vzApYZDoz6]
今のバニッシには、この状況はどうする事もできない。救いを求めるアリサに何もしてやれない。
だが、いつか必ず助けてやる。そう自分に誓って、アリサの足下を指差した。

バニッシ「…いつか必ずそこへ行ってやる。動かずに待ってろ…!」

アリサが目を瞑って、満足そうに小さく微笑み、頷いた。

アリサ「じゃあ、ずっと待ってる。……ここで、ね♪」

アリサが嬉しそうに顔を上げると同時に、黒い円柱がアリサ、グラシア、クルサの3人の体を完全に包み込む。

円柱が土煙を巻き上げて回転し、そのまま弾けるように消え去った。

⏰:08/01/16 01:30 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


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