-Castaway-
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#267 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「しかしお前がショタコンだったとは思いもしなかったな」
グラシア「…お前は本当に人を怒らせるのが得意な奴だよ」

怒りからか、グシラアの声は少し震えていた。
バニッシはそれを見て小馬鹿にしたように笑っていた。

ハルキン「そうか?お前が馬鹿なだけだろう」
グラシア「クルサ!やれ!」

ハルキンを指差し、叫ぶように指示する。
クルサが青い袋の口をハルキンに向けると、中から紙龍が飛び出した。

ハルキン「一度防がれた攻撃をまた使うか…だから馬鹿だと言うんだ」

⏰:08/01/15 00:31 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


#268 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンが右手でバンを下がらせながら、左手をポケットから抜いた。手を開き、前に突き出す。
襲い掛かった龍はまるで穴に飛び込むかのように、音も立てずに突き出された掌に頭から吸い込まれ消えていく。

ハルキン「まぁ、これはお前が食らってろ」

吸い込まれていくのと同時に、グラシアの眼前に紙龍が現れた。

グラシア「ぐあっ!」

紙龍は勢いよくグラシアを飲み込んで、修練場の壁となっている崖に激突した。

ハルキン「おいおい、支配してる人間の技にやられてどうする?」

ハルキンが冷ややかな目で笑った。
呆然とするバニッシを横目に、崖に埋まるグラシアにゆっくりと歩いていく。

⏰:08/01/15 00:47 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


#269 [◆vzApYZDoz6]
グラシアは瓦礫の中から、こちらに歩いてくるハルキンを見て、思案した。
クルサのスキルは他にもあるが、恐らく結果は同じだろう。
さっきから俯いたまま何も喋らないアリサは、命令を聞くかどうかすら分からない。
グラシアにとって、ここは一旦退くしかなかった。

グラシア「戻るぞクルサ!」

クルサが声に反応して、手を地面につける。アリサ、グラシア、クルサの3人の足下と頭上に、黒円が出現した。
アリサが顔を上げる。訳が分からず呆然としているバニッシと目があった。

⏰:08/01/15 01:06 📱:P903i 🆔:BQeyHkao


#270 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「ねえ、あたしが今パンデモを出るとしたらどうする、って聞いたの…覚えてる?」

アリサが唐突に呟いた。

バニッシ「…ああ」

忘れてはいない。
あの問いかけ以降、1か月近くアリサに会うことがなかった。
ある種、最後に聞いた言葉だ。
質問の意味はもう分かっている。

アリサ「…じゃあ、どうする…?」

バニッシが問いかけに険しい顔をしたのを見て、アリサが悲しそうに俯く。
その周りを、徐々に黒い円柱が覆っていった。

⏰:08/01/16 01:28 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


#271 [◆vzApYZDoz6]
今のバニッシには、この状況はどうする事もできない。救いを求めるアリサに何もしてやれない。
だが、いつか必ず助けてやる。そう自分に誓って、アリサの足下を指差した。

バニッシ「…いつか必ずそこへ行ってやる。動かずに待ってろ…!」

アリサが目を瞑って、満足そうに小さく微笑み、頷いた。

アリサ「じゃあ、ずっと待ってる。……ここで、ね♪」

アリサが嬉しそうに顔を上げると同時に、黒い円柱がアリサ、グラシア、クルサの3人の体を完全に包み込む。

円柱が土煙を巻き上げて回転し、そのまま弾けるように消え去った。

⏰:08/01/16 01:30 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


#272 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは土煙が完全に晴れてもまだ、アリサがいた場所を見つめていた。
自分に力が無いせいで、親友と愛友が連れ去られた。バニッシはやるせなさと呆れから、溜め息が止まらなかった。

バン「兄ちゃん、溜め息吐いたら幸せ逃げるよ」

後ろからバンの声がした。振り返ると、ハルキンを引き連れて、バンが腰に手を当てて立っている。
自分もアリサに同じ事を言っていた思い出し、思わず笑みが溢れた。

バニッシ「やっぱり兄弟だな」
バン「え?」
バニッシ「何でもない」

そう言ってバンの頭を押さえ付けるように撫でながら、ハルキンと向き合った。

⏰:08/01/16 02:27 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


#273 [◆vzApYZDoz6]
バニッシ「こいつを助けてくれてありがとう。あんたは…」
ハルキン「ハルキンだ」
バニッシ「ああ。ハルキンはなぜここに…」

バニッシが言いかけた時、バニッシの頭上を何かが飛び越えた。その何かは、そのままハルキンの足下に擦り寄った。

ハルキン「お、スティーブ。探したぞ」

ハルキンが、スティーブと呼ぶ動物を片手で抱き上げた。
スティーブは見たところ犬のようだが、犬にしては体が小さく、ハルキンの片手に収まるぐらいの大きさしかない。薄い紫色の体毛がふわふわと揺れている。
パンデモにも犬はいる。しかし、バニッシはこんな犬は見たことがなかった。

⏰:08/01/16 17:49 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


#274 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンは、スティーブを一頻り撫でて肩に乗せ、話し出した。

ハルキン「今逃げていった奴…グラシアは、いつか必ず『事』を起こす」

視線をバニッシとバンに交互に向けながら、ゆっくりと話す。

ハルキン「今みたく偶々出会っても、あいつは逃げ足が早いからな。奴が『事』を起こす前に、奴に対抗できる戦力を探さないといけない」
バニッシ「なら、俺も連れていってくれ!」
ハルキン「お前では力不足だ」

ハルキンは冷たく言い捨て、踵を返した。

バン「待って!」

バンが修練場を後にしようとするハルキンに飛び付くようにしがみついて、ハルキンの動きを止めた。

⏰:08/01/16 18:36 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


#275 [◆vzApYZDoz6]
バン「アリサ姉ちゃんとクルサ兄ちゃんは?どうなったの?」

バンがハルキンを見上げる。
ハルキンはやれやれ、といったように頭を掻き、しゃがみこんでバンの頭を撫でた。

ハルキン「助けたいか?」
バン「当たり前じゃん!だってさっきの人って悪い奴なんでしょ?」

ハルキンはそれを聞いて、満足そうに含み笑いをした。立ち上がり、こちらを見ているバニッシを一瞥して再び踵を返した。

ハルキン「……1年後、もう1度ここに来よう。『必ずそこへ行ってやる』んだろ?」

そう言い残し、バニッシは修練場を出ていった。

⏰:08/01/16 18:43 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


#276 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは修練場を出ていったハルキンを見て、ふっと溜め息をついた。

バニッシ「1年後、か…」

バニッシに、ある1つの考えが過る。
そこへバンが走って近付いてきた。

バン「兄ちゃん!」
バニッシ「バン、母さんと父さんに、1年後に帰ってくるって伝えといてくれ」
バン「えっ?」

バニッシはバンの肩を叩き、修練場を出ていく。
早足で歩くバニッシを、バンが小走りになりながら追い掛けた。

バン「兄ちゃん、どこ行くんだよ?」
バニッシ「パンデモを出る。修行だ、修行」

あっけらかんと言うバニッシに、バンが目を丸くした。

⏰:08/01/16 18:53 📱:P903i 🆔:QnaipzGw


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