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#531 [我輩は匿名である]
「許す気なんてないわ」

ずっと黙っていたのに、彼女が口を開いた

やはり許せないか…当然だ… 僕はすっかり彼女を説得する気が失せてしまい、その場で項垂れた…これでもう、終わりなのか、と―

「だからアナタも、もう観念して」

次の瞬間、右の前頭部に激しい衝撃 何かがあたったような…続けざまに数回の衝撃の後、僕はその場に倒れ込んだ

意識を失う直前、僕の目に飛び込んできたのは、鎌を左手に持った女の姿
それは“彼女”ではない、別の女。彼女はまだ椅子に座ったまま、変わらぬ瞳で僕を睨んでいる

「………お前……………なんで……」

僕のつぶやきをかき消すように、最期の一撃が僕の頭めがけて振り下ろされた

女はしばらくそのままボンヤリと立っていたが、ハッと気がついたようにその鎌を、座っている“彼女”に無理矢理握らせた

死後硬直が始まっている“彼女”の手は固かったが…

「…これでよかったのよね?聡子さん」

女はそれだけ言い残すと、ゆっくりと部屋を出て、それきり二度と戻らなかった。

⏰:08/12/02 10:46 📱:PC 🆔:☆☆☆


#532 [渚坂 さいめ]
あげます

⏰:09/01/03 15:06 📱:F905i 🆔:DDHmQNGU


#533 [願いを叶えるための遺言(1/2)]
「死ぬ前に一度だけ死んでみたかったわ」

そう言ってクスリと笑う彼女の唇はまるで朝露に濡れた百合の花のように艶めかしく、僕の視線を捕らえて離さなかった。


「なにを言っているのかよく分からないよ」

思ったままを口にした僕は急に自分がとても幼稚で無知な人間のように感じられた。

彼女といるとそんな風に自分を見てしまうことが度々あったのだった。

外を歩いていても、昼食をとっていても……。そして僕と一緒に深い闇のようなベッドの中でまどろんでいる時でも。

彼女は息を吐くのと同じぐらい自然にポロリと訳の分からない言の葉を零す。


「あなたにはまだ分からないわね……」

そして決まってそう言うのだった。


そしてその言の葉はコーヒーをまだ苦いと感じてしまうような、まだ大人になりきれていない自分の内側を、尖ったナイフで削り取られるような感覚を引き起こす。

僕は密かに彼女の言葉を、いや、彼女を一点の光も届かないような心の奥の方で恐れていたのかもしれない。

⏰:09/01/13 23:20 📱:F905i 🆔:cnnAJJEE


#534 [願いを叶えるための遺言(2/2)]
僕は胸に広がる恐れを押しのけるように、力任せに隣で微笑んでいる彼女を抱きしめた。

僕が恐れる言の葉を零す唇を僕の唇を使って無理矢理塞いでやると、またも自分は幼稚な人間だと虚ろな思考が僕を責める。

それは本当に惨めで、なんて滑稽な姿なんだろうか。


「死にたいなんて言うなよ……」

それが今、僕に言える最大限の彼女への抵抗だった。



そして次の日の朝、彼女は僕の前から忽然と姿を消した。

彼女は己の願いを成し遂げたのだ。

僕の目の前から消えることで、僕の中のリアルな彼女は消え去ってしまった。

もうその柔らかい胸に顔を沈めることも、優しい微笑みも、僕を突き刺す鋭い言の葉も、僕の隣にはいない。つまり死んだも同然なのだ。


けれど彼女はこの世界から消えたわけではない。

彼女はまだどこかで呼吸をしている。

シーツに染み込んだ彼女の残り香がそう言っている気がした。

---end---

作者は
元:紫陽花
現:渚坂 さいめ です^^

⏰:09/01/13 23:22 📱:F905i 🆔:cnnAJJEE


#535 [あめ(1/1)]
ざあざあざあ。
きょおわ、あめです。
ママといっしょにおでかけです。パパにカサをとどけにいくの。

ぴちぴち、じゃぶじゃぶ、らんらんらん

おうたをうたうとね、あめがおどります。
たのしいね、たのしいね
わたしも、ママもにこにこです。

ぴちぴち、じゃぶじゃぶ、らんらんらん

はやくかいしゃにつかないかな
はやく3にんでかえりたいな

ぴちぴち、じゃぶじゃぶ…

「どうしたんだ、こんな所まで!」
みあげると、パパでした。あたまにカバンを乗せたパパでした。とってもおどろいたかおをしています。

「傘…持ってきてくれたのか。」
そうだよパパ、えらいでしょ?
あなたが風邪引いたら大変だから…とママもいいました。
「こんなに濡れて…ありがとうな。早く一緒に帰ろう」
わたしとママは、えがおでうなづきました。



『ワン!』

⏰:09/02/13 17:46 📱:N904i 🆔:hcPdkTbc


#536 [[はつこい](1/3)あかり]
春が好きだ。

いや、初夏、といった方が妥当かもしれない。
桜の花が散って、若葉が出て来た頃が好きなのだ。

どういう訳か、何かが起こりそうな予感が湧いてきて、わくわくしてくる。


別の誰かはこう言った。

桜の花が散ってゆく様が好きだ、と。
散ってゆく花びらが、雪のように儚くて綺麗だから、と。

⏰:09/02/15 22:36 📱:SH904i 🆔:oDtqLGpY


#537 [[はつこい](2/3)あかり]
女だった。顔はもう思い出せない。

けれど優しい声色だったのは覚えている。

こうやって話していた様子を思い出すと、必ず胸が焦げるような感じがした。

それと同時に、酷く甘く、酷く熱く、酷く切なくと、激しく気が昂った。

⏰:09/02/15 22:38 📱:SH904i 🆔:oDtqLGpY


#538 [[はつこい](3/3)あかり]
この熱情は何だろう。

この淡い心は何だろう。

悶々と考えるが、答えは出ない。


春が好きだ。
その春がまたやって来る。

行ってみようか。

不意にそう思った。

行ってみようか、あの場所へ。あの桜並木が続く公園へ。

もしかしたら、答えが出るかもしれない。

⏰:09/02/15 22:41 📱:SH904i 🆔:oDtqLGpY


#539 [渚坂さいめ[ホワイトデー(1/3)]]
ある晴れた日、僕は突然声をかけられた。

「お、おい。お前ホワイトデーって何すればいいか分かるか?」

声をかけてきたのは宇峰央里だった。

ホワイトデー?
確かにそんな行事があった気はするけど……、そんなに目を血走らせて内容を考えるような行事だったかな?

「何って言われても……。そもそも央里は誰かからチョコ貰ったわけ……?」

「ゔ……。えーと、ハルキに貰った」


そう言えばハルキはみんなにチョコを配ってたっけ。
僕は……あれ?貰ったっけ?


「だからさ、バレンタインデーのお返しって何あげていいか分かんなくって。
傳って経験豊富そうだし、なんか知ってるだろ!?」

「いや、僕は決して経験豊富じゃない。そこは否定させてもらう。

でもまぁ、聞いた話では普通ホワイトデーにはマシュマロをあげるらしいけど……」

「ハルキ、マシュマロ嫌いって言ってた……」

「あれ?なんで嫌いって知ってんの……?」

「……っ、たまたま聞こえたんだよ!!」

⏰:09/03/27 00:27 📱:F905i 🆔:ErRKzwfM


#540 [渚坂さいめ[ホワイトデー(2/3)]]
ははーん。
リサーチ済みって事は央里も何気にハルキの事が気になってんだな。

ホワイトデーのお返しと言えばマシュマロって相場が決まってるんだけど、それが嫌いだったから焦って僕を頼ってきたわけね。

ここは僕の出番って事か。


「そーだね……。食べ物は好き嫌いが分からないからやめた方がいいかも。もっと無難に……」

「無難に?」

「無難に花束とかでいいんじゃない……?」

「花束!!それいいな!!!!早速買ってくるわ」

「あ……」

行っちゃった。
花言葉には気をつけた方がいいよー、って言いたかったのに。
僕の経験上、女の子って花言葉とか細かいところに敏感だからね。

ま、店員さんが選んでくれるから心配いらないかな。




って、もう帰ってきた。

あーあー、そんなに振り回したら花びらとれちゃうって。

バカ、ハルキはあっちだって。男子トイレに居る訳ないだろ……。

そうそうそっち。
さて、僕は隠れて様子を見守りますかね……。宇峰央里の一世一代の晴れ舞台ってやつかな。

⏰:09/03/27 00:28 📱:F905i 🆔:ErRKzwfM


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