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#16 [[世界の真実]ふむ(2/3)◆s8/1o/v/Vc]
「おいおい冗談じゃねぇぞ!」

俺は慌てて電源を押し戻す。
しかし、いつまで押し続けていても一向に電源は戻らなかった。
電池はしっかりと三本補充されていたのを見たから、電池切れではないだろう。
念のため、充電器に差し込んだが反応はなかった。
そういえば停電だったな…。
思い出せば諦めたように携帯を投げ出して、ベッドに倒れ込む。
静かな時間が流れて、妙な違和感を抱いた。
嫌な予感のような、違和感を。
不意に横を見れば電子時計が発色していた。

「…ん?」

はて、気のせいだろうか。
電子時計の示す文字の光が弱々しくなってきているような…。
ぼんやりとそんな事を考えていたら、突然糸が切れたかのように電子時計の文字が消えた。

「…!?」

それを見ると俺は目を丸くした。
さっきからどうもおかしい。
違和感の原因がわかったのである。
無音なのだ。
静かすぎる、車の音すら聞こえない不気味な程無音の世界。
俺は立ち上がり窓を全開に開けた。

⏰:08/03/03 03:23 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#17 [[世界の真実]ふむ(3/3)◆s8/1o/v/Vc]
「何だよ…これ」

声が震えていた。
目の前に広がった光景は、真の闇。
停電の規模ではなく、人を失った不気味に佇む建物たちがひっそりと列を連ねていた。
照らし出すのは淡く朧な月明かりのみであった。

「誰も…いないのか?」

その時、後ろのベッドの片隅から声が聞こえた。
ベッドに寝転ぶ時はいつも掛けているラジオが、作動した様子だった。
俺はゆっくりと振り返る。
不気味なまで薄暗い室内に無機質なラジオの声が響いた。
途切れ途切れに数秒流れた後、ラジオは完全にその機能を失った。
俺は聞き取り難いラジオの内容に言葉を失った。
愕然と立ち尽くす俺に、先程ラジオは言った。

《現在…ょ…には…緊急…避難勧告が…されて…大変…危険…すので…ただちに…》

喋る物を無くした世界は、無音の世界へと続く不気味な静けさに包まれていった…。

⏰:08/03/03 03:26 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#18 [[世界の真実]ふむ(3/3)◆s8/1o/v/Vc]
最期の花[時代物](1/1)
>>8

世界の真実[ホラー](3/3)
>>13
>>16
>>17
(1/2じゃ文字数が足りませんでした;)

⏰:08/03/03 03:31 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#19 [賭け(1/3)]
俺はその日、1人でバーで呑んでいた。
特に理由は無い。ただ何となく、1人でいたかっただけだ。
カクテルの入ったグラスを静かに回していると、隣に1人の男が座って話し掛けてきた。

「君、もしよければ僕と賭けをしないか?」

フォーマルなスーツを着た、ごくごく普通の男。
いきなり何を言ってるのだろうか、と普段なら思っていただろう。
聞く気になったのは俺が酔っていたからだろうか。

「どんな賭けだい?」
「なぁに、簡単な賭けさ。君は何があっても顔が上を向いてはいけない。上を向いたら負けだ」

上を向いたら負け?そんなの向く訳無いだろう。
だが、今日初めて会ったばかりのこの男がどう上を向かせるかは、なかなか面白そうだ。
その時は文字通り酔狂だった俺は、賭けに応じる事にした。

「で、何を賭けるんだい?」
「この店で呑んだ代金さ。君が上を向いたら君が僕の代金を奢る。向かなければ逆だ」

なるほど、それなら例え負けてもそんなにダメージにはならないな。

「よし分かった」
「なら、今からスタートだ」

⏰:08/03/03 03:38 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


#20 [賭け(2/3)]
賭けが始まった。
男はスーツの上着を脱いで、早速俺に話し掛けてきた。
内容は別段他愛のない世間話のようなものだが、男の話術に引き込まれてしまう。
だがこれは罠だ。きっと巧みに話しくるめて上を向かせるのだろう。
俺はそう思い、いつ仕掛けてくるか警戒しながら、男の話に耳を傾けていた。

それから、1時間程が経った。
男はまだ仕掛けてこない。
話の内容も、先程と話題は変わってはいるが特におかしな点はない。
そろそろ仕掛けてきてもいいと思うのだが。本当に俺を負かす気があるのか?
もしかしてただの暇潰しだろうか。
いや、そう思わせるのが罠に違いない。きっとそろそろ上を向かしにかかってくるはずだ。
そう考えていた時、男が腕時計を見ながら言った。

「おや…もう時間だ。悪いが賭けはおまいだ」

おしまい?俺はまだ上を向いてはいないが。
……という事は。

「…賭けは、俺の勝ちって事になるのか?」
「悔しいけどそうだね」

あっさりすぎて、なんとも拍子抜けだ。
だが、これで呑み代が浮くしまぁいいか。

「悪いが行かないと駄目でね。これで払っておいてくれるかな?」

男はそう言って財布から1万円札を取り出し、俺の前に置いた。

「今日はどうも。君と話せて楽しかった」

男が俺の前に手を差し出してきた。

「そうだな、俺も楽しかったよ。ありがとな」

またいつか会いたいものだ。
そう思いながら、男とがっちりと握手を交わした。

⏰:08/03/03 03:39 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


#21 [賭け(3/3)]
代金は2人合わせて8000円。1万円でお釣りが出る。
呑み代が浮いたどころか、少し儲かった。自然と顔が綻んでくる。
足取り軽くレジへ向かう。
だが、男から貰った1万円札を出そうとした時に、1万円札がおかしい事に気が付いた。
なんというか、紙質が違う。厚みも少し違う気がする。

「…もしかしてあいつ、偽札を!?」

慌てて1万円札を電灯の光にかざして、透かしを見る。
そこに写っていたのは福沢諭吉ではなく。


『ほら上を向いた ごちそうさま』


こう書かれていただけだった。

⏰:08/03/03 03:39 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


#22 [◆vzApYZDoz6]
>>14-15
いいですねーw

じゃんじゃん参加してくださいw

⏰:08/03/03 03:41 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


#23 [ゆびきりげんまん(1/2)]
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった。

「私ね、昔約束したんだ」
「約束?へぇー、誰とよ?」

図書館の机。
私の前に座る友達が読んでいた本を閉じた。こんな話にも興味を持ってくれたらしい。
広辞苑を読んでいたのだから、相当暇だっただけなのかも知れないけど。

「誰かは思い出せないんだ。どんな約束かもよく憶えていない」
「何それ。約束した事しか憶えていないの?」
「うん。誰かと指切りげんまんしたんだ」
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった。
頭の中で、そのフレーズがずっと反芻される。
あの約束で、初めて交わした指切りげんまん。

⏰:08/03/03 04:20 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


#24 [ゆびきりげんまん(2/2)]
でもいつだったっけ?結構幼い頃だったような気がする。
でも人生4、5年ぐらい生きてりゃあの歌には出会えるし。何とも確証がない。頭の中で壊れたようにあのフレーズがずっと流れる。
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった。

「…あっ」
「…?どしたの?」
「思い出したのよ」
「誰と約束したかを?」
「ううん、約束した事を」

うそついたら、ね?
約束した相手の声だけが頭の中で再生される。
少し低い女の子の声。顔は忘れたけど、声は思い出せる。
赤いランドセルに黄色い帽子をかぶって、約束したんだ。
あれは多分初めての指切りげんまん。

「一緒に地獄へ堕ちよう、って約束したんだ」

あの子は、憶えてるのかな。

⏰:08/03/03 04:20 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


#25 [[天の邪鬼]ふむ(1/3)◆s8/1o/v/Vc]
鬱蒼と生い茂る森を歩いていた。
真の闇に包まれた、夜の森であった。
月明かりすら、ない。
冷たい夜風が駆け抜ければ、木々たちが不気味な音を立てて森自体が一つの生き物のように怪しく蠢いた。
そんな中を歩く一人の男がいた。
凛とした表情に灯る鋭い眼光はしっかりと正面を見据えていた。
手には明かりらしきものはなかった。
真の闇だというのに、明かりなしで進んでいるのである。
悠然と進むその歩調には、まるで昼間に見晴らしの良い道を歩いているかのようにさえ感じさせる。
男の口元には、絶える事なく微笑が含まれていた。
男は今日の昼間、興味深い話を聞いた。
どうやら、この森には妖怪らしからぬモノがいるらしい。
それを初めて見たのは、この近くに住む老人だという。
老人は山菜採りが趣味で、よく山に登っていた。
農民であるために、なかなか早くは仕事が終わらず、大体山に登るのは日が没してからの方が多かった。
その日もいつものように松明と鎌を片手に籠を背負い、熊などに備えて知り合いから譲り受けた太刀を腰に携えた。
出掛けるに当たって、今日はどの山に行こうかと考える。
同じ山ばかりではその山の山菜を取り付くしてしまうし、何より楽しみが薄れる。
そこで老人は考えついた。
ちと遠いが、あの山なら良い山菜がよく採れるじゃろうて…
多少山を登らなければならないが、以前に山菜が山ほどなっている場所を見つけたのであった。
そうと決まれば早速そこに向かった。

⏰:08/03/03 12:31 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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