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#412 [[マルコ。2/3]キノコ。]
「アイ、私マルコネ。働キ盛リノ41歳ネ。アナタ、スーチンデショ?白状シナタイ。」


(あっ、この人痛い人だ。)
と思い、俺は立ち上がり他のベンチに移ろうとした。
すると女性はまた俺の腕を引っ張りベンチに座らせた。
俺はバランスを崩し持っていた弁当を落としてしまった。


「アイ、ゴメンクサイ。私拾ウネ。セッセト拾ウネ。」
女性は散らばった弁当の中身を拾い始めた。
「もう、いいですよ。どうせ食べれないし。」
俺は一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
「アイ、大丈夫ネ。3秒ルールネ。日本人頭イイネ。」
そう言うと落ちた卵焼きを拾い自分の口に入れた。
「アイ、グッジョブ。」
親指を立てて俺の顔の前に突き出した。


訳の分からない言葉を連発し、俺の弁当を落とし、おまけに落ちたおかずまで食べてしまうこのマルコという女性。


迷いはなかった。ダッシュで逃げよう。


そう思った瞬間今度は女性は泣き出し、そてまた聞いてもないのに話し始めた。

⏰:08/06/01 03:42 📱:D905i 🆔:UqmAtBfE


#413 [[マルコ。3/3]キノコ。]
「アイ、私ノ息子スーチンネ。アナタニソックリネ。スーチン韓国デ海苔作ッテル。会イタイケド会エナイ。」

女性は韓国人で女性の話からすると息子と離ればなれで暮らしており、その息子が俺に似てるらしい。


逃げる体勢にはいっていた俺はベンチに再び腰をかけた。
「そんなに俺に似てるの?」
「アイ、似テマス。スーチンニソックリネ。私サビシイネ。」


俺にも息子がいる。同じ親として少し同情もあり、俺は昼休みが終わるまで女性の話し相手になってあげた。
故郷の事や、女性が働いているスナックの事、そして息子スーチンの事。
最初は痛い人だと思っていたが話していくうちにだいぶ心も開き女性との会話を楽しんだ。


話は盛り上がっていたが昼休みが終わりに近づき「マルコさん、俺毎日このベンチで昼飯食べるから寂しくなったら話し相手ぐらいにはなるよ。」
「アイ、アリガトデス。私毎日ココニキマス。待ッテマス。」
女性は笑顔で答えた。
自宅と会社の往復だけの窮屈な生活に少しだけ楽しみができ、俺は笑顔で会社に戻った。


火曜日の午後の昼下がり。
いつものベンチで女性を待つ俺。昨日から始まった異文化コミュニケーションに胸を躍らせていた。
空を見上げると今日も雲一つない晴天だ。


ふと隣のベンチを見ると女性が60歳近くの男性の腕をつかみ
「スーチン!!!」
と叫んでいた。


俺は社員食堂で昼飯を食べた。
たぶんあそこのベンチに行く事はないだろう。


おわり。

⏰:08/06/01 03:47 📱:D905i 🆔:UqmAtBfE


#414 [◆vzApYZDoz6]
あげますぜ

⏰:08/06/07 13:27 📱:P903i 🆔:5dF7gc0M


#415 [紫陽花]
あげ〜(・∀・)

⏰:08/06/08 17:09 📱:F905i 🆔:☆☆☆


#416 [GAM]
ああ、そうしてまたあなたは私を白いカルシウムで砕くんですね。
聞こえますか、この悲痛が。分裂した私を更に粉砕して、身にまとった色素は残らず剥ぎ取っられてしまう。私の後ろにいる紅色の蛇に。

形を崩して原型を留めていない体。もう二度と元には戻れない。

でもあなたは私を無にはしなのでしょう。
下で待ち構える浴室へ送還される事なく、私は生命の全てを奪われて終わるんです。

他の方はシャワーを浴びていらっしゃるのかしら、あなたが裁きをくだすうちは決して干からびる事のない浴槽、そこにつかっているのかしら。

悶える様な声が私の耳に届きます。

蛇の動きが鈍くなりました、もうすぐ別れの時間なのですね。
分かっています。

でも私は、あなたに弄ばれて幸せでした。
この裁きと共に与えられる清水が、地下から湧き出るそれに及ばなくても。

醜い姿になってもあなたに衣装を脱がされる事こそが、私の務めだと分かって下さいね。

あの銀の上絹を剥ぎ取ってくれてありがとう。

さようなら。

⏰:08/06/12 23:05 📱:D905i 🆔:PZfyFEBo


#417 [GAM]
剥ぎ取っられて→剥ぎ取られて

無にはしなので→しないで

⏰:08/06/12 23:08 📱:D905i 🆔:PZfyFEBo


#418 [[居場所(1/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
 
「どうしてこういうことになるの!?」

重い空気を引き裂くように、階下の部屋からヒステリックな叫び声が聞こえてきた。

「こんなことありえないでしょ! 意味がわからないわ! 一体何だっていうのよ!?」

僕は笑い声をあげそうになるのを堪えて、いつものように自室で一人押し黙っている。その間にも下からは金切り声とそれをなだめる声が響いていた。

「どうしてあの子の亡きがらが無いのよ!? なんでカナコがそこにいないのよ!」

さっきから狂ったように声を張り上げているのは俺の義理の母親。
母さんが死んですぐに家に来たそいつには連れ子がいた。
それがカナコだ。俺の妹。
血の繋がりはなくとも、俺にとってはかわいいかわいい妹だった。

そのカナコが昨日死んだ。まだ十三歳だったのに。
ドア越しに父さんからカナコの死を伝えられた時、俺は気が狂うんじゃないかと思うほどに混乱した。

だって俺はカナコが好きだったから。
妹としてか女としてかなんてことはわからない。だけど俺は世界で一番カナコが好きだった。

⏰:08/06/16 23:37 📱:SH903i 🆔:J7xrqn4I


#419 [[居場所(2/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
 
カナコの死因を俺は知らない。
なぜなら俺はオタクでニートで引きこもりだから。自分の部屋から一歩も出ない俺にわざわざカナコの死因を知らせにくるヤツはいなかった。

で、どうして今義理の母親がこんなにも騒いでいるのかというと、今から葬式だというのにカナコの遺体が棺桶から消えているからだ。
昨日の夜滞りなく通夜を終え、今日の朝――つまりついさっきだが――母親がカナコの亡きがらを確認したところ、棺桶の中は空っぽだったということらしい。
棺桶のある部屋にはろうそくの番にカナコの親戚らしい年配の男がいたが、なんとそいつは夜中の二時には酔っ払っていびきをかいていたんだ。
あの女はそれを知らないが俺は知っている。

なぜか。
カナコの遺体を隠したのは俺だからだ。

カナコは今俺の隣で静かに眠っている。
その眠りが覚めることは永遠に無いが、それでも俺はカナコを自分の手元に置いておきたかった。

⏰:08/06/16 23:38 📱:SH903i 🆔:J7xrqn4I


#420 [[居場所(3/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
 
五年前に母さんが死ぬ前から、俺と親父は顔を合わせなくなっていた。
その頃はまだ引きこもりではなかったが、しかし俺は仕事に就いていなかった。
そんな俺を見たくなかったのだろう。
いつからかお互いに避けるようになり声を聞くこともなくなった。

そして母さんが死んだ。俺と親父をつなぐ唯一の人がいなくなった。
それはつまり、俺の居場所が無くなるのと同じこと。
そしてあの女が家に来て、俺は引きこもりになった。

でも俺には新しい居場所が出来た。
まだ幼かったカナコは俺に冷たくしなかった。
あまり言葉は交わさなかったけれど、俺達は通じ合っていたはずだ。目を見ればわかる。

母さんを失って俺は学んだ。
失いたくなければ自分の手で捕まえておかなければならない。
でなければ俺はまた居場所を失ってしまう。
かわいい妹を俺から奪うことなど誰にも出来ないのだ。

そうして俺はカナコを捕まえた。

もう二度と離さない。俺のかわいい妹……カナコ……。

⏰:08/06/16 23:39 📱:SH903i 🆔:J7xrqn4I


#421 [◆vzApYZDoz6]
あげますよー

⏰:08/06/23 03:05 📱:P903i 🆔:qKg5R2Vw


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