-Castaway-
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#434 [◆vzApYZDoz6]
京介「…?」
内藤「何も起こらないが」
グラシア「直ぐに分かるさ。直ぐになぁ!」
グラシアが懐に手を突っ込み、素早く拳銃を取り出す。黒光りする銃口が、直ぐ様藍に向けられた。
グラシア「フハハハ、死ねぇ!」
内藤「ちっ!」
すかさず内藤とハルキンが駆け出し、ジェイト兄弟の駆る巨人が剣を振り下ろす。
だが剣は避けられ、既に指が引き金に掛けられている状態では内藤とハルキンは間に合わない。
それを見てリーザとハル兄弟が藍の方へ走り出すが、盾になるには藍との距離が離れすぎていた。
しかし、皆がそれらの動作を起こす前に、京介が走り出していた。
:08/02/13 02:06
:P903i
:Grvs9S/A
#435 [◆vzApYZDoz6]
京介「うおおおお!!」
柄にもない叫びを上げて、京介は人生で一番速く走っていた。
グラシアが引き金を引く寸前で飛び出し、体ごとグラシアにぶつかる。
京介「おらぁ!!」
グラシア「ぐっ…俺は…!」
発射された銃弾は体当たりによって軌道が反れ、あらぬ方向へ飛んでいった。
体当たりされたグラシアの体はフェンスを勢いよく突き破り、屋上から投げ出され宙を舞った。
グラシア「俺は…認めて…褒めて…」
何かに憑かれたような目をして落下していくグラシアを、京介は見向きはしなかった。
:08/02/13 02:16
:P903i
:Grvs9S/A
#436 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「なんだ…ここはどこだ?」
屋上から落下したグラシアは、なぜかどこかの部屋にいた。
驚き辺りを見回すと、埃を被ったベットや、カバーを掛けられた少し古くさい感じのする機械群。
そこはレンサースキル研究が行われた場所。グラシアとハルキンに縁のある場所。
無意識にテレポートスキルでも使ったのか、と一瞬思ったが、イルリナとの距離を離された為に貯めていたスキルは使えなかったはず。だが、理由が何にしろ、自分は今ここにいる。
その時、部屋の外から足音が響いた。
やがてゆっくりと部屋の扉が開き、人が入ってくる。
「やはり来たか…いずれ来ると思っていた」
:08/02/13 02:29
:P903i
:Grvs9S/A
#437 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「チーフ…いや…父さん?」
父「待っていたよ、グラシア」
そこに居たのは、研究の第一人者だった人間。
グラシアを閉じ込め、処分という決断を下した人間。
責任と息子への情けから、せめて自分が処分しようと、1人で幼きグラシアの牢にへ赴いた人間。
居なくなっていたグラシアを探しに居住区へ行き、グラシアを撃ち殺そうとした人間。
銃口を向けられ、反射的にグラシアに殺された人間。
グラシアが只1人殺した研究者。
そして、グラシアの父親だった人間。
殺したと思っていた父親が、目の前にいた。
グラシア「ああ…父さん…?…なんで…死んだんじゃ…」
:08/02/13 02:39
:P903i
:Grvs9S/A
#438 [◆vzApYZDoz6]
父「今までよく頑張ったな。苦労したろう?」
グラシア「父さん…!」
父「お前を研究体にした父さんを許してくれとは言わない。だがお前は私の研究の成果であり、誇りだ」
グラシアが目に涙を浮かべて、殺した筈の父親にすがり付く。
父「お前のした事は許される事じゃない。でも父さんだけは許してあげよう」
父親はグラシアを優しく片手で抱き寄せた。
父「だからもう…おやすみ」
残る手に握られた拳銃をグラシアのこめかみに当てた。乾いた銃声が響くのと同時に、グラシアの意識が完全に途絶える。
基地の地面に激突したグラシアの顔は、憑き物が落ちたような穏やかな目をしていた。
:08/02/13 02:52
:P903i
:Grvs9S/A
#439 [◆vzApYZDoz6]
京介「スキルなんてものがあるから…レンサーなんてものが居るから、こんな事になったのか?」
内藤「かもしれんな。人の業、というやつだ」
京介「…」
京介は、落ちていったグラシアを追わなかった。
死んでしまったのかは知らない。少し気になったが、グラシアは京介をディフェレスに巻き込んで藍を拐った張本人だ。
京介はハルキンの話を聞いた時、不憫に思いこそはしたが同情はしなかった。
藍「…京ちゃん」
フェンスを背にして渋い表情を浮かべていた京介に、藍が寄り添うように近付いた。両手で京介の片手を握り、恥じらうように視線を落とすその姿は、なんともいじらしい。
:08/02/13 04:40
:P903i
:Grvs9S/A
#440 [◆vzApYZDoz6]
京介「どした?」
藍「…その、お礼忘れてたし…助けてくれてありがと」
俯いたまま小さく呟く藍を見て、京介の表情が柔らかく綻んだ。
京介「いいよ、俺がしたくてした事だし」
藍「…なによ、格好つけちゃって!」
京介「って、それはちょっとひどくね?」
内藤「いいじゃないか、ツンデレ」
京介「いやいや、一体何の話?」
ライン「いいねぇ、若いって」
レイン「いや、俺達も十分若いぞ。と言うわけで嫁にならんか?」
リーザ「丁重に、お断りしますわ」
ガリアス「…恋愛、か。全くついていけんな」
ブロック「右に同じく。俺にとってはバイクが恋人さ」
フラット「上に同じく。俺にとっては以下略」
:08/02/13 04:52
:P903i
:Grvs9S/A
#441 [◆vzApYZDoz6]
藍の一言をきっかけに、さっきまでの戦闘が嘘のように場の雰囲気が和む。
皆を一頻り見渡して、ハルキンが満足そうな笑みを浮かべた。
ハルキン「一件落着、だな」
アリサ「帰りましょ、バニッシちゃん♪」
内藤「おいやめろ、くっつくな」
レイン「あーうぜぇうぜぇ」
ライン「おもいっきりひがむな」
京介「……ま、何はともあれ、これで終わったんだな」
ラスダン「いいや。…まだ終わってないみたいだよ」
1人浮かない声のラスダンに、全員が振り返る。
ノートパソコンを具現化し、自分が今しがた頭の中で見ていた映像をディスプレイに表示させ、皆の方に向けた。
:08/02/13 05:11
:P903i
:Grvs9S/A
#442 [◆vzApYZDoz6]
そこに映っていたのは、携帯型のミサイル等とは比較にならない程の大きなミサイル。
1基の大陸間弾道弾が、京介達がいるこの基地へ、猛スピードで飛んできていた。基地との距離を見る限り着弾まであと僅かしか無いだろう。
内藤「あいつの言ってた道連れとは、これのことか…!」
リーザ「早く逃げましょう!」
一行が踵を返し、屋上の扉へ向かう。
その時、要塞内部で大きな爆発が連続して発生した。
ハルキン「ちっ!誰かが自爆スイッチでも押しやがったか!?」
続いて起こる激しい縦揺れに要塞が耐えきれず、京介達の足下から真っ二つに分かたれた。
:08/02/13 12:22
:P903i
:Grvs9S/A
#443 [◆vzApYZDoz6]
亀裂が走った要塞屋上で、一行は完全に2手に別れた。
内藤「全員無事か!?」
内藤が辺りを見回す。
亀裂を挟んで内藤がいる側は、自分の腕にくっついていたアリサと、後ろで傍観していたハル兄弟、ガリアス。ジェイト兄弟とバイクも居た。
階段は、亀裂を挟んだ向こう側。間に走る溝は深く、階段からは脱出出来そうにもない。
ブロック「みんな掴まれ!!」
だが、内藤側には鉄の巨人がいた。屋上から飛び降りて脱出するのは可能だろう。
内藤が爆音に掻き消されまいと、声を張上げた。
内藤「ハルキン!川上!そっちは頼んだぞ!」
:08/02/14 01:28
:P903i
:E0IzjAOc
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