-Castaway-
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#123 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて…まだ続くぞ。そうしてブラックホールを飛び出した粒子は、熱放射で光って見える。これをホーキング輻射と言う」
ガリアスは、視認できない程小さなブラックホールに、物が飛び込んでいくのを見続ける中で、一瞬だけブラックホールが光った気がした。
ハルキン「この輻射によってエネルギー、つまり質量を失うと、取り込んだ質量によって拡大するブラックホールは質量を失う事になる」
やがてブラックホールの光はどんどん増えていき、まるで星が輝いているかのように目映く煌めく。
:07/12/25 14:01 :P903i :NYrpWQ/k
#124 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「質量が減ればこの輻射はさらに強く働き、輻射は強度を増す」
ブラックホールの光はどんどん膨れ上がり、今にもはち切れそうに小刻みに震えだした。
ハルキン「そうなると加速度的に質量とエネルギーを失っていき、最終的には…爆発的にエネルギーを消費し消滅する。―――」
ブラックホールは、目が眩むほどの光と耳鳴りが鳴るほどの爆音を放ち…
ハルキン「―――ゲスの最後にはお似合いだろ」
…ハルキンが軽蔑の視線を向ける中、花火のように散っていった。
:07/12/25 14:18 :P903i :NYrpWQ/k
#125 [◆vzApYZDoz6]
爆音が止み、光が消え、静寂が戻ってくる。ラスカが自分の周囲と建造物に張っていた結界を解いた。
ハルキン「じゃ、先を急ぐか」
ガリアス「ちょっと待てよ」
ガリアスが走り出そうとしていたハルキンとラスカに後ろから声をかけた。
ガリアス「なぜ俺は生かされたんだ?納得がいかねぇな」
ハルキン「お前は既に敵じゃない」
ガリアス「……でも、俺は戦わないと駄目なんだ」
ガリアスが構えを取る。ハルキンはゆっくりと溜め息をつき、顎で入口を差した。
ハルキン「見てみろよ」
ガリアスが入口を見ると、そこには人が立っていた。
ガリアス「……母さん…?」
:07/12/26 11:33 :P903i :iPwdxIVQ
#126 [◆vzApYZDoz6]
-要塞内部・京介とラスダンの場合-
ハルキンがウィニーと対峙していた頃、京介とラスダンは地下牢にいた。2人が入った扉は、入ってすぐに地下に下りる階段があったからだ。
京介「何でこんなところに牢屋が有るんだろ」
ラスダン「捕まってる人は…いないみたいだけど」
2人はゆっくりと歩いていた。
辺りは1階よりもさらに薄暗く、横幅3mぐらいの狭い通路の天井に、5mおきぐらいに小さな電球があるだけ。
両脇には鉄格子が延々と真っ直ぐ続いており、だいたい3m間隔で壁に仕切られている。広さからして1つの牢に1人だけのようだが、辺りが暗いので牢の奥の方が視認できない。
:07/12/26 11:54 :P903i :iPwdxIVQ
#127 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「うーん、もしかしたらここに藍ちゃんが捕まってるんじゃ…とか思ったけど」
京介「違うみたいだな。…誰もいないし、戻った方がいいんじゃね?」
2人が歩みを止める。
確かにそこは埃が積もってるし、鉄格子は赤錆だらけ。長い間使われていない感じがした。
ラスダン「そうだね…戻ろうか」
元来た道を戻ろうと2人が踵を返した時、背後から小さな声がした。
?「…そこに、誰かいるの…?」
京介とラスダンが同時に振り返る。
通路に人は居なかった。となると、声の主がいる場所は1つしかない。
京介「…今の、牢屋からだよな?」
2人は顔を見合わせ、牢に人がいないか確認しながら声の元へ向かった。
:07/12/26 12:10 :P903i :iPwdxIVQ
#128 [◆vzApYZDoz6]
京介「あっ、人がいる!」
2人が両脇の牢を一つ一つ確認していく中で京介が声を上げた。ラスダンが京介側の牢を見ると、確かに人が2人いる。
どちらも中年ぐらいの女性。精神的な疲労からだろうか、弱っている感じは無いが少し痩せていた。
囚われの女性が京介とラスダンを確認し口を開く。
女性「あなた方は…?」
京介「俺は京介って言うんだ」
ラスダン「僕はラスダンと言います。ここに囚われている仲間を助けに来ました。…お2方は?なぜここに囚われているのですか…?」
:07/12/27 14:05 :P903i :IeTfHkfs
#129 [◆vzApYZDoz6]
2人の女性が顔を見合わせる。少しの間沈黙し、話し出した。
女性A「私達は…人質としてここに捕まっています」
京介「人質…?」
女性B「私達の息子は強い力を持ったレンサーなんです。グラシアがそこに目を付けて…」
ラスダン「グラシアとは?」
女性A「グラシアはウォルサーの総司令官です。……グラシアは、従わなければ私達を殺す、と脅して息子を…ガリアスを働かせているんです」
京介とラスダンが顔を見合わせた。
京介「そんな非人道な事をやってんのかよ…」
ラスダン「じゃあ、もう1人の方は…」
?「おっと、そろそろ話はやめといた方がいいんじゃねぇか?」
ラスダンが振り向くと、人形と共に声の主が立っていた。
:07/12/27 14:43 :P903i :IeTfHkfs
#130 [◆vzApYZDoz6]
京介「またてめえか…!」
声の主はリッキーだった。リッキーが立つ狭い通路の後ろには、風船人形が無数に蠢いている。
リッキー「彼女らが解放されると少々面倒な事になるからな。その前に君達を倒してしまうぞ」
京介「……て事は、解放すればこっちに分がある、って事だな?」
ジリジリと詰め寄るリッキーに、京介が笑みを浮かべた。
リッキー「残念ながらそこまでじゃないな。第一、俺が阻止するんだからそんな事不可能だ」
京介「お前を倒してしまえばいいだけだ」
:07/12/27 23:05 :P903i :IeTfHkfs
#131 [◆vzApYZDoz6]
リッキーはやれやれ、という動作を見せたあと、人形に擬態化した。
リッキー「やるだけ無駄だろうけどね」
京介「いや、多分そうでもないけど」
髪は逆立ち、瞳は紅く、身体は赤く発光し辺りを包む。バウンサーでも見せたその姿は、まるで人を宿した鬼のよう。
京介「なんか知らんけど今の俺、絶好調なんだよな」
再び紅い鬼人と化した京介が薄く笑みを浮かべ、右手を開いて突き出した。京介を纏う赤い光が掌に集束される。
軈て撃ち出された紅球が、狭い通路をレーザーの如く駆け抜け、人形達を薙ぎ散らした。
:07/12/29 20:51 :P903i :Z.e5IRec
#132 [◆vzApYZDoz6]
散り散りになる人形の群れの中に、人形に擬態化したリッキーが目を見開き驚いた顔で立っていた。俯きながら独り言を呟いている。
リッキー「馬鹿な…!何故今その姿に…」
京介「どうでもいいけど余所見してていいのかよ?」
ハッとして顔を上げたリッキーの視界から京介が消える。次の瞬間に右脇腹に走った衝撃にリッキーの顔が歪む。
体をくの字に曲げ宙を舞い、鉄格子に激突した。
リッキー「ぐっ…貴様…!」
京介「今だ!」
リッキーの動きが止まった隙に、京介が鉄格子に掛けられた南京錠を壊した。
ガリアスが、母親ともう1の女性を牢から出した。
京介「2人を頼むぜ!」
ラスダン「よし…!」
ラスダンが2人を抱え、入口に走り出した。
:07/12/29 23:38 :P903i :Z.e5IRec
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