【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#50 [紫陽花[私の宝物(1/1)]]
『朝よ〜!!起きなさい!!』
いつものように朝が苦手な息子をたたき起こす。剣道部の息子は昨日の試合の疲れからか今日はいつも以上に起きない。
『まったく…』
でも確かに昨日の試合は素人が見てもスゴい試合だった。我が息子ながらあんなに白熱した闘いを繰り広げられるなんて自分の目を疑ったほどだ。結果は惜しくも負けてしまったが、その時の息子の悔しそうな顔は夫の若い頃そっくりだった。
あぁ……こうやって男の子から男性へと変わるのね、そう思うとなんだか胸が熱くなった。
しかし昨日の白熱した闘いとは裏腹に今は天使のような寝顔で布団にくるまっている。
『だけどまだまだ子供ね』
そういって私は息子の布団を剥ぎ取り起きるよう促した。
今日もまた変わらない
いつもの日々が始まる。
ーーーendーーー
:08/03/03 20:48 :F905i :☆☆☆
#51 [雨のち晴れ(1/2)◆vzApYZDoz6]
私の体を、夏のぬるい雨が打つ。
心の中も同じく晴れていない。闇が、私の心に突き刺さる。
まぁこれは比喩なんだけど。
どうせならもっと明るいものに刺されたい。
上を向く気力が出ない。
向いてもどうせ雨雲だけ。
傘が無くても雨宿りしようとは思わなかった。
でも光化学スモッグに侵されたこの街の雨は、体にチクチクと突き刺ささってすごく痛い。
まぁ比喩なんだけど。
どうせならもっと優しい雨に刺されたい。
そう思って、とりあえず街から離れるためにバスに乗り込む。
以外と乗車してる人は多い。って今雨降ってたんだっけ。
バスの中でもずぶ濡れの私に視線が痛く突き刺さる。
まぁ比喩なんだけど。
どうせならもっと柔らかい視線に刺されたい。
バスの中はうつ向いてやりすごした。
着いた先は駅。視線を避けるようにうつ向いたまま、さっさと特急電車に乗り込んだ。
尖った視線はもう慣れた。
街から離れる程に人は減る。でもその分、馴れ馴れしい人が増える。
あまり話し掛けてほしくなかったから、ここでもうつ向いて歩いていった。
:08/03/03 23:03 :P903i :zBYy/l0.
#52 [雨のち晴れ(2/2)◆vzApYZDoz6]
着いた場所は田舎町の、ある1軒の家。
久しぶりに来た気がする。そこで初めて顔を上げて、家を見上げる。
いつの間にか雨はあがっていた。
あれ?上を向いただけなのに視界が明るくなった気がする。突き刺さるものは柔らかい。
これも比喩?
ううん、違う。明るくて、優しくて、柔らかいものを感じる。
後ろを振り返ると、眩しさに目が眩んだ。
田舎の山々の上に広がる入道雲。その更に上で輝く太陽。
太陽の光を受けた蒸気が、虹となって山々に掛かっていた。
あー、そっか。暗かったのも、怖かったのも、尖ってたのも、私が下を向いていたせいなんだ。
だって、そうでしょう?
いつでもそこにある空が、こんなにも――
後ろの家の戸が開き、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あらあんた…帰ってくるなら電話の1本ぐらい入れたらいいのに。なんかあったのかい?」
「別に。何となくだよ」
本当はふられちゃったからなんだけど。ホームシックになって何が悪い。
でも、思ったより早くに私の心の雨はあがった。
もう大丈夫。
だって、そうでしょう?
そこにいつでもある空が、こんなにも――
――こんなにも、おっきいんだから。
:08/03/03 23:03 :P903i :zBYy/l0.
#53 [アダ名で呼んでほしいシュール(1/2)]
「なぁ山中さん、こないだ貸しt」
「ちょっと待ったぁ!!」
「え?なに、どうした?」
「なんであなたは私をアダ名で呼んでくれないの?」
「はっ?いやそんな事よりこないだ貸しt」
「そんな事よりってなによ!!」
「えっ、いや…そんな怒んなよ…」
「それならアダ名で呼んでよ!」
「分かったよ…じゃあ、シューr」
「それは皆呼んでるから面白くない」
「いや皆が呼ぶのがアダ名じゃねぇのかよ?」
「そうねー、私は素直だってよく言われるし『ナオスー』とかいいかも」
「おっと華麗なスルーパス出ました」
「なんか言った!?」
「いや…何も」
:08/03/03 23:58 :P903i :zBYy/l0.
#54 [アダ名で呼んでほしいシュール(2/2)]
「じゃあアダ名」
「いや…はっ?」
「ア・ダ・名!!」
「えっと…何だっk」
「ナ・オ・ス・ー!!!」
「怒鳴るなよ…じゃあ、ナオスーさん、こないだ貸s」
「何でさん付け!?アダ名でしょ!?」
「………ナオスー、こないd」
「いやナオスーじゃイマイチ響きが…オナスーとか?…おなす…お茄子、そうだ茄子よ!これからは『なすb」
「だるあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」
完…?
:08/03/03 23:59 :P903i :zBYy/l0.
#55 [[空]ふむ(1/2)◆s8/1o/v/Vc]
―ねぇねぇ。
―なぁに?
地下深くの冷たいコンクリートで出来た小部屋に、二人の少年がいた。
空って知ってる?
そら?
うん。
何それ?
外に出るとね、上に青い世界が広がってるんだって!
本当?
本当だよ、話で聞いたもん。
じゃあ…さ。
ん?
見てみようよ、空。
えっ…でも、ここからは出ちゃいけないって…。
うん、そうだね。
…それでも行くの?
僕は行くよ。見てみたいんだ。空を。
でも…。
うん…殺されるかも知れない。でもね…空を知らない人生ってつまらないと思うんだ。
………。
行く?
僕は……。
行かない?
………。
そう…じゃあここでバイバイだよ。
…うん。
じゃあね。今まで、ありがとう。
さよなら…元気でね。
片方の少年は立ち上がると扉に手を掛ける。
もう一人の少年は心配そうな表情に寂しげな目で少年の背中を見つめている。
がちゃり、と重い金属音がして、扉が開かれる。
少年は後ろからの視線に振り返ることなく、扉の向こうに姿を消していった。
:08/03/04 00:02 :SH905i :☆☆☆
#56 [[空]ふむ(2/2)◆s8/1o/v/Vc]
少年は駆け出した。
裸足のまま冷たい廊下をひたすら走った。
突き当たりに立入禁止の文字が書かれた扉がある。
鍵は朽ちていて近くのパイプ椅子で何度か叩けば簡単に壊れた。
老人の言葉を思い出す。
この扉から先へは行ってはいけないよ…。
大人も近づかないこの場所。
この先には何があるのか。
全く知らない未知の世界。
立ち止まっている時間はない。
ばれて捕まったら殺されてしまうだろう。
少年は扉を思い切り開けると勢い良く中へ飛び込んだ。
真っ暗な廊下。
水の滴る音。
唯一の光である切れかけの電球。
じめじめとした湿気を含むコンクリートを強く蹴る。
早く、早く…。
永遠に続きそうな錯覚さえする長い廊下を全力で駆けた。
待っていたのは上へと続く長い階段。
暗くなっていて先が見えない。
少年は荒れた呼吸を少し整えると一歩を踏み出した。
暗く静かな世界にひたひたと少年の足音のみが響く。
前方に何かが見えてきた。
扉だった。
見るからに重そうな扉は錆だらけで隙間から光が漏れていた。
外だ!
少年は駆け出した。
扉に手を掛けると錆が付着しているためかうまく開かない。
扉に何度も体当たりをした。
何回目かの体当たりで扉自体が外れ向こう側の世界が現れる。
視界が光に満ちた。
少年は眩しそうに目を細める。
わぁ…
喜々とした声を上げて頭上を見上げる。
これが空かぁ!
空を描いた映像が広い広い部屋の天井いっぱいに映し出されていた。
そのソラには太陽を模った巨大な電球。
少年は初めて見るソラに感激した。
:08/03/04 00:23 :SH905i :☆☆☆
#57 [<旅立ち>向日葵(1/1)]
これが最後じゃない。
なのに涙が止まらない。
いつでも帰ってきたらいいと不器用に言ってくれた父。
体に気をつけてと優しい母。
寂しいと泣きじゃくる妹。
電車に乗って、夕焼けに染まって行く街並みが、段々と後ろへ遠ざかっていけば、寂しさが胸を押し潰しそうだった。
1人立ち。
大人の気分に浸っていた私。こんなに家族との別れを悲しいと旅立ちを決めた時そんな事を少しでも考えていただろうか。
ありがとう。
今まで支えてくれて。
ワガママを聞いてくれて。
誰よりも、皆の幸せを願います。
:08/03/04 00:46 :SO903i :MhC0f226
#58 [<春への想い>向日葵(1/1)]
雪が降っていた。
しんしんと積もる雪の音に、耳を傾ける。
白に近い灰色の空を見上げながら思うは貴方のこと。
冷たさも感じないくらい、この白い絨毯の上に寝転んでいる。
それほど貴方のことを考えてる。
重いかな?
重いよね。
私の想いはまるで雪のよう。
軽そうに見えて、その想いは積もれば積もるほど重くなっていく。
だから貴方は私の前からいなくなってしまったの?
:08/03/04 00:51 :SO903i :MhC0f226
#59 [<春への想い>向日葵(2/2)]
一筋涙が流れて耳へとつたっていく。
空気のせいか、まだ体温がある顔に触れる涙はひどく冷たく感じた。
まるで貴方の気持ちを表したみたい。
私のことなんて、もう忘れるくらい冷めてしまったのでしょう。
しんしんと降る音の中で、サクサクと軽快に雪を踏む音が聞こえてきた。
この広く白い草原に足を踏み入れたのは誰?
するとやがて、音が無くなって、またしんしんという音だけが聞こえた。
1つの影が私にかぶさる。
:08/03/04 00:55 :SO903i :MhC0f226
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