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#332 [君とコーヒー(1/3)◇東脂ヤ転
「遥、コーヒー入った・・・」
そこまで言うとまた気がつく。

「そっか・・・居ないんだった・・・」

彼女がこの家を出て行ってから2週間が経つ。

毎朝二人分のコーヒーを入れるのが日課だった俺は、こうしてたまに、もう居ない遥の分までコーヒーを入れてしまっていた。

最初は楽しかった同棲生活も、お互いが忙しくなるにつれ、喧嘩の絶えない日々が続いた。

⏰:08/05/07 15:59 📱:W52P 🆔:NK/CCjVE


#333 [君とコーヒー(2/3)◇東脂ヤ転
いや、忙しさのせいにして、俺はいつも遥の話を聞いていなかった。

だから遥の苦しみも、分かってやれなかったんだ。

「ごめん・・・・遥」

一言そう呟くと、俺はコーヒーに口をつける。

冷めていて苦い。

その苦みがやけに悲しくて、胸が熱くなる。

「居なくなってから気付くなんて・・・・ハハッ・・本当、皮肉だな・・・」

「・・・・・本当ね」

その時、自分自身に言ったつもりの言葉に、返答する声が聞こえた。

唯一、俺を振り向かせる声。

⏰:08/05/07 16:50 📱:W52P 🆔:NK/CCjVE


#334 [君とコーヒー(3/3)◇東脂ヤ転
「遥・・・・・」

出て行ったハズの遥が、そこに居た。

「遅いよ気付くの」

遥は持っていた荷物を下ろすと、テーブルの上にあったコーヒーを飲む。
「マズッ!!・・・全然成長してないんだから・・・!!」

そう言う遥の目には涙が溜まっていた。

「・・・・・おかえり、遥」

それだけ言って、俺は遥を抱きしめる。

「・・・・・・・・・・ただいま」

小さな声で呟いた遥の声が、コーヒーの苦みを優しく溶かしていった。


そして俺はまた明日からコーヒーを入れるんだ。
君と、僕



二人分のコーヒーを。

⏰:08/05/07 21:29 📱:W52P 🆔:NK/CCjVE


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