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#325 [◆vzApYZDoz6]
俺は人混みが嫌いだった。
それぞれが好き勝手に行動し、耳障りな騒音を作り出す。
それぞれが好き勝手に行動し、人の視界を妨げる。
俺は、そんな人混みが嫌いだった。
人混みから離れるために、街の外れへ向かう。
できるだけ静かな場所へ、一直線に。
少し歩けば、雑音が薄れ人も少なくなっていく。
代わりに、家が多くなる。
どれも同じ大きさ、同じ外観で、表札が違う。
新築の頃は使われていた家も、しばらく時が経てば住民は少なくなっていく。
そんな家の群れを眺めながら歩いていると、ある一軒の家の表札に目が止まった。
なにか、心が惹かれる表札。
家の中を覗いてみたが、すでに住民は誰もいないらしい。
それもそのはず。ここは街の一番端、街の入口から最も遠い場所だ。
人なんているわけがない。
だが、なぜか心が惹き付けられる。
前の住民達の生活跡を見ていると、とても楽しそうな風景が頭に浮かんだ。
もっと早くこの家を見つけていれば、俺もこの中に入れたのだろうか。
俺は、この家の住民に戻ってきてほしいと思った。
戻ってきたら俺も仲間に入りたいと思った
そのためなら何でもしてやろうと思った。
一通り家の中を見渡して、ゆっくりとドアを閉める。
息を整え、少しの期待を込めて呟いた。
「保守」
ドアから手を離し、再び表札を眺めながら歩きだす。
口元には、微かに笑みが浮かんでいた。
:08/05/05 13:59 :P903i :Dlid82FI
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