グリモア(ファンタジー)
最新 最初 全 
#5 [リナ]
表街道を避け裏街道を歩くあたしの前に
「よっ」
そー言って現われたゴツイ顔の男に、しかし見覚えはなかった。
「えーと…だれ?」
「誰でもいいだろ。さっさと出すもんだしな」
まるで知り合いと話すかのように言う男。
声に敵意はない。
が、親しみもない。
はぁ…もーうんざり。
:08/01/24 16:59
:N905i
:☆☆☆
#6 [リナ]
「あんたで何人目かは覚えてないけど、野盗に渡すお金は銅貨1枚だって持ち合わせちゃいないわ」
「なんだと?
素直に出せばいぃものを、どーやら痛いめにあいたいみたいだな。
おいっヤローども出てこい」
男が声を張り上げる。
その声に合わせ周りの木々から出てきたのは、ざっと10人程度か。
:08/01/24 17:02
:N905i
:☆☆☆
#7 [リナ]
「ひっ……」
「騒ぐなよ女。
ま、騒いだところで誰も助けにゃこないがな」
ニヤニヤと黄色い歯を見せボスらしき男が言う。
「いっいやっ!」
黄色い歯をしたボスがジワジワとあたしに近寄ってくる。
「こないでっ!
誰か、誰か助けてっ!」
ザッザッとゆう足音と、手には小振りのナイフを5本持ち、男は距離を詰めてきた。
:08/01/24 17:06
:N905i
:☆☆☆
#8 [リナ]
「何度も言わせるな。
騒いでも誰もきやしない」
言う男の声は笑っている。
ヒュンッーー
突如、風があたしの頬をなぐ。
「あぁ、外れた。次は逃げるなよ。」
……ナイフ。
そう。急に男がナイフを投げてきたのだ。
ナイフはあたしの髪を少し切り後ろへ流れた。
:08/01/24 17:09
:N905i
:☆☆☆
#9 [リナ]
男がナイフを投げ、それを避ける。
何度繰り返しただろうか。
走り回るのに疲れたあたしはその場に足を止めた。
「ボスッ。こいつ恐怖で動けなくなってやがる」
「このまま殺すにゃもったいないっすよ」
「なかなか可愛い顔じゃないっすか。
売って金にしましょーぜ」
あたしを取り囲み好き好きにいろんな事を言いだす野盗たち。
ふっ。
あたしはこの瞬間笑みをこぼした。
:08/01/24 17:10
:N905i
:☆☆☆
#10 [リナ]
「なんだ、おじょーちゃんイカレちまったのか?」
「そんな訳ないでしょ。
バカげてて可笑しくなってきただけよ」
黄色い歯のボスはまだ意味が分からないらしい。
まぁ、ムリもないか。
:08/01/24 17:15
:N905i
:☆☆☆
#11 [リナ]
「お前恐がってたはずじゃ…」
「……?あぁアレ?
都合のいいように解釈しすぎ。
あんたの歯があまりにも汚いから。
ちょっ!近づくな!」
ズザッとあたしは一歩後ろに下がる。
近づくなと言ったのに!
くっ許さん!
「おぉ〜ニラんじゃって怖いこった」
小馬鹿にしたようにボスが言う。
:08/01/24 17:17
:N905i
:☆☆☆
#12 [リナ]
くっそー。
もー少し遊んでよーと思ったけど我慢の限界。
術者を中心に、円形状に地面を吹き上げる呪文を急ぎ唱え放つ……
「あ〜らあなた、まだこんなとこに居たの?」
あたしの呪文をさえぎって上空から声が聞こえた。
聞き覚えのある声が。
:08/01/24 17:19
:N905i
:☆☆☆
#13 [リナ]
木の上になんかいる気がする、気がするが…………気のせいだよね。
うん。誰も居ない。
あたしは気を取り直し、不発に終わった呪文をまた唱えなおす。
「いーのか?あれ、あんたの知り合いだろ?」
「他人よ」
変なとこでボスが気を回す。が、あたしはキッパリと否定した。
:08/01/24 17:23
:N905i
:☆☆☆
#14 [リナ]
「ちょっとティスカ!
聞こえてますでしょ!?返事しなさいよ!
ティスカティスカティスカティスカ!」
彼女はあたしの名前を連呼する。
「そう…………………………そっちがその気ならしょーがないわね……」
しまったぁぁぁ。
「ウソウソ聞こえてる!
ミューレイ?聞こえてるからやめてお願い!」
:08/01/24 17:26
:N905i
:☆☆☆
#15 [リナ]
腰まで伸ばし少しウェーブがかった金髪を風になびかせ、こちらを見下ろす一人の女性。
名はミューレイ。
見た目だけならあたしとそーは変わらないだろう。
透き通った白い肌によくはえる赤い唇。
女のあたしから見ても美人だと思うその顔が、今は人のそれとは異なっていた。
:08/01/24 17:30
:N905i
:☆☆☆
#16 [リナ]
本格的にやばい。
野盗用に唱えていた呪文を急遽(キュウキョ)他の呪文に切り替える。
間に合うか!?
いや、間に合わせねば!
「おいっ!
なんなんだいきなり!俺たちを無視して話すすめやがって!」
野盗たちはあたしを取り囲んだまま、レイチェルとあたしを交互に眺めていた。
:08/01/24 17:31
:N905i
:☆☆☆
#17 [リナ]
かまってる暇はない。
呪文を中断させるわけにはいかない。
「ボッ……ボス!?」
「今度はなんだ!」
「あの女、様子が……」
子分とボスがミューレイを見ながら交互に話す。
ミューレイの風貌は今や人ではない。
目は血のように赤く
口の端からは牙
両の肩を抱き小刻みに震えている。
遠くて見えないが手の甲には筋が浮かんでいることだろう。
:08/01/24 17:33
:N905i
:☆☆☆
#18 [リナ]
野盗たちはその光景に魅入り動けずにいた。
ズバサァッ。
音とともにミューレイの背に黒い羽がはえた。
うっそ!?本気モード!?
(ここまで5秒あるかないかである)
ミューレイは冷淡な瞳であたしたち(野盗含む)を見下ろすと羽をはばたかせた。
:08/01/24 17:42
:N905i
:☆☆☆
#19 [リナ]
ゴウッ!
烈風が舞う。
実際には魔力を放ったのだろう。
野盗たちが薙ぎ倒される。
あ、石に頭ぶつけてやんの。あたしを小馬鹿にした罰ね。
風がやんだあと立っているのはあたし一人。
ミューレイがなにをするのか読んだあたしは、術が放たれる前に防御魔法を唱えたのだ。
:08/01/24 17:44
:N905i
:☆☆☆
#20 [リナ]
ミューレイは木の上から地面に降りたつと、こちらに向かい歩いてきた。
どーしよ!?
敵なら全力で倒しにかかるが、ミューレイ相手に戦う気はない。
なすすべもないままミューレイとの距離は縮まる一方。
:08/01/24 17:46
:N905i
:☆☆☆
#21 [リナ]
ミューレイの顔は普段の顔に戻っているが、人間とはくらべものにならない殺気を放っている。
2m…1m…30cm…。
その距離は手を伸ばせば届くまでになっていた。
頭フル回転で回避のすべを探す。
このままじゃやられる!
思った次の瞬間――
ミューレイはあたしの横を通り過ぎた。
:08/01/24 17:47
:N905i
:☆☆☆
#22 [リナ]
え?
見逃してくれた?
いや、あれはあたしの存在が目に入ってないかのようなスルーッぷり。
どこに行くの?
そっちには……。
――野盗が倒れてるだけ。
その野盗の顔を一人一人確認していくミューレイ。
何……を……?
:08/01/24 17:49
:N905i
:☆☆☆
#23 [リナ]
うつ伏せで倒れてる奴はわざわざ仰向けにしてまで顔のチェック。
あたしはまだ、この行動の意味を理解していなかった。
何人目の顔を覗き込んだ時だろうか。
ミューレイは目を細め、口を笑みの形に歪めたのだった。
:08/01/24 17:52
:N905i
:☆☆☆
#24 [リナ]
おもむろに頭をワシッと掴み男の体を持ち上げる。
「う"っ……」
男は小さく声を盛らしたが抵抗する気力はないようだ。
ミューレイは愛おしそうに顔を眺め、舌なめずりをする。
妖艶なその素振りに男はコクッと喉をならした。
:08/01/24 17:53
:N905i
:☆☆☆
#25 [リナ]
ミューレイは軽く口を開け、紅い唇を男の首に押しあてキスを……キス……を…………。
「なにをやっとるかぁぁ!」
あたしは叫びながらダダダダダッと走りよる。
それに気付いたのかいないのか、ミューレイは男の頭を離した。
ドサッと地面に倒れピクリとも動かない男。
ミューレイは口元を拭う。
ーー間に合わなかったーー
:08/01/24 17:54
:N905i
:☆☆☆
#26 [リナ]
「殺し……たの?」
「まさかっ。
気絶してるだけですわ」
あたしの問いにミューレイは答える。
「ならいっか。
ねぇ。さっきあたしのこと殺そーとした?」
「さっき?」
ミューレイは眉をひそめ聞き返してきた。
:08/01/25 14:18
:N905i
:☆☆☆
#27 [リナ]
「覚えてないの!?」
「ん〜。
木の上であなたを見つけたとこまでは覚えてるわ」
「その後は?」
「驚かすつもりで少し魔力を解放しましたけど……。
そー言えば、私(ワタクシ)なんで満腹ですの?」
:08/01/30 20:57
:N905i
:☆☆☆
#28 [リナ]
「何でって……。
今あいつから吸ってたじゃない、血」
「そーですの?
あら、私好みの良い男」
……それで顔の選別してたわけね。
:08/01/30 20:58
:N905i
:☆☆☆
#29 [リナ]
「私(ワタクシ)空腹時に魔力を解放すると理性が効かなくなるんです。
忘れてましたわ」
忘れてましたわってオイ!
さらっとんでもない事を言いやがった。
ちょっ、ちょっと待て!
:08/02/03 20:26
:N905i
:☆☆☆
#30 [リナ]
「それって近くにいるあたしが一番危なくない!?」
「大丈夫。
あなたの血は飲めた物じゃありませんわ」
「失礼ね!あたしの血が汚いみたいじゃない」
「なにを怒ってるの?
当たり前じゃないっ……て、人間のティスカに言っても仕方ないですわね」
「どーゆう意味よ?」
「……説明しなくちゃいけません?」
数分してミューレイはハァ…と短いため息をついたのだった。
:08/04/11 23:34
:N905i
:☆☆☆
#31 [リナ]
「分かりました。説明します。
ですからジッと見つめるのやめて頂けます?」
「オッケー」
あたしはニッと笑い目線を外した。
:08/04/11 23:36
:N905i
:☆☆☆
#32 [リナ]
「ティスカ、あなたが身にまとっているものは何?」
「マント?」
今は訳あって町娘の格好をしているが、普段はれっきとした魔道士である。
「違いますわよ!
あなたが身にまとっているものは魔力でしょ」
「そりゃそーだけど?」
「その魔力がくせものなんです!」
まだピンときてないあたしに苛立ってかミューレイは声を張り上げた。
:08/04/11 23:40
:N905i
:☆☆☆
#33 [リナ]
「……えっと……」
「これだから人間はめんどくさいって言われるんですわっ!」
「誰が言った誰が!」
食って掛かったあたしに
「私が言ったに決まってますでしょ」
お前か。
「……人間にも分かるよーに説明してよ」
ミューレイはチッと小さく舌打ちしてから嫌そうに口を開いた。
:08/04/12 18:59
:N905i
:☆☆☆
#34 [リナ]
「あなたのように魔力をまとっている人間の血は臭いんです。
口に含んだ瞬間異臭が鼻を突くんですのよ?
そんな血飲みたいとも思いませんわ」
言ってフンッと鼻をならす。
臭いんだ?
異臭放ってんだ?
でもそのおかげで血吸われないですむ。
この微妙な気持ちはなんだろう?
全然嬉しくない。
むしろショック……。
「へ、へぇそーなんだ」
あたしは精一杯苦笑いを浮かべたのだった。
:08/04/12 19:01
:N905i
:☆☆☆
#35 [リナ]
これで見た目だけは同い年と言った意味が分かってもらえただろう。
ミューレイはヴァンパイア。
歳は……まだ死にたくないから言わないよ。
なんか睨まれてるしね。
:08/04/12 19:04
:N905i
:☆☆☆
#36 [リナ]
あの後、あたしたちはデコボコ街道を突き進んだ先にある小さな村に来ていた。
「こんなとこに村があるとは知りませんでしたわ。
まさかティスカがこんなところで、ねぇ?」
村に入るやいなやさっそくミューレイにからかわれる。
:08/04/12 19:05
:N905i
:☆☆☆
#37 [リナ]
「なによ?
ニヤニヤして気持ち悪い」
「恥ずかしがらなくてもいいのよ?」
「な、なんのこと?」
バレてると知りながらもあたしは白をきり歩き続ける。
:08/04/14 00:05
:N905i
:☆☆☆
#38 [リナ]
「もちろん人助けの事ですわ?うふふ」
前に回り込み顔を覗き楽しそうにするミューレイ。
「笑うなぁぁー!」
「あら大声だしちゃって、照れ隠しですわね?」
「分析するなっ!」
ジタバタとあたしは両手を振り上げ地団駄を踏んだ。
ことに少し自己嫌悪……この歳で地団駄て……。
:08/04/14 00:07
:N905i
:☆☆☆
#39 [リナ]
「まぁ耳まで真っ赤になって、可愛いところもあるじゃない」
本当は地団駄で赤くなったんだけど、どっちにしろ言い返せないのが悔しい。
「あたしはただ………………………………………………………やっぱいい」
口にするのが恥ずかしくて、あたしは頬を赤らめ下を向く。
:08/04/16 21:40
:N905i
:☆☆☆
#40 [リナ]
「なによ!?
話しなさいよ、気になるじゃない」
ミューレイに詰め寄られ
「……あたしはただ、困ってる人を助けるも悪くないって思ったのよ。
ミューレイ、あなたと知り合ったのも大きな意味では人助けでしょ?
出会いって大切じゃない?」
言ってウィンク一つ。
ミューレイの件について実際あたしは何の役にもたたなかったけど。
「ティスカ……」
「えっ!?
ちょ、ちょっとなに泣いてるのよミューレイ」
:08/04/16 21:41
:N905i
:☆☆☆
#41 [リナ]
「だって私……私勝手に付いてきたんですのよ?
迷惑なはずなのに嫌な顔せず出会いだなんて……。
私はヴァンパイア、決して人間には受け入れてもらえない。
人の形をした異形の者……。
だから私と対等に話す人間はいなかった……あなた人間のくせに良いところありますのね」
:08/04/24 18:00
:N905i
:☆☆☆
#42 [リナ]
あたしだってヴァンパイアが怖くないわけじゃない。
人の生き血を好み人より長く生き、力も魔力も人間の何倍もある。
でも、異種族だからと解り合えないわけじゃない。
人にも悪い奴が居るように。
グシッと手で涙をぬぐうミューレイを見てフッと表情がゆるむ。
「ほれ、もぉ泣くな」
言ってあたしは布で涙を拭ってやった。
:08/04/24 18:02
:N905i
:☆☆☆
#43 [リナ]
「ありがどぼぉ」
ミューレイの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
くすっ……やれやれ。
「ほら鼻もでてるから。
涙もろいヴァンパイアなんて聞いたことないよ」
「うっうるさいですわ!」
あたしはそんなミューレイを見て微笑んだ。
:08/04/24 18:04
:N905i
:☆☆☆
#44 [リナ]
「落ち着いた?」
あたしは村長さんの家から貰ってきた水を、しゃがんでいるミューレイに渡す。
「みっともないところを見せてしまいましたね」
今度はミューレイが少し頬を赤らめ恥ずかしげに言った。
:08/04/28 17:57
:N905i
:☆☆☆
#45 [リナ]
「可愛かったわよ〜ありがどぼぉーって」
あたしもしゃがみミューレイを正面から見てニヤニヤ笑ってやったが、もちろん照れ隠しだ。
「そ、そんなこと言ってません!
用があるのでしょ?
さっさとすませて下さい」
「可愛いなぁ〜よしよし」
ぽんぽんっとレイチェルの頭をなで立ち上がると、俄然ミューレイのがスラッとしていて背も高い。
村長さんの家はここから近く、唯一この村にある井戸は村長さん家の前にある。
:08/04/28 17:58
:N905i
:☆☆☆
#46 [リナ]
一軒の家の前で立ち止まりドアを開け中に入ると、村長さんと奥さんがテーブルに付きあたし達を待っていた。
「さっきはありがとうございました」
コトンとコップをテーブルの上に置く。
「いえいえ、急に水をくれなんて何事かと思いましたよ」
ベージュの服を着た優しそうな村長の奥さんにミューレイはペコリと頭を下げた。
:08/04/28 18:01
:N905i
:☆☆☆
#47 [リナ]
「立ち話もなんですから、どーぞお掛けになって?」
奥さんの言葉にあたしは村長の前、ミューレイは奥さんの前に座った。
心労がたたったのか村長は、頬がやつれ疲れ切った表情で前会った時より白髪が増えた気がする。
:08/04/28 18:04
:N905i
:☆☆☆
#48 [リナ]
「大丈夫ですか?」
「ん、あぁ大丈夫だ……」
声にも覇気がない。
「もー心配いりませんよ?
野盗たちは一掃しました。
ここもまたすぐ活気づきますって」
あたしはつとめて明るく言った。
「そうか。
ありがとう、助かった」
嬉しくないのか?
表情は堅いまま。
奥さんも困惑しているようだ。
:08/04/28 18:07
:N905i
:☆☆☆
#49 [リナ]
「なにかありました?」
「いえ、なんでもないんです。
これ以上迷惑かけられませんから、ね?あなた」
奥さんと村長は顔を見合わせうつむいた。
えぇーい!
乗り掛かった船だ!
:08/04/28 18:10
:N905i
:☆☆☆
#50 [リナ]
「話して下さい」
「でも……」
「これも何かの縁。
どこ行く予定もありませんから」
あたしは出来るだけ優しく奥さんに話し掛けた。
村長は先程からうつむいたまま。
「実は…………」
:08/04/28 18:12
:N905i
:☆☆☆
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194