素晴らしい包丁捌きで食材を切り分けると、次は奥さんの出番です。
目玉と舌と脳みそをミキサーにかけて、ドロドロになったところで抜いておいた血を混ぜ、さらにミキサーを回します。
肝臓や胃腸は挽き肉にして、茶色くカリカリになるまでフライパンで炒めます。味付けは、塩胡椒を少々。
心臓を薄くスライスすると、砂糖をまぶして小鍋で煮詰めました。
厨房には血の臭いと肉が焼ける香ばしい匂いが充満しています。
その間に主人はケーキの生地を作ります。
耳たぶやほっぺ、唇など体の中でも柔らかい部分を細かく刻んで生地に練り込みました。
両手と両足の爪を剥いでやすりで粉末状にすると、それも生地に練り込みました。
これをオーブンで焼けば、スポンジの完成です。
奥さんが焼けたスポンジを横半分に切って、間に心臓のスライスや内蔵の炒めものなんかをたくさん敷き詰めました。
次に不自然なほど真っ黒なドロドロ脳みそ入りチョコレートクリームを生地に塗りつけていきます。
ケーキを三つに切り分けて、最後に緑のミントをちょこんと乗せたら出来上がり。
夫婦は今日もケーキの出来栄えに満足しました。
ニコニコしながら残りの白い食材を焼いたり煮たりして平らげ、一日の仕事を終えました。
次の日、やはり開店と同時にケーキは売切れ。
一人の男が奥さんの耳元でヒソヒソ囁きました。
「オレが材料を調達するから、もっとたくさん作ってくれないか?」
「かまわないよ」
奥さんはニコニコと答えます。
男は「じゃあ夜中に」と言って店を飛び出してしまいました。
その夜、男は死体を二つ持ってきました。夫婦が火葬場で買ったのと合わせて三つ。
その夜の作業はとても大変でした。