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#487 [イツワリ(1/3)◇東脂ヤ転
「"人の為"と書いて"偽り"と成る」

「は?」

「いや…ニュアンスは違ったかな…でも確かこんな感じの言葉だ」

「いやだから、急に何?
教科書の見過ぎで頭変になった?」

彼女の言葉にカチンときたのか、彼はムッとした表現を浮かべると徐に顔を上げた。

「今朝見た日めくりカレンダーに書いてあったんだよ。あれなかなか良いこと言ってるよな」

そう言って一人軽く頷くと、彼はまた教科書に視線を落とした。

「なーんだ、ただの漢字の創りの話じゃん。」

そんな彼の言葉を小馬鹿にするように彼女は笑った。そしてその彼女の態度を彼は見逃していなかった。

⏰:08/09/18 11:39 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#488 [イツワリ(2/3)◇東脂ヤ転
「本当にお前は馬鹿だな。何で俺が今このタイミングでその言葉を発したのか分かってないだろ?」

「…分かりたくもないけど」

「例を一つ上げよう」

彼は彼女の言葉を無視して話を続ける。

「さっきから何でお前はここに居るんだ?
図書室は勉強する奴が居る所で、お前みたいな勉強嫌いが居る場所じゃないぞ?」

一見、物凄く冷たく聞こえる彼の言葉に、慣れているのか彼女は真顔で返答する。

「そんなの決まってるじゃん。アンタがあたしと一緒に居たいと思って付き合ってあげてんの」

「俺の為に?」

「そ!アンタの為に」

⏰:08/09/18 11:43 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#489 [イツワリ(3/3)◇東脂ヤ転
「それが"偽り"だって言ってんだよ。誰がいつそんなこと頼んだ?」

「…あ………」

ここで初めて彼女の言葉が途切れた。
一方彼は「勝った」とでも言いたげな笑みを浮かべる。
しかし、

「ナルホド…分かった」

「?」

その時彼女が閃いたように身を乗り出した。

「あたしがココに居るのはアンタの為じゃなくて、あたしの為だ」

「…は?」

思いがけない答えに彼は困惑する。
しかしそれとは逆に彼女は自信たっぷりに言う。

「だってあたしがアンタの側に居たいから、その為に居るんだよ。
これなら"偽り"じゃないでしょ?」

満足げに笑う彼女を見ながら、彼は呟く。

「本当、お前にはかなわねぇよ」

偽りの無い笑顔がそこにあった。

⏰:08/09/18 11:46 📱:W52P 🆔:☆☆☆


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