-Castaway-
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#229 [◆vzApYZDoz6]
グラシアのスキルは『アナザーコンプリート』。人、又はスキルを支配する事ができる。
人の場合は本人の意思に関係なく、グラシアの意思に沿って動かす事ができる、洗脳のようなもの。ただし、これは悪意のない人間を支配する事はできない。
スキルの場合は、レンサーの持つスキルを支配し、使用する事ができる。元々の所持者は、支配されている間はスキルを使えなくなる。これはスキルの『使用権』がグラシアに移るだけで、スキルを所持するレンサーが死ぬ・気絶するなどしてスキル発動不能状態になると、グラシアもスキルを使えなくなる。
支配できる人間やスキルに制限は無いが、2つの支配を同時に1人に使うことはできない。

⏰:08/01/07 18:03 📱:P903i 🆔:lqpkon9E


#230 [◆vzApYZDoz6]
グラシアは、このスキルを使い戦力を増やしていた。
人体支配が及ぶ人間は支配し、支配は出来ないが有能な者は人質を使い、配下にした。

そして、クルサは人体支配を受けた、パンデモ一族の人間だった。
クルサは1人パンデモを出て旅をしている最中、グラシアに支配を受けた。

クルサのスキルを知ったグラシアは、ライフアンドデスを支配しようと試みた。
しかし、クルサは既に人体支配されているので、スキル支配を使うことはできなかった。
そこで、パンデモ一族の人間を捕え、スキルを支配しようと、パンデモを知るクルサを連れてパンデモに出向いたのだった。

⏰:08/01/07 18:12 📱:P903i 🆔:lqpkon9E


#231 [◆vzApYZDoz6]
クルサ「始めてもよろしいですか」

会話の時も、クルサは表情1つ変えない。
最早、パンデモの事は知識以外、両親や仲の良かったバニッシ・アリサとの思い出や感情も、全て忘れてしまったようだった。
支配されたのは、1人旅で訪れた先々の影響で、ほんの僅かな悪い心ができたからだろうか。

グラシア「ああ。始めろ」
クルサ「では…」

クルサが膝をつき、両手を重ねて前に突きだす。
手が翳された空間が歪み、黒くなっていく。

⏰:08/01/07 18:34 📱:P903i 🆔:lqpkon9E


#232 [◆vzApYZDoz6]
クルサのライフアンドデスで所持しているスキルの1つだろうか。
軈て地面も同様に一部分が黒くなる。黒くなった部分は円を形成していき、地面の黒と繋がり円柱のような形になった。

クルサ「ドリフターポート、ターゲット、イルリナ―――」

クルサが呟くと、黒い円柱がその場で高速回転しだした。回転速度で土埃が舞い上がる。

クルサ「―――ポートアボート!」

瞬間、黒い円柱が煙を巻いて消え去る。
消え去った跡には、女性が立っていた。

⏰:08/01/08 00:41 📱:P903i 🆔:DkUPgSHo


#233 [◆vzApYZDoz6]
祭りがあったからだろうか、少し豪華な格好をするその女性は、驚いた様子で辺りを見回す。
整った顔立ちに、長い黒髪を複雑に束ね、金の簪と金の櫛で止めている。茶色い胴着のような服に赤い単を纏うその姿は、とても綺麗だ。

(イルリナ。アリサの母親です)

グラシア「初めまして、イルリナさん」
イルリナ「ここは…修練場?なぜ急にこんなところに…それに貴方達は…」

イルリナは言いかけて、知ってる人物がそこに居ることに気が付いた。

⏰:08/01/08 00:55 📱:P903i 🆔:DkUPgSHo


#234 [◆vzApYZDoz6]
イルリナ「あなたっ…何でクルサちゃんがここに居るの?つい1か月くらい前にスキル収得の旅に出たはずじゃない!」

イルリナが口調を強めてクルサに迫る。
クルサは俯いたまま表情を変えず、視線も合わせず、口も開かない。イルリナはそれを見て不信に思ったのか、後ろでほくそ笑むグラシアを睨んだ。

イルリナ「あなたが…何かしたのね?私をここに喚び出したのは何のためかしら」

イルリナが半歩下がり、構えようとする。
だが、それを遮ったのはクルサだった。

⏰:08/01/08 01:07 📱:P903i 🆔:DkUPgSHo


#235 [◆vzApYZDoz6]
クルサは下がろうとするイルリナに素早く足を掛け、後ろに回り、握られる拳をイルリナの背中で抑えた。
その力は強く、イルリナが振りほどこうとするも、後ろのクルサは全く微動だにしない。

イルリナ「ちょっとっ…どうしたのよクルサちゃんっ…!」
グラシア「彼は俺が『支配』したのさ」

イルリナはゆっくりと近付いてくるグラシアを、敵意を込めて睨み付けた。

イルリナ「なんてことを…!」
グラシア「おっと、動くなよ。女性相手に悪いが、失礼する」

グラシアはそう言うと、イルリナの胸元に手を置いた。

⏰:08/01/08 01:19 📱:P903i 🆔:DkUPgSHo


#236 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの手が一瞬青く光った。

グラシア「失礼した。…もういいぞクルサ」

クルサが押さえ付けていた手を離す。急に離されたためイルリナが躓くようによろめいた。
イルリナが1歩下がり、自分の胸元に手を当てる。体は、特に何もおかしな所はない。意識もはっきりしているから、支配されたという訳でもなさそうだ。

イルリナ「…今私に何をしたの?」
グラシア「その質問は後で答えよう。とりあえず、俺達と一緒に帰ってもらおう」

クルサが今度は立ったまま手を重ね、イルリナに向ける。

グラシア「別に抵抗してもらっても構わない。どうせ無駄だがな」

⏰:08/01/08 20:57 📱:P903i 🆔:DkUPgSHo


#237 [◆vzApYZDoz6]
イルリナ「…ふざけてるの?ここから逃げるぐらいなら……っ?」

イルリナが何かしようとして動きを止めた。
ライフアンドデスによって所持しているスキルが、使えない。使えば逃げる事ができるスキルが、発動しない。
それならば、と攻撃用のスキルを試みるが、やはり発動しない。
イルリナは驚愕と憔悴の入り交じった表情で、視線を落として困惑した。

イルリナ「スキルが…なんで…」
クルサ「ドリフターポート、パーティネガション」

気が付くと、イルリナ・グラシア・クルサが立つ地面と頭上に、黒い円ができている。

⏰:08/01/09 01:17 📱:P903i 🆔:BlcCJlsg


#238 [◆vzApYZDoz6]
イルリナがバックステップで黒い円から逃れようとする。
が、今度は体が動かない。視線だけを上げると、グラシアが嘸可笑しいといったように顔を歪めて歯を見せていた。

グラシア「やはり無駄だったな」

イルリナは何かを喋ろうとしたが、もう声も出せなかった。
地面と頭上の黒円が繋がり、3人を黒い円柱が包む。

グラシア「なーに、殺しはしないさ。今はな…」
クルサ「―――ポートアボート!」

グラシアの笑いを残し、円柱が3人と共に煙を上げて消え失せた。

⏰:08/01/09 01:26 📱:P903i 🆔:BlcCJlsg


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