-Castaway-
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#252 [◆vzApYZDoz6]
円柱が割れて、中から人が出てきた。バニッシは片方の人間の気配を知っていた。
以前、アリサと修練場の奥へ行ったときに感じた気配の主。オールバックがかなり威圧感を出していた。
バニッシは完全に警戒心を顕にし、1歩下がる。もう1人に視線を向け、驚いたように声を上げた。

バニッシ「クルサ!?お前は確か、収得に出ていたんじゃ?」

クルサとは1年前にパンデモを出るまで、アリサと3人でよくつるんでいた。
仲が良かった2人が、今は恐らくは敵であろう側にいる。

アリサ「彼もあたしと同じよ♪」
バニッシ「何故だ?何故、世界征服を企んでるような奴と一緒に居るんだ?」

⏰:08/01/12 23:04 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#253 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「おい、話は手短にしろ。本来なら直ぐに発っていたんだぞ」

オールバックの男、グラシアが会話に割って入った。

アリサ「あら、ごめんなさい♪」

グラシアとクルサの方へ歩いていくアリサが、途中で振り返った。

アリサ「…そうそう、今日バニッシちゃんを呼び出したのは、お別れを言うためなの♪」
バニッシ「…パンデモを、出るのか」
アリサ「色々楽しかったわ♪今までありがとね♪」
バニッシ「目を覚ませ…行かせないぞ」

バニッシがアリサに近付く。
それを止めたのはクルサだった。

⏰:08/01/12 23:18 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#254 [◆vzApYZDoz6]
アリサとの間に割って入ったクルサを、バニッシが睨んだ。

バニッシ「クルサ、お前も…」
グラシア「やって構わんぞ」

グラシアがバニッシの言葉を遮る。それとほぼ同時に、クルサが拳を撃ち出した。
バニッシは顔を後ろに反らせ、そのまま1歩下がる。拳はバニッシの頬を掠めた。

バニッシ「昔馴染みとはやり合いたくはないが…」

バニッシが頬を擦りながら呟く。既にグラシアの横に立っているアリサに一瞬目をやった。
俯いて黙っているアリサを見て、拳を握り構えて腰を落とす。

バニッシ「…仕方無いな」

ガールフレンドと親友の目を覚ますため、バニッシが踏み込んだ。

⏰:08/01/12 23:39 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#255 [◆vzApYZDoz6]
バニッシはクルサに勝てる自信があった。昔は何度も手合わせし、毎回勝っていたからだ。
クルサを全力で叩き伏せ、グラシアからアリサを奪い返す。そのあとクルサに謝れば、それで終わりだ。

バニッシ「悪いけど…我慢しろ!」

バニッシは全力で拳を撃ち出した。
しかし、その拳はクルサの掌にいとも容易く止められた。

バニッシ「なっ…」
クルサ「ドリームカットアウト、発動」

クルサが拳を払いのけ、手を前に出す。すると、青い袋が出現した。

⏰:08/01/13 00:03 📱:P903i 🆔:Tp9acfJI


#256 [◆vzApYZDoz6]
青い袋の封が独りでに開き、口を下に向け、袋の中のものが地面に落ちる。袋から出てきたのは、無数の紙吹雪。
バニッシは山のように積まれた紙吹雪を警戒し、バックステップで距離を取る。

クルサ「カットアウト、群れる隼―――」

クルサが呟くと、紙吹雪がもそもそと動き出す。地面を伝うように動き、何かの形を成していく。
軈て地面に、紙で描かれた無数の鳥が出来上がった。

クルサ「―――ドリームアウト!」

無数の鳥が地面から剥がれるように飛び出す。先ほどまで2次元だったそれは立体の紙鳥となり、全てがバニッシに襲い掛かった。

⏰:08/01/13 00:51 📱:P903i 🆔:Tp9acfJI


#257 [◆vzApYZDoz6]
バニッシが迫る紙鳥をギリギリまで引き付け、後ろに跳ぶ。
紙鳥は地面に次々とぶつかり紙吹雪に戻ったが、半瞬も経たずに再び形を成し、隼の大群に戻った。今度はバニッシの四方を囲むように紙の嘴を向けた。

バニッシ「なかなか猪口才なスキルだな?」

バニッシが周りの紙隼を横目で一瞥しながら、面倒臭そうにクルサを見る。
クルサは相変わらず無言で無表情のまま。バニッシは一瞬腰を落とす。

バニッシ「そんなんで、俺に勝てると思ってるのか?」

足下を抉り、爆発的に駆け出した。

⏰:08/01/14 21:15 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#258 [◆vzApYZDoz6]
クルサとの距離は約10m。それをバニッシは一瞬で2mにまで詰め寄った。
駆け出したバニッシに平行するように紙隼の群が追うが、バニッシのスピードには追い付けない。紙隼を振り切り、クルサ目掛けて拳を振りかぶった。

クルサ「紙潜龍―――」

バニッシの視界から一瞬クルサが消えた。
次の瞬間に打ち出されたバニッシの拳は、しゃがんだクルサの頭上を通過する。
クルサの足下に置かれている青い袋の口は、バニッシに向いていた。

クルサ「―――カットアウト」

しゃがんで俯いたまま呟くクルサの前で、紙の龍がバニッシを飲み込んだ。

⏰:08/01/14 21:34 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#259 [◆vzApYZDoz6]
龍が空高くまで昇り、急降下した。
滝坪にいるかのような音をたてながら、まるで壷に吸い込まれるかのように袋に戻っていく。
龍の尻尾まで全て入りきった袋の上に、バニッシが仰向けに横たわっていた。

バニッシ「ぐっ…」
グラシア「おいおい、やられてるじゃないか。さっきの台詞はどうした?」

バニッシが顔を上げる。意地悪く顔を歪めるグラシアの隣のアリサと目があった。
アリサは反射的に目を逸らす。表情は明らかに曇っていた。
目の前にいるクルサは全く表情を変えず、地面の一点だけを見つめていた。

⏰:08/01/14 21:59 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#260 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは目を細めて溜め息をついた。
イルリナが行方不明になったのは、グラシアの仕業だろう。
アリサはグラシアに脅されてるに違いない。あんな奴に好き好んで付いていくなんてあり得ない。
クルサは何らかの方法で、グラシアに操られてるのだろう。
バニッシが拳を握り締め、ゆっくりと立ち上がった。

バニッシ「あんなアホ笑いする奴にいいようにされちゃ、たまんねぇだろ」

俯いて笑っていたグラシアが突然笑いをやめて、顔を上げる。

⏰:08/01/14 22:35 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


#261 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「聞こえたぞ?なんならこの場で2人を殺してやっても…」
バニッシ「黙ってろアホ」

グラシアが言い終わる前に、バニッシが足下の青い袋を蹴り上げた。袋はグラシアの顔に被さる。
ずり落ちていく袋の下で、グラシアが眉間に皺を寄せて目を細めながら、唇の端を持ち上げた。

グラシア「…人を馬鹿にするのが好きみたいだな」
バニッシ「馬鹿にしてるんじゃない、アホにしてるんだよ」

バニッシは歯を見せて笑った。
表情だけ見ると、どうと言うことはなさそうだが、龍にやられた痛みからか腕を押さえている。
グラシアはそんなバニッシを一瞥して、呆れたような顔をした。

⏰:08/01/14 22:46 📱:P903i 🆔:F4Lh8w3U


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