危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#766 [東脂ヤ転
[俺は…こんなにも彩華を傷付けてる…]
何度も何度も涙をこぼす彩華を見て、俺は改めて自身に問いかける。
こんなにも誰かを傷付けてまで、俺は静兄と一緒になって良いのか…?
"誰かの不幸の上に幸せなど築くことは出来ない"
良く耳にする言葉だけど、俺は昔誰かからこの言葉を聞かされたんだ。
そして今実際に俺は彩華を苦しめていて、彩華を不幸にしようとしている。
そこまでして、俺が静兄と一緒になる意味は…意味は在るんだろうか?
何も言えずただ立ち尽くしている俺を、彩華は静かに見ていた。
:08/09/13 00:56
:W52P
:☆☆☆
#767 [東脂ヤ転
「…鳴ちゃん…さぁ」
暫く続いた沈黙の後、先に口を開いたのは彩華の方だった。
不意に名前を呼ばれ、俺はまた視線を彩華に戻す。
「他に好きな人が出来たんでしょ?」
「………え?」
さっき泣いていた時のような表情とは打って変わって、彩華のは眼は真っ直ぐ俺を捉えている。
それとは逆に俺は眼を反らしたくて仕様がなかった。
「そうなんでしょ?」
少しずつ追いつめるように彩華は俺に近付く。
それでも俺は応えられない。頷いたら彩華はきっと、それが誰なのかを知りたがるだろう。
その名を俺が口にするワケにはいかないんだ。
:08/09/15 16:38
:W52P
:☆☆☆
#768 [東脂ヤ転
ー…キーンコーンカーン…
「!!」
その時、タイミングを見計らったかのように始業ベルが鳴り響いた。
俺はその音を聞きながら内心ホッとしていた。
これで何とか時間稼ぎに出来そうだ。
「チャイム鳴ったしさ…話はまた放課後にしない?その時全部話すから」
「……分かった」
さすがの彩華も授業をサボってまで問い詰めようとは思っていないようで、俺の言葉を聞くとすぐにドアの方へと駆けだした。
:08/09/15 23:22
:W52P
:☆☆☆
#769 [東脂ヤ転
ドアノブに手を掛けた彩華はドアを開けたかと思うと、くるっとこっちを振り返った。
「鳴ちゃん…正直な理由を聞かせてくれないならあたし、別れる気は無いからね」
もう一度俺の眼をしっかり見つめそう断言すると、彩華は急ぎ足で階段を下りて行った。
「正直な理由…か」
俺は小さく呟くと溜め息をついた。
彩華には悪いがそれだけは絶対に出来ない。
それっぽい理由を造り上げるしか方法は無さそうだ。
空を見上げると相変わらずの曇り空。
いっそのこと大雨でも降ってくれれば良いのに、なんて思いながら俺も屋上を後にする。
:08/09/15 23:25
:W52P
:☆☆☆
#770 [東脂ヤ転
男同士の恋愛が世間でどういう目で見られているのか、どういう風に思われているのか、俺は充分分かっているつもりだ。
だからこそ彩華に本当の事なんか言わない。事実を伝えることこそ酷な話だと思う。
だってそうだろ?
「俺は兄貴を好きになったんだ、お前以上に。
だから別れてくれ。」
なんて言って、すんなり受け入れられる女子高生が居るか?
俺の思う"一般的な女子高生"はきっと理解出来ないだろう。
そして彩華は、その"一般的な女子高生"だ。
:08/09/15 23:29
:W52P
:☆☆☆
#771 [東脂ヤ転
本当の理由なんて…伝えたところできっと、今以上に傷付けるだけだ。
それなら嘘の理由でも彩華を傷付けずに別れるのが一番良いに決まっている。それに今の俺には、最後にそれ位しかしてやれない。
そう自分自身に言い聞かせながら、俺はゆっくりと階段を下りて行く。
[もうホームルーム始まってるよなぁ…]
そんなことをぼんやり考えながら廊下を歩いていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「おーい!めーいーっ」
俺の名前を呼び捨てにする奴はこの学校で一人しか居ない。
:08/09/15 23:39
:W52P
:☆☆☆
#772 [東脂ヤ転
「もうホームルーム始まってんじゃないの?北原」
俺は振り返って立ち止まると、走って来る北原に向かって尋ねた。
北原は上がる息を少し整えてニッと笑って見せる。
「多分な。でも鳴も一緒ならお叱りも受けずに済むし!担任、鳴には甘いからなぁ〜」
北原のいつもの脳天気な明るさが今日はヤケに堪える。
きっと互いに温度差があるからだろう。
俺は彩華とのことで頭が一杯で北原の話が何一つ入って来なかった。
:08/09/16 16:50
:W52P
:☆☆☆
#773 [東脂ヤ転
「っていうかお前さぁ、林と別れたんじゃないよな?」
「……は!?」
話の流れから聞き流そうとした時、突然北原は思いがけない事を訊いて来た。
あまりに直球の質問に、は動揺を隠しきれずに居た。
「やっぱ図星かよ〜。
さっき林とすれ違った時目が赤かったから、もしかしてとは思ったんだけどな」
それだけで別れ話をしていたと判るなんて、意外と北原は勘が鋭かったんだと驚かされる。
[絶対反対されるだろうな…]
俺は次に北原からどんな罵声が飛ぶのか少し身を構えた。
:08/09/16 22:22
:W52P
:☆☆☆
#774 [東脂ヤ転
しかし北原は意外にも晴れ晴れとした表情(カオ)で「そっか」とだけ呟くと黙って歩き出した。
「そっか…って、お前が言いたいのそれだけ?」
彩華と俺の仲をあれだけ取り持っていた北原だ。相談も無しに別れようとしている事を怒るなり、反対するなりあっても良いと思うんだけど…。
俺の方はそんな思いを巡らせて北原に訊いたのに、当の本人はあっけらかんとした様子で逆に訊き返して来た。
「え、何?俺に何か言って欲しいの?」
:08/09/16 22:25
:W52P
:☆☆☆
#775 [東脂ヤ転
「…いや、別にそういうワケじゃないけど…」
北原はいつも通り笑っているのだが、何故か俺には北原の行動が腑に落ちないでいた。
そうこうしている間に教室が見えて来て、担任の声も徐々に聞こえて来る。
「あ、そうだ鳴」
教室までもうすぐそこという所まで来た時、突然北原が思い出したように声を上げた。
「林とのことなら心配すんな。俺が何とかしてやるからさ。…な?」
北原はそれだけ言うとまたニッと笑って、いつものノリで教室へと入って行った。
:08/09/16 22:28
:W52P
:☆☆☆
#776 [東脂ヤ転
「何とかしてやる…?」
俺は北原の言葉の意味がよく分からず、その意図を読み取ろうと教室の前で立ち止まった。
しかしそれも次の瞬間、無駄な足掻(アガ)きになってしまう。
「日下部君!とっくにホームルーム始まってるわよ!!」
…担任の俺を呼ぶ馬鹿デカい声のせいで。
:08/09/16 22:31
:W52P
:☆☆☆
#777 [東脂ヤ転
ーーーーーーーー
「えー…だから、この否定構文の訳はここで意味を持つのであって…」
この日最後の授業の英語は、未だかつて無い程頭に入ってこないでいた。シャープペンシルの音と教師の声が教室内に響く中、俺は一人退屈そうに窓の外を見つめる。
あと数十分もすれば彩華とまた屋上で話し合わなければならないのに、上手い言い訳が全く思い浮かばない。
空は朝と変わらず灰色で俺の気分を益々落ち込ませる。
:08/09/18 09:25
:W52P
:☆☆☆
#778 [東脂ヤ転
[こんな時…静兄だったらどうするだろ…]
目を瞑ると静兄の笑顔が浮かんだ。
きっと静兄だったら何の迷いもなく彩華に言うだろう。
「俺は鳴が好きなんだ」って。
実際に言われたワケでもないのに俺は何故か、顔が熱くなるのを感じた。
[静兄に会いたいなぁ…]
家に帰ればいつでも会えるのに、不思議ともう何日も会っていないような気持ちだ。
本当なら今すぐにでもこの場を逃げ出して真っ直ぐ家まで走って行きたいけれど、そういうワケにもいかないだろう。
時計に目をやると授業終了まであと十分。
変な緊張が俺を襲う。
:08/09/18 09:26
:W52P
:☆☆☆
#779 [東脂ヤ転
…ドクンー…ッ
何か変だ。急に胸の鼓動が大きく聞こえる。
俺の中の何かが異様に不安を訴える。
『林とのことなら心配すんな。俺が何とかしてやるからさ。…な?』
その時突然さっきの北原の言葉が頭をよぎった。
そうだ、この言葉がずっと引っかかっていたんだ。それに言葉だけじゃない、あの時の北原の妙な笑みが気になっていて。
北原とは長い付き合いだが、あんな表情(カオ)を俺は初めて見たような気がする。
何というか…何かを内に秘めた笑み。
上手く表現出来ない不安が募るのに、時は進むのを止めない。
:08/09/18 09:40
:W52P
:☆☆☆
#780 [東脂ヤ転
ーーーーーーーー
「日下部ーッ」
帰りのホームルーム終了とほぼ同時のタイミングで後ろから大声で名前を呼ばれる。
「来た」と俺は心の中で呟いた。
振り返ると案の定、クラスメートの隣には彩華の姿があった。
教室内は掃除の為に机を動かしたり掃除道具を出したりで皆忙しく動き回っていて、俺達の様子が違うことなんてちっとも気が付いていないようだ。
「…行こっか」
彩華が小さくそう言ったのを合図に俺達は教室を出て、その足で屋上へと向かう。
しかしその時は気付いていなかった。
彩華と北原がアイコンタクトを取っていたなんて。
:08/09/19 15:49
:W52P
:☆☆☆
#781 [東脂ヤ転
キィー…ッ
屋上の扉が軋む音を立てながらゆっくりと開く。今朝来た時よりも風は無く、代わりに雲の隙間から少し光が刺していた。
「もう晴れても良いのにね…」
そんな空を見ながら彩華は呟いた。
俺は彩華の言葉に返事も返さず、未だ言い訳の言葉を探している。
だが、探すには時間が経ち過ぎていた。
「鳴ちゃん…」
彩華が俺の名を呼ぶ。
それが合図のように俺の胸は早鐘を打ち始める。
[こうなったら…]
もう適当に何か言っておくしかない、そう心に決めた時、
「北原君に聞いたよ。
それならあたしも…納得出来たから」
次に彩華の口から発せられた言葉は予想外のものだった。
:08/09/19 16:38
:W52P
:☆☆☆
#782 [東脂ヤ転
「…え?」
彩華の言っている意味が全く分からない。
北原が…何だって?
しかし彩華は俺の動揺した様子を違う意味に捉えたのだろう。
俺に柔らかく微笑んだ。
「始めから正直に言ってくれたら、あんな責めるような言い方しなかったのに。
本当、鳴ちゃんは優しいね」
"正直に言う"?
北原は彩華に何を言ったんだ?
彩華の穏やかな表情とは逆に俺は混乱していた。
どうやら北原が言っていた通り"何とかしてくれた"みたいだ。
普通ならここで喜ぶべきなのかもしれない。自分じゃ何とも出来なかった問題を、北原が手助けしてくれたんだから。
:08/09/20 10:57
:W52P
:☆☆☆
#783 [東脂ヤ転
[だけど…]
それでも俺の胸はざわついて止まない。
言いようの無い不安が込み上げる。
「それじゃあ…あたしこれから部活だし、行くね」
沈黙に耐えかねたのか、突然彩華はいつも以上に明るい声で言った。
「行くね」この言葉が俺には「さよなら」にも聞こえた。
彩華の声に俺は顔を上げると、今朝とは違い彩華は何故か諦めたような笑顔を浮かべていた。
長いようで短かった彩華との付き合いが、こんなにもあっけなく終わろうとしている。
:08/09/20 11:00
:W52P
:☆☆☆
#784 [東脂ヤ転
「…今までありがとな」
俺は何とかそれだけ言うとぎこちなく笑った。
それにつられるように彩華も微笑むと、小さく頷く。その目はまた涙が込み上げているように潤んでいた。
彩華は俺の視線に気付いたのか慌てて目をこすると、照れくさそうに笑って小走りで屋上を後にした。
「…終わっ…た」
誰も居なくなった屋上で一人、俺は溜め息をつく。ある意味解放感と罪悪感の入り混じった溜め息。
最後の彩華の笑顔があまりに真っ直ぐで、俺の胸は罪悪感でいっぱいだった。
:08/09/20 11:09
:W52P
:☆☆☆
#785 [東脂ヤ転
「鳴、別れられたんだ?」
その時だった。
突然背後から名を呼ばれ俺は身を強ばらせる。
振り返らなくても、声の主が誰かは見当がついた。
俺の名前を唯一、この学校で呼び捨てにする奴。
「…北原」
俺はゆっくりと振り返りながら言った。
名前を呼ばれた本人は何故か嬉しそうに微笑むと、俺の方に近付いて来る。
それと同時に、止み始めていた筈の風が屋上に再び吹き始める。
:08/09/20 11:53
:W52P
:☆☆☆
#786 [東脂ヤ転
「良かったじゃん上手く別れられて。俺の言った通りになったろ?」
風に揺れる髪型を気にしながら北原は俺にそう訊いた。
妙に愉し気な北原の態度が気になったものの、俺は北原の方に向き直る。
「お前さ…彩華に何て言ったの?」
「まぁまぁ〜良いじゃんそんな話は後で!
それより大事な話が有るんだよ、俺は!」
北原は俺の言葉を遮るように声を上げる。
俺はそんな北原を怪訝な顔で見つめる。
「大事な話?何だよ?」
今の俺にとっては彩華についての話が最も重要な話なのだが、一応北原の話を聞こうと応えを促した。
:08/09/20 15:41
:W52P
:☆☆☆
#787 [東脂ヤ転
「林とちゃんと別れられたことだし」
「…?あぁ…」
「鳴、俺と付き合わない?」
「………は?」
一瞬の沈黙の後、俺は思わず耳を疑った。
誰が誰と付き合いたい…って?
「気付かなかった?
俺はずっとお前が好きだったんだよ」
北原は至って冷静に話を続ける。
どうやら冗談でもふざけているワケでも無いようだ。
北原の目から本気だといことが分かる。
「そんなこと…突然言われて…も」
何かの罰ゲームかとも思える状況が俺を襲う。
しかし、罰ゲームはそれだけではなかった。
:08/09/20 16:10
:W52P
:☆☆☆
#788 [東脂ヤ転
「まさか断ったりしないよな?
兄貴とは平気でキスとか出来るお前がよ」
北原の一言で俺は全身が凍りつくような感じを覚えた。
今までの混乱とは比にならない程のパニックに陥りそうになる。
僅か一瞬の間に。
「何…意味分かんないこと言うなよ、北原」
やっとのことで出て来た言葉は酷く弱々しい反論の言葉だった。
「今更隠すなって。ほら」
俺とは逆に驚く程冷静な北原は、俺に自分の携帯を差し出した。
:08/09/20 16:23
:W52P
:☆☆☆
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