-Castaway-
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#151 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「くっ…!」
ライン「余所見はしないほうがいい。」
ハル・ラインが吹っ飛んだシーナとの一足で距離を詰め追撃する。
息をする暇も与えず次々と飛んでくる拳と蹴りを、シーナは捌き続けた。
素早く正確、且つ重い一撃が一分の隙もなく繰り出される。瞬きの間にもやられそうだ。
次第に柄を握る手が痺れてくる。
シーナ(左腕もまだ感覚が無いし…ちょっとキツいかなー)
何合撃ち合っただろうか。
飛んでくる四肢の嵐を捌ききれず、とうとうハル・ラインの拳がシーナの右頬を掠めた。
:08/01/01 02:47 :P903i :KRat.OYw
#152 [◆vzApYZDoz6]
シーナ(やばっ…!)
堪らずバックステップで距離をとる。が、ハル・ラインは見透かしていたかのようにシーナと平行してくっつき、その距離は離れない。
ライン「逃がしはしない!」
くっついた状態で撃たれた腹を狙っての右フックを、刀の横腹で受け止める。
しかし、左を狙ったフックとは別に右脇腹に衝撃が走り、シーナの体がくの字に曲がって宙を舞った。
シーナ「きゃあっ!!」
数m吹っ飛んで背中から地にぶつかった。
仰向けの状態からゆっくりと上半身を起こすが、嘔吐感と下腹部の圧迫痛で身動きができない。
:08/01/01 03:10 :P903i :KRat.OYw
#153 [◆vzApYZDoz6]
嘔吐が混じったような咳が出る。腹筋が圧迫された感じがして息がしづらい。
シーナ「ごほっ!…ふふ、今の…あなた元ボクサーか何か…?」
ライン「元ボクサーではないが言わんとする事は正解だ。……つまり、お嬢さんの肝臓をぶち抜いた」
右フックはフェイント。
本命のリバーブローを食らって動けなかったシーナだが、刀をついて漸く立ち上がった。
シーナ「リバーブローね…でも、今のうちに止めを刺しちゃえばよかったのに」
:08/01/01 03:24 :P903i :KRat.OYw
#154 [◆vzApYZDoz6]
ハル・ラインが左腕を突きだし、再び構える。
表情は少し曇っていた。
ライン「女性をいたぶる趣味はないさ」
シーナ「あら、余裕ねー。じゃ…ちょっとご好意に甘えようかな」
シーナも刀を握り直し、武蔵野構え。
再び向き合い、2人の視線が重なる。
ライン「でもな、お嬢さん―――」
言いかけの言葉を残し、ハル・ラインの姿が忽然と掻き消えた。
:08/01/01 03:38 :P903i :KRat.OYw
#155 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「なっ…!?」
油断していた訳ではない。本当に一瞬で、その姿を見失った。
幻でも見たのか、という愚かな考えがシーナの頭を過った、その時。
ライン「―――少し、俺を嘗めすぎだ」
背後からの手刀が、シーナの胸を貫いた。
:08/01/01 03:48 :P903i :KRat.OYw
#156 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「あ…かっ…」
声が出ない。自分の胸に視線を向けると、ちょうど鳩尾のあたりから、自分のものではない手が突き出ていた。
シーナ「こんな……」
ライン「悪いな、お嬢さん」
ハル・ラインが手を引き抜き、シーナが力なく膝をつく。ゆっくりと倒れていく自分の体を、シーナはまるで他人の事のように感じていた。
自分が地に臥している事がはっきり分かったのはいつだろうか。気が付くとシーナの体は、血の海に俯せに横たわっていた。
ライン「心臓を貫いた。……ま、それなりに楽しめたよ、お嬢さん」
:08/01/01 13:09 :P903i :KRat.OYw
#157 [◆vzApYZDoz6]
シーナ(やられちゃった…かな。…向こうの戦いの音はちょっと前に止んじゃったし…きっとお姉ちゃんが勝ったんだよね)
ハル・ラインは心臓を貫いた、と言っていたが、シーナの脳は冷静に働いた。
頭に浮かぶのは自分の体の事ではなく、姉の事。
姉は自分よりも数段は強かったんだから、負ける筈がない。敵も相当に強いから、姉もそれなりの怪我を負ってるだろう。
そんな考えが頭に浮かぶ。
シーナは敵に殆どダメージを与えられなかった自分に憤り、同時に、踵を返し相棒の元へ向かうハル・ラインを止めなければ、と考えた。
:08/01/01 13:21 :P903i :KRat.OYw
#158 [◆vzApYZDoz6]
ハル・ラインは踵を返し相棒の元へ歩を進める。
1歩目を踏み出した時に、後ろで何かが動く気配。
まだ生きていたか。しかし何もできまい。
そう考えて2歩目を踏み出す。今度は刀が地をつき鳴いた音。
馬鹿な…まだ足掻く力が?いや、確実に心臓を貫いた筈だ。
余計な考えを振り払い、ゆっくりと前に出した3歩目。
突如として凄まじい気配が周囲をの空間包む。空気が痺れる程の殺気が、明らかに後ろから、自分に向けられている。
とうとう堪らなくなり振り返ると、シーナが立っていた。
シーナ「あなたを倒せば…お姉ちゃんは先に進む」
:08/01/01 13:47 :P903i :KRat.OYw
#159 [◆vzApYZDoz6]
シーナの胸には確かに穴が空いている。が、その穴はどんどん小さくなっていた。
心臓とその周囲の筋肉、肋骨、更には手刀が掠めて穴が空いた肺までもが、凄まじいスピードで再生している。
目に見える程の早さで分裂を繰り返す細胞は、音を立てて形を成していき、瞬く間に負傷した全ての臓器、筋肉、骨が繋がった。
さらに表皮がどんどん縫い止められ、ついには胸の穴が完治する。
シーナ「紹介が忘れていたわね…私のスキルは『ライフケール』、怪我を修復出来るの」
ライン「馬鹿な!その再生力は…本当にスキルか!?」
:08/01/01 14:04 :P903i :KRat.OYw
#160 [◆vzApYZDoz6]
右手に握られた刀の鋒が血の海に沈む。己が主人の血を吸い上げ、その刀身を真紅に染める。
さらに血を吸い続ける刀の鍔から血が蒸気となって吹き出し、赤い靄が主人の体に纏わりついた。
シーナ「そうね…こんな再生力もこの赤い靄も刀も『ライフケール』には無いわ。私は…人間じゃないのかも」
ライン「人間じゃない、か。…ならばこちらも容赦はしないぞ、お嬢さん」
:08/01/01 14:58 :P903i :KRat.OYw
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