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#416 [GAM]
ああ、そうしてまたあなたは私を白いカルシウムで砕くんですね。
聞こえますか、この悲痛が。分裂した私を更に粉砕して、身にまとった色素は残らず剥ぎ取っられてしまう。私の後ろにいる紅色の蛇に。
形を崩して原型を留めていない体。もう二度と元には戻れない。
でもあなたは私を無にはしなのでしょう。
下で待ち構える浴室へ送還される事なく、私は生命の全てを奪われて終わるんです。
他の方はシャワーを浴びていらっしゃるのかしら、あなたが裁きをくだすうちは決して干からびる事のない浴槽、そこにつかっているのかしら。
悶える様な声が私の耳に届きます。
蛇の動きが鈍くなりました、もうすぐ別れの時間なのですね。
分かっています。
でも私は、あなたに弄ばれて幸せでした。
この裁きと共に与えられる清水が、地下から湧き出るそれに及ばなくても。
醜い姿になってもあなたに衣装を脱がされる事こそが、私の務めだと分かって下さいね。
あの銀の上絹を剥ぎ取ってくれてありがとう。
さようなら。
:08/06/12 23:05 :D905i :PZfyFEBo
#417 [GAM]
剥ぎ取っられて→剥ぎ取られて
無にはしなので→しないで
:08/06/12 23:08 :D905i :PZfyFEBo
#418 [[居場所(1/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
「どうしてこういうことになるの!?」
重い空気を引き裂くように、階下の部屋からヒステリックな叫び声が聞こえてきた。
「こんなことありえないでしょ! 意味がわからないわ! 一体何だっていうのよ!?」
僕は笑い声をあげそうになるのを堪えて、いつものように自室で一人押し黙っている。その間にも下からは金切り声とそれをなだめる声が響いていた。
「どうしてあの子の亡きがらが無いのよ!? なんでカナコがそこにいないのよ!」
さっきから狂ったように声を張り上げているのは俺の義理の母親。
母さんが死んですぐに家に来たそいつには連れ子がいた。
それがカナコだ。俺の妹。
血の繋がりはなくとも、俺にとってはかわいいかわいい妹だった。
そのカナコが昨日死んだ。まだ十三歳だったのに。
ドア越しに父さんからカナコの死を伝えられた時、俺は気が狂うんじゃないかと思うほどに混乱した。
だって俺はカナコが好きだったから。
妹としてか女としてかなんてことはわからない。だけど俺は世界で一番カナコが好きだった。
:08/06/16 23:37 :SH903i :J7xrqn4I
#419 [[居場所(2/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
カナコの死因を俺は知らない。
なぜなら俺はオタクでニートで引きこもりだから。自分の部屋から一歩も出ない俺にわざわざカナコの死因を知らせにくるヤツはいなかった。
で、どうして今義理の母親がこんなにも騒いでいるのかというと、今から葬式だというのにカナコの遺体が棺桶から消えているからだ。
昨日の夜滞りなく通夜を終え、今日の朝――つまりついさっきだが――母親がカナコの亡きがらを確認したところ、棺桶の中は空っぽだったということらしい。
棺桶のある部屋にはろうそくの番にカナコの親戚らしい年配の男がいたが、なんとそいつは夜中の二時には酔っ払っていびきをかいていたんだ。
あの女はそれを知らないが俺は知っている。
なぜか。
カナコの遺体を隠したのは俺だからだ。
カナコは今俺の隣で静かに眠っている。
その眠りが覚めることは永遠に無いが、それでも俺はカナコを自分の手元に置いておきたかった。
:08/06/16 23:38 :SH903i :J7xrqn4I
#420 [[居場所(3/3)]蜜月◆oycAM.aIfI]
五年前に母さんが死ぬ前から、俺と親父は顔を合わせなくなっていた。
その頃はまだ引きこもりではなかったが、しかし俺は仕事に就いていなかった。
そんな俺を見たくなかったのだろう。
いつからかお互いに避けるようになり声を聞くこともなくなった。
そして母さんが死んだ。俺と親父をつなぐ唯一の人がいなくなった。
それはつまり、俺の居場所が無くなるのと同じこと。
そしてあの女が家に来て、俺は引きこもりになった。
でも俺には新しい居場所が出来た。
まだ幼かったカナコは俺に冷たくしなかった。
あまり言葉は交わさなかったけれど、俺達は通じ合っていたはずだ。目を見ればわかる。
母さんを失って俺は学んだ。
失いたくなければ自分の手で捕まえておかなければならない。
でなければ俺はまた居場所を失ってしまう。
かわいい妹を俺から奪うことなど誰にも出来ないのだ。
そうして俺はカナコを捕まえた。
もう二度と離さない。俺のかわいい妹……カナコ……。
:08/06/16 23:39 :SH903i :J7xrqn4I
#421 [◆vzApYZDoz6]
あげますよー
:08/06/23 03:05 :P903i :qKg5R2Vw
#422 [我輩は匿名である]
ageるよ
:08/06/24 09:22 :PC :MWJsF0yA
#423 [[時に残酷な。(1/3)]あに]
わたしが見る景色は、いつも同じ。 空の色が蒼から赤、黒へと変わりまた蒼に戻る。それの繰り返し。
退屈な日常を変えてくれたのは貴方だった。
行き交う人々が見向きもしなかったわたしを、貴方は見付けてくれたわ。
「綺麗だね」
「可愛いね」
貴方は毎日わたしのそばに来て、そう話しかけてくれる。
それだけで、わたしはまた美しくなれる。
貴方の無邪気な笑顔が見れるだけで幸せなの。
――たとえ、僅かな寿命だとしても。
:08/06/24 23:33 :SH903i :ER.bvmo2
#424 [[時に残酷な。(2/3)]あに]
太陽が高く昇っている。そろそろ、彼が来る頃ね。
ほら、やっぱり。
小走りで近づいてくる彼は笑顔で、とても素敵だわ。
「よかったあ。まだ、いたんだ」
少し息を弾ませながら安堵した表情を見せる彼。
わたし、貴方をいつでも待っているのよ?何を今更。
貴方といれるなら、この命、儚くても構わないわ。
今日もわたしに綺麗だと言って。
言葉を待っていると、彼の手が伸びてきた。そして、わたしの首を掴んだ。
:08/06/24 23:34 :SH903i :ER.bvmo2
#425 [[時に残酷な。(3/3)]あに]
次の瞬間、勢いよく胴体と切り離されてしまった。
何を!何をするの!?
嘘よ、どうしてこんなことを!
困惑するわたしに構わず、彼はわたしのカラダの一部を順にちぎり取っていく。
残酷な言葉を囁きながら。
「……リカちゃんはぼくのことを……すき、きらい……すき、……」
嗚呼、貴方の為になるならばこの命、差し上げ給う。
(彼等は時に残酷で。)
:08/06/24 23:36 :SH903i :ER.bvmo2
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