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#326 [度忘れではない(3/3)◆vzApYZDoz6]
携帯電話を紛失した。
多分、昼寝してる間に無くなったのだろう。
目が覚めて、とりあえず時間を確認しようと思ったところで気が付いた。

「あれ…おかしいなー」

しばらく自分が寝ていたリビングを探してみるが、どうにも見付からない。

仕方ないので家電から携帯電話にかけて探す事にした。
バイト帰りでそのまま寝てしまったためにマナーモードにしたままだが、一応震えるんだしどうにかなるだろう。
そう思って、家の子機からダイヤルする。

「……あれー…?」

結果、どうにもならなかった。
ドコモの携帯でよかった。
契約しない限り留守番電話サービスは受けられないので、留守電になることもない。

などとズレた事を考えながら、家の中をしらみ潰しに歩き回る。
リビングやダイニングは粗方探し終えたし、残るは自室しかない。
だがバイトから帰ってきて1度も自室には入ってないし、さすがにないだろう。
「まいったなこりゃ…」


さて、どうするべきか。
もう1時間ぐらいは探しただろう。
外では陽が傾きかけて、ゆっくりと地平線へ沈んでいっている。
焦りと疲れがどっと吹き出てきた。

⏰:08/05/06 02:49 📱:P903i 🆔:bpkRP9FQ


#327 [度忘れではない(2/3)◆vzApYZDoz6]
「…もう疲れたな」

早く小説板に行きたいのに。
mixiがやりたいのに。
悶々としながら、とりあえず休憩するために自室に戻る。
自室のドアを開けると、ベッドの脇に大量に積まれた漫画が目に入った。

「よう」

続いて、積まれた漫画をベッドに転がって読みふける妹。
何をやってるんだ、と突っ込む前に、積み上げられた漫画の上に俺の携帯を発見した。

「あー! てめ、それ俺の携帯じゃねぇか!」

声を張り上げながら手を伸ばす。
だがその前に、妹が無駄に意地悪い笑みを浮かべながら携帯を取り上げてしまった。
そのままベッドから立ち上がった。

「どうよ、携帯電話のない生活ってのは? あん?」

口の悪い女だ。
玄人じみた台詞なのは、俺に説教でもしてるつもりだからなのだろうか。
何やら教訓めいた事でも伝えたいらしい。

「すごく…つまらないです」

「だろ? 人間は、便利のために作ったものに、逆に振り回されることもあるんだぜ?」

⏰:08/05/06 02:49 📱:P903i 🆔:bpkRP9FQ


#328 [度忘れではない(3/3)◆vzApYZDoz6]
演説めいたその言葉は、どこかで聞いたような気がした。

何故だろうと考えている俺の視線が、ふと妹が持つ漫画『さよなら絶望先生』に向く。
そういえば『さよなら絶望先生』にそんな台詞があった気がする。

その後は、妹の付け焼き刃の説教を延々と聞かされた。
全体的に漫画をパクっていた気もするが、『人と人との触れ合いが大切だ』という信念は伝わってきたように思う。

結局、なぜか俺が謝って説教は終了した。
返してもらった携帯をすぐさま開いて確認する。
どこもいじられていなかった。

続いて、習慣的にパソコンを立ち上げる。
起動中のディスプレイを眺めているあいだ、こんなんだから妹に説教されたんだな、と自嘲した。


ちなみに妹はかなりの機械オンチで、携帯すらロクに操作できずよく俺に泣き付いてくる。

⏰:08/05/06 02:50 📱:P903i 🆔:bpkRP9FQ


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