-Castaway-
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#342 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「馬鹿な…なぜ動けた?いや、なぜバリアを破れたんだ?」
俯いたままぶつぶつと呟くグラシアの目は赤く血走り、狂気の色が灯っていた。内藤が近づいてくるのに動こうともせず、何かを言い続けている。
内藤は吹き飛んだグラシアの元まで歩いていき、防御の意思を見せないグラシアを遠慮することなく蹴り上げた。
グラシア「ごあっ!!」
内藤「さっきから馬鹿かお前は」
グラシアの体が今度は部屋の中央にもんどりうった。グラシアがゆっくりと立ち上がり、信じられないという目で内藤を見据えた。
グラシア「なぜ動けるんだ?なぜバリアを破られたんだ?」
:08/01/23 23:24 :P903i :I.ywfF/k
#343 [◆vzApYZDoz6]
内藤「そりゃ俺が凄くてお前が馬鹿だからだろ」
内藤が冷ややかな目でグラシアを見た。先程とは違い、内藤がグラシアを見下しているかのよう。
グラシア「馬鹿な!スキルは完璧にコピーした筈だ!川上京介から『スレイブオブキング』のスキルを!」
グラシアが発狂したように叫びながら京介を指差す。
内藤の強さを目の当たりにして間の抜けた顔をする京介とは対照的に、グラシアの顔は強張り、額には青筋を立て、目は赤く血走っている。
内藤「あのなぁ、だからお前は馬鹿だって言うんだよ」
:08/01/23 23:31 :P903i :I.ywfF/k
#344 [◆vzApYZDoz6]
内藤が呆れたように後頭部を掻いた。
京介のスキル『スレイブオブキング』は、自らを絶対的な『王』とし、他人の『行動選択権』を支配する、というもの。
そして内藤は、そのスキルの持ち主である京介の、学校の担任だ。
内藤「…例え京介が王であろうと、担任を支配出来る訳ないだろ?お前はそんな京介のスキルをコピーしたんだ、俺を支配できる訳ないだろ。馬鹿かお前は」
グラシア「なっ…!?」
京介「ってそんな理由!?」
京介とグラシアが唖然として口を開ける中、内藤は1人涼しい顔をしていた。
内藤「そういうわけで京介、お前がスキル使えたからって学校の成績は上がらないぞ」
:08/01/23 23:39 :P903i :I.ywfF/k
#345 [◆vzApYZDoz6]
京介「いや、それかなり無理矢理な感じがするけど…担任だから、って」
内藤「自分が慕う先生を支配しようとは思わんだろ?まぁ諦めろ」
京介「そんな殺生な!」
談笑する2人を目の前に、グラシアは深刻な顔をしていた。
グラシア(馬鹿な…!スキルは実際に内藤が支配から逃れているから話は本当だろうが…なぜバリアを破れたんだ!?ミサイルの直撃も防ぐバリアだぞ!?)
グラシアが思案を巡らせる。
内藤のスピードは跳ね上がっているが、今食らった攻撃はそんなに強い訳じゃない。内藤の攻撃でバリアが破れたとは考えにくかった。
物理的原因ではないとすれば――
グラシア「…発生装置か」
:08/01/23 23:58 :P903i :I.ywfF/k
#346 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「あー、めんどくせえな」
コンソールを操作し続けていたガリアスは、部屋の4隅の柱に掛けられた結界を解除していた。
バリア発生装置となっている4本の柱のうち3本が、逆さになって地面に突き刺さっている。逆さになっていない残る1本の柱に近付きながら、ぶつくさと文句を垂れた。
ガリアス「ったく、別に俺が闘う訳でもないのに、何で発生装置なんか壊してるんだ俺」
残る1本に手を翳す。ガリアスのスキル『ヴィエロシティー』により、柱が風切り音を出しながら部屋の中を光速で飛び回る。
ガリアスが翳した手を振り降ろすと、逆さになった柱が床に激突し突き刺さった。
:08/01/24 00:06 :P903i :SoaPGRjY
#347 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「…まったく」
グラシアが、怒りを吐き出すように息を吐いた。顔を上げ、細めた目で内藤を見据える。
グラシア「自分の思い通りにならないと、こうも苛々するのか」
グラシアはの怒りは既に最高潮まで近付いていた。肩は小刻みに震え、手は自然と拳が握られている。
グラシア「どいつもこいつも…バニッシごときに…」
内藤「やられているのは、お前に力が無いからだよ」
怒りに震えるグラシアに気付いた内藤が、強い口調で言い放った。
内藤「他人の力に頼ってばかりで努力しようともしない。そんなお前が、4年間死に物狂いで努力した俺に勝てると思うか?」
:08/01/24 00:13 :P903i :SoaPGRjY
#348 [◆vzApYZDoz6]
内藤「そして他人の力を失ったお前は、今俺にボコボコにやられている」
内藤が再び煙草を取り出した。余裕をかましながら火をつける内藤をグラシアが賤しく眺める。
グラシア「うるせぇよ…お前はもう『喋るな』!」
怒りで我を忘れてか、効かないと分かっている京介のスキルを発動する。
内藤は煙草の煙を深く吸った。ゆっくりと吐き出しながら、哀れみを込めて言う。
内藤「バーカ、やなこった」グラシア「ああそうか…」
グラシアが何かを企んでいるかのように怪しい笑みを浮かべた。
次の瞬間、バックステップで一気に王座まで戻り、依然眠ったままの藍を素早く抱え上げた。
:08/01/24 00:21 :P903i :SoaPGRjY
#349 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「ならこの娘だ!」
内藤「しまった藍を!」
内藤が踏み込むより早く、グラシアが背後の窓ガラスを突き破る。直ぐ様燦に乗って内藤らを一瞥し、そのまま窓から飛び下りた。
内藤「くそっ!」
内藤が慌てて窓から身を乗り出す。降下するグラシアの足下には中庭のような空間が広がっていた。
司令室は5階で、下は恐らく1階。壁に取っ掛かりも無いのに飛び降りるのは危険かもしれない。
ふと、対面の中庭の端からグラシアの着地点に向かって走る人影が、3人見えた。
着地しようとするグラシアに思い切り攻撃する3人を見て、内藤が安堵と真剣さの混じった息を吐いた。
:08/01/25 01:01 :P903i :piHG.QUc
#350 [◆vzApYZDoz6]
内藤「…とりあえずは大丈夫か」
内藤が振り返ると、まだ動けないでいる京介とアリサとラスダンが見えた。
内藤「っと、まだ動けないままか。仕方ないな」
内藤が、さっきまで藍が座っていた椅子に一足で近付き、風船人形に手を掛ける。さっきまで触れる事が出来なかった風船に触れられたのは、発生装置が機能を停止させている事を示唆していた。
内藤が風船の顔に拳を叩き付ける。風船は散々に割れて、それと同時に動けないでいた3人の体に突然自由が戻った。
アリサ「やっと体が戻った♪」
ラスダン「てゆうか僕ら絶対存在を忘れられてたような…」
:08/01/26 18:05 :P903i :ug1pEsy.
#351 [◆vzApYZDoz6]
京介「それよかあいつを追い掛けないと!」
京介がすぐに振り返り、エレベーターのボタンを押す。4階と5階を往復するだけのエレベーターは、すぐに京介らの居る5階に到着した。
京介、ラスダン、アリサに続いて、内藤もエレベーターに乗り込む。京介が4階のボタンを押し、扉を閉めるボタンに手をかけようとしたところで、内藤が唐突に口を開いた。
内藤「川上…焦るなよ。自分の力を自覚するんだ」
京介「えっ?」
思わず振り返ると、内藤は少し俯いて腕を組んでいた。京介は言葉の意味が分からなかったが、内藤はそれ以上何も喋りそうにない。
エレベーターの扉は、そうこうするうちに閉まった。
:08/01/26 23:32 :P903i :ug1pEsy.
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