【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#15 [梓 [真夜中の着信](2/2)]
電話は、見なかった事にしよう。後で履歴も消しておこう。そうすれば無かった事にできる。今まで通りの生活が送れる。
―本当にそれでいいの?
だって私はまだ思い出にできていない。
―会いたいんじゃないの?
会うべきじゃないの。
―まだ好きなの?
冗談じゃないわよ、あんな奴もう好きじゃないわ。
―じゃあ電話くらいいいじゃない。
…声を聞いたら会いたくなっちゃうじゃない。
私はそっとポケットから携帯を出した。一昔前の曲が静かな部屋に鳴り響く。
彼が好きだと言っていた、あの曲。
私はじっと携帯を見つめていた。
---END---
:08/03/03 03:07 :SO703i :☆☆☆
#16 [[世界の真実]ふむ(2/3)◆s8/1o/v/Vc]
「おいおい冗談じゃねぇぞ!」
俺は慌てて電源を押し戻す。
しかし、いつまで押し続けていても一向に電源は戻らなかった。
電池はしっかりと三本補充されていたのを見たから、電池切れではないだろう。
念のため、充電器に差し込んだが反応はなかった。
そういえば停電だったな…。
思い出せば諦めたように携帯を投げ出して、ベッドに倒れ込む。
静かな時間が流れて、妙な違和感を抱いた。
嫌な予感のような、違和感を。
不意に横を見れば電子時計が発色していた。
「…ん?」
はて、気のせいだろうか。
電子時計の示す文字の光が弱々しくなってきているような…。
ぼんやりとそんな事を考えていたら、突然糸が切れたかのように電子時計の文字が消えた。
「…!?」
それを見ると俺は目を丸くした。
さっきからどうもおかしい。
違和感の原因がわかったのである。
無音なのだ。
静かすぎる、車の音すら聞こえない不気味な程無音の世界。
俺は立ち上がり窓を全開に開けた。
:08/03/03 03:23 :SH905i :☆☆☆
#17 [[世界の真実]ふむ(3/3)◆s8/1o/v/Vc]
「何だよ…これ」
声が震えていた。
目の前に広がった光景は、真の闇。
停電の規模ではなく、人を失った不気味に佇む建物たちがひっそりと列を連ねていた。
照らし出すのは淡く朧な月明かりのみであった。
「誰も…いないのか?」
その時、後ろのベッドの片隅から声が聞こえた。
ベッドに寝転ぶ時はいつも掛けているラジオが、作動した様子だった。
俺はゆっくりと振り返る。
不気味なまで薄暗い室内に無機質なラジオの声が響いた。
途切れ途切れに数秒流れた後、ラジオは完全にその機能を失った。
俺は聞き取り難いラジオの内容に言葉を失った。
愕然と立ち尽くす俺に、先程ラジオは言った。
《現在…ょ…には…緊急…避難勧告が…されて…大変…危険…すので…ただちに…》
喋る物を無くした世界は、無音の世界へと続く不気味な静けさに包まれていった…。
:08/03/03 03:26 :SH905i :☆☆☆
#18 [[世界の真実]ふむ(3/3)◆s8/1o/v/Vc]
:08/03/03 03:31 :SH905i :☆☆☆
#19 [賭け(1/3)]
俺はその日、1人でバーで呑んでいた。
特に理由は無い。ただ何となく、1人でいたかっただけだ。
カクテルの入ったグラスを静かに回していると、隣に1人の男が座って話し掛けてきた。
「君、もしよければ僕と賭けをしないか?」
フォーマルなスーツを着た、ごくごく普通の男。
いきなり何を言ってるのだろうか、と普段なら思っていただろう。
聞く気になったのは俺が酔っていたからだろうか。
「どんな賭けだい?」
「なぁに、簡単な賭けさ。君は何があっても顔が上を向いてはいけない。上を向いたら負けだ」
上を向いたら負け?そんなの向く訳無いだろう。
だが、今日初めて会ったばかりのこの男がどう上を向かせるかは、なかなか面白そうだ。
その時は文字通り酔狂だった俺は、賭けに応じる事にした。
「で、何を賭けるんだい?」
「この店で呑んだ代金さ。君が上を向いたら君が僕の代金を奢る。向かなければ逆だ」
なるほど、それなら例え負けてもそんなにダメージにはならないな。
「よし分かった」
「なら、今からスタートだ」
:08/03/03 03:38 :P903i :zBYy/l0.
#20 [賭け(2/3)]
賭けが始まった。
男はスーツの上着を脱いで、早速俺に話し掛けてきた。
内容は別段他愛のない世間話のようなものだが、男の話術に引き込まれてしまう。
だがこれは罠だ。きっと巧みに話しくるめて上を向かせるのだろう。
俺はそう思い、いつ仕掛けてくるか警戒しながら、男の話に耳を傾けていた。
それから、1時間程が経った。
男はまだ仕掛けてこない。
話の内容も、先程と話題は変わってはいるが特におかしな点はない。
そろそろ仕掛けてきてもいいと思うのだが。本当に俺を負かす気があるのか?
もしかしてただの暇潰しだろうか。
いや、そう思わせるのが罠に違いない。きっとそろそろ上を向かしにかかってくるはずだ。
そう考えていた時、男が腕時計を見ながら言った。
「おや…もう時間だ。悪いが賭けはおまいだ」
おしまい?俺はまだ上を向いてはいないが。
……という事は。
「…賭けは、俺の勝ちって事になるのか?」
「悔しいけどそうだね」
あっさりすぎて、なんとも拍子抜けだ。
だが、これで呑み代が浮くしまぁいいか。
「悪いが行かないと駄目でね。これで払っておいてくれるかな?」
男はそう言って財布から1万円札を取り出し、俺の前に置いた。
「今日はどうも。君と話せて楽しかった」
男が俺の前に手を差し出してきた。
「そうだな、俺も楽しかったよ。ありがとな」
またいつか会いたいものだ。
そう思いながら、男とがっちりと握手を交わした。
:08/03/03 03:39 :P903i :zBYy/l0.
#21 [賭け(3/3)]
代金は2人合わせて8000円。1万円でお釣りが出る。
呑み代が浮いたどころか、少し儲かった。自然と顔が綻んでくる。
足取り軽くレジへ向かう。
だが、男から貰った1万円札を出そうとした時に、1万円札がおかしい事に気が付いた。
なんというか、紙質が違う。厚みも少し違う気がする。
「…もしかしてあいつ、偽札を!?」
慌てて1万円札を電灯の光にかざして、透かしを見る。
そこに写っていたのは福沢諭吉ではなく。
『ほら上を向いた ごちそうさま』
こう書かれていただけだった。
:08/03/03 03:39 :P903i :zBYy/l0.
#22 [◆vzApYZDoz6]
:08/03/03 03:41 :P903i :zBYy/l0.
#23 [ゆびきりげんまん(1/2)]
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった。
「私ね、昔約束したんだ」
「約束?へぇー、誰とよ?」
図書館の机。
私の前に座る友達が読んでいた本を閉じた。こんな話にも興味を持ってくれたらしい。
広辞苑を読んでいたのだから、相当暇だっただけなのかも知れないけど。
「誰かは思い出せないんだ。どんな約束かもよく憶えていない」
「何それ。約束した事しか憶えていないの?」
「うん。誰かと指切りげんまんしたんだ」
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった。
頭の中で、そのフレーズがずっと反芻される。
あの約束で、初めて交わした指切りげんまん。
:08/03/03 04:20 :P903i :zBYy/l0.
#24 [ゆびきりげんまん(2/2)]
でもいつだったっけ?結構幼い頃だったような気がする。
でも人生4、5年ぐらい生きてりゃあの歌には出会えるし。何とも確証がない。頭の中で壊れたようにあのフレーズがずっと流れる。
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった。
「…あっ」
「…?どしたの?」
「思い出したのよ」
「誰と約束したかを?」
「ううん、約束した事を」
うそついたら、ね?
約束した相手の声だけが頭の中で再生される。
少し低い女の子の声。顔は忘れたけど、声は思い出せる。
赤いランドセルに黄色い帽子をかぶって、約束したんだ。
あれは多分初めての指切りげんまん。
「一緒に地獄へ堕ちよう、って約束したんだ」
あの子は、憶えてるのかな。
:08/03/03 04:20 :P903i :zBYy/l0.
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