【SSS】超短レス短編祭り!【飛び入り参加OK!】
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#85 [◆vzApYZDoz6]
>>84
乙です!

⏰:08/03/05 01:46 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#86 [ありがとう。さようなら(1/3)]
始まりは、1本の電話からだった。

『みかんは好きですか?』

好きです、と答えると、相手が楽しそうに声を弾ませる。

『みかんと言えばこたつ、こたつと言えばみかん。この無限ループって素敵じゃないですか?私は日本人が忘れてしまったこたつ文化を思い出してもらうためにこうして電話したんです。こたつでぬくぬくとしながら、甘いみかんを頬張る。テレビを見るのもオツですね。是非ともこたつを出してみてはどうですか?』

そうまくし立てて電話がぷっつりと切れた。

「こたつか、懐かしいな。じいちゃんが死んでから出してないな、そういや」

俺はばあちゃんを呼びつけて、こたつをどこにしまったのか確認する。
聞いた俺は居間に向かい、こたつを押し入れから引っ張りだした。
アナログな24インチの角形テレビの前に来るようにセッティング。
篭にみかんをなるだけ放り込み、こたつの上のど真ん中に置いた。
こたつのコンセントを差し込んでセット完了。
雪でも降ってりゃ完璧なんだけどな。
そう考えていると、ばあちゃんがやって来た。

「あら、こたつをしまったのはどこだ、って聞いたと思ったら」
「懐かしいだろ?」
「そうだねぇ。入っていいかねぇ?」
「もちろんだよ。このこたつには、俺には平成の、ばあちゃんには昭和の思い出が詰まってる。謂わばタイムマシンさ」
「あらあら、面白そうだね。そいじゃタイムトラベルといこうかい」

⏰:08/03/05 01:47 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#87 [ありがとう。さようなら(2/3)]
俺とばあちゃんはこたつに入って、テレビを見ながら話を始めた。
思出話に花を咲かせる。
こたつでぬくもった体を、冷たいみかんを頬張ることで弛緩させる。
いい意味で腑抜けた状態で、それでも話のネタが尽きる事はない。
じいちゃんとばあちゃんの思い出、母ちゃんの子供の頃の事、父ちゃんが挨拶に来た時の事、姉ちゃんの笑い話、母ちゃんがまだ赤ん坊の俺を連れてきた時の事。
話題に上がったみんなは、俺とばあちゃんを残してもういない。
ばあちゃんがとても穏やかな顔で話を続ける。俺も記憶をたどり、いなくなったみんなを思い出していく。

「…なぁばあちゃん」
「なんだい?」
「寂しく、ないの?」

ばあちゃんは少しきょとんとした顔をして、やっぱり穏やかに笑った。

「私はね、いなくなったみんなを覚えているよ。おじいさんも、あんたの父ちゃんも母ちゃんも姉ちゃんも。今こうしてこたつでみかんを食べてると、みんなを思い出すんだよ。だから、少し悲しくなるねぇ。でも、寂しくはないんだよ」

あんたが、いるからねぇ。
そう付け加えて、ばあちゃんは天気予報に目をやった。
俺は天気予報を見て、居間を出てすぐにある庭に面した廊下の、大きな窓へ向かった。
外は、雪がちらついていた。

⏰:08/03/05 01:48 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#88 [ありがとう。さようなら(3/3)]
「…ばあちゃん」

外を見たまま、言う。

「なんだい?」
「俺さ、今までみんなの事で泣けなかったんだ。泣かなかったんじゃなくて、泣けなかった。みんな唐突だったから、頭が理解してなかったんだと思う」
「知ってたさ」
「俺はそれでいいと思ってた。泣かない方がいいんだ、って」

少し外を眺めて振り返る。
「でも、さ。みんな…優しいよな」

優しい雪を後ろに、居間を見る。

こたつを囲んで。
ばあちゃんの対面にじいちゃんが。
2人の間に、父ちゃんと母ちゃんが。
俺が座ってた隣に姉ちゃんが。
みんな、穏やかに。優しく笑っていた。

「…あの電話に感謝しなきゃな。言い忘れてた事を言える事に」

俺も笑い返した。
みんなを忘れないように。
でも、ちゃんと言えるように。



「ありがとう。さようなら」



やっと泣けるな。

俺は、そう小さく呟いた。

ばあちゃんは、ずっと穏やかに笑っていた。

⏰:08/03/05 01:49 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#89 [ボン太]
ヤッホーい
飛び入り参加と聞いてこのボンタ様がやってきたぜー

「ふもっふもふも!」

ハハハなーに遠慮することはないぞ皆の諸君!!


ハーハッハッハッ
ハーハッハッハッ
ハーハッハッハッ


……………ふぅ

⏰:08/03/05 02:01 📱:N902iX 🆔:MVHHZNIk


#90 [◆vzApYZDoz6]
>>89
いいぞ参加者が増えてきた!www


ガンガン参加してくれ!

⏰:08/03/05 02:25 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#91 [Bloody Valentine(1/1)◆vzApYZDoz6]
「何ですかこれは何なんだ。今の状況を説明しろ簡潔に20字以内で説明しろ」

教室の真ん中で佇む女子生徒に、自分でもキモいと思うぐらい早口で問う。
まったく混乱していた。
朝教室に向かうと、そこは血の海。
ありきたりな比喩表現なんかじゃなく、本当に。
床は一面、どす黒く変色した赤。
壁には引き摺られたような、吹き掛けられたような、ぶちまけたような凄惨な血の跡。
真ん中でスパッと両断されてる机や椅子が、血の海に転がっている。
その中央に、クラスメイトであるその女子が立っていた。
ぶっちゃけると片想いしてる女子なんだけど。
今はそいつに説明責任を突き付けている真っ最中。

「…説明がいるのか?」
「普通に考えて当然だろ」

いや、別に説明しなくても彼女の手に握られた赤い刀身の日本刀を見れば、だいたい分かるけど。
そういや彼女は剣道部だったな、等とあまりにズレた考えが頭を過った。
まぁ1つ救いがあるとすれば、他のクラスメイトの死体が無いって事か。
全然救いにならねぇと思うだろうが、仲が良い奴の惨殺死体があるよかマシだ。

「…教室が、血の海だ」
「あー分かった俺が悪かった質問変えるわ。何で血の海だ?」

黒髪を靡かせて仁王立ちする彼女はやっぱり綺麗だ。
むしろ返り血を浴びて普段より綺麗だ。
いやいや、こんな状況で見とれてどうするんだよ。

「…私がやったんだ」

そう言うと彼女は俺との距離を一気に詰めた。

「お前も私のために紅になってくれ」

私のため、ってのは嬉しいが何の道理だそりゃ。

何でだよ、とまた説明を求めた俺の声は、首に刺さった刀身に邪魔されて喉を通らなかった。

⏰:08/03/05 02:28 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#92 [トイレ借りたいシュール(1/2)◆vzApYZDoz6]
ピンポーン

「………………」

ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポ
ガチャ

「インターホンを連打するんじゃねぇ!」

「いいじゃんお前んちだし」

「ほう。俺んちなら何をしても許されると」

「火を着けても許されると思ってます」

「帰r」

「お邪魔しまーす!」

「うむ。言い得て妙なり。…で何しに来た?」

「ウ○コしに来た」

「なるほど、トイレを貸してもらえるのはお前の中で決定事項か。あ、その一番奥ね」

「サンキュー!」

⏰:08/03/05 02:43 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#93 [トイレ借りたいシュール(2/2)◆vzApYZDoz6]
ガチャ

「…えっ?」

「おっと、可愛らしい子がパンツを下ろしt」

「キャー!!」

「ところで何してるの?」

「…えっ?いや、えっと…」

「大便だろどう見ても」

「ああ、どうりで」

「小です!!ていうかどうりでって何!?」

「これはいい」

「つうか鍵閉めとけよ」

「その前に早くドア閉めてよ!!」

「…………」

バタン

「と言うわけですまんがもうちょい我慢してくれ」

「あっ、満足したからもういいや」

完…?

⏰:08/03/05 02:44 📱:P903i 🆔:/Un8CKCQ


#94 [選ばれた男(1/2)に]
ああなんだ、気付かなかったよ。私はなんて愚か者だったんだ。
いつも見上げていた空はこんなにも青く清々しく広がっていて。
春の匂いを漂わせた風が私の鼻をすり抜けていて。

あたたかい。
あたたかい。

ああなんでこんな素晴らしいことに気付かなかったのだろう。
私は真の愚か者か。


でもどうだい、つまらない人生を送っていた私でも
毎日は素晴らしいと気付けた!

私は覚醒した!

なんてことだろう。
これに気付けただけで周りの風景はこんなにも変わるものなのだろうか。

どうして今まで気付けなかったのだろう。
私はてっきり、自分が普通のつまらない人間だと勘違いして、普通に生きてきてしまったのだ。

それが、だ。
自分にこんな力があったなんて。
春の朝、仕事の準備をしていた僕の目の前に、突然君が舞い降りて
貴男は
選ばれた戦士だ
なんて言うものだから、戸惑うのが当たり前じゃないか。

だが今なら信じれる。
だから思えるんだ。
これほど生きていて良かったと思う日は、無い。ってね。

⏰:08/03/05 17:16 📱:N904i 🆔:CoKvvlsU


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