木の下でかくれんぼ
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#1 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
中編ミステリーです。多少グロテスクな表現が入ると思われます。
苦手な方はお気をつけください。

感想、ご意見は感想板にお願いします。
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⏰:08/03/16 12:52 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#2 [ちむ◆kIFO7LoPgI]






⏰:08/03/16 12:54 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#3 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
プロローグ

校庭に出ると、遠くから夕刻を知らせるサイレンが鳴り響いた。

校舎や校庭には既に下校時間を過ぎているため生徒の姿はなかった。

教師は一つの部屋に集まり、会議をしている。

⏰:08/03/16 13:19 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#4 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
よってこれからわたしが行う行為を目撃するものは誰もいない。

計画した通りにことは進んでいる。

⏰:08/03/16 13:32 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#5 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
わたしは葉を踏みつけながら、校庭の隅に生える銀杏の木に近づいた。

銀杏の葉はまるで絨毯のように周り一面に敷き詰められていた。それらは夕焼けに照らされ、ほんのりと赤色に染まっていた。

⏰:08/03/16 13:52 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#6 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
銀杏の木は大人が十人がかりで手を広げてやっと囲めるほど大きく、木の近くには生徒が掃除の際にかき集めた銀杏の葉の山が木を囲むようにいくつも作られていた。

わたしはその中でも一際大きい葉の山に目を向けた。

⏰:08/03/16 13:53 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#7 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
そこからは、赤い靴の先端が見えていた。

よく見てみると、あの子の細く白い指も葉の隙間から見えていた。

これでよく1日誰にもばれなかったなと、わたしは胸を撫で下ろした。

⏰:08/03/16 13:56 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#8 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
しかし、ここで安心してはいけない。

わたしにはまだこの死体を処分するいう大仕事が残っているのだ。

⏰:08/03/16 13:57 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#9 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
回りを見渡し、誰もいないのを確認する。

わたしは大きめの黒いビニール袋に葉をいっぱいに詰め込んだ。

⏰:08/03/16 13:57 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#10 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
それは死体を焼却炉に入れ、葉で見えないように隠して何も知らない教師に燃やしてもらうつもりだったからである。

自分の手を汚さずに死体を始末するという考えは、殺してしまった当初から計画していたことだった。

⏰:08/03/16 15:04 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#11 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


おそらく、一回の焼却では灰になりきらないだろう。

しかし何度も燃やされれば骨さえも燃え尽きる。

⏰:08/03/16 15:07 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#12 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


美しい顔をしたこの子が何度も燃やされ朽ちる様を、わたしは想像する。

とたんに眠気にも似た甘美な感情がわたしの中に流れ込んできた。

⏰:08/03/16 15:09 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#13 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


唐突に強い風がふき、葉の中の白い足が二本とも現れた。

早く燃やしてと懇願しているように思えた。

わたしは死体の両足を掴み思い切り引き出した。それは驚くほどに軽く、冷たかった。

⏰:08/03/16 15:13 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#14 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


大きく見開かれた死体の目とわたしの目がかち合った。


わたしの手からビニール袋が滑り落ち、詰め込んでいた葉が足元に散らばった……。

⏰:08/03/16 15:16 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#15 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




クラスメイトのアサミさんとわたしはよく似ているらしい。

数日前に教師からそう言われ、初めて意識するようになった。

⏰:08/03/16 16:40 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#16 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんは花が咲くように笑い、人間性のよさと美貌で男女問わずクラスメイトに愛されている人である。

そんなアサミさんと教室の隅でひっそりと授業に参加するわたしが似ているなんて、信じられなかった。

⏰:08/03/16 16:43 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#17 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかし、心当たりがないわけではない。

よく登校中に後ろから「アサミ、おはよう!」と声をかけられるし、学級新聞に出てもいないボランティア活動の参加者に加えられ称えれていたこともあった。

⏰:08/03/16 16:45 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#18 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


その度にわたしは申し訳ない気持ちになり、アサミさんをまともに見れなかった。

しかし当の本人は何事もなかったかのように話題にもださない。

⏰:08/03/16 16:54 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#19 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは内心、ほっとしていた。

取っつかれてもわたしは滅多にクラスメイトと話さないため緊張で声がひっくり返る可能性があるからである。

⏰:08/03/16 16:57 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#20 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




「アサミとサエコさんって似てるよね」

退屈な昼休みに、いつものように読書をしていた時だった。

ストーブの回りに固まって談話していた女子の一人がアサミさんにそう言い放ったのである。

⏰:08/03/16 19:41 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#21 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


その瞬間、教室の空気が凍った気がした。

ストーブの方を見ると女子の一人がにやにやと笑っていたので、わざとわたしに聞こえるようにいったものだと分かった。

しかしわたしはアサミさんがいつものように受け流してくれると信じていた。

⏰:08/03/16 19:43 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#22 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「やめてよ。どこが似てるって言うのよ」

嫌悪感をあらわにした顔で、アサミさんはわたし睨んだ。

予想外の展開だった。

わたしはごめんなさいと呟いてためらいがちに顔を伏せた。

⏰:08/03/16 19:44 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#23 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


そんなわたしの反応を面白がるクラスメイトの笑い声が聞こえてきた。

わたしは顔から火が出るんじゃないかと思うくらい顔が熱くなるのを感じた。

⏰:08/03/16 21:35 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#24 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


気づくと、机の前に誰かかが立っていた。それはろしい顔をしたアサミさんだった。

「なに喜んでるの?」

アサミさんは机に両手をおき、顔を近づけてわたしの耳元で囁いた。

アサミさんは口の端をあげて笑っていた。

⏰:08/03/16 21:36 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#25 [ちむ◆kIFO7LoPgI]
>>24

脱字だらけなので、もう一度投稿します。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥

気づくと、机の前に誰かが立っていた。それはおそろしい顔をしたアサミさんだった。

「なに喜んでるの?」

アサミさんは机に両手をつき、顔を近づけてわたしの耳元で囁いた。

アサミさんは口の端をあげて笑っていた。

⏰:08/03/16 21:39 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#26 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


誤解よアサミさん。わたし喜んでなんかない。

そういった時には、もうアサミさんは教室をあとにしていた。

その後、アサミさんと会話する機会は一度も訪れなかった。

⏰:08/03/16 21:40 📱:L704i 🆔:wszi2a0k


#27 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


それからというもの、わたしはクラスメイトから臭いといって避けられるようになった。

毎日お風呂に入っているというのに、なぜ臭いのだろう。

臭いと鼻をつまんで避けられるたび、わたしはそう思った。

⏰:08/03/17 08:19 📱:L704i 🆔:MExmSl0E


#28 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかしただ二人、わたしを避けない人がいた。

カミヤマくんと、アンドウさんである。

⏰:08/03/17 18:06 📱:L704i 🆔:MExmSl0E


#29 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


カミヤマくんはアサミさんと仲がよく、一緒に下校する姿を何度も見かけたことがある。

おそらくわたしの心中をアサミさんに伝え、笑い物にするために避けずに寄ってくるのだろう。

⏰:08/03/17 18:09 📱:L704i 🆔:MExmSl0E


#30 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンドウさんはわたしと同じで友達というものがおらず、いつも一人で行動していた。

わたしを避けないのは、おそらくクラスで起こる出来事すべてに関心がないからなのだろう。

⏰:08/03/18 12:18 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#31 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


彼女は美しく、常に無表情で正気の感じられない白い肌をしている。

その為か、どこか近寄りがたいオーラを放っていた。

⏰:08/03/18 13:51 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#32 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさん」

下校のため教室を出ようとした時、アンドウさんに呼び止められた。

わたしは驚いて目を丸くする。

それに構わず、彼女は無表情のまま続けた。

⏰:08/03/18 14:17 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#33 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「明日の放課後、アサミさんが何か企んでるみたいよ。彼氏をサエコさんにとられたってわめいてたわ。席が近いから偶然きこえたの……」

消え入りそうにか細い声は、わたしの脳内に何度もこだました。

⏰:08/03/18 14:19 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#34 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんの彼氏をわたしが盗った?

そもそも彼氏が誰なのかも分からないのに。

わたしの声と手は焦りと混乱で震えた。

⏰:08/03/18 14:20 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#35 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「私、あなたのこと嫌いじゃないから教えてあげたのよ。頑張って逃げてちょうだいね。かなり危ないことするつもりみたいだから」

それだけ言うと、アンドウさんは教室から出ていった。

⏰:08/03/18 14:22 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#36 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


気づくと、教室にはわたし一人になっていた。

わたしは机に突っ伏し、見回りの警備員がくるまでひとり泣いた。

⏰:08/03/18 14:22 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#37 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




朝、教室に入るとアサミさんに声をかけられた。

その表情は愉快な玩具でも見つけたかのように生き生きとしていていた。

一晩中泣いて酷い顔になった自分が馬鹿らしく思える。

⏰:08/03/18 14:50 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#38 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「今日の放課後、屋上にきてよ。大切な話があるの。絶対きてよね」

うん……。

渋々返事をしたわたしをアサミさんは鼻でフンと笑い、友達の元へと帰っていった。

椅子に座ると、無慈悲な冷たさを足に感じた。

⏰:08/03/18 14:52 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#39 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


クラスメイトの楽しそうなざわめきがいつも以上に不愉快だ。

わたしは机に突っ伏した。

もう全てが疎ましい。

⏰:08/03/18 14:54 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#40 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさん、大丈夫?アサミになにか嫌なことでも言われたの?」

その後すぐに入れ替えでカミヤマくんが話しかけてきた。

その声は優しく、つい気を許してしまいそうになるものだった。
しかし、わたしの中の醜い警戒心がそれを拒む。

⏰:08/03/18 15:20 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#41 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「別に……」

わたしは顔を伏せたまま返事をした。

きっとカミヤマくんはアサミさんと内通しているに違いないのだ。

そうでなかったら、わたしなんかと親しくするわけがない。

⏰:08/03/18 16:17 📱:L704i 🆔:I.TS6sAs


#42 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


そう考えたとたん、わたし胸がチクリと痛んだ。

原因は考えたくもなかった。

「あっちいってよ」

わたしは涙声で訴えた。

⏰:08/03/19 08:48 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#43 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しばらくしてカミヤマくんの気配を感じなくなったので、去ったのだと思った。

しかし違った。

⏰:08/03/19 08:50 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#44 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


唐突に、誰かに頭を撫でられた。

わたしが驚いて顔をあげると、カミヤマくんの優しい笑顔があった。

⏰:08/03/19 08:55 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#45 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アサミは、本当は君の事が好きなんだよ。いつも君と話したがってた。だけど感情表情が苦手な子だから、うまく気持ちを伝えられないんだよ。それに今はサエコさんに何かを取られたってすねてるから、気がたってるんだよ」

⏰:08/03/19 11:39 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#46 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミを許してあげて。

カミヤマくんはそう言い残し、自席へと戻っていった。

わたしは頭を撫でられた感触が忘れられず、自分の手でそっとなぞった。

わたしの手は冷たくて骨ぼねしく、カミヤマくんのそれとは全然違った。

⏰:08/03/19 21:45 📱:L704i 🆔:s9ELimn6


#47 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは数学の時間、ずっとカミヤマくんの手のことばかりを考えていた。

わたしは黒板ではなく、前方に座るカミヤマくんばかり見ていることに気付いた。

⏰:08/03/20 06:36 📱:L704i 🆔:orSzYUvQ


#48 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


『アサミを許してあげて』

カミヤマくんのいった台詞が頭をよぎる。

謝るのはずっとわたしの方だと思っていた。

似てしまっていてごめんなさい、と。

⏰:08/03/20 12:23 📱:L704i 🆔:orSzYUvQ


#49 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかしカミヤマくんは違った。

わたしではなく、アサミさんを加害者にした。

わたしではなく、アサミさんを……。

⏰:08/03/22 14:28 📱:L704i 🆔:8N6PfEkM


#50 [ちむ◆kIFO7LoPgI]




放課後、屋上に上がると既にアサミさんが待ち構えていた。

転落防止用の柵にもたれかかったアサミさんの目は細められ、まるで汚いものを見る目でわたしを見ていた。

⏰:08/03/27 19:36 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#51 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしはアサミさんに近づいた。

今までのわたしなら目を反らしているところだが、けして反らさなかった。

⏰:08/03/27 19:37 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#52 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アタシがなんでアンタを呼んだかわかる?」

アサミさんは怖い顔をして言った。

心臓の鼓動がもしかしたら風に乗って聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい高鳴っていた。

⏰:08/03/27 21:21 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#53 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「……わたしとアサミさんが似てるから……気に入らないんだよね?」

アサミさんは眉をひそめた。

「違うわよ。どこまでも鈍感ね、アンタは。カミヤマくんのことよ。アンタ、カミヤマくんと付き合ってるんでしょう」

⏰:08/03/27 21:21 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#54 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは首を横にふった。

わたしとカミヤマくんと付き合っているなんて誤解だ。

しかし、アサミさんの表情はけわしくなっていく一方だった。

⏰:08/03/27 21:24 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#55 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アサミさん、わたし嘘なんてつかないよ。カミヤマくんとわたしが付き合ってるなんて誤解よ」

「下手な芝居は止めなさいよ!アタシ聞いたんだから!アンタなんかよりアタシのほうがカミヤマくんをずっとずっと好きなのにっ!」

⏰:08/03/27 21:25 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#56 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんは泣いていた。

なぜ泣くのか、わたしには理解ができない。

おろおろしている内に、アサミさんの手がわたしの両肩を掴んだ。

⏰:08/03/27 21:27 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#57 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


落ち着いて、アサミさん。

そう言おうとした直後だった。



「アンタなんか!アンタなんか殺してやるっ!アンタみたいな、アンタみたいな捨て子なんか!」

⏰:08/03/27 21:29 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#58 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンタミタイナステゴナンカ、コロシテヤル。アンタミタイナステゴナンカ、コロシテヤル。

まるで記号のように処理された言葉は、脳内で何度も再生された。

わたしの耳からは音が消え去り、目の前が真っ暗になる。

⏰:08/03/27 21:30 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#59 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……どうしてそのことを知っているの。

わたしがそうつぶやくと、アサミさんは勝ち誇ったような笑みを浮かべわたしに向けた。

⏰:08/03/27 21:32 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#60 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あら、保護者の間じゃ有名なのよ。アンタは捨て子で、叔母夫婦に引き取られてるって。ママから聞いたのよ。でも生徒じゃあ知らない人がほとんどよ。どう?ばらされたくなかったら、カミヤマくんと別れなさいよ」

⏰:08/03/27 21:32 📱:L704i 🆔:HTG3HFsY


#61 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……分からない。

もうアサミさんという人間がどんな人間だったか分からない。

これが笑顔が美しくてみんなに優しいアサミさん?

ちがう、まるで人の皮をかぶった悪魔じゃないか。

⏰:08/03/28 17:49 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#62 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「だから……わたし……カミヤマくんと付き合ってなんかないっ……」

「嘘よ!アンタいい加減にしなさいよね!分かったわよ、そんなにばらされたいのならばらしてやる!明日、全校生徒がアンタを異端視するのが楽しみだわ!」

⏰:08/03/28 17:50 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#63 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんは高笑いしながら階段へと向かった。

わたしは息苦しくなり、その場にうずくまった。

どうする。

このまま逃がせば、わたしは明日から全校生徒に、いや町中の人間に捨て子だとばれてしまう。

⏰:08/03/28 21:22 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#64 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


そうなれば今まで優しく接してきてくれた叔母さんや叔父さんに迷惑がかかる。

噂の対象にされて、散々弄ばれた後に同情されるのだ。


……それだけは出来ない。

⏰:08/03/28 21:22 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#65 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「アサミさんっ!」

わたしは立ち上がり、大声で叫んだ。

階段を降りようとしていたアサミさんは驚いて振り返り、立ち止まった。

わたしはすぐさまアサミさんに駆け寄り、強く腕を掴んだ。

⏰:08/03/28 21:26 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#66 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「痛い!」

叫ぶアサミさんを無視し、強引に屋上のフェンス付近へと引き戻した。

アサミさんは力が弱くて体が軽く、簡単に連れてくることができた。

⏰:08/03/28 21:35 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#67 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは腕をはなし、素早くアサミさんの首を締め上げた。

迷いはなかった。

アサミさんのわたしを見る目は大きく見開かれている。

わたしはそのままフェンスから落とすつもりだった。

⏰:08/03/28 21:36 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#68 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あ、アンタ……止めなさいよぉっ……」

「うるさい、落ちろっ……!落ちてしまえ……!」

⏰:08/03/28 21:45 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#69 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


しかし駄目だった。

何度必死に首を掴んで押しても、フェンスはアサミさんの肩下あたりまであるためになかなか落ちない。

わたしは更に力を込めて押した。

もう、頭の中が真っ白だった。

⏰:08/03/28 21:45 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#70 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あっ……!」

アサミさん足が浮き、落ちる寸前になった、その時だった。

階段付近で、ドアが閉まる音がしたのだ。

わたしは慌ててアサミさんを引き上げる。

⏰:08/03/28 23:11 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#71 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


首の締め付けから解放されたアサミさんは床に這いつくばり咳き込んだ。

階段には誰もいない。

わたしが扉が風でしまったことを確認して戻った時には、アサミさんは既に咳き込むのを止めていた。

⏰:08/03/28 23:16 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#72 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


代わりに、わたしを恐ろしげに見上げる目がふたつ並んでいた。

それをしばらく黙ってみつめていた。

途中、アサミさんは口を金魚のようにパクパクとさせていた。

何か言いたいけれど、声が出ないのだろうな、と思った。

⏰:08/03/28 23:16 📱:L704i 🆔:8OkOW9yI


#73 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


気付けば、わたしは屋上にひとりでいた。

少ししてアサミさんが叫びながら出ていったのを思い出した。

⏰:08/03/31 21:23 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#74 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「わたしは……これからどうすれば……」


……もう何もかもお仕舞いだ。

冷たい風がわたしの髪を撫でる。

⏰:08/03/31 22:40 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#75 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


静かに目をつぶると、生ぬるい涙が頬を伝った。

叔母さん、叔父さん、ごめんなさい。

本当にごめんなさい。

⏰:08/03/31 22:41 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#76 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさん……」

か細い声が風に乗って聞こえてきた。

見ると、扉にもたれかかって口を押さえるアンドウさんがいた。

⏰:08/03/31 22:44 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#77 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


酷く怯えた顔をしている、おそらく先ほどのアレを見てしまったのだろう。

扉が閉まった時、階段下まで確認したのに……いったいどこに隠れていたのか。

⏰:08/03/31 22:44 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#78 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


けれど、もうすべてに興味がない。

どうせ明日にはアサミさんがすべてを町中に伝えるだろう。

わたしは終わりなのだ。


そう、……終わりなんだ。

⏰:08/03/31 22:47 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#79 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「た、……大変なの……下で……下で、アサミさんが……」


屋上から飛び降りて、死んでるの。

アンドウさんは再び口を押さえた。

わたしはアンドウさんの言う意味が分からず、黙り込んでいた。

⏰:08/03/31 22:47 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#80 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「……いきなり何を言い出すの。アサミさんならもう下に降りていったわよ」

「ほ、本当よ!下の花壇に倒れてるのよ……とにかくあれを見て!」

⏰:08/03/31 22:49 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#81 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンドウさんはフェンスに身を乗り出して真下を指差した。

ため息をついた後、わたしも遅れて下を見た。

⏰:08/03/31 22:50 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#82 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あれ…なに…?」

視線の先には、

……頭が……

あまりに不自然な方向にネジ曲がり、うつ伏せに倒れたアサミさんがいた。

⏰:08/03/31 22:52 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#83 [ちむ◆kIFO7LoPgI]



「そ、そんな……!」


もう、何もかもが唐突すぎる。

上手く考えが回らないっ……!

⏰:08/03/31 22:53 📱:L704i 🆔:ewm6Hs66


#84 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……アサミさんが、屋上から飛び降りて死んだ?

今までわたしが屋上にいたというのに、そんな馬鹿なことがあるわけがないし行えるわけがない。

⏰:08/04/04 09:47 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#85 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


……確かにわたしはアサミさんを屋上から突き落とそうとしたけれど、それは未遂に終わったわけで、だからわたしは関係ないわけで、


あ、あ、……ああああ……あああァあ…っ!

⏰:08/04/04 09:47 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#86 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「ありえない……!屋上からなんてありえないっ……!いいえ、そんなことよりアサミさんが死んだなんてありえないっ……!!アレはただ倒れてるだけよ……アレはっ……」


ありえない、アリエナイ。

⏰:08/04/04 09:55 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#87 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしは走り出していた。

間近で見るまで信じられなかった。

遅れてアンドウさんもついてくる。

⏰:08/04/04 09:56 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#88 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


道中、何度も目の前が暗くなり倒れそうになった。

いっそのこと倒れて目が覚めなければいいのにと思った。

⏰:08/04/04 09:56 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#89 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「私、下校途中に図書室から借りた本を返すのを忘れていたのを思い出して……」

息を荒らせながら、アンドウさんは倒れたアサミさんを発見したいきさつを語りだした。

⏰:08/04/04 09:58 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#90 [ちむ◆kIFO7LoPgI]



「返却日は今日だったの。遅れて返すなんて嫌だったから、仕方なく学校に戻ることにして……裏門を通って校舎に入ろうとした途中に……」


⏰:08/04/04 09:59 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#91 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アサミさんが悲鳴をあげながら上から落ちてきたの。

アンドウさんは極端に声を小さくし、回りを気にするかのように言った。

もう校舎には一握りの教師しかいないが、それでもアンドウさんは気になるらしかった。

⏰:08/04/04 10:10 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#92 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「でも、それなら屋上から落ちてきたなんて特定は出来ないじゃない。三階からかもしれないし、二階からかもしれない」

わたしがそう言うと、アンドウさんは黙り込んだ。

考えたくはないが、きっとアンドウさんは最初からわたしを疑っていたのだろう。

⏰:08/04/04 10:13 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#93 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


だから屋上から落ちてきたなどと説明し、わたしを混乱させて、あわよくば白状させるために言ったことなのだろうか。

できればそう思いたくはないのだが、それはアンドウさんも同じなのだろう。

⏰:08/04/04 10:14 📱:L704i 🆔:53ZqndD.


#94 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「あっ……」

アンドウさんが急に足を止めた。

「この扉を開ければ、アサミさんの倒れているところにすぐにいけるわ」

⏰:08/04/05 19:41 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#95 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


アンドウさんは目の前の扉を指差した。

それは軽くて薄い、よく見掛ける銀色の扉だった。

……この先にアサミさんがいる。

⏰:08/04/05 19:42 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#96 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「…………」

わたしは頷いた。

アンドウさんがゆっくりとドアノブを回し、手前に引く。

その先にはアサミさんが倒れていた近くにある花壇が並んでいた。

⏰:08/04/05 19:45 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#97 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


唐突に、アンドウさんがわたしの制服の裾を掴んだ。

その手は震えていた。

「……私、怖いわ……」

わたしは固く目をつぶる。

「……それはわたしもだけど、このまま放っておけるものでもないわよアレは……」

⏰:08/04/05 19:45 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#98 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


目を開けて大きく深呼吸をした後、わたしはアサミさんの元へと歩き出した。

アンドウさんも口を押さえてうつむきながらついてくる。

しばらく歩いていると、アンドウさんが口を開いた。

⏰:08/04/05 19:56 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#99 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「ねぇ、おかしいわ。アサミさんが倒れていたのは確かにこの辺りのはずなのにいない……」

アンドウさんの言うとおりだった。

屋上から覗いた時、確かにわたしもこの辺りにアサミさんが倒れていたのを見た。

それがいったいどうしていないのか、立って歩いたとは考えにくい。

⏰:08/04/05 20:08 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#100 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「……アサミさん、きっと無事だったのよ。だから歩いてここから出ていった……」

わたしがそう言うとアンドウさんは怪訝な顔をした。

正直、わたしもそんな気持ちだった。

⏰:08/04/05 20:10 📱:L704i 🆔:eFgCny7w


#101 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「先生が見つけた、なんてことないわよね?」

アンドウさんが職員室のある方向を見つめた。

あり得ない話じゃない。

ここから職員室まで十秒とかからないのだから、アサミさんを見つけた先生がどこかに連れていった可能性も十分ある。

⏰:08/04/06 13:57 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#102 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしとアンドウさんはとりあえず職員室に行き、先生に特別な動きがなかったか調べにいくことにした。

「きっと残っている先生は少ないわ」

アンドウさんがそう言った時だった。

わたしは職員室から出てくる人影を見つけた。

⏰:08/04/06 14:03 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#103 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


カミヤマくんだった。

驚く暇もなくカミヤマくんはすぐにわたし達を見つけると、真っ直ぐこちらに走ってきた。

どうすればいいの、どう対応すればいいの!

唐突な展開にどうしようもないほど鼓動が高まる。

⏰:08/04/06 14:05 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#104 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさんとアンドウさん!いいところにいてくれたよ!」

カミヤマくんの柔らかくて優しい声が中庭に響く。

アンドウさんが飛びはねるようにカミヤマくんの方へと振り向いた。

⏰:08/04/06 14:18 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#105 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「か、カミヤマくん……!」

手を振りながらわたし達の名前を呼んだ時、ようやくアンドウさんはカミヤマくんの存在に気付いたようだ。

不意打ちをくらい、目を丸くし驚きを隠せないでいる。

⏰:08/04/06 14:19 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#106 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「二人とも、アサミ見なかった?」

髪をかきあげ、笑顔でカミヤマくんは言った。

アサミさんがどこへ消えたかなんて、そんなことわたし達が知るわけがない。

逆にこちらが訊きたいくらいだ。

⏰:08/04/06 14:22 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#107 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「み、見てないよ。どうして?」

動揺で声が震えた。

しかしそんなことはカミヤマくんが気付くはずもなく、カミヤマくんは、おかしいなぁどこにいるんだろう、とだけ呟いた。

⏰:08/04/06 14:22 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#108 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「今日はアサミと一緒に帰る予定だったんだ。なのにアサミはどこを探してもいないんだ。だからって無断で先に帰るわけにもいかないし……。サエコさん達なら知ってるかなと思ったんだ」

「そうだったの……。アサミさん、どこにいるんでしょうね……」

⏰:08/04/06 14:23 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#109 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

アサミさんがカミヤマくんとの約束を破るなんて信じられなかった。

約束を破ってまで校舎内で一体なにをしたかったのだろうか。

それを訊くべきアサミさんの姿はどこにもなく、地団駄を踏むばかりである。

⏰:08/04/06 16:01 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#110 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「カミヤマくん、わたし達はもう帰るね」

「そう……。僕はもう少しアサミを探してから帰るよ。二人とも、どうもありがとう」

「どういたしまして」

⏰:08/04/07 08:46 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#111 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

カミヤマくんの横をすり抜け、玄関へと向かった。

振り向くとアンドウさんが驚いた目でわたしを見ていた。

わたしは鼻で笑う。

⏰:08/04/07 09:12 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#112 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

もちろんわたしは帰る気などない。

帰るのはカミヤマくんとアンドウさんだけでいい、悪いが校内に居残られると非常に邪魔なのだ。

何時になってもいい、あとは一人になる時を待つだけだった。

⏰:08/04/07 09:12 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#113 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

後ろから軽やかな足音が近づいてくる。

アンドウさんのものだとわたしは予感した。


「サエコさん、どういうつもりなの?このまま帰るなんて……」


わたしの肩を掴み、アンドウさんは眉をひそませて言った。

⏰:08/04/07 19:26 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#114 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「ねぇ、アンドウさん。これ以上、アサミさんの行方に首を突っ込むのはやめましょう。なんだか嫌な予感がするの。アサミさんがカミヤマくんの約束をすっぽかしたなんて尋常じゃないわよ。きっとなにか大変なことが起こったに違いな「どうして?アサミさんを突き落としたのはあなたなんでしょう……?」

⏰:08/04/09 21:15 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#115 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

わたしは立ち止まる。

アンドウさんは口の端をあげ勝ち誇ったように微笑んでいた。

おそらくこの微笑はわたしが犯人であると確信してのものなのだろう。

⏰:08/04/09 21:17 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#116 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「全く話が分からないわ、アンドウさん。わたしがアサミさんを突き落としたですって?」

ぴく、とこめかみが痙攣した。

正直、目の前のアンドウさんをすぐにでも蹴り飛ばしてやりたい酷い気分である。

⏰:08/04/09 21:18 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#117 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「あら、違うの?」

「…………」

「あなたしかいないじゃないの。アサミさんとは不仲だし、意味なく屋上にいたし、私とカミヤマくんを邪魔者扱いするように帰らせたがるそぶりをする。ここまで確たる証拠を並べてあなた以外が犯人だなんていう人はいないでしょうよ?」

⏰:08/04/09 21:34 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#118 [我輩は匿名である]
あげます

⏰:08/04/13 03:11 📱:F705i 🆔:IJ6/AzD2


#119 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「まったくだわ、アンドウさん……。けれど残念ね。なにを言われようがアサミさんを突き落としたのはわたしじゃないわよ。無駄な油を売るなら他所でやってちょうだい」

⏰:08/04/17 23:23 📱:L704i 🆔:VHqkl5Ho


#120 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アンドウさんは怪訝げに目を細めた。

手で唇を隠す。

そして困った、とでも言いたそうに視線を泳がせる。

⏰:08/04/17 23:27 📱:L704i 🆔:VHqkl5Ho


#121 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

堂々と言い切るわたしに、さすがに疑いが薄れてたじろいできたかのように思えた。

わたしはヤレヤレと安堵の笑みをこぼす。

⏰:08/04/17 23:27 📱:L704i 🆔:VHqkl5Ho


#122 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……じゃあこれだけは訊かせて。アサミさんが突き落とされた……もしくは自ら落ちた後、なぜあなたは屋上にいたの?……理由はなに?」

「アサミさんに呼ばれていたのよ。教えてくれたのはあなたじゃない。忘れたの?」

⏰:08/04/18 00:05 📱:L704i 🆔:27x0vPxM


#123 [紫陽花]
あげッ(・∀・)

⏰:08/04/27 13:40 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#124 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……それにしても長引き過ぎじゃないかしら……。いくら話し込んだとしても流石に一時間近くはかからないわよ」

わたしは屋上での出来事を思い出した。

「そりゃあ、色々あって少し長引いてはしまったけれど……」

⏰:08/04/27 20:02 📱:L704i 🆔:qKKRrT0s


#125 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしがそう言った後、重苦しい沈黙がしばらく続いた。

それを先に破ったのはアンドウさんだった。

「……ますます怪しいわね……」

⏰:08/04/27 20:08 📱:L704i 🆔:qKKRrT0s


#126 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

校内のスピーカーから四時を知らせるチャイムが鳴り響く。

同時にアンドウさんは鞄を背負い直し、無表情のままこちらに顔を向けた。

⏰:08/04/28 13:17 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#127 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「何はともあれ、面倒なことになりそうなのは変わりないみたいね。明日にはアサミさんの安否が分かるに越したことはないのだけれど。……これがもしあなた以外の殺人事件だったり、自殺のしそこないだったりしたら関わりたくはないわ」

「…………」

「楽しみよ、これからのあなたを思うとね。仲良くしていきましょう。ムラカミサエコさん……」

⏰:08/04/28 13:35 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#128 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アンドウさんはわたしに微笑んだ後、足早に玄関へと去っていった。

わたしはその背を黙って静かに見送る。

「とんだ好かれ方をされてしまったものだわ」

くけけ。

わたしは込み上げる笑いを必死に抑える。

⏰:08/04/28 13:37 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#129 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

面白い。面白いよ、アンドウさん。

あの子はなんて頭の冴える子なのだろう。

精神力も並みではない。

⏰:08/04/28 13:39 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#130 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

飛び降りてきたアサミさんにも動じず、ただ冷静に、半場楽しむかのようにわたしがアサミさんを突き落とした犯人だと推測し言い切った。

……くけけ。

⏰:08/04/28 13:40 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#131 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

教室へと戻り、テラスからアンドウさんが校内から遠く離れていくのを確認した。

ガラス越しに小さくなったアンドウさんをゆっくりと指でなぞる。

⏰:08/04/28 14:02 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#132 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「今日はとっても楽しかったわよ、アンドウさん……」

今日はアンドウさんの胸中で様々な思いが交錯するのが手に取るように分かった。

まさに疑い合い、探り合い。

相手の出方を見て聞いて探る。

⏰:08/04/28 14:13 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#133 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「わたしをもっともっと楽しませて頂戴」

ポケットに手を入れ、丁寧に畳まれたハンカチを取り出した。

そのハンカチには可愛らしい花のイラストがプリントされ、四方には質素な白いレースがあしらわれている。

⏰:08/04/28 14:28 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#134 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

畳まれたハンカチを広げると、そこには、まだ乾ききらないアサミさんの血が染みついていた。

「くけけ」

安心して探偵気取りで悩むがいいわ、アンドウさん。

ジョーカーは逃げも隠れもしない。

ジョーカーはわたしなのだから。

⏰:08/04/28 14:39 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#135 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アサミさんが屋上を去ろうとした時、わたしは咄嗟に引き止めた。

アサミさんが恐怖の悲鳴をあげる前に、息の根を止めなければとわたしは焦る。

⏰:08/04/28 14:53 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#136 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アサミさんの美しい顔を何度も何度も殴った。

動脈を千切る勢いで首に噛みついた。

蹴った。引っ掻いた。えぐった。

フェンスに、コンクリートの地面に叩きつけた。

そして、とうとうアサミさんは動かなくなった。

⏰:08/04/28 15:04 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#137 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

瀕死なのだと思い、わたしはフェンスまで運び、アサミさんを屋上から突き落としとどめをさした。

アサミさんは目を見開き、悲鳴をあげながら落ちていった。

屋上にはアサミさんの遺品ともいえるハンカチと、わたしひとりが残った。

⏰:08/04/28 15:17 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#138 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはハンカチを拾い上げ、ハンカチに染み付いたアサミさんの血を舐める。

不味かった。アサミさんの味がした。


「アンドウさん」


次はお前だ。

真実にたどり着く前に殺してあげる。

⏰:08/04/28 15:21 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#139 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]



一週間後。

アサミさんが行方不明とみなされ、警察が本格的に動き始めた頃。

クラスメイト達はアサミさんのありもしない噂を流し始めた。

⏰:08/04/29 14:38 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#140 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

《スズキアサミは援交で妊娠して家出した。》

《精神異常者に誘拐されて今も何処かに監禁されている。》

《自殺した。》

⏰:08/04/29 14:39 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#141 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

どれもくだらないものばかりだった。

仲の良かった女子達でさえも、アサミさんのデタラメな噂に目を輝かせ喜んで食らいついている。

⏰:08/04/29 14:41 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#142 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

不意に、アサミさんと仲の良かった女子グループのひとりと目が合う。

するすると視線を下げ手首を見てみると、友情の証、といってアサミさんとお揃いでつけていたブレスレットが目に止まった。

わたしは簡単に断ち切れたその友情とやらを鼻で笑う。

⏰:08/04/29 14:43 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#143 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

お前達の言う友情とやらは、明らかなデタラメな噂に食いつき合うことを指すのか?

⏰:08/04/29 14:45 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#144 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「くだらないわ」

お前達の下劣な想像でアサミさんを汚すんじゃない。

アサミさんは、もっと華麗で美しい死に方をしてくれた。

わたしは目をつむり、アサミさんの最期の姿を思い出す。

⏰:08/04/29 14:46 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#145 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

身体中、血だらけになりながら命乞いするアサミさん。

それが叶わず、わたしに生きながら屋上から突き落とされ断末魔の悲鳴をあげるアサミさん。

⏰:08/04/29 14:47 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#146 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

最高に興奮した。

一生のあらゆる快楽を一度に味わったようだった。

それは殺した相手がアサミさんだったからかもしれないし、そうではないかもしれない。

しかし、今となってはどちらでもよいことなのである。

⏰:08/04/29 14:58 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#147 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

感想、ご意見お待ちしています
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2635/

⏰:08/04/29 15:11 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#148 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「サエコさん」

声の主はカミヤマくんだった。

ガールフレンドのアサミさんが行方不明になったというのに、いつも通りの優しい笑顔と眼でわたしを見据えていた。

困惑など影も形もない。それに驚きを覚えた。

⏰:08/04/29 17:07 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#149 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「アサミが行方不明になって一週間経ってしまった……。何か怪しいと思わないかい?」

「……ええ。自宅にも連絡を入れないなんて、アサミさんったら何をしているのかしらね」

「僕にも言えない事情でもあったのかもしれない……。早く無事な姿を見たいところだよ」

⏰:08/04/29 17:08 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#150 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんは小さな溜め息を吐いた。

アサミさんを心配する言葉に特別な感情は一切感じられない。

アサミさんが消えて、クラスメイトで一番悲観し嘆くのはカミヤマくんだとばかり思っていた。

しかし実際は違った。

⏰:08/04/29 17:09 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#151 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

いの一番に行方不明を至って冷静に解釈し、わたし以外には自分から話題に出さない。

殺人犯のわたしよりもはるかに「普通」すぎると言える。


「そういえば、おとといからアンドウさんも学校に来てないね」


ドキリとした。無意識の内に鼓動が高鳴る。

⏰:08/04/29 17:11 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#152 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……そ、そうね……」

「先生は風邪だと言うけど……もしかしたら……アンドウさんにも、何かあったのかな?」

わたしはうつむいたまま目を見開いた。同時に全身に妙な汗が滲む。

駄目だよ、カミヤマくん。それ以上は駄目。カミヤマくんが何をいいたいのか薄々は理解できる。けれど、駄目、だからこそ、駄目。

⏰:08/04/29 17:13 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#153 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「何か……って何? ……カミヤマくん……」

「もしかしたら、アサミとアンドウさんは、同じ理由で学校に来れないのかもしれない」




こいつ、殺す。

コイツもアンドウのように首を突っ込んでくるに違いない。

殺してやる。

⏰:08/04/29 17:16 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#154 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

抑えきれない感情を必死に抑え、わたしは問いかけた。

「そうかしら? わたしにはただ風邪で寝込んでいるだけのように思えるけれど……」

わたしがそう言うと、カミヤマくんは首を横に振った。

⏰:08/04/29 17:18 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#155 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「…………。実は、昨日アンドウさんの家にお見舞いに行ったんだ。それでアンドウさんのお母さんは『一日中、部屋の隅でぶつぶつの独り言を呟いて、ご飯もろくに食べずに引きこもってる』って……」

「…………」

⏰:08/04/29 18:01 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#156 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「その話が本当なら、アンドウさんは何か尋常じゃないことがあったんじゃないかな、と思うんだ。アサミが行方不明になったのと、ほぼ同じタイミングだし……関連があるのかも」

「か、関連が……。そうね、あるのかもしれないわね……」

⏰:08/04/29 18:02 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#157 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

気分は最悪だった。

アサミさんを殺害したことで続いていた幸福感は煙のように消え去り、変わりに土足で心の中を歩き回られているような気分だけが残った。

ようやくアンドウという邪魔者を消すだけの段階に入ったというのに、ここで再び思わぬ障害が現れてしまった。

⏰:08/04/29 18:03 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#158 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

畜生。

せめてアンドウをさっさと消していれば少しは負担が軽くなったかもしれないのに。

「本題に入るよ。サエコさん、君に付いてきて欲しいところがあるんだ」

「……付いてきて欲しいところ……?」

⏰:08/04/29 18:06 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#159 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはうなだれながら繰り返す。

カミヤマくんは静かに頷いた。


「アンドウさんの、家に」

⏰:08/04/29 18:07 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#160 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんの申し出を承知した後、わたしはあまりの気分の悪さにトイレで嘔吐した。



……カミヤマくん。

……一体キミは何を考えているの。

⏰:08/04/29 18:08 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#161 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

感想、ご意見お待ちしています
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/7686/

⏰:08/04/29 18:15 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#162 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]



アサミさんの死体とアンドウさんを始末しなければならない。

一日中、そればかりがわたしの脳内を支配していて授業どころではなかった。

手始めにアサミさんを片付けよう。

アンドウさんを始末するのは、その後でも十分間に合うだろう。

⏰:08/04/29 18:16 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#163 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

深夜、わたしは家を抜け出し学校へと忍び込んだ。

真っ先に校庭の端に埋められた銀杏の樹に駆け寄る。

辺りには大量の銀杏の実が落ちて潰れ、腐敗臭に近い独特の臭いを放っていた。

⏰:08/04/29 18:17 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#164 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「今晩わ、アサミさん」

わたしは樹の下に列なる葉っぱの山に挨拶をした。

正確にいえば、その中で眠るアサミさんに。

「……貴方から出る腐敗臭も、銀杏の実のお陰で誰にも気づかれなかったわ。わたしにとっては幸運だけれど、貴方にとっては不運なことだったみたいね……」

⏰:08/04/29 18:19 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#165 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはアサミさんを突き落とした後、中庭の溝にはまったアサミさんの死体を見つけた。

それをアンドウさんは運よく見逃したのである。

校庭掃除係だったわたしは銀杏の実の臭いを利用してアサミさんを腐るまで銀杏の葉の山に隠すことにした。

葉の焼却日に合わせ、柔らかくなり処分しやすくなったアサミさんを燃やし処分するためだった。

⏰:08/04/29 18:20 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#166 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

焼却日は明日。

今、焼却炉にアサミさんを入れておけば、そんなことは何も知らない教師の手によって明日燃やさせる。

⏰:08/04/29 18:22 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#167 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「毎日、毎日……」

わたしはアサミさんの足を掴んだ。

グニャ、と異様に柔らかい手応えが神経から脳に伝わる。

爪を立てたら簡単に肉を削げそうなほどの柔らかさだった。

⏰:08/04/29 18:22 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#168 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「熱い火と自分の犯した罪への後悔に苦しむがいいわ! わたしが毎日見にきてあげるわよ、あんたの骨になった見るも無惨なツラをさぁ! あは、あはははははは!」

アサミさんの体を葉の山から引き抜く。

そこには目も当てられぬほど皮膚が変色し、ただれ、得体の知れない虫に全身の肉をついばまれるアサミさんがいた。

⏰:08/04/29 18:24 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#169 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

途端に込み上げてくる優越感と満足感。

たくさんの人を魅力的な笑顔で魅了していたアサミさんも、今では鼻をつまんで避けられる腐乱死体なのだ。

⏰:08/04/29 21:36 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#170 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

美しかった顔も、可憐だった華奢な身体も、もうすぐ土に還る。

つまりは無に帰すのである。

スズキアサミはこの世界から消えてなくなる。

⏰:08/04/29 21:37 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#171 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「わたしの勝ち……。わたしの勝ちよ! やっぱりわたしが全てにおいて正しかったのよ!そのむくいとしてオマエは罰受けたっ……!」

わたしはアサミさんの顔を足蹴にした。

アサミさんの腐った肉はわたしの足の重みに耐えきれず、スポンジのようにスルスルと無抵抗にへこんでいく。

そのさまが酷く滑稽で、わたしは思わず笑い声をあげた。

⏰:08/05/07 23:33 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#172 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「あっはははは、あはははは! なぁにぃ、その不細工なツラは! カミヤマくんに見せてやろうかぁ? あははは!」

更に力を込めて顔を踏みつけると、頭蓋骨から顔の肉が削げ落ちた。

「あら、ごめんなさい。これじゃあカミヤマくんに合わす顔が本当に無くなってしまったわねぇ。あははははははは!」

⏰:08/05/07 23:36 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#173 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

なんて楽しいのだろう。こんなに楽しいことがこの世にあったなんて。

もっと……。

もっとわたしを溺れさせて、狂気に、溺れさせて……!


わたしが冷酷非道な行動に酔いしれていた、その時だった。

⏰:08/05/07 23:37 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#174 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……うぅ……」

すぐ近くの背後でうめき声が聞こえた。風や木々の音ではない、確かに人の声だった。

わたしは咄嗟にそちらを向く。

しかしそこには深い闇が果てなく続くだけで、人影など何処にもなかった。

⏰:08/05/07 23:50 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#175 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「…………」

馬鹿な、こんな深夜に誰かいるのか? 誰かわたしをつけて来たのか?

うめき声が聞こえたその先、そこには花壇と飼育小屋がある。隠れるなら飼育小屋しかないだろう。


まさしく袋の鼠……焦ることはない。

⏰:08/05/08 21:52 📱:L704i 🆔:2yDdo7qU


#176 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……誰かいるのね?」

返事はない。

「隠れても無駄よ。貴方は今、飼育小屋にいる。逃げ場はないわ。大人しく出てきて命乞いなさい」

⏰:08/05/10 09:13 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#177 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

ゆっくりと、物音を立てないように、てさげ鞄から肉切り包丁を取り出した。

アサミさんを解体するために持ってきたものだった。

それは月明かりに反射し、ぎらぎらと妖しくきらめいている。

⏰:08/05/10 09:13 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#178 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

飼育小屋に近づき、暗闇に目をこらして飼育小屋付近を調べた。

しかし誰もいない。いや、いてはいけない。いるわけがないのだ。

飼育小屋の中も一応調べたが、誰もいなかった。

⏰:08/05/10 13:40 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#179 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……気のせいだったのかしら……」

ふに落ちないまま諦めかけた時、ちりん、ちりんと、何処からか鈴の音が聞こえてきた。

鈴の音は一定の軽やかなリズムと共にこちらに近づいてくる。

わたしは身を強ばらせ、暗闇に目を見張る。

⏰:08/05/10 13:41 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#180 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

……唐突に、飼育小屋の影から黒い小さな塊が飛び出してきた。


「……きゃ……!」


わたしは驚いて小さな悲鳴をあげた。

⏰:08/05/10 13:43 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#181 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

落ち着いて見てみると、それは鈴付の首輪をつけた、黒い子猫だった。

透き通る大きな瞳がわたしをじっと見ている。

真っ黒な毛並みを持っていたため、闇と同化しているように見えた。

⏰:08/05/10 13:43 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#182 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……悪い子ね、こんな夜中に子猫がうろついちゃ駄目じゃない」

先ほどの声の主はこの子猫だったのか、と、わたしは安堵して胸を撫で下ろす。

おそらく、飼育小屋の鶏でも狙って来たのだろう。

⏰:08/05/10 13:47 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#183 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……おいで」

わたしが手を差し伸べると、子猫はゆっくりと近付いてきた。

差し出したわたしの手に自ら体を擦り付け、ゴロゴロと喉を鳴らしている。

その人慣れした様子に、わたしは目を丸くした。

⏰:08/05/10 13:47 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#184 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「他人にもなついてくるなんて。……人懐っこいのね、キミは……」

わたしは猫を両手で持ち上げ、学校の柵の外へと連れ出した。

子猫はわたしを見上げ、ニャア、と幼さを孕んだ声で鳴いた。

⏰:08/05/10 13:52 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#185 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはバイバイ、と小さく手を振った。

こうでもしなければ、ぴっとりと付きまとわれて無闇に鈴を鳴らされては落ち着いて《後片付け》も出来ないのだ。

⏰:08/05/10 13:53 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#186 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「じゃあね」

わたしがその場から立ち去ろうとすると、子猫は身をひるがえして暗闇へと消えた。

このまま自分の家へと帰るのだろう。そう思っていた。

⏰:08/05/10 14:52 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#187 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

しかし、子猫は数メートル先の木の下で立ち止まった。

暗闇の中でチリチリと鈴の音が数回に渡って鳴り、その音からして《何かにすりついている》ように感じられた。

⏰:08/05/10 20:01 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#188 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしは眉をひそめる。

……何か、いるのか。

わたしは耳をすまし、鈴の音を聞き取ることに集中した。

⏰:08/05/10 20:02 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#189 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

その時、風に乗り消え入りそうな声が聞こえてきた。間違いなく、人の声だった。


「駄目だよ、鈴を鳴らしちゃ駄目……!」

………………
…………
……


お前は、誰だ?

⏰:08/05/10 20:03 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#190 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]



昨夜、わたしはアサミさんの《後片付け》を急遽止めて家に帰った。

死体は再度葉の山に隠し、頭を踏みつけた際に葉に付着した血痕は全て持ち帰り、証拠を残さないようにした。

⏰:08/05/11 15:35 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#191 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

外見的には死体を発見されないかぎり、怪しいところは何一つない。

つまりは、昨日にリセットされたのである。

⏰:08/05/11 15:35 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#192 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

……本来ならそれほど気に病むことはない。

死体の臭いはここまで腐敗すれば、あとは徐々に下降していくだろうし、今更わたしを怪しむ者は出てこないだろう。

⏰:08/05/11 15:37 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#193 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

しかし、昨夜問題は起きた。あんな深夜に、わたしの行動を監視していた者がいたのだ。

おそらくあの黒猫の飼い主なのだろう。

だから黒猫は学校の敷地内に、そしてわたしの近くで息を潜めていた。

飼い主と共に。

⏰:08/05/11 15:38 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#194 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……許せない。どいつもこいつも、わたしの計画を揃って台無しにして……タダじゃ済まさないんだから……」

爪を噛み続けていたはずが、指の先の肉を噛み千切っていた。

わたしは痛みで、ふ、と我に帰りいつの間にか指の先は血塗れになっていることに気付く。

⏰:08/05/11 15:40 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#195 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

血をハンカチで包むように拭き取る。

ハンカチにはアサミさんの血が大量にこびりついていて、仕方なく血で染まった部分で指を拭く。

……不愉快だ。

わたしの血とアサミさんの血が混じるのが不快に思えた。

⏰:08/05/11 15:41 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#196 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……汚ならしいアサミさんの血がわたしに触れるなんて。わたしまで汚れてしまいそうだわ」

ケケ、とわたしは笑う。

その時、唐突にわたしの肩に手が置かれた。

冷たい。見ると、白くて華奢な指が並んでいた。そして、いつもと変わらない優しい笑顔。

カミヤマくんだった。

⏰:08/05/11 15:43 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#197 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「おはよう、サエコさん」

カミヤマくんは首を少し傾げて笑う。

今はその優しさが鬱陶しい。

⏰:08/05/11 15:45 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#198 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……お、おはよう、カミヤマくん……」

わたしの淡白な挨拶。

何か感づかれるだろうなと思っていた。

しかし、カミヤマくんは「今日もいい天気だね」と言ってアッサリと平穏な話題を切り出した。

わたしはそれに安堵する。

⏰:08/05/11 15:45 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#199 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「ええ、本当に。こんないい天気は久しぶりだわ。休み時間に教室で読書なんて勿体ないから、今日は校内散歩でもしようかと思っていたの」

咄嗟に出た名案だった。

今日は本当に散歩でもしよう。

教室にこもっていては、余計な不安を生むだけだ。

⏰:08/05/11 16:14 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#200 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

それに、校内を徘徊することで昨夜の《後をつけてきた人物》の足取りを掴めるかもしれない。

誰かは大体予想がついてはいるが、一応念のためだ。

人一人殺したのだ、手抜きは出来ない。

⏰:08/05/11 16:15 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#201 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「いいね、午後の授業が清々しい気分で受けられそうだ。……そうそう。こんなに天気がいいと、死体の腐敗が進んじゃうね。こんな日に殺人をした人は運がない」



「…………え?」

⏰:08/05/11 16:17 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#202 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

死体の腐敗。その単語を耳にした瞬間、わたしは凍り付いた。

………………。

まさか、昨夜の《後をつけてきた人物》はカミヤマくん?

馬鹿な。カミヤマくんが何故わたしの行動を監視していなければならないのか分からない。

⏰:08/05/11 16:18 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#203 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「ど、どういう意味……?」

声が震える。

動揺したわたしを見て、カミヤマくんは小さく声を出して笑った。

額に嫌な汗が伝う。

「冗談だよ。僕、サスペンスが好きでさ、いつもこんな事を考えているんだ。もしかして、気分を害してしまったかな?」

⏰:08/05/11 16:20 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#204 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

……冗談?

本当に冗談なのだろうか。わたしの中で疑問が葛藤する。

この男、虫一匹殺せないような顔してこんなことを考えていたなんて恐ろしい。

どちらにせよ、カミヤマくんへのイメージがマイナスに変わったのは確かだ。

⏰:08/05/11 16:21 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#205 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……いえ、少し驚いただけよ。まさかカミヤマくんがそんな事を考えていたなんて思いもしなかったから、動揺してしまったの……」

「そう? いつもこんなことばかり考えてるんだよ。それに……」

⏰:08/05/11 16:49 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#206 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

……カミヤマくん。

わたしが怯えきった声でその名を呼ぶと、カミヤマくんはわたしの方へと手を伸ばした。

その手はわたしの顔を撫でた。氷のようなカミヤマくんの手の冷たさが、肌を通して直接伝わってくる。

⏰:08/05/11 16:50 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#207 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「君のこともね」

そう言うカミヤマくんの顔は、わたしが知っているソレではなかった。

目は冷たくわたしを見据え、口からは笑みが消えた。まるで別人だった。
背筋に悪寒がはしる。

⏰:08/05/11 16:51 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#208 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……カ、カミヤマくん……」

一体どうしてしまったの。

わたしはカミヤマくんから一歩、また一歩と遠ざかる。

カミヤマくんはそれに合わせ、わたしとの距離を縮めていく。

何故逃げてしまうのか分からないが、わたしの中の何かがけたたましく警鐘を鳴らしていた。

⏰:08/05/11 16:54 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#209 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「アサミを殺したのは君なんだろう?」

何故、そんなことをいきなり言い出すの。

もう訳が分からず、わたしは必死に首を横に振る。

いや、来ないで。わたしアサミさんをコロシテなんかない。

わたしの見開いた目がカミヤマくんをとらえた。

笑っていた。

⏰:08/05/11 16:55 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#210 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「何を怯えることがあるの? 僕は君を誉めてあげたいくらいなのに。アサミを殺してくれてありがとうって……」

「……わたしは……アサミさんを殺してなんか、ない……」

「嘘だよ。君は僕を愛していた。だから邪魔なアサミを殺した。そうだろう……? そうに決まってる……」

⏰:08/05/11 16:56 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#211 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんはわたしを抱き締めた。

カミヤマくんの温もりが、愛が、狂気が伝わってくる。

わたしは恐怖で身動きできずにいた。

体の震えが、恐怖が止まらない。

⏰:08/05/11 16:57 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#212 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「愛してるよ、サエコ。僕の為に狂気に走った君を、僕は受け入れるよ。だからこそ君の手伝いをしてきた。《後始末》の手伝いをね……」

「……《後始末》の手伝い……?」

⏰:08/05/11 16:58 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#213 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんは《後始末》の手伝いの内容を淡々と話し始めた。

わたしがアサミさんを屋上から突き落とした後、死体を溝に隠したこと。

葉の山に隠されたアサミさんの死体が見つからないよう、休み時間の度にずっと見張っていたこと。

昨晩、わたしの《後始末》を見て気が狂ったアンドウさんを早朝に《始末》したこと……。

⏰:08/05/11 16:58 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#214 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

信じられなかった。

都合よく進んでいた計画の裏で、カミヤマくんがこれ程までに暗躍していたなんて。

わたしは信じられない、と言わんばかりにカミヤマくんを見つめた。

⏰:08/05/11 17:00 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#215 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「全ては君の為さ。君と僕の望みの実現の為。君は僕のことを、僕は君のことだけを考えて生きていく為」

だから……。

カミヤマくんは続けて話し始めた。

「君の叔母さんと叔父さんも、今朝殺してあげたよ。僕の両親もだ。これからは親なんていない方がいい。これから二人が一緒に生きていくのを邪魔するに決まってる」

⏰:08/05/11 17:02 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#216 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんは微笑んだ。

「…………」

わたしは口をぽかんと開けたまま、カミヤマくんの言葉を理解しようと頭をフル回転させていた。

⏰:08/05/11 17:03 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#217 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

叔母さんと叔母さん……?

わたしのオバサンとオジサンのコト……?

殺したって、どういう意味なのだろう。

殺した?殺した?

ころした……

殺した?

わたしの叔母さんと叔父さんをカミヤマくんが殺した?

⏰:08/05/11 17:03 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#218 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

>>217

文頭が「叔母さんと叔母さん」となっていますが、それは書き間違いです。すみません。

○叔母さんと叔父さん
×叔母さんと叔母さん

⏰:08/05/11 17:05 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#219 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……ねぇ…………嬉しい…………?」

カミヤマくんはわたしの手を取り訊いた。

その声には罪悪感などまるで感じることが出来ず、わたしは震えた。

⏰:08/05/11 17:52 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#220 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

当たり前のように叔母さんと叔父さん、そして自分の両親を殺したこの男は一体誰なの。

まるで悪魔だ。

無邪気に、当たり前のように欲しい玩具を手にいれる為に人を皆殺しにする悪魔なのだ。

⏰:08/05/11 17:53 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#221 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「………い…」

「え?」



「嫌ぁあぁあぁぁぁぁー! 人殺し! キチガイ! 放してよ、放してよーっ!」

⏰:08/05/11 17:54 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#222 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんの手を思い切り振り払い、わたしは逃げ出す。

後ろから「待って!」と言うカミヤマくんの叫び声が聞こえた。

⏰:08/05/11 17:56 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#223 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

足が重い、上手く走れない。

アスファルトが底無し沼のように感じた。

まるで、逃げるわたしの足の力を吸い込んでいくようだった。

⏰:08/05/11 17:56 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#224 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「待ってサエコ! どうして逃げるの! 僕が守ってあげるよ、何も怖くなんかないよ!」

「来ないでぇぇ! 助けて、誰か助けてぇぇぇーっ!」

⏰:08/05/11 17:57 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#225 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

逃げ回る途中、登校する生徒がわたし達を怪訝そうな目で見ていた。

何度か車にひかれそうにもなったが、けして立ち止まらなかった。

立ち止まればカミヤマくんという狂気に飲み込まれる。

⏰:08/05/11 17:58 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#226 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

しかし、もうわたしの体力は限界に近づいていた。

ヒュウヒュウと肺は鳴り限界を知らせ、足はガクガクと痙攣している。

それに比べカミヤマくんはまだ叫び声を上げながら平然と追いかけてくる。

この調子だと、間もなくわたしは追いつかれるのだろう。わたしの頭に絶望がよぎった。

⏰:08/05/11 18:02 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#227 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

気付くと、わたしは学校の銀杏の木の下に倒れ込んでいた。

肺が酸素を求めて泣きわめく。

うつろな目で回りを見渡すと、大勢の生徒がわたしを凝視しているのが分かった。

⏰:08/05/11 19:42 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#228 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……み、見るんじゃない……汚ならしい目でわたしを見るんじゃないよっ……!」

わたしは力を振り絞って起き上がる。

「いゃあぁぁ!」
「ひぃぃぃ……!」


途端に、近くの生徒や校舎から凄まじい悲鳴が上がった。

⏰:08/05/11 19:43 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#229 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「なんなのよ……」

わたしは立ち上がる。

……一体何にたいして悲鳴をあげているんだ。

みんなの視線の先、わたしが先程倒れ込んでたところを見た。


そ こ に は ……。

⏰:08/05/11 19:46 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#230 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……ア、アンドウさん……」

わたしは混乱し、驚きのあまり尻餅をついた。

わたしが倒れ込んだ先。

そこには全身から血を垂れ流し変わり果てた姿になったアンドウさんがいた。

⏰:08/05/11 20:05 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#231 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「僕がアサミと入れ替えて葉の山に隠したんだよ……まさかこんな形で見付かるなんてね……」

悲鳴に混じり、背後からカミヤマくんの声が聞こえた。

振り向くと、カミヤマくんは銀杏の木にもたれかかり、わたしを優しい瞳で見つめていた。

⏰:08/05/11 23:22 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#232 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「う……うう……」

逃げなければ。

わたしはカミヤマくんを見つめたまま後ずさる。

「それにしても、見つかっちゃったね。僕達だけの秘密が……。どうする? みんな殺しちゃう? ……フフフ」

⏰:08/05/11 23:27 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#233 [_´Д`]
あげ(´・ω・)

⏰:08/05/26 10:28 📱:N904i 🆔:C4cK5oW6


#234 [柳下]
おもろい

⏰:08/05/26 11:44 📱:F703i 🆔:OzdKUCd.


#235 [我輩は匿名である]
書かないの?

⏰:08/06/04 06:11 📱:F705i 🆔:mNwZ4Ib.


#236 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんは無邪気な笑顔をはりつけケケケとに笑う。

今の殺戮とした状況とその笑い声はあまりにも不釣り合いなものだった。

⏰:08/06/04 21:24 📱:L704i 🆔:ZxijOEDw


#237 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「念のために、ここにコレを隠しておいて正解だったみたいだよ」

カミヤマくんはアンドウさんの死体に近づくと、崩れた葉の山から錆びた金槌を取り出した。

わたしは目を疑った。

何故そこにそんなモノが。それでわたしを殴り殺すつもりなの?

⏰:08/06/04 21:25 📱:L704i 🆔:ZxijOEDw


#238 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「…………」

わたしは必死に首を横に振り、口をパクパクと開閉させ、お願いよ止めてと念じた。

……ワタシという人一人殺した愚かな殺人鬼には、命乞いなんておこがましいわよ。

頭の中からわたしをなじるアサミさんの声が聞こえた。

⏰:08/06/08 01:58 📱:L704i 🆔:qiS4SuAQ


#239 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

ごめんなさい。

本当にごめんなさい。


……もしも、もう一度やり直せるのなら……アサミさん。

わたしはあなたと友達になりたかった。

他愛もないことで笑い合える、友達に……。

しかし今のわたしは涙を流すことしか出来ない。

⏰:08/06/08 02:00 📱:L704i 🆔:qiS4SuAQ


#240 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「怖がらなくてもいいんだよ、サエコ。別にこれを君にぶつけようなんて思ってなんかいない。君が死んだりなんかしたら……僕は死ぬ」

「…………」

「……やれやれ。まさかコレを誰かに使うことになるとはね」

⏰:08/06/08 02:01 📱:L704i 🆔:qiS4SuAQ


#241 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

使うことになるって、一体誰に?

わたしが訊こうとしたその時、教師がこちらに走ってくるのが見えた。

カミヤマ君は教師を薄目で睨み付けながら金槌を持ち構え更にきつく握りしめた。

そんなもので立ち塞がる壁全てを壊すことなんて出来はしないのに。

……遠くからはパトカーのサイレンが聞こえてくる。わたし達に逃げ場はもうない。

⏰:08/06/08 11:49 📱:L704i 🆔:qiS4SuAQ


#242 [我輩は匿名である]
書いてください

⏰:08/06/15 07:52 📱:F705i 🆔:pEz0oVoM


#243 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「…………」

終わり、わたしは終わったんだ……。

わたしはカミヤマくん、いいえ、わたしが造り出した殺人鬼と共に果てる。

叔母さんと叔父さんを殺した殺人鬼となんて、皮肉なものだ。

結局、わたしは守りたかったものをわたしのせいで喪ってしまったのである。

⏰:08/06/15 18:47 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#244 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……罰……これは罰なんだ……。わたしが感情に任せてアサミさんを殺した罰……。叔母さんと叔父さんを裏切った罰なんだ……。叔母さん、叔父さん……ごめんなさい……ごめんなさい……」

わたしもすぐに逝きます。

わたしの頬に温かい涙が伝った。

カミヤマくんはしばらくの沈黙の後、静かにしゃがみ込んでそれを指で優しくぬぐった。

⏰:08/06/15 18:49 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#245 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「それは違うよ、サエコ。罰ではなく運命だ。アサミの死は僕達が旅立つためのきっかけに過ぎない」

カミヤマくんは諭すようにいい放つ。

「きっかけ……?」

カミヤマくんは再びわたしを抱きしめた。

⏰:08/06/15 19:09 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#246 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「障害となる壁を叩き壊し、自らの生きる道を突き進むことを……アサミは身をもってサエコに教えてくれた。アサミが僕に好意を抱いていたのも、サエコにそれを教えるための道しるべだったんだ。アサミの僕を貪欲に求める想いが、サエコを運命に引き込んだ。僕と生きる、運命へ」

わたしの中で、様々な感情が交錯していた。

その中でも一際大きく渦巻く感情が《後悔と憐れみ》だった。

⏰:08/06/15 19:51 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#247 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……どうしてなの……どうしてそんなにわたしを想ってくれていたのに……」

カミヤマくんは金槌を握りしめたまま、立ち上がった。

カミヤマくんの見つめる先には、アンドウさんの死体を見て仰天している教師だった。

⏰:08/06/15 19:52 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#248 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「どうしてその愛を正しい道で示してはくれなかったの……? すべてが歪んでしまった後でしか、示すことはできなかったの……? わたし達は……わたしは……」

涙を拭いながら発した言葉はあまりにか弱く、カミヤマくんに届くことなく空気と同化していった。

⏰:08/06/15 19:53 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#249 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「お……おいっ!」

教師が錯乱状態のままわたし達に声をかけた。

「お、おお、お前たち、これは一体どういうことなんだ!? 何故アンドウがこんな……」

教師はわたしの肩を掴み、アンドウさんを見て叫んだ。

⏰:08/06/15 19:55 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#250 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたし、知りません。知りません。逃げて先生。ここから逃げて。

涙で視界がぼやけ、教師の顔がよく分からない。

しかし、教師に向かって降りおろされる金槌は鮮明に見えていた。

⏰:08/06/15 19:55 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#251 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「カミヤマ、お前は何か知って……」

そう言ったとたん、教師の頭蓋に金槌が深くめり込んだ。

ぐええ、と唸り声を上げながら目の焦点が定まらぬまま教師はわたしの足元へと倒れ込んだ。

教師の頭部から噴き出す鮮血はあまりにもくっきりとしていて、わたしの目を覚まさせた。

⏰:08/06/15 19:57 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#252 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「さあ」

わたしの目の前に白い手が差し出された。

「行こう。長い序章は終わった。ここから僕らの運命が始まる」

ぬらぬらとした鮮血を被ったその手を、わたしは強く握りしめた。

⏰:08/06/15 19:58 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#253 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

これからどうなるかは分からない。

けれどわたし達にはもう立ち止まることはできなかった。

足裏から血が流れようとも息が切れようとも走り続けなくてはならない。

⏰:08/06/15 19:59 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#254 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたし達は走り出した。

グラウンドを駆け抜け、雑木林を駆け抜けた。

道すがら、美しく輝く夕日を見た。

走るわたしの頬を撫でる風を感じた。

大地を踏み締め、わたしを生かしてくれている大宇宙の意思と愛を感じた。

運命を切り開く喜び、生きる喜びを噛み締めながら、わたし達は今にも沈まんとする夕日の光の中へと溶けていった。

⏰:08/06/15 20:00 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#255 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

木の下でかくれんぼ、これにて終了です。

ご意見、感想等ありましたらコチラへお願いします。
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2635/

このスレッドに感想等を書き込むのは極力お控え頂けると助かります。

ただし、アンカーは大歓迎です。

⏰:08/06/15 20:09 📱:L704i 🆔:77UeCXLE


#256 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]


age(*^^*)

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2635/

⏰:08/08/16 09:34 📱:L704i 🆔:be.0TE3Q


#257 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

ここからは「木の下でかくれんぼ」の外伝を「鬼が哭くよるに」と同時進行で書いていきます。

新スレを立てるのは勿体ないと思い、わざと立てませんでした。

ですので、本編と混ざりあっていて読みにくいことも多いと思いますので、アンカーのみココに書き込むのを許可します。

恐れいりますが、感想等は感想板にお願いします。

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2635/

⏰:08/08/17 16:37 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#258 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]






⏰:08/08/17 16:45 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#259 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

ぎしぎしと床板が軋む音が聞こえ、私は母親が階段をのぼり部屋に近づいてくるのを知る。

私は悲鳴を上げた。

その時にはもう母親を母親として見ておらず、もはやあの死神の使いとして認識していた。

⏰:08/08/17 21:46 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#260 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

私は布団をひっかぶり、強く目をつぶり両手で耳をふさいだ。

ドアを叩く質素な音が部屋に響き渡る。

しばらくすると母親の怒りを孕んだ声が聞こえてきた。

⏰:08/08/17 21:48 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#261 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「ナナミ、起きなさい。あなたいつまで学校を休むつもりなの? お友達がわざわざ迎えに来てくれたのよ。さっさと着替えて行ってらっしゃい」

私には親しい友人なんて一人もいない。

それどころか、クラスメイトのほとんどの人間に仲間と見なされてはいないのである。

⏰:08/08/17 22:03 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#262 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
<Font Size="-1">
しかしそれは仕方ないことだった。

私の方もクラスメイトを仲間だなんて思ってはいなかったからだ。

友好を求めて近寄ってくる人間はことごとく鼻であしらった。
</Div>

⏰:08/08/17 22:05 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#263 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

>>262

タグミス失礼しました

⏰:08/08/17 22:06 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#264 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

だから私に友人がいないのは当然のことなのだ。

そんなこと、母親は知らない。

「私、学校に行かない。死神に外に出るなって約束させられてるんだもの。私は約束を守る。外にいる死神にもそう伝えておいて」

⏰:08/08/17 22:22 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#265 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

ベッドの横にあるカーテンを少し開けて下を覗くと、玄関の近くに死神の姿が見えた。

私はいよいよ恐ろしくなり身震いする。

「死神? 何言ってるのあなたは! いい加減にしなさいよナナミ、今から出張に出てるお父さんを呼び戻してあなたを叱ってもらってもいいのよ」

母親はしつこくドアノブを回し続けた。

⏰:08/08/17 22:24 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#266 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「こっちは鍵があるの。いい? 開けるわよ!」

そう言うなり間髪いれずにドアが勢いよく開いた。

ドアノブを回していたのは単なる芝居で、すでに鍵でドアを開けていたのだろう。

カーテンが閉め切られて大きな暗闇をつくっていた私の部屋に、まばゆい光が挿し込む。

⏰:08/08/17 22:26 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#267 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

私はドアの前に仁王立ちする母親をひっかぶった布団の隙間から見た。

眉根には深い皺をつくり、目はつり上がって、口はきつく閉じられた一文字だった。

平穏を好みいつも笑っている母親にしては眉をつり上げて怒るなど意外な一面である。

⏰:08/08/17 22:27 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#268 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

母親は私のかぶった布団を力強くはぎ取った。

そして私の腕を掴み無理矢理立たせようとする。

「さあ、まずはしっかりと朝ごはんを食べなさい。学校に行かないにしても、ちゃんと着替えて、顔を洗って、お日さまの光をあびて、悩みがあるなら何でもお母さんに相談しなさい。もうこれ以上、お母さんを心配させないでちょうだい!」

⏰:08/08/17 22:31 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#269 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

母親は泣いていた。

流石に母親を心配させて泣かせた罪悪感に胸が痛んだ。

外へ出なければ死神に問われることはない、せめて元気に振る舞って母親を安心させてあげよう。

そう思い、立ち上がった時だった。

⏰:08/08/17 22:56 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#270 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「無理矢理は、駄目ですよ。きちんと言葉で解決しないと」

楽しむかのように笑いを孕んだ男の声が聞こえてきた。

あわてて周りを見渡すと、ドアにもたれかかる死神の姿があった。

⏰:08/08/17 23:13 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#271 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

日の光を浴びて、目がらんらんと光り髪の毛が栗色に見える。

口の端はいやらしく片方だけつり上げられていた。

この一週間、一時たりとも忘れたことはない恐ろしい顔である。

死神、カミヤマミヤト。

⏰:08/08/17 23:13 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#272 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「……うああ!」

こちらを興味深そうな目で見ている。

私の様子を伺っている。

⏰:08/08/17 23:15 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#273 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

モウ、逃ゲラレナイ。

「いやぁあぁぁーっ! お母さん! お母さん! 私を殺しにきたあの死神を早くどこかへ連れていってぇ! 早く、早くーっ!」

⏰:08/08/17 23:15 📱:L704i 🆔:P3f9E//o


#274 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

私は叫んだ。

あらんかぎりの声で叫んだ。

「ナナミどうしたの? 落ち着きなさい、ナナミ!」

助けてお母さん。

母親に助けを求めて必死にしがみついても、狂い叫ぶ私に混乱していて私と死神を交互に見つめるばかりだった。

⏰:08/08/18 11:31 📱:L704i 🆔:7dEREgGc


#275 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

近くにあるものをあらかた投げ終えたところで、死神は口を開いた。

「とって食うつもりはないんだよ、アンドウナナミさん。ぼくはただ、一週間もの間ちゃんと約束を守ってくれた君にご褒美をあげたくって来たんだ」

ご褒美。

そう言って死神が取り出したのは、まだ乾ききっていないどす黒い血がたっぷりとこびりついた金槌だった。

⏰:08/08/18 11:34 📱:L704i 🆔:7dEREgGc


#276 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

それをしっかりと握りしめてこちらに歩いてくる。

「お願いよ助けて」

それは逃げる暇もなくして、私の頭上に高く振り上げられた。

⏰:08/08/18 11:36 📱:L704i 🆔:7dEREgGc


#277 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



クラスメイトのスズキアサミと私は席が前後と近い。

だから必然的によほどの小声でない限りは会話がまるまる聞こえてくる。

私には盗み聞きなんていう趣味はないし嫌いであるから、いつもは読書の妨げをする雑音程度にあしらっていた。

⏰:08/08/21 00:18 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#278 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

今日もいつものようにスズキアサミのうふふというよく通る陽気な声と、そのとりまき逹のぎゃははという下品な笑い声が耳に入っていた。

自習時間だというのに立ち回っている挙げ句、大声で立ち話というのはいただけない。

クラスメイトの白い視線に気付かないのだろうかと首を傾げた。

私はため息をつく。

⏰:08/08/21 00:19 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#279 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

確かに入れたと思っていたお気に入りの小説は忘れるし、天気は大嫌いな太陽の照りつける快晴だし、気分は最悪だった。

仕方なく机に突っ伏して空を眺めていると、スズキアサミの怒りを孕んだ声が聞こえてきた。

普段は仮面のように完璧すぎる笑顔をはりつけ甘ったるい声色でクラスメイトに接するスズキアサミとは思えない。

興味をそそられつつも、私は変わらず窓の外へと目を向けていた。

⏰:08/08/21 00:21 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#280 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「明日はサエコのやつを屋上に呼び出して問い詰めてやるわ。どうせ何も言わないんだろうけど、その時は考えがあるもの」

私は驚き目を少し大きくして話を聞き始めた。

ムラカミサエコ。

その話題の人物に前々から興味があったからである。

⏰:08/08/21 00:32 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#281 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

彼女は私やスズキアサミのクラスメイトで、雪のように白い肌と深い闇をそのまま束にしたようなショートヘアが印象的な子だった。

私が言えたぎりではないが、影を好むかのように人ごみに紛れてひっそりと生きるあの陰気くさい性格さえなければ、必ずや異性の目をひくであろう美貌の持ち主である。

それはスズキアサミに双子かと疑うくらい瓜二つの容姿で、彼女はたびたびその事でクラスメイトに罵られて傷ついているようだった。

⏰:08/08/21 00:36 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#282 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

内気な彼女は反抗するということを知らず、ただ彼女らのひどい罵声を受け止め鵜呑みにしていた。

最近はスズキアサミ本人までムラカミサエコをいじめるようになった。

助ける者は誰もいない。

⏰:08/08/21 00:37 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#283 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

けれど、それはしょうがないことだった。

このクラスときたら、まったく他のクラスが光り輝いて見えるほどの〈ガラクタ〉の寄せ集めなのだから。

それは当然、私も含めたことである。

⏰:08/08/21 00:38 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#284 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「サエコのやつ、やっぱりカミヤマくんと付き合ってたのね……。そうなんでしょ? アキコ?」

スズキアサミがとり巻きの一人に聞いた。

肩まであるポニーテールを揺らして、ササキアキコは戸惑ったように頷いた。

⏰:08/08/21 00:40 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#285 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「うん。あいつ、カミヤマくんと何度も一緒に帰ってたしさ。間違いないよ」

「許せない。あんなやつを今まで教師や先輩のイジメからかばってたアタシも馬鹿だった」

スズキアサミは悔しそうに眉根に皺を寄せて、がりがりと爪を噛んだ。

彼女の癖だった。

⏰:08/08/21 00:41 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#286 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「カミヤマくんだってサエコなんかに近寄られて嫌がってるに違いないわ、だけど優しいから嫌って言えないのよ。許さないから、本当に許さないんだから、サエコ……」

その時、唐突に教師が教室に大量のプリントを抱えて戻ってきた。

とたんにクラスのざわめきが消えうせ、視線が教卓に集まった。

⏰:08/08/21 00:43 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#287 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

立ち歩いていたスズキアサミのとり巻き達はあわてて急ぎ足で各々の机に帰っていった。

やれやれ、これでやっと静かになる、と私はうなだれていた身をおこした。

私の後ろの席に座ったとり巻きの一人に、ササキアキコが帰り際に周りを気にしながら小声でささやいた。

⏰:08/08/21 00:45 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#288 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「やばいよ。アサミ、わたしの作った嘘を信じちゃってるんだけど」

声が震えている。

明らかに嘘がばれてしまうことに怯えていた。

相手はあっけらかんと笑いながらそれに返した。

⏰:08/08/21 00:46 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#289 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「別にいいんじゃない、放っておいてもさ。サエコがアサミに口ごたえするわけないし」

「でも」

「大丈夫だって。それにさ、アサミがサエコになにするか見とこうよ。面白そうじゃん?」

⏰:08/08/21 00:51 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#290 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

ササキアキコは苦笑いしながら席へと帰っていく。

続けて担任教師による冬休みについての説明が始まり、注意事項がびっしりとつまったプリントがいくつか回されてきた。

⏰:08/08/21 00:52 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#291 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

私は冬休みをどう過ごすかということよりも、ある一つの考えに一生懸命、頭を回転させていた。

面白くなってきた。

しばらくは退屈せずにすむかもしれない。

再び窓の外を見ると、窓ガラスには肘まくらをして楽しそうに微笑んだ私が映っていた。

⏰:08/08/21 00:54 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#292 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



「サエコさん。ちょっといいかしら」

下校前のホームルームが終わり、私は教室から出ようとするムラカミサエコをひき止めた。

彼女は驚いたように目を丸くしたあと、リュックを背負い直して私の方に向きなおる。

⏰:08/08/21 07:18 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#293 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

教室には私とムラカミサエコのふたりきりになった。

「どうしたの?」

ムラカミサエコの大きな瞳に私が映る。

「実は、あなたに伝えたいことがあって」

私は昨日聞いたスズキアサミの企みを、さも危険そうに話を大袈裟にして彼女に伝えた。

⏰:08/08/21 07:18 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#294 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

話し終えたあと、ムラカミサエコは焦点の定まらない泳いだ困惑を孕んだ目でこちらを見る。

彼女の目には涙がたまっていた。

その涙の理由は恐怖なの?

それとも悲しみ?

私はわき上がる笑いを堪えるのに必死だった。

⏰:08/08/21 08:00 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#295 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「それは本当なの? わたしはカミヤマくんと付き合ってなんてないのに、誤解だわ」

私は彼女の肩に手を置いた。

そして、いかにも貴方を心底あわれんでいる、けれど私は貴方の唯一無二の味方よ、というような表情をつくった。

⏰:08/08/21 08:05 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#296 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「まったくね。危ないことをされて怪我なんてしないように、頑張ってちょうだいね」

そう最後に言うと、私は教室をあとにした。

しばらく下駄箱でムラカミサエコを待っていたが、彼女はいつになっても降りてくることはなかった。

⏰:08/08/21 08:06 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#297 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]


感想、意見等をお待ちしています

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2635/

⏰:08/08/21 09:38 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#298 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



翌日の昼休み、私は日直の仕事である黒板消しをしながらスズキアサミとムラカミサエコの会話を盗み聞きしていた。

教室には私達三人以外にはストーブに群がるスズキアサミのとり巻きしかいなかった。

⏰:08/08/21 11:38 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#299 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「きゃははっ! アサミぃ、サエコのやつ完全にビクってんじゃんか。優しくしてやりなよー」

「でもさ、呼び出しなんてちょっとやりすぎじゃない?」

ササキアキコがスズキアサミに聞こえないようにささやいた。

どうやら、自分のついた嘘でムラカミサエコが呼び出しをくらうのに罪悪感を感じているらしい。

しかし目はしっかりと笑っていた。

⏰:08/08/21 11:40 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#300 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「しょうがないって。アサミはカミヤマくんのことになると見境がなくなるんだからさ」

とり巻きの笑いとともに手を叩く音や甲高い笑い声が響く。

毎度のことながら工事中の道路のようにうるさいものである。

⏰:08/08/21 11:40 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#301 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

スズキアサミは口の端をつり上げて笑う。

そして勢いよくムラカミサエコの机に手を置き、すごみながら低い声で言った。

「いい? 絶対にきてよね。来なかったら、それこそ許さないんだから。分かった?」

「うん……」

⏰:08/08/21 11:42 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#302 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

聞き逃しそうになるほどの小さな声で、ムラカミサエコは了解の返事をした。

うつむいていたために、表情は分からない。

けれどすすり泣く嗚咽だけは聞こえてきていた。

⏰:08/08/21 11:43 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#303 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

私は黒板消しを終えたフリをして、自席へと戻った。

スズキアサミが教室から出ていったところで、ササキアキコが口を開いた。

「サエコ、あんた本当にカミヤマくんと付き合ってたりするの?」

⏰:08/08/21 11:44 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#304 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

ムラカミサエコは静かに首を横にふった。

その際に絹のような黒髪がさらさらと揺れた。

ササキアキコはストーブの上に座り込み足ぐみをしてムラカミサエコを見下ろした。

⏰:08/08/21 11:45 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#305 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「つまんない。でもさ、あんたカミヤマくんを狙ってるのは確かだよね」

とり巻きの一人が分かるぅ、と相づちをうった。

「ヒトの彼氏盗ろうとするなんて最悪でしょ。マジ、反省してんのアンタ」

「…………」

「ねえ、なんでカミヤマくんに手出そうなんて思ったわけ?」

⏰:08/08/21 11:46 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#306 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

ササキアキコらに責め立てられて、ムラカミサエコは我慢ならない、というようにとうとう机につっぷした。

小さな肩が上下に揺れている。

ササキアキコは満足そうに微笑むと、教室から出ようとしたらしくストーブから飛び降りた。

⏰:08/08/21 11:47 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#307 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

その時だった。

彼女は凍ったように教室のドアに目を向けたまま動かなくなったのである。

何事かと遅れて私ととり巻きは同じところを見た。

私達も息が止まるほど驚いた。

そこには、大学ノートをいくつか抱えて愉快そうに笑うカミヤマミヤトが立っていた。

⏰:08/08/21 11:49 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#308 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「…………」

聞いていたのだろうか。

それを私たちは訊くことなく、カミヤマミヤトは姿を消した。

教室に、沈黙のなかムラカミサエコのすすり泣く声だけが響いていた。

⏰:08/08/21 12:46 📱:L704i 🆔:TkuPywH.


#309 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



「アンドウさん、ちょっといいかな?」

先ほどの騒ぎがおさまりササキアキコらとり巻きが教室から出ていったころ、カミヤマミヤトが私に声をかけた。

読んでいた小説から目をはなして焦らすようにゆっくりと彼を見上げる。

⏰:08/08/23 14:27 📱:L704i 🆔:enqIgMv2


#310 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

できるだけ平然を装った。

「なにかしら?」

私はなぜか至極緊張していた。

小説を持つ手には冷や汗がにじみ、声は小さく震えた。

もはや私の耳にはクラスメイトのざわめきは消え去り、カミヤマミヤトの小さな笑い声だけが聞こえていた。

⏰:08/08/23 14:28 📱:L704i 🆔:enqIgMv2


#311 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマミヤトの目が妖しく細められる。

「アサミとサエコさんのことなんだけど……」

「…………」

私は息を飲んだ。

「アンドウさん、なにか知らないかい?」

⏰:08/08/23 14:29 📱:L704i 🆔:enqIgMv2


#312 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

知らない。

そう答えれば、なにか恐ろしいことが起こるような気がした。

けれど、暇潰しのイベントにはどんな些細なことでも関わりたくはない。

⏰:08/08/29 21:01 📱:L704i 🆔:YrPmToZ.


#313 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

あくまでも私は安全にイベントを監視して楽しめる観客席に居たいのである。

苦悩するのはステージで踊る役者だけでいい。

関わればイベントではなく、ただのモメゴトに変わる。

折角見つけた暇潰しを逃したくはない。

⏰:08/08/29 21:05 📱:L704i 🆔:YrPmToZ.


#314 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「……知らないわ。アサミさんとサエコさんのことだなんて、まったくなんのことだか分からないわね。どうしてそんなことを訊くの?」

これでいいのだ、と私は再び小説に目を向けた。

しばらくしてもカミヤマミヤトの反応がないので見てみる。

⏰:08/08/29 21:06 📱:L704i 🆔:YrPmToZ.


#315 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

そこには叫び声をあげたくなるほどの、恐ろしい虚無に満ちた目をジッと向けた彼がいた。

私を見ている。

ただ、見ている。

彼はゆっくりと口を開いた。

⏰:08/08/30 06:53 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#316 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「嘘だよ」

あきれたような眼差しで私を見ながら、カミヤマミヤトはつぶやくように言った。

「君はアサミがサエコに屋上に来るように告げた時、確かにその場にいた。黒板消しなんて下手な芝居をしながら。ササキアキコがサエコをなじった時に一緒に笑ってた、サエコが泣いた時も笑ってた」

⏰:08/08/30 06:55 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#317 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「……っ……!」

私の手が震え始め、小説が机に滑り落ちた。

何故、どうして?

目の前がぐるぐると回り出す。

⏰:08/08/30 06:56 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#318 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

この男は、カミヤマミヤトは、一体なにを言っているのだろう?

なぜ芝居などと分かるのだろう?

そもそも、なぜ全てを知っていたのにわざわざ私に訊いてきたのだろう?

⏰:08/08/30 06:56 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#319 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

恐ろしい。

葛藤する心は私の体を心底震えあがらせていた。

クラスメイトのざわめきがここは地獄の修羅場などではないことを教える。

⏰:08/08/30 06:57 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#320 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「僕は回りくどいものが嫌いだから、単刀直入に言うよ。アンドウナナミ、僕とサエコの邪魔をしたら容赦しない。見学者気取りで詮索を入れるのも止めることだな」

少し間をあけて私は訊いた。

「……どういうこと?」

⏰:08/08/30 06:58 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#321 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「君は難しく考えなくていいんだよ。どうせ君は絶対的な運命に逆らえはしないんだ」

彼は静かにささやいた。

「運命?」

⏰:08/08/30 06:58 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#322 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

震える私の頬に氷のように冷たい手をおき、先ほどまでの恐ろしい剣幕ではなくひどく優しい笑顔でこう言った。

「簡単なことさ……」

カミヤマミヤトは目を細めてくすっと声をたてた。

⏰:08/08/30 06:59 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#323 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

そして、ひどく恐ろしくて残酷な明確な言葉を口にした。

「……君だって、……命は惜しいだろう……? フフフ……」

「い、イノチ?」

授業の開始を告げるチャイムが教室に響きわたる。

⏰:08/08/30 07:00 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#324 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

それと同時に数学の教師が入ってきた。

教室の至るところにたち歩いていたクラスメイト達は、しぶしぶ自席に戻っていく。

騒がしかった教室は風にさらわれた砂煙のように褪めた。

⏰:08/08/30 07:02 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#325 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「じゃあ、また……」

カミヤマミヤトはヒラヒラと手をふった。

「ま、……待って!」

彼が立ち去ろうとするところを、私はかすれた声でひき止めた。

⏰:08/08/30 07:03 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#326 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「あなたは……サエコさんと自分の邪魔をするな……だとかイノチが惜しいなら……だとか意味の分からないことを言うなんて……、頭がオカシイに決まってるわ……」

「…………」

カミヤマミヤトは私の問いかけに答えることなく、自席へと戻っていった。

⏰:08/08/30 07:04 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#327 [もえ子◆Hi9o8eIXuA]

Break Time

アンドウナナミの外伝も、ようやく半ばまでたどり着くことができました。

感想、意見、要望等ありましたら…

↓コチラへどうぞ↓
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2635/

⏰:08/08/30 07:09 📱:L704i 🆔:7BwVXeEI


#328 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:08/08/30 20:55 📱:SH905i 🆔:ip8ByuAE


#329 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



数学の授業が終わる頃には、私の頭からカミヤマミヤトの忠告は綺麗に消え去っていた。

私は机に取り付けられた引き出しに教科書をしまい込む彼を見た。

しばらくするとスズキアサミが話しかけてきて、彼は花が咲くように明るく笑った。

⏰:08/09/17 21:49 📱:L704i 🆔:BqFUVVAw


#330 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

先ほどの出来事が嘘のような豹変ぶりに、呆れを通り越して、笑いが込み上げてきた。

全く、とんだ二重人格男に引っ掛かってしまったものだ。

⏰:08/09/17 21:50 📱:L704i 🆔:BqFUVVAw


#331 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

どうしようもない茶番劇。

あんな優男の凄みに少しでも怯えていた自分が情けなく不甲斐ないくらいである。

そう思うと、だんだん怒りが湧いてきた。

私はシャープペンシルを持つ手に力が込められるのを感じた。

⏰:08/09/22 07:48 📱:L704i 🆔:kTZ6EawU


#332 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

シャープペンシルのプラスチックで出来た華奢なボディが、みしみしと軋み音を立てる。

偉そうに私に指図して、何様なのだろう。

私の心の中を見すかしたつもりでいるのだろうか。

⏰:08/09/22 07:50 📱:L704i 🆔:kTZ6EawU


#333 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

虫酸がはしる。

スズキアサミとムラカミサエコが醜く争い合う、こんなに楽しそうな最高の暇潰しのイベントを諦めろ?

答えは言うまでもなく、ノーである。

⏰:08/09/22 07:52 📱:L704i 🆔:kTZ6EawU


#334 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

それより、もっと楽しいことを楽しめるように仮想を膨らませてみよう。

例えば、カミヤマミヤト。

彼は確実にムラカミサエコに好意を抱いている。

コレを利用すれば、もっとイベントが楽しくなるかもしれない。

⏰:08/09/22 19:09 📱:L704i 🆔:kTZ6EawU


#335 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

私がスズキアサミの下駄箱にでっち上げのムラカミサエコのラブレターを忍び入れてやる。

もちろん、宛先はカミヤマミヤトだが、間違えてスズキアサミの下駄箱に入れてしまった、という設定である。

スズキアサミは怒るだろう。

その怒りが、イベントを楽しくさせる糧になる。

⏰:08/09/22 19:31 📱:L704i 🆔:kTZ6EawU


#336 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

さて。

ラブレターはどんな内容にしようか。

私は机からルーズリーフを取り出し、シャープペンシルを滑らせていった。

外を見ると、陰鬱とした雲が空を覆う、どしゃ降りの雨だった。

⏰:08/09/23 12:31 📱:L704i 🆔:kmGLlspw


#337 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]



ホームルームも終わり、クラスメイト達が帰り支度をしている頃、私は下駄箱に急ぎ足で向かっていた。

もちろん、でっち上げのラブレターをスズキアサミの下駄箱に差し入れておくためである。

⏰:08/09/24 20:53 📱:L704i 🆔:hstCBtAY


#338 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

下駄箱にいち早く着くと、私はスズキアサミの下駄箱にラブレターを素早く差し入んだ。

その瞬間、甘美なる罪悪感とこれから起こるであろう波乱に心臓が高鳴った。

誰も見ていないか周りを確認する。

⏰:08/09/24 22:54 📱:L704i 🆔:hstCBtAY


#339 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

辺りはシンと静まっていて、人の気配はまるで感じられない。

私は胸を撫で下ろした。

「……なにかひと悶着ありそうな予感がしていたけれど、なんだか、面白いくらいすんなり成功したわね。……明日が、楽しみだわ」

⏰:08/09/24 23:00 📱:L704i 🆔:hstCBtAY


#340 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

階段から、生徒達の笑い声が聞こえてきた。

ほとんどのクラスがほぼ一斉にホームルームを終えたのだろう。

私はあわてて鞄を背負い、下駄箱の影に身を潜めた。

⏰:08/09/25 17:27 📱:L704i 🆔:XnE4DeII


#341 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

姿をみられるのは計算外のことだったので、足早に退散することにした、その時、だった。

冷たくて、柔らかくて、それでいて地獄の底から響きわたってきているかのような重さを持った、聞き慣れた男の声。

カミヤマミヤト。

⏰:08/09/25 17:29 📱:L704i 🆔:XnE4DeII


#342 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「駄目だよ、アンドウさん。アサミの下駄箱に、こんなものを残して帰る気かい?」

カミヤマミヤトは、先ほど私がスズキアサミの下駄箱に差し入れておいたラブレターをちらつかせて言った。

口元は不気味に歪められ笑っているが、目はあまりの寒さに凍ってしまった流水のごとく、微動だにしていない。

⏰:08/09/25 20:12 📱:L704i 🆔:XnE4DeII


#343 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

しかし、それは澄んだ氷ではなく汚濁の混じった純度の低い氷のようだった。

少し汚ない表現で表すならば、まさに死んだ魚の目、である。

私は全身から血の気がひいていくのを感じた。

手のひらに、おかしな汗が滲む。

⏰:08/09/25 20:13 📱:L704i 🆔:XnE4DeII


#344 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

あれほど僕達には関わるなと言っておいたはずだ。

言葉は交わされなくとも、しっかりと分かるくらいに明確に、カミヤマミヤトは目でそう問いかけていた。

カミヤマミヤトは無言のままラブレターの封を乱雑に破り、中身のルーズリーフを取り出した。

⏰:08/09/25 20:59 📱:L704i 🆔:XnE4DeII


#345 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

彼は機械的な動きでルーズリーフを開き、目だけを動かして連なられた文字を読んでいく。

喉元まできていた叫び声を、私は必死に抑え込めた。

こんな修羅場を全く知らない生徒達は、心底楽しそうな笑い声を上げて私達の横を抜けて帰宅していった。

⏰:08/09/25 21:00 📱:L704i 🆔:XnE4DeII


#346 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

できることなら、私も早く家に帰って毛布にくるまりたかった。

でっち上げのラブレターを読み終えたらしいカミヤマミヤトは、フフフと笑い声をたててラブレターを破り捨てた。

私の足元に、無数の紙切れがゆっくりと舞い落ちる。

⏰:08/09/25 21:01 📱:L704i 🆔:XnE4DeII


#347 [我輩は匿名である]
>>1-200
>>201-400
>>401-600

⏰:08/09/26 09:09 📱:SH905i 🆔:y8CGDOkQ


#348 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「フフフ……。残念、見つかっちゃったね……」

「…………」

カミヤマミヤトは私の足元に散乱した紙切れを見る。

⏰:08/09/28 06:50 📱:L704i 🆔:wERXz/mU


#349 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「これをアサミの下駄箱にわざと入れておいて、怒りをかわせる気だったのかい? そうなんだろう? フフ……うまく考えたね。こういうのを悪知恵が働くっていうのかな……? まあ、結局失敗に終わっちゃったわけだけど……」

私は息を飲んだ。

「……貴方、どうして、ここに、……」

⏰:08/09/28 07:01 📱:L704i 🆔:wERXz/mU


#350 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

私は、身体から絞り出すように、声を震わせて、訊いた。

立っているのがつらい。

体の力をほんの一瞬でも緩めれば、瞬く間に崩れ落ちてしまいそうなくらいに脱力していた。

⏰:08/09/28 07:20 📱:L704i 🆔:wERXz/mU


#351 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマミヤトは、唐突に、天井をあおいだ。

何かを考えているようだった。

しかし、すぐに視線を私へと落とした。

⏰:08/09/28 07:22 📱:L704i 🆔:wERXz/mU


#352 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「どうして、って、……面白いことを訊くんだね、アンドウさんは……。フフフ……。君なら絶対に、……何かをしでかしてくれると思っていたからだよ。でも、いいよ、あんまり怒ってないよ。このまま何もなしに忠告を聞いてくれるなんて、最初から期待してなかったからさ。呆れてるっていうのが本心かな……」

ウフフ。

フフフ。

カミヤマミヤトの笑い声がしつこくまとわりついて、頭から離れない。

⏰:08/09/28 07:23 📱:L704i 🆔:wERXz/mU


#353 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「それで……」

彼は私に一歩近づき、間隔をつめた。

足がすくんで動けない。

彼の冷たく鋭い目線が私をとらえる。

⏰:08/09/28 07:24 📱:L704i 🆔:wERXz/mU


#354 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「次は何をしでかすつもりなんだい……? フフフ……。君なら、舌の根の乾かぬうちに悪知恵をひらめくんだろうけどさ、……もうそんなことはさせないよ。遊びは終わりだ、アンドウナナミ」

寂しくないように、君の家族もろとも、殺してあげる。

労るように優しく、カミヤマミヤトは呟いた。

⏰:08/10/04 16:49 📱:L704i 🆔:6RQeqqkE


#355 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「せめてもの情けとして、今夜は家族と水入らずの一時をあげるよ。僕って優しいだろう? ……フフフ。けど、明日の朝、必ず、君を殺しにいくから」

「ちょっと、ふざけるのもいい加減にしてよねっ……! 謝るから、冗談でも殺すだなんて言葉、使わないでよ! 貴方、本当に、目がオカシイわ……。正気とは思えない……」

⏰:08/10/07 22:57 📱:L704i 🆔:/NQepL.E


#356 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

彼の顔から笑みが消えた。

私にゆっくりと手を伸ばす。

その手が私の首を鷲掴みにしようとする、刹那、絶妙なタイミングで正面からこちらへかけよってくるスズキアサミの姿が見えた。

⏰:08/10/08 15:14 📱:L704i 🆔:9.pobqzQ


#357 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

彼女が声を発してようやく、カミヤマミヤトは彼女の存在に気付いた。

伸ばしていた手を素早く引っ込めた。

スズキアサミの手がカミヤマミヤトの肩に置かれたとたん、彼の目が一瞬大きく見開かれ、その後、先ほどまでの冷酷な目付きが嘘のように消え去っていった。

⏰:08/10/08 15:16 📱:L704i 🆔:9.pobqzQ


#358 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

春の日だまりのように優しい目が私を見る。

あまりの豹変っぷりに、私は唐突にジギルとハイドを思い出した。

もしかしたら彼の身体のどこかにはスイッチがあり、それを押したり戻したりすることで正と負の人格を自由に操作することができるのではないかと思った。

⏰:08/10/08 19:49 📱:L704i 🆔:9.pobqzQ


#359 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「ミヤト、ごめん! 今日はこれからちょっとした用事があってさ、一緒に帰れなくなったんだ……。本当にごめんね」

スズキアサミはカミヤマミヤトに向かって、何度も深く頭を下げた。

それをカミヤマミヤトは笑ってたしなめる。

⏰:08/10/08 19:51 📱:L704i 🆔:9.pobqzQ


#360 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

「大袈裟だなぁ、アサミは。いいよ、じゃあ今日はこのまま帰るね。それよりも、アサミは一人で帰るなんて大丈夫? この頃、物騒だから女の子一人だなんて危ないよ」

「……。ミヤトは、優しいね……。一人でも大丈夫だから、安心して。こう見えてもアタシ、いざという時には強いんだから!」

⏰:08/10/09 19:34 📱:L704i 🆔:IkzllZx.


#361 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

そう言って、スズキアサミは頬を赤く染めた。

私には恋愛感情なんてものは理解できないが、今の彼女は至極、幸せそうに見えた。

これが最後に見る笑顔になるとは思いもよらず。

彼女は手を振りながら、また校舎の中へと走っていった。

⏰:08/10/09 22:43 📱:L704i 🆔:IkzllZx.


#362 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマミヤトはぐるり、と素早く首を移動させてこちらを見た。

不気味に笑っている。

「……アサミはこれから屋上に向かうんだろうけど、アンドウさん、このまま真っ直ぐ家に帰るんだよね?」

⏰:08/10/09 22:45 📱:L704i 🆔:IkzllZx.


#363 [HEAVEN]
あげ

⏰:09/07/02 14:31 📱:P704i 🆔:35gX1SZ6


#364 [枢]
>>1-200
>>200-400
>>400-600
>>600-800
>>800-1000

⏰:09/07/02 17:34 📱:SO905i 🆔:zh42maAg


#365 [那加菜]
あげる

⏰:11/01/08 17:22 📱:SH05A3 🆔:FdUyjuoY


#366 [○○&◆.x/9qDRof2]
↑(*゚∀゚*)↑

⏰:22/10/19 18:27 📱:Android 🆔:A4ZzuHng


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