木の下でかくれんぼ
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#1 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
中編ミステリーです。多少グロテスクな表現が入ると思われます。
苦手な方はお気をつけください。

感想、ご意見は感想板にお願いします。
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⏰:08/03/16 12:52 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#2 [ちむ◆kIFO7LoPgI]






⏰:08/03/16 12:54 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#3 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
プロローグ

校庭に出ると、遠くから夕刻を知らせるサイレンが鳴り響いた。

校舎や校庭には既に下校時間を過ぎているため生徒の姿はなかった。

教師は一つの部屋に集まり、会議をしている。

⏰:08/03/16 13:19 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#4 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
よってこれからわたしが行う行為を目撃するものは誰もいない。

計画した通りにことは進んでいる。

⏰:08/03/16 13:32 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#5 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
わたしは葉を踏みつけながら、校庭の隅に生える銀杏の木に近づいた。

銀杏の葉はまるで絨毯のように周り一面に敷き詰められていた。それらは夕焼けに照らされ、ほんのりと赤色に染まっていた。

⏰:08/03/16 13:52 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#6 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
銀杏の木は大人が十人がかりで手を広げてやっと囲めるほど大きく、木の近くには生徒が掃除の際にかき集めた銀杏の葉の山が木を囲むようにいくつも作られていた。

わたしはその中でも一際大きい葉の山に目を向けた。

⏰:08/03/16 13:53 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#7 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
そこからは、赤い靴の先端が見えていた。

よく見てみると、あの子の細く白い指も葉の隙間から見えていた。

これでよく1日誰にもばれなかったなと、わたしは胸を撫で下ろした。

⏰:08/03/16 13:56 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#8 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
しかし、ここで安心してはいけない。

わたしにはまだこの死体を処分するいう大仕事が残っているのだ。

⏰:08/03/16 13:57 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#9 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
回りを見渡し、誰もいないのを確認する。

わたしは大きめの黒いビニール袋に葉をいっぱいに詰め込んだ。

⏰:08/03/16 13:57 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#10 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
それは死体を焼却炉に入れ、葉で見えないように隠して何も知らない教師に燃やしてもらうつもりだったからである。

自分の手を汚さずに死体を始末するという考えは、殺してしまった当初から計画していたことだった。

⏰:08/03/16 15:04 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#11 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


おそらく、一回の焼却では灰になりきらないだろう。

しかし何度も燃やされれば骨さえも燃え尽きる。

⏰:08/03/16 15:07 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#12 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


美しい顔をしたこの子が何度も燃やされ朽ちる様を、わたしは想像する。

とたんに眠気にも似た甘美な感情がわたしの中に流れ込んできた。

⏰:08/03/16 15:09 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#13 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


唐突に強い風がふき、葉の中の白い足が二本とも現れた。

早く燃やしてと懇願しているように思えた。

わたしは死体の両足を掴み思い切り引き出した。それは驚くほどに軽く、冷たかった。

⏰:08/03/16 15:13 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#14 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


大きく見開かれた死体の目とわたしの目がかち合った。


わたしの手からビニール袋が滑り落ち、詰め込んでいた葉が足元に散らばった……。

⏰:08/03/16 15:16 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#15 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




クラスメイトのアサミさんとわたしはよく似ているらしい。

数日前に教師からそう言われ、初めて意識するようになった。

⏰:08/03/16 16:40 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#16 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんは花が咲くように笑い、人間性のよさと美貌で男女問わずクラスメイトに愛されている人である。

そんなアサミさんと教室の隅でひっそりと授業に参加するわたしが似ているなんて、信じられなかった。

⏰:08/03/16 16:43 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#17 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかし、心当たりがないわけではない。

よく登校中に後ろから「アサミ、おはよう!」と声をかけられるし、学級新聞に出てもいないボランティア活動の参加者に加えられ称えれていたこともあった。

⏰:08/03/16 16:45 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#18 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


その度にわたしは申し訳ない気持ちになり、アサミさんをまともに見れなかった。

しかし当の本人は何事もなかったかのように話題にもださない。

⏰:08/03/16 16:54 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#19 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは内心、ほっとしていた。

取っつかれてもわたしは滅多にクラスメイトと話さないため緊張で声がひっくり返る可能性があるからである。

⏰:08/03/16 16:57 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#20 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




「アサミとサエコさんって似てるよね」

退屈な昼休みに、いつものように読書をしていた時だった。

ストーブの回りに固まって談話していた女子の一人がアサミさんにそう言い放ったのである。

⏰:08/03/16 19:41 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#21 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


その瞬間、教室の空気が凍った気がした。

ストーブの方を見ると女子の一人がにやにやと笑っていたので、わざとわたしに聞こえるようにいったものだと分かった。

しかしわたしはアサミさんがいつものように受け流してくれると信じていた。

⏰:08/03/16 19:43 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#22 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「やめてよ。どこが似てるって言うのよ」

嫌悪感をあらわにした顔で、アサミさんはわたし睨んだ。

予想外の展開だった。

わたしはごめんなさいと呟いてためらいがちに顔を伏せた。

⏰:08/03/16 19:44 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#23 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


そんなわたしの反応を面白がるクラスメイトの笑い声が聞こえてきた。

わたしは顔から火が出るんじゃないかと思うくらい顔が熱くなるのを感じた。

⏰:08/03/16 21:35 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#24 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


気づくと、机の前に誰かかが立っていた。それはろしい顔をしたアサミさんだった。

「なに喜んでるの?」

アサミさんは机に両手をおき、顔を近づけてわたしの耳元で囁いた。

アサミさんは口の端をあげて笑っていた。

⏰:08/03/16 21:36 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#25 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
>>24

脱字だらけなので、もう一度投稿します。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥

気づくと、机の前に誰かが立っていた。それはおそろしい顔をしたアサミさんだった。

「なに喜んでるの?」

アサミさんは机に両手をつき、顔を近づけてわたしの耳元で囁いた。

アサミさんは口の端をあげて笑っていた。

⏰:08/03/16 21:39 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#26 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


誤解よアサミさん。わたし喜んでなんかない。

そういった時には、もうアサミさんは教室をあとにしていた。

その後、アサミさんと会話する機会は一度も訪れなかった。

⏰:08/03/16 21:40 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#27 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


それからというもの、わたしはクラスメイトから臭いといって避けられるようになった。

毎日お風呂に入っているというのに、なぜ臭いのだろう。

臭いと鼻をつまんで避けられるたび、わたしはそう思った。

⏰:08/03/17 08:19 📱:L704i 🆔:MExmSl0E


#28 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかしただ二人、わたしを避けない人がいた。

カミヤマくんと、アンドウさんである。

⏰:08/03/17 18:06 📱:L704i 🆔:MExmSl0E


#29 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


カミヤマくんはアサミさんと仲がよく、一緒に下校する姿を何度も見かけたことがある。

おそらくわたしの心中をアサミさんに伝え、笑い物にするために避けずに寄ってくるのだろう。

⏰:08/03/17 18:09 📱:L704i 🆔:MExmSl0E


#30 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンドウさんはわたしと同じで友達というものがおらず、いつも一人で行動していた。

わたしを避けないのは、おそらくクラスで起こる出来事すべてに関心がないからなのだろう。

⏰:08/03/18 12:18 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#31 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


彼女は美しく、常に無表情で正気の感じられない白い肌をしている。

その為か、どこか近寄りがたいオーラを放っていた。

⏰:08/03/18 13:51 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#32 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさん」

下校のため教室を出ようとした時、アンドウさんに呼び止められた。

わたしは驚いて目を丸くする。

それに構わず、彼女は無表情のまま続けた。

⏰:08/03/18 14:17 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#33 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「明日の放課後、アサミさんが何か企んでるみたいよ。彼氏をサエコさんにとられたってわめいてたわ。席が近いから偶然きこえたの……」

消え入りそうにか細い声は、わたしの脳内に何度もこだました。

⏰:08/03/18 14:19 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#34 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんの彼氏をわたしが盗った?

そもそも彼氏が誰なのかも分からないのに。

わたしの声と手は焦りと混乱で震えた。

⏰:08/03/18 14:20 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#35 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「私、あなたのこと嫌いじゃないから教えてあげたのよ。頑張って逃げてちょうだいね。かなり危ないことするつもりみたいだから」

それだけ言うと、アンドウさんは教室から出ていった。

⏰:08/03/18 14:22 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#36 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


気づくと、教室にはわたし一人になっていた。

わたしは机に突っ伏し、見回りの警備員がくるまでひとり泣いた。

⏰:08/03/18 14:22 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#37 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




朝、教室に入るとアサミさんに声をかけられた。

その表情は愉快な玩具でも見つけたかのように生き生きとしていていた。

一晩中泣いて酷い顔になった自分が馬鹿らしく思える。

⏰:08/03/18 14:50 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#38 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「今日の放課後、屋上にきてよ。大切な話があるの。絶対きてよね」

うん……。

渋々返事をしたわたしをアサミさんは鼻でフンと笑い、友達の元へと帰っていった。

椅子に座ると、無慈悲な冷たさを足に感じた。

⏰:08/03/18 14:52 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#39 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


クラスメイトの楽しそうなざわめきがいつも以上に不愉快だ。

わたしは机に突っ伏した。

もう全てが疎ましい。

⏰:08/03/18 14:54 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#40 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさん、大丈夫?アサミになにか嫌なことでも言われたの?」

その後すぐに入れ替えでカミヤマくんが話しかけてきた。

その声は優しく、つい気を許してしまいそうになるものだった。
しかし、わたしの中の醜い警戒心がそれを拒む。

⏰:08/03/18 15:20 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#41 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「別に……」

わたしは顔を伏せたまま返事をした。

きっとカミヤマくんはアサミさんと内通しているに違いないのだ。

そうでなかったら、わたしなんかと親しくするわけがない。

⏰:08/03/18 16:17 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#42 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


そう考えたとたん、わたし胸がチクリと痛んだ。

原因は考えたくもなかった。

「あっちいってよ」

わたしは涙声で訴えた。

⏰:08/03/19 08:48 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#43 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しばらくしてカミヤマくんの気配を感じなくなったので、去ったのだと思った。

しかし違った。

⏰:08/03/19 08:50 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#44 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


唐突に、誰かに頭を撫でられた。

わたしが驚いて顔をあげると、カミヤマくんの優しい笑顔があった。

⏰:08/03/19 08:55 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#45 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アサミは、本当は君の事が好きなんだよ。いつも君と話したがってた。だけど感情表情が苦手な子だから、うまく気持ちを伝えられないんだよ。それに今はサエコさんに何かを取られたってすねてるから、気がたってるんだよ」

⏰:08/03/19 11:39 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#46 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミを許してあげて。

カミヤマくんはそう言い残し、自席へと戻っていった。

わたしは頭を撫でられた感触が忘れられず、自分の手でそっとなぞった。

わたしの手は冷たくて骨ぼねしく、カミヤマくんのそれとは全然違った。

⏰:08/03/19 21:45 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#47 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは数学の時間、ずっとカミヤマくんの手のことばかりを考えていた。

わたしは黒板ではなく、前方に座るカミヤマくんばかり見ていることに気付いた。

⏰:08/03/20 06:36 📱:L704i 🆔:orSzYUvQ


#48 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


『アサミを許してあげて』

カミヤマくんのいった台詞が頭をよぎる。

謝るのはずっとわたしの方だと思っていた。

似てしまっていてごめんなさい、と。

⏰:08/03/20 12:23 📱:L704i 🆔:orSzYUvQ


#49 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかしカミヤマくんは違った。

わたしではなく、アサミさんを加害者にした。

わたしではなく、アサミさんを……。

⏰:08/03/22 14:28 📱:L704i 🆔:8N6PfEkM


#50 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




放課後、屋上に上がると既にアサミさんが待ち構えていた。

転落防止用の柵にもたれかかったアサミさんの目は細められ、まるで汚いものを見る目でわたしを見ていた。

⏰:08/03/27 19:36 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#51 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしはアサミさんに近づいた。

今までのわたしなら目を反らしているところだが、けして反らさなかった。

⏰:08/03/27 19:37 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#52 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アタシがなんでアンタを呼んだかわかる?」

アサミさんは怖い顔をして言った。

心臓の鼓動がもしかしたら風に乗って聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい高鳴っていた。

⏰:08/03/27 21:21 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#53 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「……わたしとアサミさんが似てるから……気に入らないんだよね?」

アサミさんは眉をひそめた。

「違うわよ。どこまでも鈍感ね、アンタは。カミヤマくんのことよ。アンタ、カミヤマくんと付き合ってるんでしょう」

⏰:08/03/27 21:21 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#54 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは首を横にふった。

わたしとカミヤマくんと付き合っているなんて誤解だ。

しかし、アサミさんの表情はけわしくなっていく一方だった。

⏰:08/03/27 21:24 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#55 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アサミさん、わたし嘘なんてつかないよ。カミヤマくんとわたしが付き合ってるなんて誤解よ」

「下手な芝居は止めなさいよ!アタシ聞いたんだから!アンタなんかよりアタシのほうがカミヤマくんをずっとずっと好きなのにっ!」

⏰:08/03/27 21:25 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#56 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんは泣いていた。

なぜ泣くのか、わたしには理解ができない。

おろおろしている内に、アサミさんの手がわたしの両肩を掴んだ。

⏰:08/03/27 21:27 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#57 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


落ち着いて、アサミさん。

そう言おうとした直後だった。



「アンタなんか!アンタなんか殺してやるっ!アンタみたいな、アンタみたいな捨て子なんか!」

⏰:08/03/27 21:29 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#58 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンタミタイナステゴナンカ、コロシテヤル。アンタミタイナステゴナンカ、コロシテヤル。

まるで記号のように処理された言葉は、脳内で何度も再生された。

わたしの耳からは音が消え去り、目の前が真っ暗になる。

⏰:08/03/27 21:30 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#59 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……どうしてそのことを知っているの。

わたしがそうつぶやくと、アサミさんは勝ち誇ったような笑みを浮かべわたしに向けた。

⏰:08/03/27 21:32 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#60 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あら、保護者の間じゃ有名なのよ。アンタは捨て子で、叔母夫婦に引き取られてるって。ママから聞いたのよ。でも生徒じゃあ知らない人がほとんどよ。どう?ばらされたくなかったら、カミヤマくんと別れなさいよ」

⏰:08/03/27 21:32 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#61 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……分からない。

もうアサミさんという人間がどんな人間だったか分からない。

これが笑顔が美しくてみんなに優しいアサミさん?

ちがう、まるで人の皮をかぶった悪魔じゃないか。

⏰:08/03/28 17:49 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#62 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「だから……わたし……カミヤマくんと付き合ってなんかないっ……」

「嘘よ!アンタいい加減にしなさいよね!分かったわよ、そんなにばらされたいのならばらしてやる!明日、全校生徒がアンタを異端視するのが楽しみだわ!」

⏰:08/03/28 17:50 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#63 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんは高笑いしながら階段へと向かった。

わたしは息苦しくなり、その場にうずくまった。

どうする。

このまま逃がせば、わたしは明日から全校生徒に、いや町中の人間に捨て子だとばれてしまう。

⏰:08/03/28 21:22 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#64 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


そうなれば今まで優しく接してきてくれた叔母さんや叔父さんに迷惑がかかる。

噂の対象にされて、散々弄ばれた後に同情されるのだ。


……それだけは出来ない。

⏰:08/03/28 21:22 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#65 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アサミさんっ!」

わたしは立ち上がり、大声で叫んだ。

階段を降りようとしていたアサミさんは驚いて振り返り、立ち止まった。

わたしはすぐさまアサミさんに駆け寄り、強く腕を掴んだ。

⏰:08/03/28 21:26 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#66 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「痛い!」

叫ぶアサミさんを無視し、強引に屋上のフェンス付近へと引き戻した。

アサミさんは力が弱くて体が軽く、簡単に連れてくることができた。

⏰:08/03/28 21:35 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#67 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは腕をはなし、素早くアサミさんの首を締め上げた。

迷いはなかった。

アサミさんのわたしを見る目は大きく見開かれている。

わたしはそのままフェンスから落とすつもりだった。

⏰:08/03/28 21:36 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#68 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あ、アンタ……止めなさいよぉっ……」

「うるさい、落ちろっ……!落ちてしまえ……!」

⏰:08/03/28 21:45 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#69 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかし駄目だった。

何度必死に首を掴んで押しても、フェンスはアサミさんの肩下あたりまであるためになかなか落ちない。

わたしは更に力を込めて押した。

もう、頭の中が真っ白だった。

⏰:08/03/28 21:45 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#70 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あっ……!」

アサミさん足が浮き、落ちる寸前になった、その時だった。

階段付近で、ドアが閉まる音がしたのだ。

わたしは慌ててアサミさんを引き上げる。

⏰:08/03/28 23:11 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#71 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


首の締め付けから解放されたアサミさんは床に這いつくばり咳き込んだ。

階段には誰もいない。

わたしが扉が風でしまったことを確認して戻った時には、アサミさんは既に咳き込むのを止めていた。

⏰:08/03/28 23:16 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#72 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


代わりに、わたしを恐ろしげに見上げる目がふたつ並んでいた。

それをしばらく黙ってみつめていた。

途中、アサミさんは口を金魚のようにパクパクとさせていた。

何か言いたいけれど、声が出ないのだろうな、と思った。

⏰:08/03/28 23:16 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#73 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


気付けば、わたしは屋上にひとりでいた。

少ししてアサミさんが叫びながら出ていったのを思い出した。

⏰:08/03/31 21:23 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#74 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「わたしは……これからどうすれば……」


……もう何もかもお仕舞いだ。

冷たい風がわたしの髪を撫でる。

⏰:08/03/31 22:40 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#75 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


静かに目をつぶると、生ぬるい涙が頬を伝った。

叔母さん、叔父さん、ごめんなさい。

本当にごめんなさい。

⏰:08/03/31 22:41 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#76 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさん……」

か細い声が風に乗って聞こえてきた。

見ると、扉にもたれかかって口を押さえるアンドウさんがいた。

⏰:08/03/31 22:44 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#77 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


酷く怯えた顔をしている、おそらく先ほどのアレを見てしまったのだろう。

扉が閉まった時、階段下まで確認したのに……いったいどこに隠れていたのか。

⏰:08/03/31 22:44 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#78 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


けれど、もうすべてに興味がない。

どうせ明日にはアサミさんがすべてを町中に伝えるだろう。

わたしは終わりなのだ。


そう、……終わりなんだ。

⏰:08/03/31 22:47 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#79 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「た、……大変なの……下で……下で、アサミさんが……」


屋上から飛び降りて、死んでるの。

アンドウさんは再び口を押さえた。

わたしはアンドウさんの言う意味が分からず、黙り込んでいた。

⏰:08/03/31 22:47 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#80 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「……いきなり何を言い出すの。アサミさんならもう下に降りていったわよ」

「ほ、本当よ!下の花壇に倒れてるのよ……とにかくあれを見て!」

⏰:08/03/31 22:49 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#81 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンドウさんはフェンスに身を乗り出して真下を指差した。

ため息をついた後、わたしも遅れて下を見た。

⏰:08/03/31 22:50 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#82 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あれ…なに…?」

視線の先には、

……頭が……

あまりに不自然な方向にネジ曲がり、うつ伏せに倒れたアサミさんがいた。

⏰:08/03/31 22:52 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#83 [ちむ◆kIFO7LoPgI]



「そ、そんな……!」


もう、何もかもが唐突すぎる。

上手く考えが回らないっ……!

⏰:08/03/31 22:53 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#84 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……アサミさんが、屋上から飛び降りて死んだ?

今までわたしが屋上にいたというのに、そんな馬鹿なことがあるわけがないし行えるわけがない。

⏰:08/04/04 09:47 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#85 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……確かにわたしはアサミさんを屋上から突き落とそうとしたけれど、それは未遂に終わったわけで、だからわたしは関係ないわけで、


あ、あ、……ああああ……あああァあ…っ!

⏰:08/04/04 09:47 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#86 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「ありえない……!屋上からなんてありえないっ……!いいえ、そんなことよりアサミさんが死んだなんてありえないっ……!!アレはただ倒れてるだけよ……アレはっ……」


ありえない、アリエナイ。

⏰:08/04/04 09:55 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#87 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは走り出していた。

間近で見るまで信じられなかった。

遅れてアンドウさんもついてくる。

⏰:08/04/04 09:56 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#88 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


道中、何度も目の前が暗くなり倒れそうになった。

いっそのこと倒れて目が覚めなければいいのにと思った。

⏰:08/04/04 09:56 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#89 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「私、下校途中に図書室から借りた本を返すのを忘れていたのを思い出して……」

息を荒らせながら、アンドウさんは倒れたアサミさんを発見したいきさつを語りだした。

⏰:08/04/04 09:58 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#90 [ちむ◆kIFO7LoPgI]



「返却日は今日だったの。遅れて返すなんて嫌だったから、仕方なく学校に戻ることにして……裏門を通って校舎に入ろうとした途中に……」


⏰:08/04/04 09:59 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#91 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんが悲鳴をあげながら上から落ちてきたの。

アンドウさんは極端に声を小さくし、回りを気にするかのように言った。

もう校舎には一握りの教師しかいないが、それでもアンドウさんは気になるらしかった。

⏰:08/04/04 10:10 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#92 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「でも、それなら屋上から落ちてきたなんて特定は出来ないじゃない。三階からかもしれないし、二階からかもしれない」

わたしがそう言うと、アンドウさんは黙り込んだ。

考えたくはないが、きっとアンドウさんは最初からわたしを疑っていたのだろう。

⏰:08/04/04 10:13 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#93 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


だから屋上から落ちてきたなどと説明し、わたしを混乱させて、あわよくば白状させるために言ったことなのだろうか。

できればそう思いたくはないのだが、それはアンドウさんも同じなのだろう。

⏰:08/04/04 10:14 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#94 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あっ……」

アンドウさんが急に足を止めた。

「この扉を開ければ、アサミさんの倒れているところにすぐにいけるわ」

⏰:08/04/05 19:41 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#95 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンドウさんは目の前の扉を指差した。

それは軽くて薄い、よく見掛ける銀色の扉だった。

……この先にアサミさんがいる。

⏰:08/04/05 19:42 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#96 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「…………」

わたしは頷いた。

アンドウさんがゆっくりとドアノブを回し、手前に引く。

その先にはアサミさんが倒れていた近くにある花壇が並んでいた。

⏰:08/04/05 19:45 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#97 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


唐突に、アンドウさんがわたしの制服の裾を掴んだ。

その手は震えていた。

「……私、怖いわ……」

わたしは固く目をつぶる。

「……それはわたしもだけど、このまま放っておけるものでもないわよアレは……」

⏰:08/04/05 19:45 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#98 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


目を開けて大きく深呼吸をした後、わたしはアサミさんの元へと歩き出した。

アンドウさんも口を押さえてうつむきながらついてくる。

しばらく歩いていると、アンドウさんが口を開いた。

⏰:08/04/05 19:56 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#99 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「ねぇ、おかしいわ。アサミさんが倒れていたのは確かにこの辺りのはずなのにいない……」

アンドウさんの言うとおりだった。

屋上から覗いた時、確かにわたしもこの辺りにアサミさんが倒れていたのを見た。

それがいったいどうしていないのか、立って歩いたとは考えにくい。

⏰:08/04/05 20:08 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#100 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「……アサミさん、きっと無事だったのよ。だから歩いてここから出ていった……」

わたしがそう言うとアンドウさんは怪訝な顔をした。

正直、わたしもそんな気持ちだった。

⏰:08/04/05 20:10 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#101 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「先生が見つけた、なんてことないわよね?」

アンドウさんが職員室のある方向を見つめた。

あり得ない話じゃない。

ここから職員室まで十秒とかからないのだから、アサミさんを見つけた先生がどこかに連れていった可能性も十分ある。

⏰:08/04/06 13:57 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


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