-Castaway-
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#410 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「あの娘は…ここに居ないのか」

グラシアが遠くを眺めたまま、静かに呟いた。

京介「あの娘…ってのは藍か。多分いない」
グラシア「…そうか…こんな事になろうとは…くくく…」

グラシアが俯き、くぐもった笑いをする。その不気味な声とは裏腹に、表情はどこか哀愁さが漂っていた。
1人現状を理解しているようなグラシアに、京介が眉をしかめた。

京介「おい、お前は何か知ってるのか?…ここはどこなんだよ?」

京介が少し強めに言い放つ。グラシアは薄く笑みを浮かべたまま、目を細めて冷ややかに京介を見詰めた。

グラシア「ここは…あの娘のスキルが生んだ世界だ」

⏰:08/02/08 00:36 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#411 [◆vzApYZDoz6]
京介「藍の?…って事は藍も、スキルを持ってるのか…」

京介が記憶を遡る。
思い出すのはディフェレスに来た当初。1体の風船人形と対峙した時に内藤が現れて、風船人形をあっという間に倒した後の会話。
内藤が『レンサーにしか開けれない』と確かに言っていた。その扉を最初に開けたのは、紛れもなく藍だった。

グラシア「あの娘とお前はディフェレスに来た時に、扉を通った筈だ。その扉は、クルサがモルディブに繋がるように作ったものだ」

京介が会話を思い返す。
一度草原に出た事を聞いた内藤の独り言に、確かにそれらの単語があった。
グラシアはさらに話を続けた。

⏰:08/02/08 00:55 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#412 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「お前らはスキルさえ戴けば地球に返す予定だった…手早く終わらせる為に、モルディブに出来るだけ戦闘員を配備した。バニッシ、お前らの言う内藤は感付いていたがな」

グラシア「だが、クルサの扉を通ったにも拘わらず、お前らはモルディブからかなり離れた場所に出た。たまたま別行動を取っていたアリサがお前らを見付けたがな。お前とバニッシの会話の内容をアリサから聞いて驚いたよ…」

グラシアがそこで少し沈黙し、京介を見詰めた。

グラシア「…俺の、そしてバニッシの推測が正しければ…あの娘のスキルはディフェレスの伝説に残っているものだ。名を…『キャストアウェイ』と言う」

⏰:08/02/08 15:07 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#413 [◆vzApYZDoz6]
-ウォルサー基地・要塞屋上-

藍「伝説に…?」
ハルキン「ああ。そもそも地球人の存在、そして地球人の強力なスキルの存在をディフェレスが知ったのは、その時だ」

京介とグラシアが居なくなった屋上。
残された人間は今の状況を話し合っていた。突然出現した扉について、内藤とハルキンが述べる見解を皆が静かに聞いていた。

内藤「キャストアウェイの能力は『亜空間』と『通行』の2つの支配…新たに空間を創造する事ができ、その創造空間若しくは既存空間へ繋がる『扉』を作り出す。扉には他者や物質をスキル所持者の意思で通行させる事ができる」

⏰:08/02/08 23:14 📱:P903i 🆔:cbzn3QkA


#414 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「最初にディフェレスに来た地球人は『ジオ』と呼ばれた。詳細は分かっていないが、その能力でディフェレスの危機を救ったとされている」
内藤「浅香、お前確かここに来る時に草原を通ったらしいな?」
藍「はい…」
内藤「その草原は創造空間だ。キャストアウェイは所持者の身に危険が迫っているときに自動的に発動し、危険を回避する…と伝説にも残っている。最初、お前と川上が通った扉は、本当ならウォルサーが待ち受ける場所に行く筈だったんだ。恐らく扉に触れた時にそれを感知したんだろう」
藍「…って事は京ちゃんはまさか…?」
内藤「自動発動に巻き込まれて、グラシアと草原に居る筈だ」

⏰:08/02/09 03:35 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#415 [◆vzApYZDoz6]
-藍の創造空間・大草原-

グラシア「その力は強力だ。俺はそれを欲し、あの娘を捕らえた訳だ。まぁ、なぜあの娘が伝説のスキルを所持しているのかは知らんがな」


グラシアが一通り話すのを、京介は黙って聞いていた。
ディフェレスの事など分からない京介が理解できたのは、今の状況が藍のスキルによって引き起こされた、という事だけ。そして、それと同時に1つの不確定要素が頭に浮かんだ。

京介「…元の場所に戻る方法はあるのか?」

グラシアが少し沈黙する。思わず京介が固唾を飲んだ時、グラシアが重い口を開いた。

グラシア「…方法はある。だが期待はできない」

⏰:08/02/09 08:17 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#416 [◆vzApYZDoz6]
京介「方法があるのか!?」
グラシア「あの娘がスキルを使えれば、な」
京介「なんだ…簡単な事じゃん」

京介の体に異変が起きた。紅く発光し、髪が逆立ち、黒目が銀色に染まっていく。
その様子を静かに眺めていたグラシアが、小さく含み笑いをした。

グラシア「くくく…なぜ使える?」
京介「内藤が教えてくれたよ。俺がスキルを使えなかったのは…俺のスキルが何なのか、自覚してなかっただけだ。俺のスキルは、『他者の行動選択権を支配する』…だったな」
グラシア「だが、お前は俺に勝てない」

言いかけたグラシアが、一瞬京介の前から消える。次の瞬間には、青く光る掌が京介の胸に当てられていた。

⏰:08/02/09 12:05 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#417 []
>>1-150
>>151-300
>>301-450
>>451-600

失礼しましたあ

⏰:08/02/09 14:11 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#418 [◆vzApYZDoz6]
青い掌は、いつかのパンデモの時のように京介のスキルの使用権を奪う筈だった。

グラシア「なっ…」

だがグラシアがいくら頑張っても、京介の紅い光は消えず、髪は逆立ったままで目は銀色に染まったまま。それはつまり、スキルを支配できていない事を示唆していた。
懐に入ったまま目を見開いて自分の掌を見詰めるグラシアの脇腹に、京介が膝を蹴り上げる。

グラシア「がっ!!」

支配が効かない事に驚いて硬直していたグラシアの体は避ける意思を見せず、思わず前屈みになり悶絶する。たった1回の膝蹴りが、絶大な威力を誇っていた。

グラシア「馬鹿な…!なぜ支配できない…なぜこれ程の威力が…!」

⏰:08/02/09 19:37 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#419 [◆vzApYZDoz6]
京介「お前、本当に馬鹿だな」
グラシア「なにぃ!?」

京介が、足下で蹲るグラシアを小馬鹿にしたように冷たく見下ろす。

京介「俺のスキルは『他者の行動選択支配』。俺のスキルは『支配者』で、自動的に身体強化の付加がつく。お前が言ってたんじゃなかったっけ?」
グラシア「ぐっ…くそぉ!!」

蹲っていたグラシアが急に体を上げて、京介の顔面目掛けて拳を撃つ。グラシアの拳は大気を切り裂き、その威力は決して小さくはない。

京介「動くな!」

だが、京介の一言でいとも容易く停止する。
次の瞬間に撃ち出された京介の拳は、グラシアに視認させる暇も与えず顔面をえぐり抜いた。

⏰:08/02/09 19:55 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


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