・・・ゆめみる魚・・・
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#201 [向日葵]
やっと口を開いた時、真は驚くほど冷静だった。
顔に出ないだけで、もしかしたら図星をつかれて不機嫌になったのかもしれない。
「仮に……だ。俺がお前をつぐみの代わりとしてても、別にいいんじゃないのか?お前は刺激を、俺はつぐみを。計算は間違っちゃいないだろ。」
そう言われればそうなのだ。
じゃあ何故私はこんなにも怒って、やるせない気分になってるんだろう。
「ううん……。間違ってるよ。」
:08/02/04 23:07
:SO903i
:☆☆☆
#202 [向日葵]
私は世の中のありきたりさに飽きた。
いや、ありきたりを送っていると、いざ何かが起こった時に対処出来ないから刺激を求めた。
コイツは暇つぶしの為に私を玩具とする為と、私に現実を見せる為に恋人扱いをしている。
最初の約束はこうだった。
私の約束事は変わってない。
……なのに。
「私は何かの代わりとなる為にアンタの案にのったんじゃない。」
:08/02/06 01:46
:SO903i
:☆☆☆
#203 [向日葵]
それだけ言って、私は部屋に閉じこもった。
これだけ言ったのだからもうごっこは終わりだろう。
……なのになんで、こんなにスッキリしないんだろう。
刺激が無くなってしまうから?
また見つければいいだけの話じゃないか。
別に、真に、いや松川にこだわる必要なんか、これっぽっちもないのだから……。
モヤモヤと考えを巡らせていると、携帯のバイブが鳴った。
:08/02/06 01:49
:SO903i
:☆☆☆
#204 [向日葵]
「もしもし。」
{あ、みかげ?今いい?}
電話は多香子だった。
「何?」
{明日ね、数学教えて欲しいの。ホラ、みかげ数学得意じゃん?だからテストん時に出す課題一緒にやりながら教えてーっ。}
まぁいいだろう。
ここに帰って来ても、もう何も無いのだから。
暇で仕方ない。
「うんいいよ。分かった。」
――――――――……
:08/02/06 01:53
:SO903i
:☆☆☆
#205 [向日葵]
「で、ここにXと2を入れて……。」
次の日の放課後。
私は多香子と約束通り勉強中。
図書室にこもって静かに課題を終らせていった。
「みかげ……。アンタいっつも寝てるくせに……。」
なんでそんなに分かるのかと言いたいらしい。
私は頭を指でチョンチョンと叩いた。
「ここが違うから。」
「何私を馬鹿っていいたいの?」
:08/02/06 01:56
:SO903i
:☆☆☆
#206 [向日葵]
そんな他愛もない話をしていると、多香子が急に言った。
「松川とはどうなの?」
心臓が何故か跳ねる。
「な、何が?」
「あんなのと一緒だと、しんどくない?」
「別に。っていうか、あんまり喋んないから。」
喋ってもケンカする事が多いし。
「……。あのさ、変な事言っていい?」
「何?」
:08/02/06 01:59
:SO903i
:☆☆☆
#207 [向日葵]
「みかげって……松川が好きとか?」
「はぁ?!」
思わず大きな声を出してしまった。
それでなくても静かな図書室が、更に静かになった上、図書室を担当してる先生に睨まれた。
夢の中の松川といい、多香子といい、なんでそんな事を言うのか。
「近頃のみかげってさ、なんか人間味が戻ってきたって感じするんだよね。」
「だからってなんで……。」
「つまり変わったって事。」
:08/02/06 21:48
:SO903i
:☆☆☆
#208 [向日葵]
「変わったからってなんだって言うのよ。」
「変わりだしたの松川が現れてからだからさ。もしかしたらー……って思っただ・け。」
と言って、多香子はまた問題を解き始めた。
思っただけなら何も言わないで欲しいものだ。
こっちは恥をかき損じゃないか……。
しばらくして、担当の先生が下校時間だから帰るようにと言ってきた。
まだ分からない所があるからと、私を引き止めた多香子は、近くのファミレスに私を連れて行った。
:08/02/06 21:53
:SO903i
:☆☆☆
#209 [向日葵]
「あ、みかげ。時間大丈夫なの?あんまり遅くなると松川うるさいんじゃ……。」
「別にいいよ。うるさくもないし。」
半分嘘だけど。
でも昨日の事もあって、私の心の中は反抗心でいっぱいだった。
「まぁ、ほどほどに……。」
7時頃になっても、私は帰る気がしなかった。
ファミレスを出て、近くの公園でなんだかんだ喋ってから帰る頃には、9時を回っていた。
:08/02/06 21:58
:SO903i
:☆☆☆
#210 [向日葵]
部屋に帰りながら松川の嫌味攻撃をどう対処するか頭でシミュレーションした。
最終的には部屋に逃げよう。
逃げるが価値ってなもんだ。
と決心を固めて、いざ部屋へ。
しかし。
「……あ、れ……。」
部屋はまっ暗。
松川の靴すらなかった。
テスト準備って、そんなに時間がかかるものなんだろうか……?
:08/02/06 22:02
:SO903i
:☆☆☆
#211 [向日葵]
拍子抜けした。
玄関の電気をパチンとつければ、オレンジ色の温かい光が辺りを照らす。
フゥとため息をついて、風呂の用意へ向かう。
風呂が出来るまでと、リビングでテレビを見る。
対していい番組なんてなかったけど、とりあえずつけとく事にした。
その時、ニュース速報の音が流れた。
反射的にその文字の所を読む。
内容は車の大規模な事故があったとの事だった。
しかも事故が起こった場所は、この近くの道路だった。
:08/02/06 23:54
:SO903i
:☆☆☆
#212 [向日葵]
私は吐き気に襲われた。
車事故で亡くなった両親……。
もしかして……松川も……巻き込まれたとかじゃ……。
アイツは車通勤だ。
その可能性は大いにある。
な……なんで私、こんなに動揺してるんだろう……。
私はソファーに座ったまま、動けないでいた。
大丈夫。なにかあれば、電話くらいかかってくるだろうし。第一事故に遭ったと決まった訳じゃないし……。
:08/02/06 23:58
:SO903i
:☆☆☆
#213 [向日葵]
心配するだけ……無駄なんだってば……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガチャガチャと言う、せわしない音が玄関から聞こえたのは、それから2時間してからだった。
あれからソファーに座りっぱなしだった私は、弾かれたように立ち上がり、玄関の方へリビングの出入口から顔を出した。
そこには、靴を脱いでる途中の松川がいた。
無意識にホッとする自分をよそに、松川に何も言葉をかけず、部屋へ行こうとした。
:08/02/07 00:02
:SO903i
:☆☆☆
#214 [向日葵]
「……おかえりとか、言ってくれないの?」
茶化した、だけど疲れているような松川の声に、私は足を止めて振り向いた。
「なんか、別にいっかなって。疲れてんなら風呂入りなよ。」
「ってかなんでお前まだ制服?」
「……さっきまで、多香子と勉強してたから。外で。」
本当は2時間前だけど。
松川はゆっくりと私の前にやって来た。
「遊びほうけてんじゃねぇぞみかげ。」
:08/02/07 00:05
:SO903i
:☆☆☆
#215 [向日葵]
その言葉にカチンと来た。
確かに半分遊んでたけど、勉強してたのは確かだ。
どんな理由か知らないけど、遅くに帰ってきた松川に、そんな口きいて欲しくない。
そんな思いを募らせていると、フワリと何かが匂ってきた。
「……香水……。」
私は呟いた。
確かに、おばさんがつけてるようなのではなく、優しい草花のような匂いが私の鼻まで届いた。
:08/02/07 00:09
:SO903i
:☆☆☆
#216 [向日葵]
松川は私の呟きは聞こえていない。
そして何故か、さっきより距離を詰めていた。
思わず、少し後ずさる。
「何……。」
「抱き締めさせて。」
と、有無を言わせず私の手を引いた。
もう少しで抱き締められるという瞬間、私は見てしまった。
首筋に、前よりついてる赤い痕。
カッターの襟に、少しだけついてる口紅。
さっきより増して香る、香水の匂い。
:08/02/07 00:13
:SO903i
:☆☆☆
#217 [向日葵]
気づいた時には、私は松川を力一杯両手で押し退けていた。
松川は、少しだけしか下がらなかったけど。
「……?どうした。」
「やめて……。いい加減にして……。」
「みかげ……?」
馬鹿みたい。
何が事故かも、よ。
やっぱり無駄だった。
さっさと風呂に入って寝てれば良かった。
事故かもと思ったら、連絡があるかもしれないと、私はリビングから動けずにいた。
:08/02/07 00:17
:SO903i
:☆☆☆
#218 [向日葵]
そんな忠実な犬みたいに、待っていただなんて。
自分に笑ってしまう。
「アンタ、何がしたいの?私で遊ぶの、もうやめてくんないかな……。私そんな、暇じゃないんだよ。」
「遊び?別にそんなつもりは」
「じゃあ何?つぐみさんが遊び?だから痕が残るような行為出来るの?」
松川は「痕?」と呟いた。
「この前も、首に赤いの、残ってたよ。知らなかったの?」
:08/02/07 00:20
:SO903i
:☆☆☆
#219 [向日葵]
そこまで言うと、松川はようやく気づいたのか、ハッとして首を右手で押さえた。
「結局好きなんでしょ?だから私に抱きつかないで。私もアンタに刺激を求めない。だから好きなように動きなよ。もう……ごっこは終わりだ。」
そこまで言ってから、私は胸が苦しくなった。
何でこんな気分にならなくちゃいけないんだ。
夢を見てれば、全て楽に毎日が過ごせたのに……。
眠れないのも、夢を見ないのも、頭がぐちゃぐちゃになるのも……全部松川のせいだ。
「それで早く……私を別の所に連れていけばいいよ。」
:08/02/07 00:25
:SO903i
:☆☆☆
#220 [向日葵]
「みかげ。……そんなつもりな」
「早く追い出せっつってんでしょ!!」
松川の言葉を遮って、私は叫んだ。
もうとっくに気づいていた事だ……。
「荷物なら、それなりにまとめとくから……。」
「みかげ……!」
松川の声を、部屋のドアを閉める音でかき消す。
それから私はベッドに倒れるようにして寝転んだ。
涙が流れた。
:08/02/07 00:29
:SO903i
:☆☆☆
#221 [向日葵]
とっくに気づいていた事だ……。
でも認めたくなかった。
私は……松川が……真が、好きなんだ……。
夢で真が言った通り、私は真がいるから眠る事が少なくなったんだ。
ただ、夢から覚めた時通り、好きになっても片思いなのだと言う事も、紛れもない事実だったんだ……。
:08/02/07 00:31
:SO903i
:☆☆☆
#222 [向日葵]
6P・網
はこをみつけた魚は、はこをあけてからまったくねむれなくなってしまいました。
「なんでだろう。」
魚がいいました。
「きっとまほうがかけられていたのさ。」
なかまの魚がいいました。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みかげ。少し話をしないか?」
真が言った。
:08/02/07 00:35
:SO903i
:☆☆☆
#223 [向日葵]
「いやだ。」
私は答えた。
「何か、誤解してないか?別にお前を追い出すつもりなんて俺には更々ない。」
「私もずっとここにいようなんて気、更々ない。」
真はつぐみさんが好きで、つぐみさんも真が好き。
真はまた縛られるかもしれないと言う恐怖感と、傷つけたつぐみさんを助けてやれなかった失望感にさいなまれている。
好きな癖に、あと1歩が踏み出せない。
だから同じ境遇の私で満たされようとしている。
:08/02/07 00:39
:SO903i
:☆☆☆
#224 [向日葵]
でも明らかにその考えは間違いだ。
私でいくら満たされようが、事は前に進まない。
私が真を好きと気づこうがそんなの知ったこっちゃない。
全てを綺麗にまとめるには、私がどこかへ行った方がいいのだ。
いくら刺激と言えど、トラブルの刺激なんかご免被りたい。
「みかげ。あの痕の訳はな」
「訳なんてあるの?合意の元でしょ。そんなつぐみさんが悪いみたいな言い方やめなさいよ。第一、私にそんな事の説明なんていらないから。」
:08/02/07 00:44
:SO903i
:☆☆☆
#225 [向日葵]
「じゃあ何で人の話を聞こうとしないっ!」
そう言って、私の両肩を壁に押し付けた。
真の顔は、不機嫌そのものだ。
「そう言って嫌な事全部に目ぇ背ける気か?逃げるのか?それはさぞかし楽だろうなぁ!」
「逃げてんのはどっちよ!好きなくせに……つぐみさんを抱くくせにはっきりしないアンタは逃げてないって言うの?!」
「俺はつぐみが好きなんて一言も言ってない。」
「じゃあ好きでもないのにそんな事したの?それこそ最低だ!」
:08/02/07 00:49
:SO903i
:☆☆☆
#226 [向日葵]
パシッと小気味よい音が鳴った。
私は真に、平手をお見舞いしていた。
「女が……全部アンタの玩具になると思うな。私に説教する前に、自分が何か代わりなさいよ。」
平手をくらった頬を擦りながら、何故か真は笑っていた。
「まさか殴られるとはなぁ……。」
「はぁ……?」
「俺が代わって、お前を追い出せば満足なのかよ。」
形勢逆転で、今度は真が私を責めたて始めた。
:08/02/07 00:56
:SO903i
:☆☆☆
#227 [向日葵]
「違うだろ?それはお前が楽になるんだろ?はっきり言ってやるよ。お前、俺に惚れてんだろ?」
否定してやりたかったのに、突然真実を言われた私は、つっかえて拒絶の言葉を何個も言い逃してしまった。
「依存すんのを恐れてのめり込んでしまう前に忘れてしまおう。忘れてまた楽になる為に夢を見よう……。そんなとこか?」
「ちが……っ。」
「みかげが俺を……ねぇ。案外ごっこも役に立ったもんだ。こんな面白い展開になるとはな。」
:08/02/07 01:01
:SO903i
:☆☆☆
#228 [向日葵]
まるでゲームを楽しんでるような口ぶり。
私の気持ちを軽く見られてる気がして頭にきた。
「面白いって何……?アンタ私をどうしたいの?」
「恋愛したいならするけど?」
「ふざけんな!アンタなんか好きじゃない!」
言っても真はニヤニヤするばかり。
「そんな事言っても、本当は好きなんだろ?」とでも思ってそうな顔。
それが更に私を逆上させる。
でも怒れば怒るほど、コイツを面白くさせてる気がして、反応するのをやめた。
:08/02/07 01:06
:SO903i
:☆☆☆
#229 [向日葵]
「もういい……。疲れた。部屋に行く。」
「一緒に寝てやろうか?」
キッと睨んで、私は部屋のドアを力任せに閉めた。
*********************
イチかバチかだった。
話をさせてくれないみかげの有利な位置に立つには、みかげの興味をこちらに向けなければいけない事が最優先だった。
だから言ってみた。
「俺に惚れてるんだろう。」と。
:08/02/07 01:10
:SO903i
:☆☆☆
#230 [向日葵]
言葉を失ったみかげを見て、「マジで……?」と呆気にとられた分嬉しかった。
この間、痕の件でもめた時のみかげの発言は、どちらかと言えば嫉妬の部類だった。
そんなみかげを見れば、たまらなく愛おしさが溢れてきた。
なのに彼女は自分を追い出せと言ったのだ。
みかげは今は自分の心の支えだ。
つぐみとの間で揺れているのも正直な意見だけど、みかげがいれば、つぐみの件で自分を責めないでいられる。
:08/02/07 01:15
:SO903i
:☆☆☆
#231 [向日葵]
つぐみの事は、早く終わらせなきゃならない。
今度こそ、傷つけずにすむように……。
******************
今日はテストの日。
寝不足と言う言葉とは無縁な私は、多香子の目の下のクマを見て笑った。
「笑うことないでしょー。仕方ないじゃない。暗記する事がいっぱいだったんだから。」
「それにしたってひっどー。普段からやっておけばそんな残念な事にならなかっただろうに。」
:08/02/09 00:29
:SO903i
:☆☆☆
#232 [向日葵]
怒る多香子を尻目に、私は外を眺める。
真の事。
自分で自分の気持ち気づいたとたんに気づかれるだなんて……なんたる失態。
アイツは多分これからその事を良いことに絡んでくるに違いない。
時々、真を好きなのは錯覚じゃなかろうかと思う。
アイツといたら、言動にムカつき、余裕の笑みに暴力反対派の私がグーで殴りたい衝動にかられる。
私は一体、真のどこに惹かれたのだろうか。
:08/02/09 00:33
:SO903i
:☆☆☆
#233 [向日葵]
「席につけ。」
チャイムと共に入って来たのは、真だった。
相変わらず裏表は使い分けてて、未だ裏の真を知るものはいない。
多香子にも、裏の性格は言ってない為、家でもあんな堅物面してると思ってるらしい。
そんな事をぼんやり思っていると、ふと真と目があった。
意味もなく、どきりとさせられる。
そんな私に、真が意地悪な笑みを浮かべたように見えた。
いや、誰にも分からないように、ほくそ笑んだんだ。
:08/02/09 00:39
:SO903i
:☆☆☆
#234 [向日葵]
内心で「くそっ。」と悪態つく。
本当に私おかしいんじゃないか?!
なんであんな悪魔の化身みたいな奴をっ!!
頭をひそかに抱えている内に、答案用紙が配られ、教室内は一気に緊張した。
――――――――……
「葛。ちょっと来い。」
今日は1科目だけしかテストじゃない為もう下校。
そんな私を、真は呼び出した。
向かった先は、いつも2人の溜り場になってる社会科準備室。
:08/02/09 00:43
:SO903i
:☆☆☆
#235 [向日葵]
真は先に私を入れて、ドアを閉めて、念のために鍵をかけた。
別に何の意味もない事は知ってるけど、ガチャンと音がすると、心臓がドキンと跳ねた。
「何のよう?」
「会いたかっただけ。彼女に甘えても罰は当たらないだろ?」
「ふざけんな。彼女だなんて、思った事もないくせ……っ。」
急に後ろから抱き締められて、硬直する。
この前、抱き締められたらすぐに突き放すと誓いをたてたのに、そんな誓いすらどこかへ消え去ってしまった。
:08/02/09 00:48
:SO903i
:☆☆☆
#236 [向日葵]
耳元で、くすりと笑う音が聞こえた。
「何?緊張してんの?うぶだねー。」
「は……?べ、別に?びっくりしただけ!離しなさいよ!」
「説明させてくんない?」
「何を。」と聞く前に、真は答えた。
「首の痕の事。」
こんな状態でそんな事言われては、居心地が悪い。
私は身をよじって離れようと試みたけど、意外にも、真ががっちりと抱き締めていた為、無理だった。
:08/02/09 00:51
:SO903i
:☆☆☆
#237 [向日葵]
「聞くって言わないと、お前にも痕、つけるよ?」
怪しげな囁きに、される事を想像して、一気に頭に血が上った。
「聞く聞く!聞くから離せぇぇっ!!」
ともがくと、あっさりと腕から解放された。
私は出来る限り狭い部屋で真から距離をおく。
「何もないよ。」
「は?」
何が……?
「だーかーら。何もない。つぐみとは、別にいやらしい事なぁーんにもしてない。」
:08/02/09 00:55
:SO903i
:☆☆☆
#238 [向日葵]
近眼の人かと言うくらいの目つきの悪さで私は真を見た。
何にもない?
んな訳ないじゃないか。
なんてったってコイツは女タラシのスケベ野郎なのに。
「そんな嘘に、私が騙されるとでも思ってんの?」
「あのね、キスマークぐらい簡単につけれるの。なんだったら試してみっか?」
「は、話をそらさないで!」
そこで真はスッと真剣な表情になる。
「本当だよ。つぐみとは、何もない。この前うろたえたのは、キスマーク見つかった事に対する驚きだけ。」
:08/02/09 01:31
:SO903i
:☆☆☆
#239 [向日葵]
「……信じてほしいかもしれないけど、私はそこまで良心的じゃないから。」
この居心地が悪い空間から早く抜け出したくなって、私は真の隣をすり抜けようとした。
でも、腕を掴まれて、私の動きは止まった。
「何で信じてくれないの?」
真の顔は、珍しく悲しそうだった。
その顔に、少し心が痛む。
「本当だ。つぐみがただつけたいって言ったから好きなようにやらせただけだ。お前も過去の話を聞いたのなら、アイツの精神力がどれだけ脆いか知ってるだろ?」
:08/02/09 01:36
:SO903i
:☆☆☆
#240 [向日葵]
知ってるけど、事実が分からない以上、手放しで信じる事はまず難しい。
そんな私の心を読んだのか、真は黙ってしまった。
沈黙が流れたと思うと、ため息が聞こえた。
「証明してやるよ。いかに簡単な事か。」
何の事だか、始めはよくわからなくて、あれこれ考えている内に掴まれていた腕を引っ張られた。
すると、首筋に温かさを感じた。
それは紛れもなく、真の唇だった。
:08/02/09 01:40
:SO903i
:☆☆☆
#241 [向日葵]
「ちょ……っ!」
「やめろ!」と大声を出す前に、真は私を離した。
「今日も遅くなるから晩飯よろしくな。」
色んな言いたい事があったのに、それ以上に頭がごちゃごちゃになってしまったせいで、ドアを力任せに思いっきり閉めてやる事しか出来なかった。
やっぱりアイツはあーゆー事かんったんに出来る奴なんだ……っ!
悲しい顔に油断した私が馬鹿だった!!
もう2度と労ってやるものかっ!!
:08/02/09 01:44
:SO903i
:☆☆☆
#242 [向日葵]
触れられた所を、指先でそっと撫でた。
途端に思い出す。
熱く感じた唇の温度。
想像していたより柔らかかった唇の感触。
いつも身にまとっている香水か洗剤かわからない香り。
それだけなのに、思い出してしまう自分がひどくいやらしく思った。
頭を振り、思いを飛ばすようにしながら私は教室に戻った。
「あ、みかげぇ!」
入るなり、待っていたらしい多香子が抱きついてきた。
:08/02/10 11:53
:SO903i
:☆☆☆
#243 [向日葵]
「よぉかったぁー!松川に連れてかれてからなっかなか帰ってこないから心配したよーぅ。」
「大袈裟。別に心配するような事ないよ。」
「だぁって……。ん?みかげ。なんか首赤いよ?」
抱きつかれた多香子の腕をやんわりと外していた私は、動きを止めた。
「赤……い?」
「うん。ほら。」
と 出された多香子のコンパクトミラーを見ると、虫さされのような痕があった。
それは間違いなく、さっき真の唇を感じた所だった。
:08/02/10 11:58
:SO903i
:☆☆☆
#244 [向日葵]
[証明してやるよ。いかに簡単な事か。]
――――――っ!!
アイツ…………っ!!
「た、多分、虫、……っが!」
「あーもうすぐ夏だしねー。早い蚊が少しは飛んでるかもね。」
……多香子の頭が弱くて本当に良かったと改めて思う。
それにしても……本当に簡単な事なんだな……。
少しは信じてやっても……いい訳ないっ!!
こんな事しやかって!!
:08/02/10 12:04
:SO903i
:☆☆☆
#245 [向日葵]
※訂正
×しやかって
○しやがって
です

:08/02/10 12:05
:SO903i
:☆☆☆
#246 [向日葵]
「多香子!帰るよ!」
「あ、うん。」
やっぱりタラシだった!
やっぱりスケベだった!
最低!アイツは最低!
「―――ちゃん……。」
晩飯なんか作ってやるか!
遅くに帰ってきてコンビニに向かうがいいさぁ!!
ハハハハハハ!!
「みかげちゃん!」
「へ?」
校門を丁度出た時だった。
呼ばれたから振り返ると……
「あ、つぐみさん。」
:08/02/10 12:09
:SO903i
:☆☆☆
#247 [向日葵]
「こんにちわ。」
「あ、ども。」
粗末なあいさつをしても、気にしないと言う風ににっこり笑っている。
「みかげ、私じゃあ先に帰るよ。」
多香子はそう言って、つぐみさんにペコッと頭を下げると乗ってきている自転車で帰った。
「ってか、よく私がこの時間帰る事分かりましたね。」
「松川君に聞いたの。久しぶりにみかげちゃんとお話したくて。」
「私と……?」
:08/02/10 12:17
:SO903i
:☆☆☆
#248 [向日葵]
つぐみさんは一層笑って私の手を握った。
そして詰め寄る。
「みかげちゃんならね、私の相談に的確に答えてくれそうな気がするの。だからね、お友達になってくれない?」
「お、おと、お友達……?」
友達を申請してくるなんて、つぐみさんが初めてだ。
つぐみさんは目をキラキラさせて私を見つめる。
きっとここで私が断ると、捨てられた子犬みたいな顔をするだろう。
……いつからこんなにお人好しになったんだか……。
:08/02/10 12:25
:SO903i
:☆☆☆
#249 [向日葵]
「あ、あぁ……まぁ……。」
「本当?ありがとうー!!」
と言って抱きついてきた。
その時、フワリとつぐみさんから良い香りが漂ってきた。
それは、真と同じ香りだった。
普通香水って女の人用とかある筈なのに、つぐみさんはわざわざ真と同じものを買ったんだ。
どうしてか、切なくなって、泣きたくなった。
:08/02/10 12:29
:SO903i
:☆☆☆
#250 [向日葵]
*******************
「松川君。」
いつもの飲み屋で、つぐみは待っていた。
「毎日呼ぶのやめてくれないか?俺だって忙しいんだ。」
つぐみの隣に座る。
ビールとつまみを頼んだ後、出されたおしぼりで手を拭いた。
「ゴメンネ。あ、今日みかげちゃんと会ったんだ。」
俺は固まる。
みかげは過去の俺達の話を聞いてから態度が更に堅くなになってしまった。
:08/02/10 12:36
:SO903i
:☆☆☆
#251 [向日葵]
「あの子良い子だね。お友達になれて嬉しいっ。」
あぁ……友達になっただけか……。
「……松川君。私と、やり直してくれないかな……。私あの頃とは少しは変わった……」
「それは出来ないっていっただろ。」
出てきたビールの気泡を眺めながら言った。
隣から、つぐみの悲しそうな視線が突き刺さる。
「友達……でも、ダメ……?」
「……。」
「ダメなの……っ?」
:08/02/10 12:43
:SO903i
:☆☆☆
#252 [向日葵]
深くため息をついて、出てきたつまみを一口食べた。
「あんまり……連絡すんなよ。」
隣をちらりと見れば、つぐみは嬉しそうに頷いていた。
「よし!今夜はいーっぱい飲もうね!」
とつぐみはビールを頼み始めた。
友達関係なら、昔のようになれるだろう。
俺だって、つぐみが嫌いな訳じゃない。
出来れば、わだかまりを無くしたいと思ってたから。
:08/02/10 12:50
:SO903i
:☆☆☆
#253 [向日葵]
また楽しく、つぐみと過ごせる事は嬉しく思う。
*******************
あぁ……なんてお人好しなんだ私。
テーブルの上に並べた料理の数々を見ながら私は思った。
毒されてるなぁ……真に。
まぁ、なんだかんだで私を養う為に働いてるんだし。
恩を返せと言われる前に少しでも返してやろうじゃないか。
「さて……風呂入って勉強すっか……。」
:08/02/10 12:57
:SO903i
:☆☆☆
#254 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・
コチコチと秒針が鳴り響く。
時間は午後9時。
真が遅くなると言っても、週末ではないから、もうそろそろ帰ってくる筈なのに、「帰って来ないなぁー。」とか思いながら私は教科書とにらめっこしていた。
……って、心配なんかしなくてもいいか。
前みたいに、心配して自分が馬鹿な思いをするのはもう嫌だ。
……でも。
:08/02/10 13:04
:SO903i
:☆☆☆
#255 [向日葵]
私は、帰って来ると信じて、帰って来なかった絶望を……知っている。
教科書から目を話して、近くに置いていた、「ゆめみる魚」を手に取る。
表紙を見た後、ギュッと抱き締める。
「お母さん……。」
私、どうしたらいいかな……。
分からない。
自分の事なのに……。
……何1つ。
……どれ1つ。
:08/02/10 13:14
:SO903i
:☆☆☆
#256 [向日葵]
ガチャガチャと、鍵を開ける音が聞こえたような気がした。
うっすらと目を開ける。
……え。
「朝ぁっ?!」
周りはシーンと静まりかえり、部屋には朝日の暖かな陽射しが差し込んでいた。
「あ……つつつつ……。」
机に伏せたまま寝てしまったので、体のいたる所が痛い。
:08/02/10 17:18
:SO903i
:☆☆☆
#257 [向日葵]
と言うか、いつの間に寝たのやら私。
手には絵本が抱き締められたままだった。
あ、そういえば。
部屋を出て、玄関の方を見る。
何も人の気配が感じられなかった。
ぼんやりしながら、リビングへ向かうと、昨日用意した料理がラップをかけられたままだった。
真帰って来なかったんだ……。
やっぱり仕事だったのか?
ソファーに目を向けると、脱ぎ捨てられたブレザーとカッターがあった。
:08/02/10 17:27
:SO903i
:☆☆☆
#258 [向日葵]
やっぱり帰ってきたんだ。で、着替えてまた行った……と。
ったく。
ハンガーにかけるなり、洗濯かごに入れるなりしてくれないかね……。
親切な私はブレザーにハンガーをかけて、カッターはかごに入れた。
投げるようにカッターを入れた時、何か香りがした。
それはいつもの真の香水じゃなく、どこか優しい女性らしい匂いだった。
……まさか。
……まさか……ね。
:08/02/10 17:32
:SO903i
:☆☆☆
#259 [向日葵]
そんな訳ないと思いたいのに、胸が痛かった……。
私も学ばないな。
だから心配なんてするだけ無駄だと……。
情けなくて、涙が出た。
もう知らない。
赤い痕を簡単につけるアイツなんか……嘘つきなアイツなんか……もう、知らない。
知らないと思うのに、出ていこうとしない自分にはもっと腹が立った。
嫌い……。
やっぱり現実なんて、大っ嫌いだ……っ!
:08/02/10 17:37
:SO903i
:☆☆☆
#260 [向日葵]
―――――……
「ひどい顔!」
言ったのは多香子だ。
「昨日私の事あれだけ馬鹿にしたくせに、アンタの方が今よっぽどひどいよ。」
「ほっとけ。」
無理矢理涙を引っ込めた目は真っ赤。
再び現実に失望した顔は暗かった。
テストなんてどうでもよくなった。
追試でも何でもすればいいや。
「席につけ。」
監督で来た教師は、皮肉にもまた真だった。
:08/02/10 17:45
:SO903i
:☆☆☆
#261 [向日葵]
反応したけれど、私は決して顔をあげなかった。
声を聞くだけでも、ひどく落ち込んだ気分になったからだ。
私はこれから、どれだけ騙されてしまうんだろうか……。
「チャイムが鳴ったら、名前を記入して各自始めるように。」
事務的な態度……。
私の世話も、事務だから?
だから平気で嘘つけるの?
チャイムが鳴り、皆一斉に始める時、私は1人席を立った。
:08/02/10 17:49
:SO903i
:☆☆☆
#262 [向日葵]
何も言わず、黙って教室を出る。
「葛。」
真の声が後ろからした。
でも私は無視する。
「おい葛!」
真は腕を掴んで私を止めた。
「どこ行くんだ馬鹿。そんなにテストが嫌なのかよ。」
小声で裏真が登場。
しかし私にはそんなことどうでも良かった。
「テストじゃない。……アンタが嫌なのよ。」
:08/02/10 17:53
:SO903i
:☆☆☆
#263 [向日葵]
睨みながら、乱暴に腕を振り払う。
真が追いかけてくる気配はもうなかった。
屋上に行けばすぐ見つかってしまうと思ったので、使われていない教室に入った。
シーンとしていて、カーテンをしているせいで暗かった。
でも暗くていい。
眠りやすいから。
机もないその教室には、ありがたいことに絨毯が敷いてあったので、大胆にも床に転がる。
転んだ瞬間、せき止めていた涙がまた溢れた。
:08/02/10 17:57
:SO903i
:☆☆☆
#264 [向日葵]
もう目覚めなくてもいい。
一生夢の中で生きてやる。
なんならこのまま死にたい。
そうすればお母さん達がいる所にいける。
もうつまらない事も、悲しい思いも、しなくていい。
ただ、楽になりたい。
そう願う。
どうして……現実はこんなに寂しいんだろう……。
どうして誰も、側にいてくれないの……?
:08/02/10 17:59
:SO903i
:☆☆☆
#265 [向日葵]
――――――……
「みかげ。」
優しく、自分を呼ぶ声が聞こえる。
頬に添えられる手は大きく温かい。
でもこれは、目が覚める1歩手前。
嫌だ。
私はもう目を開けたくない。
もう目を開けないって決めたんだ。
「……みかげぇっ!!」
「ぅえっ!」
突然のデカイ声に驚き、私は目を開かずをえなかった。
:08/02/10 18:03
:SO903i
:☆☆☆
#266 [向日葵]
そこにいたのは、やはりと言うかなんと言うか、真だった。
「ったく。探したぞ。何してやがる。」
「寝てる。」
「そうじゃない。俺が嫌ってどういう事だ。説明してみろよ。」
なんでそんなに偉そうに。全部アンタが悪い癖に。
玩具だろうが何だろうが、私はちゃんと心を持ってるのに……こんな粗雑な扱い、なんで受けなくちゃならないの?
「真なんて、嫌い……。」
また涙が溢れる。
:08/02/10 18:07
:SO903i
:☆☆☆
#267 [向日葵]
「嘘ばっかりつくし……挙げ句の果てに逆ギレだし……。アンタが言ったんでしょ?現実見ろって。なのに、現実なんて、全然楽しくない。楽しく、思わせてくれない……っ。」
床の絨毯に、涙が染み込んでいく。
久しぶりに、こんなに泣いてる。
「つぐみさんがいいなら、あっちにいけば、いい。アンタが言った通り、楽になりたい。辛いのは……もう嫌。しんどい。お願いだから……夢の世界に帰して……。」
子供みたいに、しゃっくりが出る。
:08/02/10 18:11
:SO903i
:☆☆☆
#268 [向日葵]
またこんな風に泣けば笑われて、馬鹿にされて惨めになるだけ。
分かっているけど涙は止まらなかった。
次々に、絨毯に染みが出来ていく。
早く出て行ってくれればいいのに、真は動かない。
もういい。
ほっといてくれればいいから。
願ってる反面、行かないでと言ってる自分もいる。
私はまるで魚。
真という網に、捕われてしまっている。
だから自分から動かず、相手が手放してくれる事を待ってる。
:08/02/10 18:15
:SO903i
:☆☆☆
#269 [向日葵]
そんな私を、何かが包んだ。
真の腕だ。
少し惚けた私は、ハッと我に返り、真の腕の中でもがいた。
「やめ……ってよ……。話て……っ。離してってば!!」
「ごめん……。」
静かに真はそう言いながら、私の頭を撫でた。
私は動きを止める。
「辛い思いばっかさせて……ごめん。何も知らなくて、ごめん……。」
ずるい。真はずるい。
:08/02/10 18:19
:SO903i
:☆☆☆
#270 [向日葵]
簡単に謝って、何もかも無かった事にするんだ。
だけど、本当に優しく抱き締められてる腕の強さとか、慈しむように頭を撫でる手が、不覚にも、許していってしまうように誘う。
また私は涙が溢れる。
その目に、真は口づけた。
その時の触れ合いに、私は確かに愛とか言うむずがゆいものを感じてしまったんだ……。
:08/02/10 18:23
:SO903i
:☆☆☆
#271 [向日葵]
7P・心が……
「まほう?じゃあぼくはもうゆめをみれないの?」
かなしそうに魚がいいました。
「ううん。そうじゃないよ。きみはいつもゆめをみすぎだから、すこしだけゆめをみにくくなっただけさ。」
なかまの魚がいいました。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スズメだかなんだかのさえずりが聞こえた。
私はうっすらと目を開ける。
:08/02/11 01:13
:SO903i
:☆☆☆
#272 [向日葵]
もう夏間近だと言うのに、温かさを感じて、私は安心するかのようにまた目を瞑った。
「みかげ。いい加減起きろ。」
「え?」
目を再び開ければ、眼鏡をかけていない真のドアップがそこにはあった。
「え!あ、もう朝……?」
「んー……。そうみたいよ。」
背伸びしながら真は言った。
と言うか私……腕枕してもらってる!
:08/02/11 01:19
:SO903i
:☆☆☆
#273 [向日葵]
そんな驚いてる私をよそに、真は優しく私を抱き締める。
シャツについた香水の匂いが、鼻をくすぐる。
「よく寝れた?」
「ま、……まぁ。」
「お早うのキスはしたほうがいい?」
キス……?
「し、しなくていい!そんな関係じゃないし!」
「え?違うの?」
違うの?って……。
だって真が好きなのは私じゃなくて……でもなんか昨日、真も私が好きなのかまとか思ったりしちゃって……。
:08/02/11 01:22
:SO903i
:☆☆☆
#274 [向日葵]
「と、とにかく……しないで。昨日、首にキスマークつけた事許した訳じゃないんだから!」
「あ、気づいた?なんならもう一丁つけとく?そしたら噂流れるかもよ。俺とお前が……みたいな。」
じょうっっだんじゃない!
痕だけで何にもされてない純潔な私が、そんないやらしい行為しただなんて恥さらしもいいとこだ!
ここで、何故私達が同じ寝床で寝ていたか。
もちろん皆の妄想……いや想像していた事は一切していない。
:08/02/11 01:27
:SO903i
:☆☆☆
#275 [向日葵]
勉強をしている私のもとに、真がやって来て、なんだかんだと勉強を教えてもらっていたのだ。
そしたら……。
――――――――……
―昨日・11時半頃―
[まだ寝ないのか?]
[え、いや、寝るけど。なんで?]
[そうかー。]
と、真は私のベッドに移動中。
Tシャツにスウェットのズボンというラフな格好をしている真は、ベッドに寝転んだ。
:08/02/11 01:37
:SO903i
:☆☆☆
#276 [向日葵]
布団を適度にかぶると、両手を私の方へ広げた。
[おいで。]
[えぇっ?!]
何故こうなるかが分からなかった。
[たまには一緒に寝てやろうと思って。ホラ。]
……まぁ真にとっちゃあ、犬と寝るのも同然か。
深く考えるのはよそう……。
諦めて、真が入った事により狭くなったベッドに私も入る。
[おやすみ。]
優しい声で囁かれる。
:08/02/11 01:40
:SO903i
:☆☆☆
#277 [向日葵]
何故玩具的存在の私にこんなに優しく恋人のような扱いをするのだろう。
ごっこならもう嫌だといって終りになった筈だし……。
ねぇ真……。
私は貴方にとってどんな存在?
知りたいの。
ここにいる理由が欲しい……。
現実に住み続けれる理由が真なら嬉しい……。
「おいで。」と言ってくれるならば、私を捕まえたままでいて……?
私は真が待つベッドへと体を沈めた。
:08/02/13 01:36
:SO903i
:☆☆☆
#278 [向日葵]
―――――――……
―変わってこちら現在―
「あの……ちょっと……真……。」
「んー?」
「いや、んー?じゃなくってさ……離れてくんない、」
いつもより早く起きたので、台所で少し豪華な朝食作りの最中。……が。
真が私の背後から抱きついたまま離れようとしてくれない。
「だーってー。くっつきたいもーん。」
ガキかアンタは。
:08/02/13 01:43
:SO903i
:☆☆☆
#279 [向日葵]
いや、コイツは大人に見えたガキだ。
しかも年下である私よりも遥かに……。
「朝飯が作れないだろーがぁ!」
「なんかこーゆーシチュエーションたまんないね。」
「はぁ?」
「朝に彼女が料理してくれてるーだなんて。」
その前に彼女じゃねぇし。
そんな事言って……。
「晩飯、この前食べなかったのはどこのどいつだよ。」
:08/02/13 01:46
:SO903i
:☆☆☆
#280 [向日葵]
「あれ帰ってきてからの楽しみにしてたんだよ。」
「ふーん。」
ジューッと言いながら卵が焼ける。
只今スクランブルエッグ制作中。
「あ、俺半熟がいい。」
自分で作れこの野郎。
他もちゃっちゃと作って、結局真をおぶったまま朝食の完成。
机に全部運び終えると、真は私を引っ張って間近くで見つめた。
さっきといい、今といい……朝からベタベタすんのはどうかと思うんだけど……。
:08/02/13 01:51
:SO903i
:☆☆☆
#281 [向日葵]
「な……、何……。」
「なぁみかげ。お前は勘違いしてるから言うけど、俺が好きなのはお前だから。」
あまりにあっさり言うので、告白された事に私は気付かなかった。
「何がきっかけとか言われても困るけど、俺はお前に側にいて欲しいんだ。」
「は……はぁ……。」
いま1つ、状況が飲み込めていない私に、真は不服そうに眉を寄せた。
「あのさ、分かってる?俺お前が好きっつってんだけど。」
「だって……あんまりにあっさりすぎて、その、いまいち……。」
:08/02/13 01:55
:SO903i
:☆☆☆
#282 [向日葵]
「じゃあ甘く囁いて欲しい?」
「やめてくれ。」
そうじゃなくて。
告白の言葉って、もっと心にずっしりとくるものだと思っていた。
でも今の真の告白は、あまりにも呆気なくて、氷の上をツルッと滑ったようにさらりとしていた。
本当の気持ちなのか……?
「じゃあほっぺにチューするくらいは許してくれる?」
どうしてもキスしたいのか……?
:08/02/13 01:59
:SO903i
:☆☆☆
#283 [向日葵]
「……手なら、いい。」
「えー。手ぇ?」
あんまり、ベタベタされるのは慣れない。
そんな急に、好きだとか言われて両想いになれても、すぐに恋人らしい事は出来ない。
徐々に慣れる。
それが大事。
不満そうな真はニヤリと笑った。
「ま、別にいいけど。」
と言って、右手を取った真は、掌に口づけた。
「―――――っ!」
:08/02/13 02:06
:SO903i
:☆☆☆
#284 [向日葵]
手なら平気。
その考えが甘かった。
平気な訳ない。
目の前で繰り広げられている真のキスは、なんて色っぽいんだろう。
これなら、まだ目を瞑って、自分がどんな風になっているかみない方がマシだったかもしれない。
真の唇が、掌から滑って指先へやってきた。
指先から、唇の柔らかさを感じる。
恥ずかしくて、目を離したいのに、食い入るように真を見つめた。
多分顔は林檎のように赤いだろう。
:08/02/13 02:10
:SO903i
:☆☆☆
#285 [向日葵]
そんな事を考えてると、何か硬い者が指先に触れた。
真の前歯だった。
指先を、軽く食べられる。
「な!ちょ……っ!」
「おまじない。ちゃんとテストが出来ますように。」
「こんな事されて出来るかぁっ!!」
――――――……
「背後に花……っ!?」
またまたお馴染み多香子だ。
:08/02/13 02:13
:SO903i
:☆☆☆
#286 [向日葵]
「花……?」
教科書から目を離して多香子を見る。
多香子は驚いた顔をしてコクコクと頷いた。
「今まで見た事なかった。みかげが花背負うなんて……。しかもピンク!」
完全な妄想+幻覚だ。
花を、しかもピンク色のなんて背負う訳がない。
でも、明らかに昨日よりは浮足だっているのは自分でも分かる。
どこか違った気分になっている事だって承知してる。
:08/02/13 02:19
:SO903i
:☆☆☆
#287 [向日葵]
少しの変化でこんなにも雰囲気が変わる自分がどこか情けない。
だから真にガキ呼ばわりされてしまうんだ。
「とにかく、花なんかしょってないから。」
「そりゃ本人は分からないでしょーねー。」
「っるさい!明日のテストのヤマはってあげないよ!」
それを言った途端、多香子は平謝りした。
ほんっと……しょうがない……。
多香子も……私も……。
:08/02/14 01:21
:SO903i
:☆☆☆
#288 [向日葵]
―――――……
テストが終わると、アナウンスが流れた。
<葛みかげ。葛みかげ。至急、社会科準備室まで来なさい。>
社会科準備室って……。
しかも今の声……。
「また松川?アンタ目つけられてんねぇ。」
呑気に帰り支度をしながら多香子が言った。
目って言うか、なんて言うか……。
「多香子。先帰ってていいよ。」
それだけ告げて、私は社会科準備室に向かった。
:08/02/14 01:25
:SO903i
:☆☆☆
#289 [向日葵]
まったく……学校での接触は避けるべきだと思うのは私だけか?
そりゃ私とはただの同居人って言えば済むかもしれないけど、それに挙げ足とるようにしてやっかんでくる奴だっているだろうに。
アイツはそこまで考えてちゃんと行動してんのか?
…………ってだから!
何で私ばっかりがこんなにアレコレ心配しなくちゃなんないのよ!
もういい!アイツが気にしてないなら気にしない!!
社会科準備室に辿りついて、さっきのイラつきをドアにぶつけるように乱暴にノックした。
:08/02/14 01:29
:SO903i
:☆☆☆
#290 [向日葵]
「失礼しますこの野郎。」
「誰がこの野郎だ。葛よ。」
いつも通り、イスに偉そうに足を組んで座ってる真。
コイツには危機感と言う機能は備わっないのだろうか……。
ため息をつきながらドアを閉めて、そこにもたれる。
「で?何か用?」
「冷たっ!それが彼氏にとる態度かよ。」
じゃあニコッて笑って「会いたかった」とでも言えと?
無理。想像しただけで寒っ!!
:08/02/14 01:33
:SO903i
:☆☆☆
#291 [向日葵]
鳥肌をおさめる為に腕を擦った。
「本当に何?」
「つぐみと友達になったそうだな。」
まぁ……半ば強制っぽかったけどね。
「それが何か?」
「つぐみがお前の連絡先を教えて欲しいと言ってる。教えていいか?」
「……まさかそれだけで私を呼んだの?」
「あぁ。」
冗談じゃない。
と言うか、ここに呼び出す理由があまりにもふざけすぎだ。
:08/02/15 00:51
:SO903i
:☆☆☆
#292 [向日葵]
「アンタねぇ!アナウンスで名前呼ばれるのがどれだけ恥ずかしいか知ってる!?いっちいち家で言えるような事呼び出してまで言わないでよ!」
くるりと回れ右をして出て行こうとドアを開けたら、後ろに引っ張られてドアを閉められた。
顔だけ動かせば、すぐそこに真の顔があって、私は少し体を引いた。
「信じてくれないだろうけど、学校でもみかげと接してたいんだ。」
息が詰まる……。
「立場上、少し難しいからこうした場所に来てる。廊下じゃ変な噂がたつだろ。」
え……。
私は真を見つめた。
真は、少し変わった気がする。
:08/02/15 00:58
:SO903i
:☆☆☆
#293 [向日葵]
相変わらずのスケベで自己中な所はあるけれど、前までは面白がって噂がたってもいいと思っていた筈なのに…………。
……つぐみさんが、真を変えた?
[お前が好きだ。]
それとも私?
……そんな訳ないか。
あの告白だって、結局本気かどうか確信は持てないのだから。
期待するだけ……無駄。
そうだ。
私は期待して、いつも手前で裏切られる。
:08/02/15 01:01
:SO903i
:☆☆☆
#294 [向日葵]
「みかげ?どうした?」
真の声に空想から戻る。
ほんっと……この頃こちら(現実)に馴染みすぎてるなぁ……。
「何もない。……じゃ。」
と言っても前に進めない。
真が腕を掴んでるせいだ。
ほどこうと腕をブンブン振るも、全然指が離れない。
そんな私を、真は意地悪そうに笑ってみている。
「離してほしい?」
「当たり前だろ!!」
:08/02/15 01:06
:SO903i
:☆☆☆
#295 [向日葵]
「じゃあ、今日帰ったら、お帰りなさい真!……って言うって約束してくれる?」
「メイド喫茶にでも言ってろド阿呆。」
真はクスクス笑って「ハイハイ。」と言いながら手を離した。
「じゃ、連絡先は教えとくな。」
「あー。ハイハイ。」
「本当だからね?」
ドアノブに手をかけながら答える。
「何が。」
:08/02/15 01:11
:SO903i
:☆☆☆
#296 [向日葵]
「お前が好きって言うのが。」
意地悪な笑顔なのに、どこか柔らかなその表情に顔が暑くなる。
「し、知らない!」
私は駆け足でその場を去った。
本気にしちゃいけないのに、本気にしてしまいそうになる。
だってあんな顔は反則だ。
明らかに私に恋してるような目つきで私を見るから勘違いをおこしてしまいそうになる。
まだ……全てを信じる訳にはいかないんだから……。
:08/02/15 01:15
:SO903i
:☆☆☆
#297 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ねぇ、みかげ……。』
あ、お母さん。
自分の目線から言って、私はどうやら子供に戻ってるらしい。
なぁに?お母さん。
『後悔だけは、しちゃ駄目よ。』
後悔?
何言ってるのお母さん。
そんな事言っても、私はまだ多分3歳くらいよ?
『ううん。貴方は17歳よ。ちゃんと可愛い女の子になってくれて、母さん嬉しいわ。』
:08/02/15 01:18
:SO903i
:☆☆☆
#298 [向日葵]
え……。
自分の手を見れば、大きくなっていて、足元を見れば、さっきより高くなっていた。
いきなり大きくなった……。ミステリー……だ。
さすが夢。
『だからねみかげ。貴方には何事も充実してて欲しいの。』
にっこり笑ったお母さんは、まだ少女のような幼さを残していた。
なんだったら、お母さんの方が私より子供のようだ。
今、私が何かを我慢してると思ってるの?
:08/02/15 01:21
:SO903i
:☆☆☆
#299 [向日葵]
『我慢と言うより、充実する事を恐れてる。それが、貴方が嫌いな現実の世界だから、尚更……。』
……。
お母さん。私、夢が好きよ。
だってお母さん達に会えるもの。
私はお母さんやお父さん、育ててくれたおじいちゃん達、それに……。
いつの間にか抱き締めていたあの絵本、「ゆめみる魚」に私は目線を落とした。
これだけが大事なの。
宝物なの。
他なんて……いらないわ……。
:08/02/15 01:25
:SO903i
:☆☆☆
#300 [向日葵]
『そんな事ないわ。真一君がいるでしょう?』
……分からない。
『何が?』
アイツの気持ちなんてこれっぽっちも分からない……っ。
私を好きだなんて、あんな心がこもってない言い方出来るのは、私が好きじゃないからでしょう?
『みかげ。』
アイツはつぐみさんが好きなの!私じゃない!
もう、私を好きと、愛してくれるのは、お母さん達だけで誰1人していなくなったの!
『みかげっ!』
:08/02/15 01:28
:SO903i
:☆☆☆
#301 [向日葵]
柔らかいような、透けてしまっているような。
温かいような、冷たいようなお母さんの手が私の頬に触れる。
少女のようなお母さんだけれど、やはり母親の目をして、凛として輝いていた。
『貴方は、他人ばかりを責めすぎてる。信じる事をしてみた?』
……して、ない……。
『じゃあ信じてよ。』
突然、お母さんが真に変わった。
なのに夢の中の私は何も驚かず、眼鏡の奥にある鋭い視線を受け止めていた。
:08/02/16 00:51
:SO903i
:☆☆☆
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