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#94 [選ばれた男(1/2)に]
ああなんだ、気付かなかったよ。私はなんて愚か者だったんだ。
いつも見上げていた空はこんなにも青く清々しく広がっていて。
春の匂いを漂わせた風が私の鼻をすり抜けていて。

あたたかい。
あたたかい。

ああなんでこんな素晴らしいことに気付かなかったのだろう。
私は真の愚か者か。


でもどうだい、つまらない人生を送っていた私でも
毎日は素晴らしいと気付けた!

私は覚醒した!

なんてことだろう。
これに気付けただけで周りの風景はこんなにも変わるものなのだろうか。

どうして今まで気付けなかったのだろう。
私はてっきり、自分が普通のつまらない人間だと勘違いして、普通に生きてきてしまったのだ。

それが、だ。
自分にこんな力があったなんて。
春の朝、仕事の準備をしていた僕の目の前に、突然君が舞い降りて
貴男は
選ばれた戦士だ
なんて言うものだから、戸惑うのが当たり前じゃないか。

だが今なら信じれる。
だから思えるんだ。
これほど生きていて良かったと思う日は、無い。ってね。

⏰:08/03/05 17:16 📱:N904i 🆔:CoKvvlsU


#95 [選ばれた男(2/2)に]
私はもう年を取りすぎたからと、断ろうとしたのに
今からでも遅くはないと君は言ってくれたから。

ああなんて素晴らしいのだろう。この沸き上がる喜びはなんだろう。
そう、これはチャンスだ。レールの上に敷かれた人生から、飛び出すチャンスだ!
私は素晴らしい世界を知らない。虹色に輝く毎日を知らない。味わったことがない。煌めいた景色を。素晴らしい人達を。まだ見ぬ敵を。

見てみたい。
見てみたい。

見たいんだ。
旅立ちは、今だ。

少しの金と食料があれば充分だ。仲間は、旅先で増えていくさ。

親には、伝説になった時にまた顔を見せに行けばいい。家庭を持っていない私には持ってこいの条件ではないか。


―準備は、できた。
心臓が高鳴っている。体中を暴れる様に強く血液が波打っている。重い腰を上げた私の膝が、震えている。

でも私はもう逃げない。振り返らない。
強くなりたいなら前へ進めと君が教えてくれたから。

額に流れる汗を吹く。もう大丈夫、大丈夫だ。怖くないと言えば嘘になるが、それ以上の希望が私にはあるんだ。


私を待っているのは、輝く未来だ!!!!!!






そうして私は、君に教えて貰った通り
ビルの屋上から飛び降りた。

⏰:08/03/05 17:23 📱:N904i 🆔:CoKvvlsU


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