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#55 [[空]ふむ(1/2)◆s8/1o/v/Vc]
―ねぇねぇ。
―なぁに?
地下深くの冷たいコンクリートで出来た小部屋に、二人の少年がいた。

空って知ってる?
そら?
うん。
何それ?
外に出るとね、上に青い世界が広がってるんだって!
本当?
本当だよ、話で聞いたもん。
じゃあ…さ。
ん?
見てみようよ、空。
えっ…でも、ここからは出ちゃいけないって…。
うん、そうだね。
…それでも行くの?
僕は行くよ。見てみたいんだ。空を。
でも…。
うん…殺されるかも知れない。でもね…空を知らない人生ってつまらないと思うんだ。
………。
行く?
僕は……。
行かない?
………。
そう…じゃあここでバイバイだよ。
…うん。
じゃあね。今まで、ありがとう。
さよなら…元気でね。
片方の少年は立ち上がると扉に手を掛ける。
もう一人の少年は心配そうな表情に寂しげな目で少年の背中を見つめている。
がちゃり、と重い金属音がして、扉が開かれる。
少年は後ろからの視線に振り返ることなく、扉の向こうに姿を消していった。

⏰:08/03/04 00:02 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


#56 [[空]ふむ(2/2)◆s8/1o/v/Vc]
少年は駆け出した。
裸足のまま冷たい廊下をひたすら走った。
突き当たりに立入禁止の文字が書かれた扉がある。
鍵は朽ちていて近くのパイプ椅子で何度か叩けば簡単に壊れた。
老人の言葉を思い出す。
この扉から先へは行ってはいけないよ…。
大人も近づかないこの場所。
この先には何があるのか。
全く知らない未知の世界。
立ち止まっている時間はない。
ばれて捕まったら殺されてしまうだろう。
少年は扉を思い切り開けると勢い良く中へ飛び込んだ。
真っ暗な廊下。
水の滴る音。
唯一の光である切れかけの電球。
じめじめとした湿気を含むコンクリートを強く蹴る。
早く、早く…。
永遠に続きそうな錯覚さえする長い廊下を全力で駆けた。
待っていたのは上へと続く長い階段。
暗くなっていて先が見えない。
少年は荒れた呼吸を少し整えると一歩を踏み出した。
暗く静かな世界にひたひたと少年の足音のみが響く。
前方に何かが見えてきた。
扉だった。
見るからに重そうな扉は錆だらけで隙間から光が漏れていた。
外だ!
少年は駆け出した。
扉に手を掛けると錆が付着しているためかうまく開かない。
扉に何度も体当たりをした。
何回目かの体当たりで扉自体が外れ向こう側の世界が現れる。
視界が光に満ちた。
少年は眩しそうに目を細める。
わぁ…
喜々とした声を上げて頭上を見上げる。
これが空かぁ!
空を描いた映像が広い広い部屋の天井いっぱいに映し出されていた。
そのソラには太陽を模った巨大な電球。
少年は初めて見るソラに感激した。

⏰:08/03/04 00:23 📱:SH905i 🆔:☆☆☆


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