-Castaway-
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#444 [◆vzApYZDoz6]
任せろ、という京介の叫びが返ってくる。内藤はそれを確認し、鉄の巨人の元へ駆け出した。
既にエンジンを吹かして準備万端整う巨人の右腕にガリアスが、左腕にハル兄弟が掴まっている。

アリサ「早く!♪」

アリサが大振りに手招きする。自爆の影響で激しく縦に揺れる屋上を這うように走り、アリサを抱え込んで、ちょうど巨人の肩にあたる突起に手を掛けた。

フラット「しっかり掴まってろ、舌噛むなよ!いくぜ!」

アクセルを吹かし、クラッチを弾くように離す。
駆け出した巨人がフェンスを突き破り、内藤の体に浮遊感が生まれる。
次に訪れるであろう落下感に備え、内藤が片目を強く瞑った。

⏰:08/02/14 01:38 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#445 [◆vzApYZDoz6]
京介「藍、走れるか!?」
藍「大丈夫!急ごう、京ちゃん!」

京介とハルキンの居る階段側に別れたのは、戦力はさして大きくない藍とラスダン、そして手負いのリーザ。
怪我人を守らねばならぬ状況で、懸命に非常通路の大螺旋階段を降りていた。
京介が藍の手を引きながら落ちてくる瓦礫から藍を守り、ハルキンが手負いのリーザに肩を貸しながら瓦礫を潰して道を開く。ラスダンが脳内で頭上を視て状況を見極め、出来るだけ落下物の少ない道を先導する。
そんな風に、出来るだけ全力で螺旋階段が終わる2階に到着した。

ハルキン「あと少しだ!」
京介「よし…うわっ!」

⏰:08/02/14 01:50 📱:P903i 🆔:E0IzjAOc


#446 [◆vzApYZDoz6]
要塞のどこかで2次爆発が起きた。
立っていられない程の揺れと耳をつんざくような爆音。それに加えて、さっきよりも大きな瓦礫が、まるで壁のように落ちてくる。
1階へ降りる階段は廊下の端。だが、そこまでの道程の間に落ちてきた瓦礫が立ち塞がった。

京介「道が!」

行く手を阻まれ、全員が足を止める。
激しい縦揺れでまともに走れていなかった為、巻き込まれる事は無かった。
だが振り返るとそこにも降り注ぐ無数の瓦礫が。

ハルキン「こっちもか!」

瓦礫に挟まれ密閉空間となった廊下から脱出するには、床を壊すしかない。
だがそれよりも先に、瓦礫の塊が京介達の頭上に襲い掛かった。

⏰:08/02/15 01:05 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#447 [◆vzApYZDoz6]
京介「くそっ!」
藍「きゃっ!」

藍が咄嗟に目を瞑り、京介が落ちてくる瓦礫を叩き散らす為身構える。
ハルキンの空間制御は間に合わない。これだけの数と質量の瓦礫を潰しきるのは不可能に近い。
それが分かっていてもハルキンが構えた、その時。

廊下の壁を勢いよく突き破って、無数の隼が現れた。
その隼は全て純白で、体は肉ではなく紙吹雪の塊。
不意の出来事に京介の動きが止まるが、瓦礫の方は隼が次々と粉塵に変えていき、落ちてこない。
程無くして、隼が突き破り穴が空いた壁から、青い巾着袋を片手にクルサが出てきた。

クルサ「危ないところだった…」

⏰:08/02/15 01:15 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#448 [◆vzApYZDoz6]
京介「あっ!あんたは確か…えーっと…」
ハルキン「クルサ!助かったぞ!」
京介「それだクルサ!ありがとう!」
クルサ「うん…くっそ、バニッシの奴こっぴどくやってくれた」

クルサは右手に巾着袋を持ち、左手で右肩を押さえている。
片足を引き摺り苦し気な表情を浮かべるその姿は、内藤に倒された時のダメージを負ったままのようだ。
頭上では隼が最後の瓦礫に突進し、落ちてくる瓦礫は一段落した。
だがしかし、直ぐに次の瓦礫がやってくるだろう。
ラスダンがクルサに肩を貸したのを確認し、ハルキンが床を見据えて拳を振りかぶる。
だがそれは、壁が豪快に吹き飛んだ事によって邪魔された。

⏰:08/02/15 01:27 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#449 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「今度は何だ?」

吹き飛んだ壁は、クルサが出てきた穴の対面側。
ハルキンが舌打ちをして、むせ返りそうになる土埃に鼻と口を押さえながら、かなり派手に空いた巨大な穴の向こうを見る。
そこに居たのは鉄の巨人。だが壁を破壊したのは、巨人の足元にいるハル兄弟の双砲撃だった。

ライン「逃げ道は確保してやったぞ!」
レイン「次の瓦礫が来る前に降りてこい!」
ハルキン「ええい、余計な事を…」
京介「いいから行こうぜ!」

京介が、速く走れない藍を脇に抱えて駆け出した。
ハルキンもリーザを肩に担ぎ上げ走り出す。
しかし、別段身体能力の高くないラスダンと怪我人のクルサは、初動が遅れた。

⏰:08/02/15 01:37 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#450 [◆vzApYZDoz6]
一番に穴に辿り着いたのは京介と、脇に抱えられた藍。振り返ると、すぐ後ろにハルキンが走ってきていた。
まだ奥にいるラスダンとクルサが気になったが、早く穴から飛び降りろ、と顎で指示するハルキンに促され、眼下の地上へ飛び降りた。
続けざまにハルキンが穴に到着し、担ぎ上げていたリーザを降ろす。

ハルキン「1人で飛び降りれるか?」
リーザ「…何とかいけそうですわ」
ハルキン「よし。俺はあいつらを連れて来る」

ハルキンがリーザを送り出し、まだ穴から距離のある場所にいるラスダンとクルサを見る。手助けに行こうと踏み出そしたその時。

とうとう、ミサイルが着弾した。

⏰:08/02/15 01:46 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#451 [◆vzApYZDoz6]
ミサイルの直撃によって、要塞は完全に崩壊した。
7階建の要塞、その2階から上の部分を支えていた床や壁が瓦礫となって、全てがラスダンとクルサのいる場所に落ちてくる。その数は筆舌に尽くしがたい程。
ハルキンの足が止まる。恐らく駆け寄るよりも先に、瓦礫が滝の如く落ちてきて、巻き込まれるだろう。
だが、ハルキンのいる穴からラスダンとクルサがいる場所までの道に、瓦礫は降ってこなかった。
隼の大群が、瓦礫を体で止めていた。まるで穴までの道に純白の屋根が架かったように。

ラスダンが振り返る。
そこには、巾着袋の口をラスダンに向けている、満身創痍のクルサがいた。

⏰:08/02/15 18:36 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#452 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「うわっ!」

ラスダンの体が、巾着袋から飛び出した紙の龍に飲み込まれる。
紙の龍がそのまま純白の屋根の下を駆け抜けて、ハルキンに向かってラスダンを吐き出す。
ハルキンがラスダンを受け止めるのと同時に、純白の屋根が崩れ落ちた。

ハルキン「クルサ!!」

押し潰される紙吹雪の上に、大量の瓦礫が落下する。
瓦礫の僅かな隙間から見えたクルサの顔。小さく微笑んで、顎で行けと指示する。最後にまた小さく笑って、瓦礫の山に見えなくなった。

ハルキン「ちっ…くしょうが!!」

ラスダンを抱え穴から飛び降りる。
ハルキンが着地して振り返る頃には、既に2階も崩れ落ちていた。

⏰:08/02/15 18:52 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


#453 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「あいつに、助けられたか」
ラスダン「…助けられたね」
ハルキン「全く…どいつもこいつも格好付けやがって」

手負いの体では間に合わないと判断したのか、それともハルキンが空間転移を使って助けようとしていたのが分かっていたのか。
何れにせよラスダンとハルキンは、自分の身を犠牲にしてクルサに助けられたのだ。

ハルキン「またいつかここに来てやらないとな。…車に戻るぞ」
ラスダン「…了解」

2人が、他のメンバーが待つ車の元へ向かってひた走る。
背後でまだ続く崩壊。その轟音が、2人の耳に少し悲しくこだましていた。

⏰:08/02/15 19:06 📱:P903i 🆔:cxnz/jkI


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