-Castaway-
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#373 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「ふふっ、少し可哀想な事をしてしまいましたね」
ライン「いや、俺達をタダ働きさせた罰だぜ」
レイン「全くだ。これがオヤジなら今頃コブラツイスト掛けられてるな」
談笑しながらも、ハル兄弟の顔はどこか浮いていなかった。
ハル兄弟のハートブレイク・ショットは壮絶な親子喧嘩の末に編み出された技。だが相手が父親なら踏み込んだ時点でハル・レインは跳ぶ前に撃墜され、ハル・ラインは懐に入る前に蹴り飛ばされていただろう。
無論、ハル兄弟も父親も本気で戦った事など無い。
父親へだけの技だったハートブレイク・ショットを本気で使ったのが、少し悲しかった。
:08/01/28 22:35
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#374 [◆vzApYZDoz6]
レイン「さーて、とっとと帰るか」
ライン「先にお袋迎えに行かないとな」
リーザ「あっ、私も藍さんを助けないと」
リーザが慌ててグラシアの元へ駆けていく。それを見ながらハル・レインが伸びをして、階段の元へ踵を返した。
そこへちょうど、息を切らしながら京介達が降りてきた。
こいつらより先にグラシアを倒したのは不味かったかな、等と考えていたハル・レインの視界に写っていたのは、予想外に険しい顔をしている京介や内藤の姿。
どうしたのかと思い話し掛けようとすると、内藤が不意に叫んだ。
内藤「リーザ!!」
:08/01/28 22:58
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#375 [◆vzApYZDoz6]
内藤の叫び声とほぼ同時に、何かが潰れるような鈍い音が背後から響いた。
ハル・レインが驚いて振り返る。グラシアを倒したと思い、気を抜いて藍を引っ張り出そうとしていたリーザが、赤く膨れ上がった巨大な右手に捕まれていた。
脳を破壊され死んでいた目には光が戻り、心臓を破壊されしぼみかけていた体は再び膨らみ始めている。
リーザの腹部にはグラシアの太い爪が食い込んでいた。
リーザ「かっ…ぐぅ…!」
ライン「馬鹿な!?」
グラシア「くくく、その程度か?」
グラシアが膝をつきながらゆっくりと立ち上がる。藍を左脇に抱えたまま、リーザを掴む右腕を振り回した。
:08/01/29 00:46
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#376 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「そらよ!」
振り回すスピードは凄まじく早い。近くにいたハル・ラインに逃げる暇を与えず回転に巻き込んで、既に意識の無いリーザごと後ろの壁に投げ飛ばした。
ライン「ぐあっ!!」
レイン「ライン!!」
グラシア「おっと、余所見していていいのか?あれだけ離れればツインキャンサーの効果は無いぞ」
グラシアが右腕を引いてハル・レインに向かい振り下ろす。
乱暴に、だが凄まじいスピードで振り下ろされた拳は、ツインキャンサーの効果が切れて身体能力が低下したハル・レインに避けられるものでは無かった。
あっという間に吹き飛ばされ、京介らが居る階段の側の壁に激突し気を失った。
:08/01/29 00:57
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#377 [◆vzApYZDoz6]
京介「みんな!」
内藤「遅かったか…!」
気絶したハル・ラインをつまらなさそうに一瞥するグラシアを、内藤が今にも飛び出しそうな京介を制しながら見据える。
3人が気を抜ききっていた事や、グラシアの足下にある大量の血溜りから見ても、グラシアが1度やられたのは間違いないだろう。
恐らく再生系の、かなり強力なスキルを使ったはず。同時使用ができるのはライフアンドデスの力か。
内藤はそんな思案を巡らせながら、グラシアの能力を確かめるために少しずつにじり寄る。
グラシアが、視線は逸らさず忍び足でこちらに来る内藤を見て、馬鹿にしたように鼻で笑った。
:08/01/29 23:41
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#378 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「来るなら来い…と言いたいところだが、生憎私は君らと戦う暇など無いのでね。戦いたければ追いかけてくるんだな」
勝ち誇ったように言い放つと素早く後ろを振り返り、京介らの対面の中庭出入口に向かって駆け出した。
内藤がすかさず追い掛けようとするが、グラシアの走るスピードはとんでもなく早い。あっという間に姿を見失ってしまった。
内藤「くそっ!逃げ足だけは早いな」
内藤が一旦止まり、舌打ちをしながら振り返る。こちらに走ってくる京介越しに、ラスダンとアリサに叫んだ。
内藤「俺は奴を追う!!リーザ達を頼んだぞ!!」
:08/01/29 23:57
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#379 [◆vzApYZDoz6]
了解、という叫び声が返ってくる。
内藤は感謝の意を込めて片手を振り上げ、振り返って京介と肩を並べて走り出した。中庭を出て、再び要塞の中に入ると、グラシアに付いた血液が足跡となり点々と続いていた。
内藤「おっ、ご丁寧に足跡残してくれてるな」
京介「それにしてもあいつ…あんな急いで何処に行くつもりなんだ?」
内藤「さぁな。小便にでも行きたかったんじゃないか?」
京介「えー…」
馬鹿馬鹿しい程に胡散臭そうな顔を作って唸る京介にイラッと来て、内藤が平手を振り上げた瞬間。
遠くから、大きな衝撃音と共に床が小刻みに震え、続いて瓦礫が崩れ落ちるような音がした。
:08/01/30 01:17
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#380 [◆vzApYZDoz6]
突然の騒音に驚いて足を止める。それはどうやら上の階から発生したようだ。
京介「なんだ?」
内藤「ちっ、我慢できなくなってトイレを破壊しやがったか」
京介「いや絶対違うと思うそれ」
気にはなりつつも再び足跡を追って走り出す。コンクリートに付けられた血の足跡を追い掛けて角を曲がると、そこには階段があった。
余程急いでいたのか、足跡は2段飛ばしで付いている。
京介「あいつ上に昇ったんだ…てことはさっきの音はあいつか?」
内藤「ほら見ろ。グラシアは今、膀胱を抑えて走り回ってる筈だ」
京介「いや…うん。そのネタ引っ張りすぎ」
京介は、正直しんどいと思った。
:08/01/30 02:08
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#381 [◆vzApYZDoz6]
-バリア発生装置がある部屋-
部屋の4隅にある、発生装置である小さな柱は、全てが逆さになって地面に突き刺さっている。柱に繋がっていた制御ケーブルは引き千切れて、ケーブルが繋がっていた制御装置の画面は電力供給用コードが切断されており光が失われていた。
ガリアスはその制御装置にもたれ掛かかって座り込み、虚に宙を仰いで考えていた。
この発生装置はグラシアが使っていたため、要塞内でも普通の通路から隔離され独立していた。
ガリアス「…ここどうやって出ればいいんだろ」
:08/01/30 22:12
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#382 [◆vzApYZDoz6]
ガリアスが項垂れるように溜め息をつく。
バリア発生装置があった事すら知らなかったガリアスには、実は隠し扉が存在する事など知る由もなかった。
破ってきた窓まで戻るのは如何せん面倒。この隔離空間から出る方法はガリアスには1つしか思い浮かばなかった。
ガリアス「仕方ねぇな…壁ぶち壊すか」
ガリアスは立ち上がり、もたれ掛かっていた制御装置に手を当てる。
ヴィエロシティーの光速移動能力を制御装置に使って、部屋の壁に全力で叩き付けた。
大きな衝撃音が響き破片が飛ぶ。だが音はそこでは終わらず、瓦礫が崩れ落ちるような音が続いていた。
:08/01/30 23:24
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