グリモア(ファンタジー)
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#1 [リナ]
神がまだ存在する世界。
魔もまた存在する世界。
神と魔が混在し、人は魔法を使い剣を握るだろう。
グリモア
――それは魔導書を意味する言葉。
>>2-3アンカー
>>4感想板
:08/01/24 16:39
:N905i
:☆☆☆
#2 [リナ]
:08/01/24 16:45
:N905i
:☆☆☆
#3 [リナ]
:08/01/24 16:47
:N905i
:☆☆☆
#4 [リナ]
:08/01/24 16:52
:N905i
:☆☆☆
#5 [リナ]
表街道を避け裏街道を歩くあたしの前に
「よっ」
そー言って現われたゴツイ顔の男に、しかし見覚えはなかった。
「えーと…だれ?」
「誰でもいいだろ。さっさと出すもんだしな」
まるで知り合いと話すかのように言う男。
声に敵意はない。
が、親しみもない。
はぁ…もーうんざり。
:08/01/24 16:59
:N905i
:☆☆☆
#6 [リナ]
「あんたで何人目かは覚えてないけど、野盗に渡すお金は銅貨1枚だって持ち合わせちゃいないわ」
「なんだと?
素直に出せばいぃものを、どーやら痛いめにあいたいみたいだな。
おいっヤローども出てこい」
男が声を張り上げる。
その声に合わせ周りの木々から出てきたのは、ざっと10人程度か。
:08/01/24 17:02
:N905i
:☆☆☆
#7 [リナ]
「ひっ……」
「騒ぐなよ女。
ま、騒いだところで誰も助けにゃこないがな」
ニヤニヤと黄色い歯を見せボスらしき男が言う。
「いっいやっ!」
黄色い歯をしたボスがジワジワとあたしに近寄ってくる。
「こないでっ!
誰か、誰か助けてっ!」
ザッザッとゆう足音と、手には小振りのナイフを5本持ち、男は距離を詰めてきた。
:08/01/24 17:06
:N905i
:☆☆☆
#8 [リナ]
「何度も言わせるな。
騒いでも誰もきやしない」
言う男の声は笑っている。
ヒュンッーー
突如、風があたしの頬をなぐ。
「あぁ、外れた。次は逃げるなよ。」
……ナイフ。
そう。急に男がナイフを投げてきたのだ。
ナイフはあたしの髪を少し切り後ろへ流れた。
:08/01/24 17:09
:N905i
:☆☆☆
#9 [リナ]
男がナイフを投げ、それを避ける。
何度繰り返しただろうか。
走り回るのに疲れたあたしはその場に足を止めた。
「ボスッ。こいつ恐怖で動けなくなってやがる」
「このまま殺すにゃもったいないっすよ」
「なかなか可愛い顔じゃないっすか。
売って金にしましょーぜ」
あたしを取り囲み好き好きにいろんな事を言いだす野盗たち。
ふっ。
あたしはこの瞬間笑みをこぼした。
:08/01/24 17:10
:N905i
:☆☆☆
#10 [リナ]
「なんだ、おじょーちゃんイカレちまったのか?」
「そんな訳ないでしょ。
バカげてて可笑しくなってきただけよ」
黄色い歯のボスはまだ意味が分からないらしい。
まぁ、ムリもないか。
:08/01/24 17:15
:N905i
:☆☆☆
#11 [リナ]
「お前恐がってたはずじゃ…」
「……?あぁアレ?
都合のいいように解釈しすぎ。
あんたの歯があまりにも汚いから。
ちょっ!近づくな!」
ズザッとあたしは一歩後ろに下がる。
近づくなと言ったのに!
くっ許さん!
「おぉ〜ニラんじゃって怖いこった」
小馬鹿にしたようにボスが言う。
:08/01/24 17:17
:N905i
:☆☆☆
#12 [リナ]
くっそー。
もー少し遊んでよーと思ったけど我慢の限界。
術者を中心に、円形状に地面を吹き上げる呪文を急ぎ唱え放つ……
「あ〜らあなた、まだこんなとこに居たの?」
あたしの呪文をさえぎって上空から声が聞こえた。
聞き覚えのある声が。
:08/01/24 17:19
:N905i
:☆☆☆
#13 [リナ]
木の上になんかいる気がする、気がするが…………気のせいだよね。
うん。誰も居ない。
あたしは気を取り直し、不発に終わった呪文をまた唱えなおす。
「いーのか?あれ、あんたの知り合いだろ?」
「他人よ」
変なとこでボスが気を回す。が、あたしはキッパリと否定した。
:08/01/24 17:23
:N905i
:☆☆☆
#14 [リナ]
「ちょっとティスカ!
聞こえてますでしょ!?返事しなさいよ!
ティスカティスカティスカティスカ!」
彼女はあたしの名前を連呼する。
「そう…………………………そっちがその気ならしょーがないわね……」
しまったぁぁぁ。
「ウソウソ聞こえてる!
ミューレイ?聞こえてるからやめてお願い!」
:08/01/24 17:26
:N905i
:☆☆☆
#15 [リナ]
腰まで伸ばし少しウェーブがかった金髪を風になびかせ、こちらを見下ろす一人の女性。
名はミューレイ。
見た目だけならあたしとそーは変わらないだろう。
透き通った白い肌によくはえる赤い唇。
女のあたしから見ても美人だと思うその顔が、今は人のそれとは異なっていた。
:08/01/24 17:30
:N905i
:☆☆☆
#16 [リナ]
本格的にやばい。
野盗用に唱えていた呪文を急遽(キュウキョ)他の呪文に切り替える。
間に合うか!?
いや、間に合わせねば!
「おいっ!
なんなんだいきなり!俺たちを無視して話すすめやがって!」
野盗たちはあたしを取り囲んだまま、レイチェルとあたしを交互に眺めていた。
:08/01/24 17:31
:N905i
:☆☆☆
#17 [リナ]
かまってる暇はない。
呪文を中断させるわけにはいかない。
「ボッ……ボス!?」
「今度はなんだ!」
「あの女、様子が……」
子分とボスがミューレイを見ながら交互に話す。
ミューレイの風貌は今や人ではない。
目は血のように赤く
口の端からは牙
両の肩を抱き小刻みに震えている。
遠くて見えないが手の甲には筋が浮かんでいることだろう。
:08/01/24 17:33
:N905i
:☆☆☆
#18 [リナ]
野盗たちはその光景に魅入り動けずにいた。
ズバサァッ。
音とともにミューレイの背に黒い羽がはえた。
うっそ!?本気モード!?
(ここまで5秒あるかないかである)
ミューレイは冷淡な瞳であたしたち(野盗含む)を見下ろすと羽をはばたかせた。
:08/01/24 17:42
:N905i
:☆☆☆
#19 [リナ]
ゴウッ!
烈風が舞う。
実際には魔力を放ったのだろう。
野盗たちが薙ぎ倒される。
あ、石に頭ぶつけてやんの。あたしを小馬鹿にした罰ね。
風がやんだあと立っているのはあたし一人。
ミューレイがなにをするのか読んだあたしは、術が放たれる前に防御魔法を唱えたのだ。
:08/01/24 17:44
:N905i
:☆☆☆
#20 [リナ]
ミューレイは木の上から地面に降りたつと、こちらに向かい歩いてきた。
どーしよ!?
敵なら全力で倒しにかかるが、ミューレイ相手に戦う気はない。
なすすべもないままミューレイとの距離は縮まる一方。
:08/01/24 17:46
:N905i
:☆☆☆
#21 [リナ]
ミューレイの顔は普段の顔に戻っているが、人間とはくらべものにならない殺気を放っている。
2m…1m…30cm…。
その距離は手を伸ばせば届くまでになっていた。
頭フル回転で回避のすべを探す。
このままじゃやられる!
思った次の瞬間――
ミューレイはあたしの横を通り過ぎた。
:08/01/24 17:47
:N905i
:☆☆☆
#22 [リナ]
え?
見逃してくれた?
いや、あれはあたしの存在が目に入ってないかのようなスルーッぷり。
どこに行くの?
そっちには……。
――野盗が倒れてるだけ。
その野盗の顔を一人一人確認していくミューレイ。
何……を……?
:08/01/24 17:49
:N905i
:☆☆☆
#23 [リナ]
うつ伏せで倒れてる奴はわざわざ仰向けにしてまで顔のチェック。
あたしはまだ、この行動の意味を理解していなかった。
何人目の顔を覗き込んだ時だろうか。
ミューレイは目を細め、口を笑みの形に歪めたのだった。
:08/01/24 17:52
:N905i
:☆☆☆
#24 [リナ]
おもむろに頭をワシッと掴み男の体を持ち上げる。
「う"っ……」
男は小さく声を盛らしたが抵抗する気力はないようだ。
ミューレイは愛おしそうに顔を眺め、舌なめずりをする。
妖艶なその素振りに男はコクッと喉をならした。
:08/01/24 17:53
:N905i
:☆☆☆
#25 [リナ]
ミューレイは軽く口を開け、紅い唇を男の首に押しあてキスを……キス……を…………。
「なにをやっとるかぁぁ!」
あたしは叫びながらダダダダダッと走りよる。
それに気付いたのかいないのか、ミューレイは男の頭を離した。
ドサッと地面に倒れピクリとも動かない男。
ミューレイは口元を拭う。
ーー間に合わなかったーー
:08/01/24 17:54
:N905i
:☆☆☆
#26 [リナ]
「殺し……たの?」
「まさかっ。
気絶してるだけですわ」
あたしの問いにミューレイは答える。
「ならいっか。
ねぇ。さっきあたしのこと殺そーとした?」
「さっき?」
ミューレイは眉をひそめ聞き返してきた。
:08/01/25 14:18
:N905i
:☆☆☆
#27 [リナ]
「覚えてないの!?」
「ん〜。
木の上であなたを見つけたとこまでは覚えてるわ」
「その後は?」
「驚かすつもりで少し魔力を解放しましたけど……。
そー言えば、私(ワタクシ)なんで満腹ですの?」
:08/01/30 20:57
:N905i
:☆☆☆
#28 [リナ]
「何でって……。
今あいつから吸ってたじゃない、血」
「そーですの?
あら、私好みの良い男」
……それで顔の選別してたわけね。
:08/01/30 20:58
:N905i
:☆☆☆
#29 [リナ]
「私(ワタクシ)空腹時に魔力を解放すると理性が効かなくなるんです。
忘れてましたわ」
忘れてましたわってオイ!
さらっとんでもない事を言いやがった。
ちょっ、ちょっと待て!
:08/02/03 20:26
:N905i
:☆☆☆
#30 [リナ]
「それって近くにいるあたしが一番危なくない!?」
「大丈夫。
あなたの血は飲めた物じゃありませんわ」
「失礼ね!あたしの血が汚いみたいじゃない」
「なにを怒ってるの?
当たり前じゃないっ……て、人間のティスカに言っても仕方ないですわね」
「どーゆう意味よ?」
「……説明しなくちゃいけません?」
数分してミューレイはハァ…と短いため息をついたのだった。
:08/04/11 23:34
:N905i
:☆☆☆
#31 [リナ]
「分かりました。説明します。
ですからジッと見つめるのやめて頂けます?」
「オッケー」
あたしはニッと笑い目線を外した。
:08/04/11 23:36
:N905i
:☆☆☆
#32 [リナ]
「ティスカ、あなたが身にまとっているものは何?」
「マント?」
今は訳あって町娘の格好をしているが、普段はれっきとした魔道士である。
「違いますわよ!
あなたが身にまとっているものは魔力でしょ」
「そりゃそーだけど?」
「その魔力がくせものなんです!」
まだピンときてないあたしに苛立ってかミューレイは声を張り上げた。
:08/04/11 23:40
:N905i
:☆☆☆
#33 [リナ]
「……えっと……」
「これだから人間はめんどくさいって言われるんですわっ!」
「誰が言った誰が!」
食って掛かったあたしに
「私が言ったに決まってますでしょ」
お前か。
「……人間にも分かるよーに説明してよ」
ミューレイはチッと小さく舌打ちしてから嫌そうに口を開いた。
:08/04/12 18:59
:N905i
:☆☆☆
#34 [リナ]
「あなたのように魔力をまとっている人間の血は臭いんです。
口に含んだ瞬間異臭が鼻を突くんですのよ?
そんな血飲みたいとも思いませんわ」
言ってフンッと鼻をならす。
臭いんだ?
異臭放ってんだ?
でもそのおかげで血吸われないですむ。
この微妙な気持ちはなんだろう?
全然嬉しくない。
むしろショック……。
「へ、へぇそーなんだ」
あたしは精一杯苦笑いを浮かべたのだった。
:08/04/12 19:01
:N905i
:☆☆☆
#35 [リナ]
これで見た目だけは同い年と言った意味が分かってもらえただろう。
ミューレイはヴァンパイア。
歳は……まだ死にたくないから言わないよ。
なんか睨まれてるしね。
:08/04/12 19:04
:N905i
:☆☆☆
#36 [リナ]
あの後、あたしたちはデコボコ街道を突き進んだ先にある小さな村に来ていた。
「こんなとこに村があるとは知りませんでしたわ。
まさかティスカがこんなところで、ねぇ?」
村に入るやいなやさっそくミューレイにからかわれる。
:08/04/12 19:05
:N905i
:☆☆☆
#37 [リナ]
「なによ?
ニヤニヤして気持ち悪い」
「恥ずかしがらなくてもいいのよ?」
「な、なんのこと?」
バレてると知りながらもあたしは白をきり歩き続ける。
:08/04/14 00:05
:N905i
:☆☆☆
#38 [リナ]
「もちろん人助けの事ですわ?うふふ」
前に回り込み顔を覗き楽しそうにするミューレイ。
「笑うなぁぁー!」
「あら大声だしちゃって、照れ隠しですわね?」
「分析するなっ!」
ジタバタとあたしは両手を振り上げ地団駄を踏んだ。
ことに少し自己嫌悪……この歳で地団駄て……。
:08/04/14 00:07
:N905i
:☆☆☆
#39 [リナ]
「まぁ耳まで真っ赤になって、可愛いところもあるじゃない」
本当は地団駄で赤くなったんだけど、どっちにしろ言い返せないのが悔しい。
「あたしはただ………………………………………………………やっぱいい」
口にするのが恥ずかしくて、あたしは頬を赤らめ下を向く。
:08/04/16 21:40
:N905i
:☆☆☆
#40 [リナ]
「なによ!?
話しなさいよ、気になるじゃない」
ミューレイに詰め寄られ
「……あたしはただ、困ってる人を助けるも悪くないって思ったのよ。
ミューレイ、あなたと知り合ったのも大きな意味では人助けでしょ?
出会いって大切じゃない?」
言ってウィンク一つ。
ミューレイの件について実際あたしは何の役にもたたなかったけど。
「ティスカ……」
「えっ!?
ちょ、ちょっとなに泣いてるのよミューレイ」
:08/04/16 21:41
:N905i
:☆☆☆
#41 [リナ]
「だって私……私勝手に付いてきたんですのよ?
迷惑なはずなのに嫌な顔せず出会いだなんて……。
私はヴァンパイア、決して人間には受け入れてもらえない。
人の形をした異形の者……。
だから私と対等に話す人間はいなかった……あなた人間のくせに良いところありますのね」
:08/04/24 18:00
:N905i
:☆☆☆
#42 [リナ]
あたしだってヴァンパイアが怖くないわけじゃない。
人の生き血を好み人より長く生き、力も魔力も人間の何倍もある。
でも、異種族だからと解り合えないわけじゃない。
人にも悪い奴が居るように。
グシッと手で涙をぬぐうミューレイを見てフッと表情がゆるむ。
「ほれ、もぉ泣くな」
言ってあたしは布で涙を拭ってやった。
:08/04/24 18:02
:N905i
:☆☆☆
#43 [リナ]
「ありがどぼぉ」
ミューレイの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。
くすっ……やれやれ。
「ほら鼻もでてるから。
涙もろいヴァンパイアなんて聞いたことないよ」
「うっうるさいですわ!」
あたしはそんなミューレイを見て微笑んだ。
:08/04/24 18:04
:N905i
:☆☆☆
#44 [リナ]
「落ち着いた?」
あたしは村長さんの家から貰ってきた水を、しゃがんでいるミューレイに渡す。
「みっともないところを見せてしまいましたね」
今度はミューレイが少し頬を赤らめ恥ずかしげに言った。
:08/04/28 17:57
:N905i
:☆☆☆
#45 [リナ]
「可愛かったわよ〜ありがどぼぉーって」
あたしもしゃがみミューレイを正面から見てニヤニヤ笑ってやったが、もちろん照れ隠しだ。
「そ、そんなこと言ってません!
用があるのでしょ?
さっさとすませて下さい」
「可愛いなぁ〜よしよし」
ぽんぽんっとレイチェルの頭をなで立ち上がると、俄然ミューレイのがスラッとしていて背も高い。
村長さんの家はここから近く、唯一この村にある井戸は村長さん家の前にある。
:08/04/28 17:58
:N905i
:☆☆☆
#46 [リナ]
一軒の家の前で立ち止まりドアを開け中に入ると、村長さんと奥さんがテーブルに付きあたし達を待っていた。
「さっきはありがとうございました」
コトンとコップをテーブルの上に置く。
「いえいえ、急に水をくれなんて何事かと思いましたよ」
ベージュの服を着た優しそうな村長の奥さんにミューレイはペコリと頭を下げた。
:08/04/28 18:01
:N905i
:☆☆☆
#47 [リナ]
「立ち話もなんですから、どーぞお掛けになって?」
奥さんの言葉にあたしは村長の前、ミューレイは奥さんの前に座った。
心労がたたったのか村長は、頬がやつれ疲れ切った表情で前会った時より白髪が増えた気がする。
:08/04/28 18:04
:N905i
:☆☆☆
#48 [リナ]
「大丈夫ですか?」
「ん、あぁ大丈夫だ……」
声にも覇気がない。
「もー心配いりませんよ?
野盗たちは一掃しました。
ここもまたすぐ活気づきますって」
あたしはつとめて明るく言った。
「そうか。
ありがとう、助かった」
嬉しくないのか?
表情は堅いまま。
奥さんも困惑しているようだ。
:08/04/28 18:07
:N905i
:☆☆☆
#49 [リナ]
「なにかありました?」
「いえ、なんでもないんです。
これ以上迷惑かけられませんから、ね?あなた」
奥さんと村長は顔を見合わせうつむいた。
えぇーい!
乗り掛かった船だ!
:08/04/28 18:10
:N905i
:☆☆☆
#50 [リナ]
「話して下さい」
「でも……」
「これも何かの縁。
どこ行く予定もありませんから」
あたしは出来るだけ優しく奥さんに話し掛けた。
村長は先程からうつむいたまま。
「実は…………」
:08/04/28 18:12
:N905i
:☆☆☆
#51 [リナ]
野党を倒した報酬を貰ったあたし達は村長さんの家を後にした。
「これからどうするんです?」
ミューレイは長い髪をクルクルと指に絡ませ遠くを見る。
「取り合えずこの村を出る」
あたしは振り向きもせず答えた。
:08/05/02 20:17
:N905i
:☆☆☆
#52 [リナ]
「それはわかってます。
そーじゃなくて」
「わかってるなら答える必要ないんじゃない?」
頭に血がのぼっているあたしはミューレイの態度に少しイラついてしまった。
:08/05/02 20:18
:N905i
:☆☆☆
#53 [リナ]
「ちょっと!?」
「……ごめん。
ミューレイに当たってごめん」
わかってる。ただの八つ当りだってこと。
ミューレイは悪くない。
怒りをぶつける相手はミューレイじゃないのに……。
「なら行くんですの?」
「このままにしておけない」
あたしは拳をきつく握った。
:08/05/02 20:20
:N905i
:☆☆☆
#54 [リナ]
「……仕方ないですね。
私も手を貸します」
苦笑しながら言うミューレイに
「最初からそのつもりだったけど?」
あたしはニッと笑って言ってみせた。
:08/05/06 20:29
:N905i
:☆☆☆
#55 [リナ]
あたしは町娘の格好からさっそうと魔道士スタイルに着替える。
あたしたちは町を出たところで西に進み道なき道、つまり森を歩く。
「こっちで合ってるの?」
あたしたちは木を掻き分け前へ進む。
「方向は合ってるはずです。
昔行ったことがありますから」
こーなったらミューレイに従うのが懸命。
:08/05/06 20:31
:N905i
:☆☆☆
#56 [リナ]
「でも、生きてるとは限りませんよ?」
後ろを歩くあたしからミューレイの顔は見えないが、トーンがガクッと下がったのはわかった。
やはりミューレイも噂は知っているようだ。
:08/05/06 20:32
:N905i
:☆☆☆
#57 [リナ]
「生きてる確立は?」
「日にちも経ってるみたいですし、0に近いかと……」
生存確立0%
これは決して冗談ではないだろう。
だが、0に近いと言うだけで0ではないはず。
少しの望みでも希望はある。
:08/05/06 20:33
:N905i
:☆☆☆
#58 [リナ]
「今日はここで休みましょう」
「まだ歩ける!」
あたしは休息をすすめるミューレイの言葉にかぶせるように言った。
「二日はかかる距離ですよ?
体力は温存するべきです」
「……わかったよ」
言いつつも、一刻も早く助けたい助けなきゃ!と気持ちだけが先行する。
:08/05/06 20:34
:N905i
:☆☆☆
#59 [リナ]
「調度いい事にあそこに洞穴があります。
今日はあそこで休みましょう」
洞穴のなかは二人が横になるには少し狭く、二人横に並び膝を抱え地面に座る。
外は月明かりだけとなっていた。
:08/05/06 20:35
:N905i
:☆☆☆
#60 [リナ]
「ねぇティスカ」
「なに?ミューレイ」
「私のこと……信じてくれますか?」
ミューレイは前を向いたまま静かに言う。
「急になに言って」
あたしはミューレイの方を見た。
:08/05/06 20:36
:N905i
:☆☆☆
#61 [リナ]
「この先なにがあっても信じてください。
信じてください私を……」
泣くんじゃないかと思った。
あたしの目を見て必死に訴えるミューレイはとても悲しそうな顔をしていたから。
「信じるよ。
なにがあっても信じる」
「良かった……。
何があっても、私がなにをしても信じてください。
私はあなたを裏切らない」
:08/05/06 20:38
:N905i
:☆☆☆
#62 [リナ]
いったいどーしたと言うのだろう?
これから何か起きるのか?
あたしは少し不安になった。
:08/05/06 20:38
:N905i
:☆☆☆
#63 [リナ]
「ここは狭いですし、見張りも兼ねて私外で寝ます。
ティスカはここで寝てください」
スタスタと洞穴を出て行くミューレイの気配が遠ざかった。
:08/05/06 20:41
:N905i
:☆☆☆
#64 [リナ]
ミューレイが出ていった後なかなか寝れず、頭の中に浮かぶは最悪の事態。
それは娘さんの死。
それ以外にも
あたしも捕まり二の舞。
攻撃を受け重傷。
幽閉され餓死、などなど……。
:08/05/06 20:43
:N905i
:☆☆☆
#65 [リナ]
ミューレイと言う強い味方が居るからたぶん最悪の事態にはならないと思うけど。
相手の強さも分からない今、彼女が言うよう体力を温存させるのが最善の策か。
気持ちが高ぶって寝れそうもないが、目を瞑り無理矢理寝ることにした。
:08/05/06 20:44
:N905i
:☆☆☆
#66 [リナ]
「起きてください。
出発しますよ」
「…………うにゅ」
「ティスカッ!」
体を揺すられパチッと目を開けたあたしを見下ろすミューレイの目が冷たい。
:08/05/07 18:26
:N905i
:☆☆☆
#67 [リナ]
「いつまで寝てるんです?」
はうあぁぁ。
あぁ、声も冷たい。
「ごめほにゃっ!?」
ごめんと言おうとしたあたしは手首を掴まれ、グンッと無理矢理立たされた。
「いーから行きますよ」
「んー……寝すぎた」
あたしは目をゴシゴシかきながら洞穴を出るために歩く。
:08/05/07 18:27
:N905i
:☆☆☆
#68 [リナ]
日はまだ昇っていないが、うっすら空が明るくなり始めた頃だ。
とは言っても鬱蒼(ウッソウ)と茂る木々のせいで空はほとんど見えないが。
外に出ると先程と同じようミューレイが先頭を行く。
相変わらず足場の悪い地面と行く手を遮る草木。
:08/05/07 18:28
:N905i
:☆☆☆
#69 [リナ]
これでも前を行くミューレイが枝をへし折り、草を踏み分け走ってるおかけで通りやすくはなってるんだけどね。
村長の娘さんはなんでこんな所に来たのだろーか?
娘さんは遠くの街に働きに出ていて、久しぶりに帰ってくると連絡があったそうだ。
村長夫妻は楽しみに待っていた。
まさかこんな事態に巻き込まれるとは村長夫妻も娘さん自身も思ってはなかっただろう。
:08/05/07 18:29
:N905i
:☆☆☆
#70 [リナ]
それが今ちまたで騒がれているあのヴァンパイア事件だ。
あたしも噂でしか聞いたことはないが、ヴァンパイアと付いてるだけで実際ヴァンパイアが絡んでるかどうかはっきりとした事はわかっていないらしい。
ただ、ある日突然消えるのだ。若い女性が……。
:08/05/07 18:31
:N905i
:☆☆☆
#71 [リナ]
三十日おきに若い女性が一人消え、失踪から七日前後で見つかると言う。
だが今回は失踪してからゆうに二十日をこえているそうだ。
拉致しちゃ帰し拉致しちゃ帰し、誰が何の為にこんな事をしてるのか知らないがこれだけは言える。
ミューレイは関係ない。
:08/05/11 12:24
:N905i
:☆☆☆
#72 [リナ]
そう、関係ないと知りつつも噂のせいで闇の世界の住人としてひとくくりにしてしまった。
あたしはあの時ミューレイに当たってしまったことを後悔している。
だからミューレイは信じてくれなんて言ったのかもしれない。
そんな事を考えながら人の通らない獣道をひたすら走った。
:08/05/11 12:25
:N905i
:☆☆☆
#73 [リナ]
「………今日が……だから……明日が……」
考えるのを止めたとたん耳に入るミューレイの声。
声が外に漏れてるがきっと彼女も考えごとだろう。
「……いや、間に…………早……」
なに考えてるのかな?
ザッ!
あたしが独り言に気を取られ走っているとミューレイが急に立ち止まっ……
:08/05/11 12:30
:N905i
:☆☆☆
#74 [リナ]
「ほげっ。
ちょ、なに急に立ち止まって」
両手で鼻を押さえ抗議の声をあげる。
すぐ後ろを走っていたあたしはミューレイの背中に鼻を打ち付けたのだ。
「急ぎます」
言うが早いかミューレイはあたしの脇腹に腕を回しそのまま空高く飛び立った。
:08/05/11 12:31
:N905i
:☆☆☆
#75 [リナ]
「えっ?
ひやああぁぁあー!
とととととと飛んでっ飛んっ飛んでる!?
ひいぃぃったたた助けっ。
おおお降ろっ降ろっ降ろろろっ。
森っ森があんな小さくっ!
いぃやぁーだぁぁぁー!
降ろしてえぇぇぇー」
あたしはギュッと目を瞑り暴れひたすら抵抗した。
:08/05/11 12:38
:N905i
:☆☆☆
#76 [リナ]
「暴れたら落ちますよ?」
「ひっ!?」
この高さから落ちたらペシャンコどころかグシャグシャ!?
思わず目を開き下を見てしまった。
うぅ……さっきより高い……。
相変わらず体はブルブル震えたままだが、ミューレイの一言で暴れるのを止めおとなしくした。
:08/05/11 12:41
:N905i
:☆☆☆
#77 [リナ]
「そのまま静かにしてて下さいね。
魔道士のくせに飛ぶのが恐いんですか?」
進行方向を向いたまま嫌味ったらしく聞いてくる。
「こんなスピードで飛ばれたら恐いよっ!
だだだいたい高速飛行の魔法は大昔にすたれて現在まで伝わってなな、ないんだからっ」
理由は制御が難しいという事らしい。
:08/05/11 12:44
:N905i
:☆☆☆
#78 [リナ]
あたし達を包むミューレイの風の結界のおかげで髪がバサバサしたり目も開けられないような突風を体に受ける事はないが、ゴオォォーと言う風を切り裂く音は聞こえてくる。
とにかく早いのだ。
空や遠くの景色は同じように、いや、それでもゆっくり動いてはいるが、眼下の森はその比じゃない!
葉や枝の一本一本の残像が今や一面緑の地面のように見える。
早すぎて緑一色しか見えないと言うべきか……。
とりあえず凄く恐いのでヒシッとミューレイの体にへばりつく。
:08/05/11 13:36
:N905i
:☆☆☆
#79 [リナ]
「ティスカ?
そんなにくっつかなくて大丈夫ですわよ。
落としたりしませんから」
「――ッ!?
い、いつまで空飛ぶつもりよ?」
落とされたらたまらん!
ガバッとさっきより強くミューレイにしがみついた。
「そー……ですね。
一日くらいかしら?」
「一日もっ!?なんでっ!?」
大声を出したあたしは空を飛ぶ理由さえ聞かされていない。
いや、まぁ、空を飛んでもいいかと聞かれてすらないが。
:08/05/11 13:40
:N905i
:☆☆☆
#80 [リナ]
「言いませんでしたっけ?」
「言ってない言ってない」
手が使えないあたしは激しく頭をぶんぶん振った。
「もぉすぐ満月です。
“事を起こすなら満月に”って言葉があるでしょ?」
「ないない」
知らないの?と言う顔で見られても困る。
:08/05/11 14:27
:N905i
:☆☆☆
#81 [リナ]
「あら、私たちにだけに伝わる言葉かしら?
人間の言葉で言うと
“悪人に人権はない”でしたっけ?」
ミューレイは人差し指をアゴに当てがいながら酷い事を言う。
まぁ、この言葉を知らない人は居ないだろう。
あの有名な女魔道士の言葉だ。
今では法律に採用されたとかされないとか。
:08/05/11 14:28
:N905i
:☆☆☆
#82 [リナ]
「その言葉は知ってるけど意味違うと思うよ?」
「そーですの?」
「その話はもーいいよ。
事を起こすなら満月がどーしたの?」
なら、と話を続けようとしたミューレイの言葉をさえぎり先をうながした。
「おお落ちる落ちるっ!
ちょっと、手の力ゆるめないでよ!」
:08/05/11 14:30
:N905i
:☆☆☆
#83 [リナ]
あたしを支えるミューレイの力がフワッと緩み、驚いたあたしは大声を上げてしまった。
「大丈夫ですよ風の結界張ってありますから」
ツンとした口調で言うミューレイ。どーやらヘソを曲げたみたいだ。
風の結界の上に立てる事くらい知ってるけどもしもって事もあるじゃないか。
スピードは相変わらず早いまま。
むしろ早くなってる気がするのは気のせい?
:08/05/11 15:02
:N905i
:☆☆☆
#84 [リナ]
「そんな必死の形相で見ないでください。
ちゃんと抱えますよ」
ほっ。
またミューレイの腕に力が入り一安心。
「さっきの話ですけど、満月にって言うのは私たちが一番力を発揮出来るからです」
「あーなるほど。
ミューレイの力が最大限に引き出されるから急いでるんだね」
ん?あれ?
あたし変な事言ったかな?
険しい顔して黙っちゃったけど。
:08/05/11 15:03
:N905i
:☆☆☆
#85 [リナ]
「……違いますわ。
昔行ったことがあると言ったでしょ?」
確かにミューレイは“昔行ったことがありますから”と言っていた。
あの時はさして気にもしてなかったけど……?
まさかやっぱり敵はヴァンパイア!?
:08/05/11 18:29
:N905i
:☆☆☆
#86 [リナ]
「今回に限って失踪期間が長いのはなんでだと思う?」
あたしは動揺をひた隠しミューレイに質問した。
「それは……たぶん見つかったからですわ」
「なに」
「しっ、静かに」
なにが?と言おうとしたあたしの口元に人差し指を当て話すなと示してきた。
:08/05/11 18:31
:N905i
:☆☆☆
#87 [リナ]
「何か聞こえませんか?」
「何かって、なにも……」
あたしの耳には風の結界が唸る音しか聞こえてこない。
異種族のミューレイの耳には何か聞こえてるのだろうか?
「……始まった」
え?
風の音にかき消されそうなほど小さな声で言ったミューレイの言葉をあたしは聞き逃さなかった。
:08/05/12 17:21
:N905i
:☆☆☆
#88 [リナ]
「なにがよ?
始まったってどーゆう意味?」
あたしはぎゅっと眉間にしわをよせミューレイに問う。
「儀式、ですわ。
でもまだ間に合う」
ゆっくりと言ったミューレイの言葉。
――儀式。
やはりミューレイは何か知っている。
:08/05/12 17:32
:N905i
:☆☆☆
#89 [リナ]
「儀式ってなに?」
「儀式
それは人ならざる者の所業。
それは人には過ぎた力。
それは人であって人でない者」
人ならざる者?
ミューレイの言葉は敵はヴァンパイアでは無いとあたしに告げている。
ヴァンパイアならそんな回りくどい言い方をするはずがない。
:08/05/12 17:34
:N905i
:☆☆☆
#90 [リナ]
「それはミューレイの敵でもある?」
この意味が解るだろーか?
人の敵であるからと言ってヴァンパイアの敵とは限らない。
ヴァンパイアと手を組んでいる奴にミューレイは手を出せない。
つまり、ヴァンパイア一族を敵に回してまで人間の味方をする意味がないと言う事。
:08/05/12 17:37
:N905i
:☆☆☆
#91 [リナ]
:08/05/12 17:41
:N905i
:☆☆☆
#92 [リナ]
「敵ではありません」
やっぱり……でなけりゃ敵の居場所を知るはずが無いよね。
聞かなきゃ良かった。
あたしは今最強の味方を無くしたのだ。
ミューレイの言葉を借りるなら“人ならざる者”そんな奴に人間であるあたしが勝てるだろうか……。
「まだ話は終わってませんよ。
敵ではありませんが、味方でもありませんもの」
そう、ミューレイは味か……へ?
:08/05/12 22:33
:N905i
:☆☆☆
#93 [リナ]
「なにポカンとしてるんですか?
ですから、敵でも味方でもありません」
「そそ、そーなの?」
「私はあなたを裏切らないと言ったはずです。
出来るなら関わりたくない相手ではありますけどね」
:08/05/13 17:11
:N905i
:☆☆☆
#94 [リナ]
あたしの早とちり。てへ。
握ったこぶしを軽く頭に当てベロを出すと言う古くさいスタイルの可愛子ぶりっこをした事をあたしは後悔することになる。
「なにしてるんですか?
手、離しますよ?」
ビクッひええぇぇ。
あたしを見下ろすミューレイの目が冷たすぎる。
本気だ!この目は本気であたしを落とすつもりだよ!
「手の力ゆるめないでお願い……」
空の上では無力だよあたしゃ……。
:08/05/13 17:13
:N905i
:☆☆☆
#95 [リナ]
「移動に1日もかけてられません。
飛ばします」
ドンッ!!
言うやいなやミューレイは魔力を解放した。
ビリビリと肌を刺すような感覚とプレッシャー。
解ってはいたがさすがヴァンパイア。
魔力が桁違いにデカい。
ミューレイの目は血のような赤に染まり、首や腕には血管や筋が浮き出ていて一目で人外の者だと解る風貌になった。
「しっかり掴まっていて下さい」
う……嘘でしょ?
:08/05/14 23:01
:N905i
:☆☆☆
#96 [リナ]
風の結界は解いてないはずなのにシュンッ、シュンッと外気が結界の中にまで入り肌を傷つける。
人が立っても壊れない結界に空気が入ってくるような隙間があるわけないのに、だ。
ただの風が刄とかすほど魔力を解放したミューレイは飛ぶスピードが早くなったと言うことか。
あたしも怖いなんて言ってられないな。
:08/05/16 13:43
:N905i
:☆☆☆
#97 [リナ]
「ウィンディシールド【封気結界呪】」
あたしは急ぎ呪文を唱え、風の結界を二重に張った。
これで結界強度は二倍。
外気が入ってくることは無くなった。
:08/05/16 13:45
:N905i
:☆☆☆
#98 [リナ]
――――シュタッ。
しばらく飛んだあと、ミューレイが術を解きあたしは久しぶりに地面に立つ。
地面と言っても足の下は草。
あたしの背ほども成長した草の中に着地したのだ。
:08/05/16 13:52
:N905i
:☆☆☆
#99 [リナ]
なぜ術を解いたのかわからず不思議そうに顔を覗き込むと
「すぐそこです」
ミューレイが指差した前方を草を掻き分け見るが、古城らしき物は見当たらない。
「お城なんてどこにもないよ?」
「お城、ですか?
そんな物ありませんよ?」
お城がない!?
:08/05/16 13:54
:N905i
:☆☆☆
#100 [リナ]
ヴァンパイア事件。
ヴァンパイア=城がセオリーじゃないか。
古城が見れると思って内心わくわくしてたのに。
城も無いのにヴァンパイア事件……誰がこんなネーミング付けたんだ。
くうぅ名前負けしてる!
:08/05/16 13:56
:N905i
:☆☆☆
#101 [リナ]
「なにをごちゃごちゃ言ってるんですか。
あれが敵のアジトです」
耳元でミューレイが小さくささやく。
再び全方に目を凝らし、目に入ったそれを見てあたしは愕然とした。
あれは……
:08/05/16 13:57
:N905i
:☆☆☆
#102 [リナ]
「ほったて小屋?」
木で出来たぼろっちい年季の入ったそれは、ほったて小屋以外のなにものでもない。
「ただのほったて小屋ではありませんわ」
ほったて小屋にだだのも何もない気がするが?
:08/05/21 18:21
:N905i
:☆☆☆
#103 [リナ]
グリンッ。
ほへ?
前方に注意を向けていたあたしの肩に手を置き、突然ミューレイがあたしを無理矢理自分の方に向かせる。
「え?ちょ、な」
:08/05/21 18:23
:N905i
:☆☆☆
#104 [リナ]
ミューレイは口の端をニヤリ釣り上げあたしの耳元に口を近づけるとボソボソと何かを言った。
――――ッ!?
それと同時に走る腹部への激痛。
ミューレイの言葉を理解する間もなく
ドサッ
声にならない悲鳴を上げ、あたしは腹をかかえ草の上に崩れ落ちた。
:08/05/21 18:24
:N905i
:☆☆☆
#105 [リナ]
ギイィッ――…
「誰じゃっ?」
「お久しぶりです。
ミューレイです」
「……ミューレイ?
どこのミューレイじゃ?」
「どこの?
ふふふっ私の顔をお忘れですか?」
「いや……」
:08/05/22 17:35
:N905i
:☆☆☆
#106 [リナ]
「他のみなさんは?」
「奥におる。
おいみんなっ、ミューレイちゃんが来てくれたぞ」
ほったて小屋の部屋の奥からぞろぞろと気配が近づいてくる。
:08/05/22 17:36
:N905i
:☆☆☆
#107 [リナ]
「ミューレイちゃん?
何百年ぶりかえ?
相変わらず若くて綺麗じゃのぅ」
「やっと仲間になる決心がついたか?」
「ふぉっふぉっふぉっ」
「明日は待ちに待った儀式の日じゃてのぅ」
「そうじゃ、明日は仲間が一人増えるめでたい日じゃ。
いい時に来なすった」
:08/05/22 17:41
:N905i
:☆☆☆
#108 [リナ]
ん……ここは?
頭がハッキリしない。
クッ、ズキンと腹部に痛みが走った。
あたしは顔をしかめ痛みに耐える。
ここはどこだろう?
「ところで抱えてるそれはなんじゃ?」
:08/05/22 17:42
:N905i
:☆☆☆
#109 [リナ]
「あなた方の事がバレたんじゃありません?
魔道士がここをかぎ回っていたので気絶させて連れてきたんですよ」
ミュー……レイ?
なんの話!?何を言って
「ふむ魔道士か」
「地下牢はまだあります?」
:08/05/28 17:27
:N905i
:☆☆☆
#110 [リナ]
「まだあるぞよ」
「私がこの魔道士を地下牢へ連れていきますわ」
「ふぉっふぉっふぉっ」
「そうだわね、魔道士は使えやしない」
「頼んだぞミューレイちゃん」
「ちょいと待ちな。
これが地下牢の鍵だよ」
代わる代わる聞こえる声。
誰かがチャリンと何かを投げてよこしたようだ。
あたしを牢屋に閉じ込める気!?
:08/05/28 17:29
:N905i
:☆☆☆
#111 [リナ]
ミューレイ?
嘘でしょ!?なんで!?
どーゆうつもり!?
おそらくミューレイの術だろう。
あたしは体の自由が効かず声帯もやられてるらしく声も出せない。
あたしの目に映るのはミューレイの背中と床のみで、まわりに居る声の主たちや部屋の様子をうかがい知ることは出来なかった。
:08/05/28 17:31
:N905i
:☆☆☆
#112 [リナ]
ミューレイが何もない壁に手を置くと、ギイッと重たく軋んだ音を立て壁が中側に開く
――――隠し扉。
壁の中には階段があり、ミューレイはあたしをかかえ階段を下り始めた。
「ティスカ、静かにしてて下さいね」
背中越しに聞こえるミューレイの声はどことなく冷たい。
:08/05/28 21:52
:N905i
:☆☆☆
#113 [リナ]
地下へ向かう階段や壁はむき出しの土壁。
ではなく崩れないよう綺麗に造りこまれており通路も広く、大人3人が横に並んでもゆうに通れるだろう。
薄暗い地下の壁には申し訳なさ程度の電球と光りごけが生えているおかげでそれなりに明るい。
光りごけとは名の通り微量の光を発するこけの事。
暗いところを好み栽培しなくても勝手に繁殖、増殖していく有り難迷惑なやつ。
:08/05/28 21:53
:N905i
:☆☆☆
#114 [リナ]
ミューレイに抱き抱えられどれほど階段を下っただろうか?
確かにただのほったて小屋では無いようだ。
地下にも限らず至る所にドアや何に使うか解らない空間が広がっている。
だが行けども行けども肝心の地下牢にはたどり着かず、チッとミューレイの舌打ちが小さく響いた。
:08/05/28 21:55
:N905i
:☆☆☆
#115 [リナ]
「この階段どこまで続いてるんですかね?
……ティスカ自分で歩いてくださいます?」
苛立った口調で言うとわりと乱暴にあたしを地に降ろした。
イタッ!
ドスンと足の裏で体重を受けとめ膝にも衝撃。
ジンジンと足が痺れる。
:08/05/28 21:56
:N905i
:☆☆☆
#116 [リナ]
「逃げようなどと考えないでくださいね」
釘を刺されるまでもなく逃げれない事くらい解ってるよ。
ミューレイのみならず、上には得体の知れない敵が複数居るのだから。
:08/05/28 21:57
:N905i
:☆☆☆
#117 [リナ]
「行きますよ」
スタスタと前へ進むミューレイ。
あたしはその場から一歩も動かない。
別にイジになってるわけじゃないんだが……。
「ティスカ?
あぁ、そーでしたね」
やっと気付いたようだ。
:08/05/28 21:58
:N905i
:☆☆☆
#118 [リナ]
ミューレイがパチンッと指をならすと体の自由と声が戻ってきた。
「これで歩けますでしょ?」
「どーゆうつもりよミューレイ!」
かなり大きく言ったあたしの声は地下に響いたのみでミューレイは知らん顔。
:08/05/28 22:04
:N905i
:☆☆☆
#119 [リナ]
あたしが何を言っても何を聞いても相手にされなかった。
……ミューレイ。
きょろきょろ周りを見渡しながらおとなしく後ろを歩くこと数分。
あたしたちは分厚く頑丈な扉の前、そう、地下牢に着いたのだ。
:08/05/28 22:05
:N905i
:☆☆☆
#120 [リナ]
「どーぞ、あなたのお部屋ですよ?ティスカ」
重そうな扉をやすやすと開け見下すような笑顔でおじぎをすると中へ入れと手で誘導してきた。
その態度にはイラッとしたが、今ミューレイに攻撃するわけにはいかない。
村長の娘を助けだしたら覚えてろよ!
あたしは心の中で悪態をついた。
:08/05/28 22:07
:N905i
:☆☆☆
#121 [リナ]
見たところこの部屋全体が地下牢として機能しているみたいだ。
扉も一枚で、頑丈な作りのわりに取り付けてあるのは粗末な鍵一つ。
もしかしたらこの中に村長の娘さんが居るかもしれない。
あたしはミューレイにうながされるまま地下牢へと足を踏み入れ
――――ガチャリ
後方で鍵の閉まる音を聞いた。
:08/05/28 22:08
:N905i
:☆☆☆
#122 [リナ]
地下牢の中にも光りごけが繁殖していて魔法の明かりを灯す必要はなさそうだ。
通路とは違い電球がないので足元がうっすら見えるくらいの明るさだが問題はない。
うーん……。
この部屋に入った時から向けられている視線は殺気ではなく警戒?
:08/05/29 07:34
:N905i
:☆☆☆
#123 [リナ]
あたしが敵か味方か解らないと言った感じのもの。
視線の主は部屋の奥にいてはっきりと顔は見えないが雰囲気からして女性。
「あたしも捕まったのよ」
両手をひらひらと頭上にあげ敵でないことを示してから気配のする方にゆっくり歩いた。
:08/05/30 00:34
:N905i
:☆☆☆
#124 [リナ]
「あなたはいつからここに?」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………な、長い沈黙。
あたしは相手の答えを待ちつつ部屋を見て回る。
:08/06/02 17:01
:N905i
:☆☆☆
#125 [リナ]
コンコンと至るところの壁を叩いてみた。
床と左右の壁は向こうに音が響くことはなく、この部屋が完全に土に覆われてることがわかった。
出入口まで戻り扉を開けようと押してみるが扉はきっちり閉められていて開く気配はない。
やっぱ出られないか。
:08/06/02 17:10
:N905i
:☆☆☆
#126 [リナ]
だがこれくらいの扉ならどーにか出来ないことはない。
乱暴だとか言うなかれ。
攻撃魔法一発だ。
これぞ乙女のたしなみ黒魔術!
出口は確保。
あとは奥にいる相手を確かめねば。
:08/06/02 17:12
:N905i
:☆☆☆
#127 [リナ]
「ねえ、どーやったら出られると思う?」
あたしは奥にいる相手と距離を置き背を壁にもたれ床に座り聞いた。
きっと今回も相手の反応は無いだろう。
「で、出られませんよ」
おっ?
オドオドとした口調だけど少しは心を開いてくれたみたいね。
:08/06/15 12:15
:N905i
:☆☆☆
#128 [リナ]
あたしは立ち上がり奥を見て
「あたしの名前はティスカ。
あなたの名前は?」
満面の笑みで自己紹介をした。
満面の笑みと言っても光りごけの薄暗い明かりじゃニマリ、と気味悪い笑顔に見えなかったかもしれないけど……。
ようは気持ちが肝心よね?ねっ?
:08/06/20 17:14
:N905i
:☆☆☆
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