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#495 [もう戻らない(1/3)電源]
今日は4月1日。
僕の前に大きなケーキが置かれた。
いつもより豪華な料理が食卓に並ぶ。
お母さんはマッチを握って準備万端だ。お父さんはぶつぶつ言いながらカメラをいじっている。
毎年変わらない風景。

「そろそろ始めようか。お父さん、カメラの準備はいい?」

ろうそくに火が灯った。
いちごにくまにウサギ。その間には僕の名前が書かれたチョコレートものっている。

「待って待って……よし、いいよ。」

⏰:08/09/25 22:20 📱:N903i 🆔:aBurfd3Y


#496 [もう戻らない(2/3)電源]
部屋の電気が消える。
ろうそくの炎がそれぞれの顔を淡く照らし出した。

「ユウちゃん、フーってしていいよ。」

お母さんは心なしか涙声だ。
今年こそは一息で全部消したい。
今、僕を包むのは幸せな少しの緊張感。
僕はふるふると震えた。
口を大きくあけて周りの空気を全部吸い込む。
これくらいの意気込みがなければ一息で消すのは難しい。ろうそくは年々増えるから尚更だ。

身を一度ひいて今度は乗り出す。
僕の身体は風船のようにふくらみ、一瞬でしぼむ。
身体中の空気を口から吐き出す。

フーーーーッ

⏰:08/09/25 22:21 📱:N903i 🆔:aBurfd3Y


#497 [もう戻らない(3/3)電源]
揺らめく炎。
シャッターが鳴った。
炎は消えない。
少し揺らいだだけで変化はなかった。
炎はお父さんとお母さんを照らしている。

―今年も消せなかった。

お母さんが僕の方を見て小さく微笑んだ。

「お母さんね、今でもあれはユウちゃんの嘘だって願ってる。どんな嘘でも怒らないから帰っておいで。」

お父さんは震える肩を抱き寄せた。僕の方を見る。

「ユウタ、18歳おめでとう。」

ろうそくは2人を暖かく照らす。
炎は消えない。
僕は静かに微笑んだ。

―ありがとう。

⏰:08/09/25 22:23 📱:N903i 🆔:aBurfd3Y


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