-Castaway-
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#101 [主◆vzApYZDoz6]
ウォルサーの戦闘部隊はジェイト兄弟によって殆どが撃破され、壊滅的な打撃を受けていた。
後ろには無数のヘリや戦車の残骸が転がる中で、鉄の巨人が足を止める。
目の前には、ゲームで見たことがあるような、手足がついた戦車が5機。側面にはREXと書いてある
兄「…メタルギアがあんなにいるなんて聞いてないんだが」
弟「つうか切実に著作権とか大丈夫なのかなこの小説」
弟のリアルな心配を余所に、2足歩行戦車達が一斉に襲い掛かった。
:07/12/23 07:11 :P903i :BXLbCLgc
#102 [主◆vzApYZDoz6]
2足歩行戦車達の持つガトリングガンが、一斉に火を吹いた。兄の操作により、滑るような動きで銃弾をギリギリかわしていく。
そんな中、アームのコクピットに座る弟は、2足歩行戦車をどう倒すか思案していた。
弟「グレネードはもう無いし、バルカン砲じゃ倒せないだろうし…どうしようかな」
弟は依然ガトリングガンを撃ち続ける2足歩行戦車を見た。見たところ敵の装備は、対戦車ガトリングガンに対歩兵マシンガン。背中にはミサイルのようなものが見える。
:07/12/23 07:23 :P903i :BXLbCLgc
#103 [主◆vzApYZDoz6]
弟「ん?メタルギアでミサイルつったら…まさかスティンガー?」
弟の予想は的中した。ガトリングガンが当たらないと見るや、2足歩行戦車達が膝をつき前屈みになり、背中のスティンガーミサイルを撃ち出した。その数、1機につき3発、計15発。
弟「しかも多いし!」
弟が鉄の巨人の右腕からチャフグレネードを撃ち出す。多数のチャフ片が辺りに舞い散り、スティンガーの追尾機能を麻痺させた。
兄がすかさず右へ飛び、さっきまで鉄の巨人がいたところが爆煙に包まれる。
:07/12/23 11:51 :P903i :BXLbCLgc
#104 [主◆vzApYZDoz6]
息をつく暇を与えず、爆煙を巻き2足歩行戦車が踏み込んでくる。いつの間にか腕がチェーンソーのようなものになっていた。
巨人が素早く横へ飛び込み紙一重でかわすが、さらに他の2足歩行戦車が追撃してくる。5機を避けきれず、巨人の肌に傷がついた。
弟「うーん、こりゃヤバいねどうにも」
兄「いや、思い出したぜ」
鉄の巨人の足元から飆が巻き上がり、頭まで上がった後その巨体に絡み付く。その姿は、バウンサー本部での戦いで内藤が使ったスキルのよう。
兄「バニッシ…じゃねぇや、内藤に『ブラストハイド』のスキルを渡したのは、この俺だ」
鉄の巨人が、風よりも速く駆け出した。
:07/12/23 12:23 :P903i :BXLbCLgc
#105 [主◆vzApYZDoz6]
兄「ジェイトソード出すぞ!」
弟「了解!」
ジェイト兄弟がハンドルのボタンを同時に操作し、巨人の両腰に位置していたスタンドが飛び出す。
剣を両手に握り、そのまま柄を合わせた。
弟「ツインジェイトソード!」
振り下ろされた巨大な両刃剣が、2足歩行戦車1機を袈裟懸けに真っ二つに切り裂いた。
機能を停止し膝をつく1機を尻目に、残り4機に刃を向ける。
弟「さぁ、こっからが本番だぜ!」
:07/12/23 14:22 :P903i :BXLbCLgc
#106 [主◆vzApYZDoz6]
-要塞内部・ラスダンとラスカの場合-
扉を開けると、そこは予想に反して薄暗い。広い空間のようだが、灯りが点いている照明が少なかった。
壁には段ボールやコンテナ等が積まれている。どうやら戦車が格納されていた向こう側の建物と違い、完全な倉庫のようだ。
もう1つの扉から入れるであろう場所とは、壁で仕切られていた。ハルキンがその壁に地図を発見し、要塞の構造を確認する。
ハルキン「へぇー、これはまたご丁寧な地図もあったもんだな」
地図には全体像が描かれている。ハルキンとラスカが今いるのは左の格納庫で、単に真っ直ぐ行けば中央要塞に辿り着けるようだ。
:07/12/24 01:10 :P903i :HXNfgySU
#107 [主◆vzApYZDoz6]
ラスカ「中心部までの道は特に問題ないとして…藍ちゃんはどこに捕まってるのかしら」
ハルキン「そうだな…管制コントロール室に行ってみよう。ここにこれだけの監視カメラがあるんだから、中央要塞にも設置されてるだろ」
ハルキンが壁と天井の境に設置されたカメラに目をやる。カメラの向く方向がオートで変わるタイプで、左右の壁に死角が無いように交互に設置されていた。
ハルキンとラスカが中央要塞に向けて走り出す。
ラスカ「これじゃ私達の行動は敵に筒抜けね…」
ハルキン「恐らく中央要塞に入ったら、いきなり攻撃される可能性が高い。注意しておこう」
ウィニー「その必要はない。お前らは死ぬからだ…今ここでな」
:07/12/24 14:51 :P903i :HXNfgySU
#108 [◆vzApYZDoz6]
前方から声がした。
見ると、床との距離が10mはありそうな高い天井のスレスレを、ドラゴンに乗ったウィニーが滑空してきた。ガリアスも乗っている。
ハルキン「ん?お前誰だっけ?」
ウィニー「ふざけているのか?忘れたとは言わせないぞ」
ハルキン「……あぁ、思い出したよ」
少し考えるような素振りを見せていたハルキンが、笑みを浮かべながら言った。
ハルキン「スティーブの散歩に行くのを忘れていたよ」
ウィニー「貴様…!!」
:07/12/25 09:41 :P903i :NYrpWQ/k
#109 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「とりあえず今は時間がない。さっさと終わらせて貰うぞ」
ハルキンが右拳を構え、天井スレスレにいるウィニーとの距離およそ10mを、空間制御を使い縮める。一瞬にして懐に飛び込み、渾身のストレートを撃ち出した。
ウィニー「今回は前のようにはいかない」
そう言った刹那、ウィニーが忽然と消え去り、ハルキンの拳が空を切った。ハルキンが少し驚いたような表情を見せる。
ハルキン「外した?」
ラスカ「会長後ろ!!」
戦えないため、下で結界を張り身を守っていたラスカが叫ぶ。
ハルキンが声に反応し後ろを振り返るのと、ドラゴンの尻尾がハルキンに叩き付けられるのは同時だった。
:07/12/25 09:58 :P903i :NYrpWQ/k
#110 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンが叩き付けられ地面に急降下する。ラスカが着地点に結界を張ったが、ハルキンが寸でのところで身を翻し受身をとった。
心配したラスカがハルキンに駆け寄る。
ラスカ「大丈夫!?」
ハルキン「あぁ、これぐらい大丈夫だ。奴は俺が倒すから、ラスカは自分の身を守っていろ」
ハルキンが天井近くのウィニーを見上げる。ウィニーがほくそ笑んでる後ろにガリアスがいるのが見えた。
ハルキン「よぉ、後ろの若造、今のはお前の能力か?」
ガリアス「教える訳ないだろ」
ウィニー「そうだ。お前は黙って死ねばいいんだよ」
ハルキン「お前には聞いてない…自力では何も出来ない低能が」
:07/12/25 10:22 :P903i :NYrpWQ/k
#111 [◆vzApYZDoz6]
ウィニーの顔が強張った。明らかに怒りを顕にし、表情が歪んでいる。
ウィニー「あぁ?今カイトに吹っ飛ばされた癖に粋がんなや」
ハルキン「今俺を吹っ飛ばしたのもお前じゃなくドラゴンだろ雑魚低能」
ハルキンが前回と同じような余裕の表情で喋るのを見て、ウィニーの眉間が寄り、唇の端がひきつる。
ウィニー「お前はそんなに俺に…」
ガリアス「もういいよ、喋るなお前。勘に障る」
:07/12/25 11:12 :P903i :NYrpWQ/k
#112 [◆vzApYZDoz6]
ガリアスが少し機嫌が悪そうな表情でウィニーの言葉を遮り、さらに続ける。
ガリアス「ハルキン、あんたも分かっただろう?俺のスキル『ヴィエロシティー』は物体を光速移動させることができる。あんたの空間圧縮や空間転移も、相手の位置が分からなければ出来ないだろう」
ハルキン「それがどうした?退いてくれ、とでも?」
ガリアス「その通りだ。俺は嫌でもこいつの手助けをしなくちゃならないし、あんたが邪魔をするならウォルサーの一員としてあんたを排除しなくちゃいけない」
ハルキン「……」
:07/12/25 11:35 :P903i :NYrpWQ/k
#113 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンはガリアスと目を逸らさずに沈黙した。後ろではラスカが不安そうに、まだ天井近くを飛んでいる2人とハルキンを交互に見ていた。
ウィニーはドラゴンの上に座って肘をつき、明らかに不機嫌そうな態度をとっていた。とうとう待ちくたびれて口を開く。
ウィニー「いい加減にしろや揃いも揃って黙りこくって気持ちわりぃ!!要するにお前はどう足掻いても勝てねぇんだよ!時間稼ぎに必死か!?」
ウィニーの甲高い笑い声が響く。
ガリアスは溜め息をつきながら俯き、ラスカは不機嫌そうにウィニーを睨み付ける。
皆が嫌悪感を顕にする中、ハルキンは自分がここに入って来た扉を見ていた。
:07/12/25 11:47 :P903i :NYrpWQ/k
#114 [◆vzApYZDoz6]
ウィニー「余所見してんじゃねーよ!!」
ハルキンはウィニーを無視し、扉を見つめていた。軈て笑みを浮かべながら視線を戻す。
ハルキン「あぁ、悪いな何も聞いていなかったよ」
ウィニー「ははは!逃げる算段を考えるのに必死か?」
ハルキン「俺が逃げるなんていつ言った?妄聴も大概にしときな低能」
ウィニーの唇がより一層ひきつる。目は赤く血走っていた。
ウィニー「あぁもういいよ、お前は殺す。ガリアス、やるぞ」
ガリアス「……」
ウィニー「おい聞いてんのかガリアス!てめぇには耳ねぇのか!」
ガリアスは後頭部を掻きながら溜め息をつき、ハルキンに視線を向けた。
:07/12/25 12:00 :P903i :NYrpWQ/k
#115 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「本当に退く気はないのか?あんたがこのままあのドアに帰るなら、俺は追うつもりはない」
ガリアスが入口の扉を指差して言う。ハルキンは扉には目もくれず言葉を返した。
ハルキン「悪いが俺達にはスティーブの散歩よりも先に、藍を取り返すという目的があるんでな」
ガリアス「……残念だよ」
:07/12/25 12:10 :P903i :NYrpWQ/k
#116 [◆vzApYZDoz6]
ガリアスらの姿が忽然と消え去る。風切り音と共に、ウィニーの声が響いた。
ウィニー『ははは、大人しく逃げればよかったものを!あんたなら、光速移動する物体は質量が増加する事は知ってるだろう?全体重をかけて押し潰してやるよ!!』
再び声が消え、風切り音が響き渡る。
ハルキンは宙を見上げた。その表情は、前回の戦いと同じく余裕に満ちている。
前回と同じような表情で、前回と似たような言葉を口にした。
ハルキン「…さて、君はブラックホールというものを知ってるかね?」
:07/12/25 12:21 :P903i :NYrpWQ/k
#117 [◆vzApYZDoz6]
ラスカが『ブラックホール』という単語に過敏に反応した。驚いた表情で視線をハルキンに向ける。
ハルキンは宙を見上げているが、言わんとする事はラスカに伝わっていた。
ラスカ「ったく…どうなっても知らないよ!」
ラスカが自身の周りを纏っていた結界を解く。それをハルキンが横目で確認し、満足そうに唇の端を上げた。
ハルキン「ブラックホールってのは、太陽の何倍もあるような大質量の恒星が寿命を終え、超新星爆発と呼ばれる熱放出の後、自重力により星が圧縮されてできる」
:07/12/25 12:48 :P903i :NYrpWQ/k
#118 [◆vzApYZDoz6]
ウィニー「ははは、ここで光さえも飲み込むブラックホールを作ろうってか!?大質量の星もないのに!?」
ハルキン「ブラックホールは飲み込んでいるのではなく、物質を微粒子レベルで破壊し自身に取り込んでいるんだ」
ウィニー「うるせぇから死ねよ!!」
ウィニーを乗せたドラゴンが突如現れた。
現れた場所はハルキンのすぐ後ろ。ドラゴンが爪を前に出し、ハルキンを今まさに千切らんとしている。
だが、ドラゴンの爪はハルキンに届かなかった。
ハルキン「『押し潰す』といっておきながら後ろからか…ゲスはどこまでいってもゲスだな」
:07/12/25 13:00 :P903i :NYrpWQ/k
#119 [◆vzApYZDoz6]
ウィニーは止まっていた。いや、止まっているように見えた。よく見ると、少しずつだが爪がハルキンに近付いている。1秒に1mmぐらいの、途方もなく遅いスピードで。
ハルキン「俺の周囲の空間を目一杯まで引き伸ばした。…苦労したぞ、光は1秒で地球を7周半回るんだからな」
ウィニーも、後ろのガリアスも無言で、表情も何一つ変えずに止まっている。
ハルキン「ま、お前らが光速移動する前には既に、ナメック星に行けるぐらいまで引き伸ばしてたんだ。こちらの姿は見えていても、声なんざ届いていないだろうな。…ラスカ!」
ラスカ「了解!でもナメック星って何さ?」
:07/12/25 13:17 :P903i :NYrpWQ/k
#120 [◆vzApYZDoz6]
ラスカが疑問を持ちながらも、自分のに周囲に少し余裕を持たせて結界を張る。ハルキンが引き伸ばした空間をそのままにして、空間転移で結界に入った。
ハルキン「例の手続きで地球に行った時、漫画とかいうやつで見たんだ…さて、と」
ハルキンが再び空間転移を使う。
未だに微動だにしないドラゴンの背中のガリアスが消え、ハルキンのすぐ隣に現れた。
ガリアス「なにっ…!?」
ハルキン「よしよし、やっぱりガリアスが離れても光速移動したままだな」
何が起きたか分からず周囲を見回しているガリアスを尻目に、ハルキンが今度はウィニーとドラゴンに向けて空間圧縮を使った。
:07/12/25 13:26 :P903i :NYrpWQ/k
#121 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて、さっきの続きだ。ブラックホールにより破壊・吸収された微粒子は、強力な重力により再び粒子と反粒子として対生成される」
空間圧縮によりウィニーとドラゴンがみるみる縮んでいく。ついには見えない程までになったが、ハルキンはまだ圧縮を続けた。
ハルキン「対生成された粒子と反粒子は、再びぶつかり合い対消滅する。しかし、重力によってずれた時間軸のせいで、たまに粒子か反粒子のどっちかがブラックホールの地平面を飛び出してしまうんだ」
ハルキンが何かを確認し、引き伸ばした空間だけを元に戻した時、突然周囲に異変が起きた。
周囲のコンテナや段ボールが、ウィニーとドラゴンがいた場所に次々と飛び込み消えていく。
:07/12/25 13:41 :P903i :NYrpWQ/k
#122 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「ウィニーのブラックホールの完成だな。ラスカ、建物にも結界は張ったよな?」
ラスカ「勿論」
ラスカが即座に返事をした。
光速移動する物体の質量は、尋常ではないほどに増加する。小さな陽子でも光速移動させ電流を流せばブラックホールになる程、質量の増加率は高い。
ハルキン「光速移動で既に重力が発生しているドラゴンを、限界まで圧縮したんだ。まぁ、当然ああなるわな」
ガリアスは、ブラックホールと化したウィニーを、正確にはウィニーがいた空間を黙って見ていた。
:07/12/25 13:49 :P903i :NYrpWQ/k
#123 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて…まだ続くぞ。そうしてブラックホールを飛び出した粒子は、熱放射で光って見える。これをホーキング輻射と言う」
ガリアスは、視認できない程小さなブラックホールに、物が飛び込んでいくのを見続ける中で、一瞬だけブラックホールが光った気がした。
ハルキン「この輻射によってエネルギー、つまり質量を失うと、取り込んだ質量によって拡大するブラックホールは質量を失う事になる」
やがてブラックホールの光はどんどん増えていき、まるで星が輝いているかのように目映く煌めく。
:07/12/25 14:01 :P903i :NYrpWQ/k
#124 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「質量が減ればこの輻射はさらに強く働き、輻射は強度を増す」
ブラックホールの光はどんどん膨れ上がり、今にもはち切れそうに小刻みに震えだした。
ハルキン「そうなると加速度的に質量とエネルギーを失っていき、最終的には…爆発的にエネルギーを消費し消滅する。―――」
ブラックホールは、目が眩むほどの光と耳鳴りが鳴るほどの爆音を放ち…
ハルキン「―――ゲスの最後にはお似合いだろ」
…ハルキンが軽蔑の視線を向ける中、花火のように散っていった。
:07/12/25 14:18 :P903i :NYrpWQ/k
#125 [◆vzApYZDoz6]
爆音が止み、光が消え、静寂が戻ってくる。ラスカが自分の周囲と建造物に張っていた結界を解いた。
ハルキン「じゃ、先を急ぐか」
ガリアス「ちょっと待てよ」
ガリアスが走り出そうとしていたハルキンとラスカに後ろから声をかけた。
ガリアス「なぜ俺は生かされたんだ?納得がいかねぇな」
ハルキン「お前は既に敵じゃない」
ガリアス「……でも、俺は戦わないと駄目なんだ」
ガリアスが構えを取る。ハルキンはゆっくりと溜め息をつき、顎で入口を差した。
ハルキン「見てみろよ」
ガリアスが入口を見ると、そこには人が立っていた。
ガリアス「……母さん…?」
:07/12/26 11:33 :P903i :iPwdxIVQ
#126 [◆vzApYZDoz6]
-要塞内部・京介とラスダンの場合-
ハルキンがウィニーと対峙していた頃、京介とラスダンは地下牢にいた。2人が入った扉は、入ってすぐに地下に下りる階段があったからだ。
京介「何でこんなところに牢屋が有るんだろ」
ラスダン「捕まってる人は…いないみたいだけど」
2人はゆっくりと歩いていた。
辺りは1階よりもさらに薄暗く、横幅3mぐらいの狭い通路の天井に、5mおきぐらいに小さな電球があるだけ。
両脇には鉄格子が延々と真っ直ぐ続いており、だいたい3m間隔で壁に仕切られている。広さからして1つの牢に1人だけのようだが、辺りが暗いので牢の奥の方が視認できない。
:07/12/26 11:54 :P903i :iPwdxIVQ
#127 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「うーん、もしかしたらここに藍ちゃんが捕まってるんじゃ…とか思ったけど」
京介「違うみたいだな。…誰もいないし、戻った方がいいんじゃね?」
2人が歩みを止める。
確かにそこは埃が積もってるし、鉄格子は赤錆だらけ。長い間使われていない感じがした。
ラスダン「そうだね…戻ろうか」
元来た道を戻ろうと2人が踵を返した時、背後から小さな声がした。
?「…そこに、誰かいるの…?」
京介とラスダンが同時に振り返る。
通路に人は居なかった。となると、声の主がいる場所は1つしかない。
京介「…今の、牢屋からだよな?」
2人は顔を見合わせ、牢に人がいないか確認しながら声の元へ向かった。
:07/12/26 12:10 :P903i :iPwdxIVQ
#128 [◆vzApYZDoz6]
京介「あっ、人がいる!」
2人が両脇の牢を一つ一つ確認していく中で京介が声を上げた。ラスダンが京介側の牢を見ると、確かに人が2人いる。
どちらも中年ぐらいの女性。精神的な疲労からだろうか、弱っている感じは無いが少し痩せていた。
囚われの女性が京介とラスダンを確認し口を開く。
女性「あなた方は…?」
京介「俺は京介って言うんだ」
ラスダン「僕はラスダンと言います。ここに囚われている仲間を助けに来ました。…お2方は?なぜここに囚われているのですか…?」
:07/12/27 14:05 :P903i :IeTfHkfs
#129 [◆vzApYZDoz6]
2人の女性が顔を見合わせる。少しの間沈黙し、話し出した。
女性A「私達は…人質としてここに捕まっています」
京介「人質…?」
女性B「私達の息子は強い力を持ったレンサーなんです。グラシアがそこに目を付けて…」
ラスダン「グラシアとは?」
女性A「グラシアはウォルサーの総司令官です。……グラシアは、従わなければ私達を殺す、と脅して息子を…ガリアスを働かせているんです」
京介とラスダンが顔を見合わせた。
京介「そんな非人道な事をやってんのかよ…」
ラスダン「じゃあ、もう1人の方は…」
?「おっと、そろそろ話はやめといた方がいいんじゃねぇか?」
ラスダンが振り向くと、人形と共に声の主が立っていた。
:07/12/27 14:43 :P903i :IeTfHkfs
#130 [◆vzApYZDoz6]
京介「またてめえか…!」
声の主はリッキーだった。リッキーが立つ狭い通路の後ろには、風船人形が無数に蠢いている。
リッキー「彼女らが解放されると少々面倒な事になるからな。その前に君達を倒してしまうぞ」
京介「……て事は、解放すればこっちに分がある、って事だな?」
ジリジリと詰め寄るリッキーに、京介が笑みを浮かべた。
リッキー「残念ながらそこまでじゃないな。第一、俺が阻止するんだからそんな事不可能だ」
京介「お前を倒してしまえばいいだけだ」
:07/12/27 23:05 :P903i :IeTfHkfs
#131 [◆vzApYZDoz6]
リッキーはやれやれ、という動作を見せたあと、人形に擬態化した。
リッキー「やるだけ無駄だろうけどね」
京介「いや、多分そうでもないけど」
髪は逆立ち、瞳は紅く、身体は赤く発光し辺りを包む。バウンサーでも見せたその姿は、まるで人を宿した鬼のよう。
京介「なんか知らんけど今の俺、絶好調なんだよな」
再び紅い鬼人と化した京介が薄く笑みを浮かべ、右手を開いて突き出した。京介を纏う赤い光が掌に集束される。
軈て撃ち出された紅球が、狭い通路をレーザーの如く駆け抜け、人形達を薙ぎ散らした。
:07/12/29 20:51 :P903i :Z.e5IRec
#132 [◆vzApYZDoz6]
散り散りになる人形の群れの中に、人形に擬態化したリッキーが目を見開き驚いた顔で立っていた。俯きながら独り言を呟いている。
リッキー「馬鹿な…!何故今その姿に…」
京介「どうでもいいけど余所見してていいのかよ?」
ハッとして顔を上げたリッキーの視界から京介が消える。次の瞬間に右脇腹に走った衝撃にリッキーの顔が歪む。
体をくの字に曲げ宙を舞い、鉄格子に激突した。
リッキー「ぐっ…貴様…!」
京介「今だ!」
リッキーの動きが止まった隙に、京介が鉄格子に掛けられた南京錠を壊した。
ガリアスが、母親ともう1の女性を牢から出した。
京介「2人を頼むぜ!」
ラスダン「よし…!」
ラスダンが2人を抱え、入口に走り出した。
:07/12/29 23:38 :P903i :Z.e5IRec
#133 [◆vzApYZDoz6]
ラスダンが最後にリッキーを一瞥し、その姿が小さくなっていく。
リッキーは女性を抱え走り去るラスダンを横目に、服に付いた埃と赤錆を払い拭った。
リッキー「始めからそのつもりだったか…まさか私を1人で倒そうとでも?」
京介「そのまさか。言ったろ?今の俺は絶好調だってな」
リッキー「…はははは!そうかそうか!」
何が可笑しかったのか、リッキーは突然腹を抱えて笑いだした。
:07/12/30 14:00 :P903i :crD5S7T2
#134 [◆vzApYZDoz6]
京介「…?なんだよ」
リッキー「いやー、すまんすまん」
笑いを堪えられないのか、リッキーは一頻り笑ってもまだクックッと含み笑いをしていた。
リッキー「そう言えば、君にはまだ見せていなかったな」
京介「はぁ?」
中腰気味の格好で笑っていたリッキーが背筋を伸ばして立ち、右腕を上げて指を鳴らす。
と同時に、京介に潰されていた人形の残骸が煙になり、リッキーに収束されていく。
リッキー「悪いが俺の真の力は、風船を操る事じゃないんだ」
:07/12/30 14:14 :P903i :crD5S7T2
#135 [我輩は匿名である]
『続き』って出てる事が多くて読みにくいかも
:07/12/30 16:33 :SH902iS :☆☆☆
#136 [◆vzApYZDoz6]
>>135最初の方とかだいぶありますよね…
途中から1レスの文を少なくしてみたんですが、そうするとどうしてもまとまりって言うか区切りが出来ないって言うか…締まりがないような感じにorz
とにかく『続き』って出ないようにしてみます
あっ、今から更新します
:07/12/30 22:27 :P903i :crD5S7T2
#137 [◆vzApYZDoz6]
てゆうかアドバイスありがとうございますm(__)m
:07/12/30 22:29 :P903i :crD5S7T2
#138 [◆vzApYZDoz6]
収束された煙がリッキーに吸収されていき、身体の回りに灰色の靄がまとわりついた。
リッキー「私のスキル『バルーンファイト』では、このガスを作って風船を出すんだが…ガスを使うと、私の力が落ちてしまうのさ」
軈て靄も消えていく。
リッキーは先程笑っていた時とはうって変わって冷やかな表情で京介を見詰めた。
京介「へー、よく分からんがつまり今のお前が本気のお前って事か」
リッキー「まぁそう言うことだ…さて」
:07/12/30 22:39 :P903i :crD5S7T2
#139 [◆vzApYZDoz6]
リッキーが構える。左手を開いて前に突き出し、右手を添えるように左手に重ねた。
京介もそれに倣い、拳を握り腰を落とした。
リッキーの体越しに見える入口への通路を走っていたラスダンの姿は、今は完全に消えている。
京介(ここで止まってる暇はない。行かないとな)
リッキー「何処を見ている?…お喋りは終わりだ」
京介「…ああ」
リッキーが踏み込む。
京介も向き直り、リッキーを迎え撃つべく踏み込んだ。
:07/12/31 13:32 :P903i :SihxquWw
#140 [◆vzApYZDoz6]
-ラスダンの足取り-
ガリアスがハルキンに言われるままにドアを見ると、そこには見慣れた女性が立っていた。
ガリアス「母さん…?」
母親「ガリアス!」
母親がガリアスに抱き付く。ガリアスは驚いて母親の顔を見た。
痩せており、力を入れると折れてしまいそうな華奢な体。だが、間違いなく自分の母親だった。
ガリアス「母さん…!」
ハルキンは2人の親子の再会を見て満足そうにほくそ笑み、2人の背中越しに入口を覗いた。
そこにラスダンの姿はない。
ハルキンの様子を見ていたラスカが心配そうに話し掛けた。
ラスカ「内藤達の方かしら?」
ハルキン「…まぁ、外に出ればあいつのスキルは使える。上手くやれるだろ。…お2人さん!」
:07/12/31 13:42 :P903i :SihxquWw
#141 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンが遠目からガリアス親子に話し掛ける。
ハルキン「俺達はもう行く。俺達がここに来たところに車が置いてある」
ハルキンは踵を返し、顔だけガリアスの方に向けた。
ハルキン「付いてくるかはお前の勝手だが…このまま此処に居ても危険だ、とだけ言っておこう」
:07/12/31 13:49 :P903i :SihxquWw
#142 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンが走り出す。ラスカもガリアスを一瞥し、ハルキンを小走りで追い掛けた。
ラスカ「人質取られてた事、どうして分かったの?」
ハルキン「ラスダンから『思念』を受けていた。まぁ…当初は俺らでなんとかするつもりだったから…どうなるかは本人次第だな」
ハルキンがチラッと後ろを見る。ガリアス親子の姿は無くなっていた。
無言で振り返り、走り続ける。
暫く経つと、連絡通路が見えてきた。
ハルキン「…さぁ、兎にも角にも突入だ」
2人は連絡通路を駆け抜け、聳える要塞の中に入っていった。
:07/12/31 14:02 :P903i :SihxquWw
#143 [◆vzApYZDoz6]
-突入・リーザとシーナの場合-
シーナ「……長い!!」
シーザ「いいから走りなさい」
リーザとシーナは剣袋を背負い倉庫内を走っていた。
倉庫内部は外見と同じく対になっており、ハルキンらが入った倉庫の左右対称になっているだけ。中央要塞までの道程も左右対称で同じだ。
ただ、内装が違っていた。ハルキン側の倉庫はコンテナや段ボール等が乱雑に置いてあったが、こちら側にはそれらの類いは殆ど見当たらない。
代わりに升形の仕切りが等間隔に並んでいる。その仕切りの端には梯子があり、仕切りの上を縫うように通る通路に繋がっているのが、下を走るリーザ達の目にも見てとれた。
:07/12/31 14:33 :P903i :SihxquWw
#144 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「多分ここは戦車格納庫ね。仕切りもなんか駐車場っぽいし…」
シーナ「何でもいいけどその仕切りのせいでこんな時間掛かってるんだから!」
シーナが不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、頬を膨らませる。
等間隔に並んだ仕切りは左右からせり出すように交互に並んでいるため、リーザ達もそれに沿って大きく蛇行しながら走るしかなかった。
シーナ「これじゃ敵に会う前に疲れちゃうわー…」
リーザ「ほらほら!文句言ってる暇があったら急ぎなさいな」
相変わらず機嫌の悪いシーナをリーザが宥めながら、蛇行して走り続ける。
軈て仕切りがなくなり、道が広くなった。前方には連絡通路が見えている。
:07/12/31 14:43 :P903i :SihxquWw
#145 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「あっ、あとちょっとじゃない!あれ要塞の入口よね?」
リーザ「そうね。…気を引き締めて行きましょうね。ここまでに何も無かったのは不自然……ッ!?」
連絡通路を走っていた2人の姿が掻き消え、宙に剣袋だけが浮く。
次の瞬間、攻撃を受け止めた剣の金属音と共にリーザとシーナが現れた。通路を挟んで左右に別れ、共に男の拳を止めている。
シーナ「ちょっと不意討ちなんて危ないわよ!」
リーザ「刺客、ですか…いいでしょう。お相手致します!」
:07/12/31 19:07 :P903i :SihxquWw
#146 [◆vzApYZDoz6]
シーナとリーザが剣を翻し拳を払い除ける。
ハル・ライン「不意討ちは致し方無い。俺達は平和主義者だからな」
ハル・レイン「刺客、か。本当はバイク野郎と再戦したかったんだが…外で暴れてるようで」
2人に払われたハル兄弟が一旦下がる。
双子の兄レインは双子の姉リーザと、双子の弟ラインは双子の妹シーナと、再び向き合った。
シーナ「ハル兄弟ね。ジェイトから話は聞いてるわ。確かスキルは『ツインキャンサー』―――」
リーザ「―――コンビ技が得意だそうですわね。離れたのは失敗じゃないですか?」
:07/12/31 20:07 :P903i :SihxquWw
#147 [◆vzApYZDoz6]
ライン「そいつは認識違いだな。『ツインキャンサー』の能力は合体攻撃に加えてもう1つ―――」
レイン「―――2人が半径20mの範囲で共闘している場合、総合的に身体能力が上昇する」
兄と姉、弟と妹が、別々に会話する。
―――――――――――
-ハル・ラインVSシーナ-
シーナ「へぇ…ま、タイマンなら望むところだしね!」
ライン「元気のいいお嬢さんだ。……では」
ハル・ラインが構える。
左手を突きだし掌を下へ。ジェイト兄弟と戦った時と同じ構えだが、今回は1人だ。
:07/12/31 20:26 :P903i :SihxquWw
#148 [◆vzApYZDoz6]
ハル・ラインが構えたのを見て、シーナも剣を構える。
シーナが持つのは乱れ波紋の日本刀。鞘を投げ捨て、先刻の不意討ちで既に鞘から抜かれていた刀の柄を握る。正眼の構えから右足を後ろに引き体軸を右に向け、柄の端を持つ左手を臍に当てる…武蔵野の構え。
シーナの戦闘準備が整ったのを確認し、ハル・ラインが口を開く。
ライン「双子柔術ツインキャンサー弟役=ハル・ライン…推参する」
シーナ「…なら私も。…柳生新陰流免許皆伝、双子の妹シーナ」
ハル・ラインが拳を握り身を屈め、重心を前に傾ける。
シーナもそれに倣いゆっくりと切っ先を下ろし右手を引き、重心を前に。
ライン「いざ!」
シーナ「仁恕に勝負よ!」
2人が同時に地を蹴り踏み込み、ぶつかり合う拳と刀から火花が散った。
:07/12/31 21:07 :P903i :SihxquWw
#149 [◆vzApYZDoz6]
5mはあろうかという距離は一瞬で詰まった。右拳と刀の撃ち込む力は互角で、互いに弾かれあう。
シーナ「せいっ!」
休む間も無くシーナが追撃。素早く体勢を立て直し、弾かれあい開いた距離を一足で詰める。
右拳を弾かれ、右膝を地に付いていたハル・ラインに、凄まじいスピードで袈裟斬り下ろしを繰り出した。
ライン「ふっ!」
ハル・ラインは振り下ろされる剣に左手を添え合わせて斬撃を逸らした。
シーナの手元で絞られて水平に止まった刀に添えた左手を乗せて押し、反動で右膝を起こす。更にそのまま身を浮かせての回し蹴り。
:08/01/01 02:17 :P903i :KRat.OYw
#150 [◆vzApYZDoz6]
回し蹴りをガードしようにも刀はハル・ラインに押さえ付けられ動かない。
袈裟懸けに全力で振り下ろし、手元で柄を絞ったために身を屈めるのも間に合わない。
シーナ(…やばっ!)
咄嗟に左腕で蹴りをブロックする。
しかし、ツインキャンサーにより身体能力が強化され、刀と互角の威力を誇るその蹴りは、シーナのか細い腕で止められるものではなかった。
シーナ「きゃっ!」
刀ごと横なりに吹っ飛び、右肩から地に激突する。
素早く身を起こすも、左腕が少し痺れているため刀を持つ手に感覚がない。
:08/01/01 02:34 :P903i :KRat.OYw
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