【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
最新 最初 🆕
#51 [雨のち晴れ(1/2)◆vzApYZDoz6]
私の体を、夏のぬるい雨が打つ。
心の中も同じく晴れていない。闇が、私の心に突き刺さる。

まぁこれは比喩なんだけど。

どうせならもっと明るいものに刺されたい。

上を向く気力が出ない。
向いてもどうせ雨雲だけ。
傘が無くても雨宿りしようとは思わなかった。
でも光化学スモッグに侵されたこの街の雨は、体にチクチクと突き刺ささってすごく痛い。

まぁ比喩なんだけど。

どうせならもっと優しい雨に刺されたい。

そう思って、とりあえず街から離れるためにバスに乗り込む。
以外と乗車してる人は多い。って今雨降ってたんだっけ。
バスの中でもずぶ濡れの私に視線が痛く突き刺さる。
まぁ比喩なんだけど。

どうせならもっと柔らかい視線に刺されたい。

バスの中はうつ向いてやりすごした。
着いた先は駅。視線を避けるようにうつ向いたまま、さっさと特急電車に乗り込んだ。
尖った視線はもう慣れた。
街から離れる程に人は減る。でもその分、馴れ馴れしい人が増える。
あまり話し掛けてほしくなかったから、ここでもうつ向いて歩いていった。

⏰:08/03/03 23:03 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


#52 [雨のち晴れ(2/2)◆vzApYZDoz6]
着いた場所は田舎町の、ある1軒の家。
久しぶりに来た気がする。そこで初めて顔を上げて、家を見上げる。
いつの間にか雨はあがっていた。
あれ?上を向いただけなのに視界が明るくなった気がする。突き刺さるものは柔らかい。

これも比喩?

ううん、違う。明るくて、優しくて、柔らかいものを感じる。

後ろを振り返ると、眩しさに目が眩んだ。
田舎の山々の上に広がる入道雲。その更に上で輝く太陽。
太陽の光を受けた蒸気が、虹となって山々に掛かっていた。

あー、そっか。暗かったのも、怖かったのも、尖ってたのも、私が下を向いていたせいなんだ。

だって、そうでしょう?
いつでもそこにある空が、こんなにも――


後ろの家の戸が開き、聞き慣れた声が聞こえてきた。

「あらあんた…帰ってくるなら電話の1本ぐらい入れたらいいのに。なんかあったのかい?」

「別に。何となくだよ」

本当はふられちゃったからなんだけど。ホームシックになって何が悪い。

でも、思ったより早くに私の心の雨はあがった。
もう大丈夫。

だって、そうでしょう?
そこにいつでもある空が、こんなにも――



――こんなにも、おっきいんだから。

⏰:08/03/03 23:03 📱:P903i 🆔:zBYy/l0.


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194