けれど次の日、店頭には九つのケーキが並びました。
お客さんたちは大喜びです。
「明日も頼むよ」
「そりゃどうかな」
ケーキを買えたお客さんも買えなかったお客さんも、明日が楽しみで仕方ありません。
しかし町では子どもが次々と消えてしまう事件が起こっていました。
そう、夫婦に死体を渡した男は町の子どもたちを殺していたのです。
でも夫婦にはそんなこと関係ありません。
おいしいケーキが作れればそれで良かったのです。
そしてそれは町の大人たちも同じでした。
彼らも、おいしいケーキが食べられるならそれで良かったのです。
子どもが一人消え、ケーキが三つ増える。
子どもが二人消え、ケーキが六つ増える。
町の大人たちは気付いていました。
けれど毎日パン屋に通います。
ケーキのおいしさに夢中だったのです。
町の大人たちは昨日も今日も、きっと明日からも毎日、ケーキを買いにやってきます。
町に子どもが一人もいなくなってしまっても。
「もう無いのかい」
「すまないねぇ、また明日来ておくれ」
今日もケーキは売切れです。
飛び切りおいしいケーキ、あなたは食べてみたいと思いますか?