-Castaway-
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#293 [◆vzApYZDoz6]
兄「誰だあれ?」

人影は左側の倉庫からこちらへ走ってきている。
見たところ、1人ではなく、誰かを背負っているようだ。

弟「誰かが怪我でもしたかな?」

弟も気付き身を乗り出す。
軈て車まで走ってきたその人物は、負傷した味方ではなかった。

兄「おっと、ガリアスじゃねぇか」
弟「『思念』で話は聞いてるけど、人質取られてたんだって?」

やって来たのは、自分の母親を背負っているガリアスだ。

ガリアス「……ああ、母さんが監禁されてたんだ」

息を切らしながら、母親を背中から下ろす。
そのまま車のドアを開けて、母親を車内に入らせた。

⏰:08/01/19 05:55 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#294 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「車、使わせてもらうぜ?」
兄「ああ、使え」

ガリアスが返答を確認してから、車のドアを閉めた。
そのままジェイト兄弟と向き合った。

ガリアス「なぁ、ずっとここにいるのか?」
兄「今のところはな」
ガリアス「なら、母さんを護っていてくれ」

ガリアスが言いながら踵を返す。

弟「お前は?」
ガリアス「もう一度要塞へ行く。グラシアを殴らないと気が済まない」

ガリアスが目を細くして要塞を眺める。
中央に聳え立つ要塞。その右側にある倉庫から、人影が近付いてきているのが見えた。

ガリアス「あれは誰だ?」

⏰:08/01/19 06:04 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#295 [◆vzApYZDoz6]
兄「ん?どいつだ?」

ジェイト兄弟がガリアスの指先を追う。
その人影も、後ろに誰かを背負っている。まだ遠くて顔はよく分からないが、剣袋には見覚えがあった。
軈て負傷した仲間が車まで走ってきた。

兄「リーザ!シーナは何かあったか?」
リーザ「ええ、ちょっと敵との戦闘で」

リーザが息を切らしながら車を開けると、中にいたガリアスの母親が視界に入った。

リーザ「…後ろ、失礼しますね」

リーザが軽く会釈をし、後部座席にシーナを寝かせてドアを閉める。
そのままジェイト兄弟に向き合った。

⏰:08/01/19 06:12 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#296 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「私はもう一度要塞へ向かいます。私に代わって、シーナを預かってもらえませんか?」

リーザが要塞を横目に訊いた。

弟「あれ…これなんてデジャヴ?」
リーザ「どうしました?」
弟「あ、いや何でもないよ。シーナちゃんは護っとくよ」
兄「ところで2人共走ってきたばっかなのに大丈夫か?なんなら俺が送っていくぜ?」

兄が、要塞を見据えるガリアスとリーザに訊いた。
2人共、返答は同じ。

ガリアス「いや、いい。『ヴィエロシティー』を使えばすぐ行けるし」
リーザ「私も大丈夫です。それに、それでは2人を護る人がいなくなりますわ」
?「護る人がいればいいんじゃない?」

⏰:08/01/19 06:23 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#297 [◆vzApYZDoz6]
突然の何者かの声に、全員が振り返る。
トンネルの入口に、1人の男が立っていた。

兄「バンじゃねぇか!どうしてここが?」

兄が車に近付いてくる男に訊いた。

(バン。内藤の弟です)

バン「そろそろ最後の戦いになるらしいから、って兄ちゃんに言われて。助太刀に来たよ!」

バンが車のドアの前に回り、腕を組んで仁王立ちした。

バン「ここは俺が護っとくから、ジェイトさん達も行ってきなよ」
兄「…悪いな!さぁ、2人共そうゆう事だ、乗りな」

兄が笑って2人を見る。
ガリアスが兄の後ろ、リーザが弟の後ろに座った。

⏰:08/01/19 06:30 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#298 [◆vzApYZDoz6]
リーザは後ろを振り返って、心配そうに訊いた。

リーザ「彼に任せて大丈夫なんでしょうか」
弟「多分、今の俺や兄ちゃんよりかは強いよ。大丈夫さ」

弟が後ろを振り返る横で、兄がスロットルを回す。弟もそれに倣った。
雪山にエンジン音が響く。マフラーの排気熱で、足下の雪が水に変わっていく。

ガリアス「てゆうか俺は別に1人でも大丈夫なんだけど…」
兄「何言ってんだよ、俺達も行こうってのに。ノリ悪いな」
ガリアス「つうか俺のスキル使った方が…」
弟「何でもいいから早く行こう!」

ガリアスはまだ愚痴っていたが、弟の声を合図にバイクが駆け出した。

⏰:08/01/19 12:36 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#299 [◆vzApYZDoz6]
2台のバイクが雪煙を撒き散らしながら、基地を縦断していく。
兄弟が胸元から何かを取り出しながら、後ろに乗る2人に話し掛けた。

兄「今の俺達は屋外では戦えないから、要塞のすぐ側で待機しておく!」
弟「何かあったらこれで知らせて!」

風のせいで大声になりながら、後ろ手で取り出したものを渡す。
兄弟が渡したものは、小型の無線機だった。ガリアスとリーザがそれぞれ受け取り、懐にしまい込んだ。
それを確認した兄弟が尚スピードを上げて、要塞に向けひた走る。
ジェイト兄弟の視界の中で徐々に大きくなっていく要塞を見据え、突破口となる場所を探した。

⏰:08/01/19 12:49 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#300 [◆vzApYZDoz6]
一番最初に目に入ったのは、要塞の正面中央にある大きなシャッター。
恐らくは大型戦車等が出撃するためのものだろうが、安易に正面から侵入するのは避けたい。
シャッターの隣に自動ドアのような入口を見付けたが、これもまた正面玄関らしい雰囲気。中に何があるかは分からない状況で、正面突破はやはり無理があった。
ジェイト兄弟がそんな思案をしている内にも、バイクは刻一刻と要塞に近付いていく。
兄が焦燥感で眉間に皺を寄せた時、弟が要塞を指差して言った。

弟「ねぇ!あの窓からは入れないかな!?」
兄「窓!?」

⏰:08/01/19 18:40 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#301 [◆vzApYZDoz6]
弟が指差した方を向く。
要塞の端に、確かに窓がある。窓があるのは2階あたりで、左右にある倉庫との連絡通路のそばにそれぞれ大きな窓が、ポツンとあった。
このまま行けば、ジャンプして後ろに乗る2人に窓を突き破らせる事は可能だろう。だが、ここは要塞だ。

兄「ああゆうのって、防弾ガラスになってるんじゃねぇのか!?」
ガリアス「大丈夫だ!」

後ろで状況を把握していたガリアスが、大声で口を挟んだ。

ガリアス「あそこは防弾にはなっていない筈だ!」
兄「よーし、それなら大丈夫だな!」

兄弟が目配せし、併走していた状態から左右に離れる。

⏰:08/01/19 18:54 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#302 [◆vzApYZDoz6]
更にスロットルを回して、窓を目指しスピードを上げた。

兄「2人とも、俺の合図で跳べよ!!」
ガリアス「よし!!」
リーザ「分かりましたわ!!」
兄「ミスんなよフラット!!」
弟「任せろ!!」

要塞との距離がどんどん縮まる。リーザは剣袋から刀を取り出した。
兄がブレーキに手をかけ、叫ぶ。

兄「行くぞ!1、2の―――3!!」

合図と同時に、兄弟が全力でブレーキを引いた。
跳び出したガリアスとリーザはその反動で宙を舞う。ガリアスは拳で、リーザは鞘に入ったままの刀で、窓に向かって一撃を叩き付けた。

⏰:08/01/19 19:10 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


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