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#279 [[秘密(1/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
真夜中、俺を乗せたタクシーがマンションの前に停まる。
運転手に料金を払い、礼を言って、足早にエレベーターへと向かう。

「はぁ……」

ボタンを押すと同時に、無意識のうちに深いため息をついていた。
どうしてこうなってしまったんだろう。

俺は、タクシーを拾う前にスーパーで買った荷物を胸に抱えて、エレベーターに乗り込む。
誰にも見つからないように、袋の中身を隠すように抱える。

ここ二週間、毎日繰り返すこの緊張。
俺の降りる階まであと二つ……ほっとしかけたところで、エレベーターが止まった。

「!?」

乗り込んで来たのは、見知らぬ若いカップル。
二人は俺に目もくれず、いちゃいちゃとじゃれあっている。
バレることはなさそうだ。

⏰:08/04/09 04:14 📱:SH903i 🆔:APNEtQ/Q


#280 [[秘密(2/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
 
俺には、絶対に誰にも知られてはならない秘密がある。
二週間前から隠している、俺の部屋に存在するモノ。

もし誰かに知られれば、俺は逃げるようにしてここから出ていくことになるだろう。
この二週間、気が気でなかった。

異臭騒ぎになったら……。
夜中のおかしな音に気付かれたら……。
この袋の中身を知られたら……。

しかし俺の緊張とはうらはらに、周りの住人の態度は二週間経った今日も変わらなかった。
廊下ですれ違えば挨拶をされるし、朝のゴミ置場でも世間話に加わった。

しかし。
あまり長い期間は隠し通せないだろう。

⏰:08/04/09 04:15 📱:SH903i 🆔:APNEtQ/Q


#281 [[秘密(3/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
 
それは解りきったこと。
俺は隠しているモノをどうするか、今日の仕事中も考えていたが、結局何も思い付かなかった。

誰にも咎められることなく、無事に自分の部屋にたどり着き、鍵を開けて慎重にドアを開く。

周りに誰も居ないことを確認し、ドアの隙間に体を滑り込ませる。

「はぁ……」

今のは安堵のため息だ。
俺は買い物袋の中から丸い形をしたものを取り出し、隠しているモノに近づいた。

一歩、また一歩。
この扉の向こうに、アレがいる。

扉に手をかけ、ゆっくりと、引く。


「ニャ〜?」

「ただいまぁ、ご飯だよ〜」


言うまでもなく、俺の住むマンションは、ペット禁止なのだ。

⏰:08/04/09 04:16 📱:SH903i 🆔:APNEtQ/Q


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