-Castaway-
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#352 [◆vzApYZDoz6]
-中庭・京介らが5階に到着する15分前-
拳が空を切る音と風船が弾ける音が連続で響く。時折、小爆発の音と共に幾体かの風船人形が宙を舞う。
ハル兄弟とリーザが風船人形を潰し始めてから、既に20分近く経過している。初めは中庭を埋め尽くす程に無数の風船人形が蠢いていたが、今はもうハル兄弟とリーザの周囲に居る数十体を残して、それ以外の全ては残骸と化して中庭の地面を覆っていた。
リーザが『ストライクボム』を使うために刀を鞘に納めた回数は、最早数え切れない程。残りも少なくなった風船を前に、リーザが何回目かも分からない鞘納めをする。
:08/01/26 23:51 :P903i :ug1pEsy.
#353 [◆vzApYZDoz6]
これまでは一瞬納めただけですぐに抜刀していたが、今度は刀を抜かない。その様子を尻目にした兄弟が、息を切らしながら背中を合わせて話し掛けた。
ライン「だいぶ数も減ってきたし…」
レイン「できるだけ1ヵ所に集めてみようか?」
リーザ「お願いしますわ」
よし、と小さく頷き、兄弟が左右に分かれて跳ぶ。周りを囲む風船の外側に着地した。
兄弟が風船の腕を掴み、次から次へと中庭の端へ投げ飛ばす。リーザは鞘を持つ左手以外の四肢を使い、風船の単純な攻撃を往なしている。
30秒程で中庭の端に全ての風船が積み上げられる。もがきバラけようとする風船よりも先にリーザが踏み込んだ。
:08/01/27 00:03 :P903i :aI5Q63wk
#354 [◆vzApYZDoz6]
リーザが納められた刀の柄に手をかけ、鞘をしっかりと握り直す。
一瞬足が止まり、次の瞬間には一閃の光と鍔鳴りの音を残して、積み上げられた風船の後ろに居た。鞘には刀が納められたまま。
その刀は、一度抜かれていた。
突如として、積み上げられた風船の中腹から爆発が起こり、辺りに散々になった風船の残骸が飛び散る。
リーザがゆっくりと立ち上がり、振り返る。唇を持ち上げながらこちらに歩いてくる兄弟に微笑んだ。
ライン「やっと終わったな」
リーザ「ええ…疲れました」
レイン「それにしても全くふざけた数だな。なんでここにこんなに風船が居るんだ」
:08/01/27 00:16 :P903i :aI5Q63wk
#355 [◆vzApYZDoz6]
3人が辺りを見回す。
本来なら芝生が生えている中庭の地面は、風船の残骸が覆い尽くして黒いビニールだらけになっている。
レイン「まぁ…今は考えても仕方がないな。とりあえずグラシアを…」
喋り声を遮るように、ガラスが割れる音が響いた。
音がした方を見ると、上からバラバラとガラス片が落ちてくる。続いて落下してきたのは、ハル兄弟にとっては憎役の人間。
レイン「お、今日はついてるな。向こうから降ってきやがった」
ライン「そりゃカウントダウンハイパーで2位だったからな」
リーザ「行きましょう!」
リーザの掛け声と同時に、3人が走り出した。
:08/01/27 00:38 :P903i :aI5Q63wk
#356 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「ぶはぁ!!」
内藤を見上げながら落下していたグラシアの腹に衝撃が走る。
飛び出したハル・レインの蹴りが鳩尾にめり込んでいた。
グラシア「貴様…!」
ライン「おっと、余所見はすんなよな」
グラシア「ぶふっ!」
今度は後頭部。ハル・ラインがダブルスレッジハンマーを食らわせた。
続いてリーザが飛び出し、抜刀して斬りかかる。が、斬撃は寸でのところでグラシアの左手に止められた。
グラシア「小癪な!」
グラシアが刀を振り回し、リーザ諸とも吹っ飛ばす。上手く着地したリーザの両隣にハル兄弟が跳んできた。着地するグラシアに立ち塞がるように周りを囲んだ。
:08/01/27 00:48 :P903i :aI5Q63wk
#357 [◆vzApYZDoz6]
ライン「これはこれは、どーも社長」
レイン「ウチの母親がすっかりお世話になったみたいで」
グラシアを指差しながら、からかうように話す。リーザはグラシアの退路を絶つように後ろに回り込んだ。
グラシアがゆっくりと息を吐く。怒りは既に臨界点を通り越し、逆に冷静さを取り戻していた。
グラシア「…まったく次から次へと…」
レイン「まぁまぁ、そう怒らないで。お世話になった代金は労災保険で支払いますから」
ライン「心優しい社長なら、今まで働いた分の給料貰えますよね?」
グラシア「は…こんな気分は久しぶりだよ」
その時、グラシアの体に変化が起きた。
:08/01/27 04:54 :P903i :aI5Q63wk
#358 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの着ていたスーツが破ける。
額には角のような突起が現れ、手や胸板は甲殻類のように硬質化していく。
全身の筋肉が急速に膨張し厳のように赤くなる。人間の5倍はあろうかという圧倒的な体躯がスーツの破れカスを体に巻き付けて、尚膨れ上がっていく。
グラシア「一体なんだろうな…何もかもがどうでもよくなるようなこの気分は」
ライン「それは…オヤジのスキル!!」
レイン「貴様! まさかオヤジにまで手を掛けたのか!?」
グラシア「君達がこの要塞に住み込んだ後でね。家に1人残されては可哀想だろう?」
リーザ「なんて非道な…!」
:08/01/27 10:26 :P903i :aI5Q63wk
#359 [◆vzApYZDoz6]
膨張した体躯から繰り出される圧倒的な腕力はダイヤモンドですら砕き、歩くだけでコンクリートを押し潰す圧倒的な脚力にはチーターですら敵わない。
それはイルリナのスキルを使い手に入れたハル兄弟の父親のスキル『レッドデーモン』。
あまりの膨張率に湾曲した背中の筋肉が、赤い鬼の顔に見える事からその名がつけられた。
グラシア「俺の『アナザーコンプリート』では、スキル所持者を殺してしまうとそのスキルが使えなくなるからね。その点では、『ライフアンドデス』は優秀だ」
リーザ「と言うことはまさか…」
グラシア「彼は逃げたからね…仕方がない」
:08/01/27 10:38 :P903i :aI5Q63wk
#360 [◆vzApYZDoz6]
ライン「貴様…なぜだ!? 俺達は忠実に働いた筈だ!!」
グラシア「君達はテーブルの食べ残しをずっと置いておくのか?」
レイン「オヤジはお前の晩飯だった、とでも言うのか!」
グラシア「そうだな、なかなか魅力的な晩飯だったよ。まあ…カレーライスぐらいかな」
レイン「貴様…!!」
ライン「よくもオヤジを殺したな!」
グラシア「いや、死んだかどうかは見ていない。部隊が断崖にまで追い詰めて、崖から飛び下りたそうだ。眼下の海に死体は見付からなかったがね」
ライン「なんだ、驚かせやがって」
グラシアの言葉を聞き、ハル兄弟は顔を見合わせて笑いあった。
レイン「それぐらいであのオヤジが死ぬ訳がないだろう」
:08/01/27 10:49 :P903i :aI5Q63wk
#361 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「それぐらいでって、普通死にますわよそれ」
グラシアの後ろで、リーザが呆気に取られた顔をした。
ライン「オヤジは普通じゃないからな。だが、今までこき使われたんだ」
レイン「落とし前はキッチリ取って貰うぜ」
兄弟が腕を突きだし、いつかのバイク乗りと対峙した時のように構える。
ライン「俺達をしっかり覚えてな」
レイン「お前を殺すのは、俺達ハル兄弟だ!」
膨れ上がった体躯の一番上に付いている顔がハル兄弟を見下ろし、ふん、と鼻で笑った。
グラシア「こうなったらお前らで鬱憤を晴らしてやろうか…愛する父親のスキルで千切れ死ね!」
:08/01/27 10:59 :P903i :aI5Q63wk
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