木の下でかくれんぼ
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#101 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「先生が見つけた、なんてことないわよね?」

アンドウさんが職員室のある方向を見つめた。

あり得ない話じゃない。

ここから職員室まで十秒とかからないのだから、アサミさんを見つけた先生がどこかに連れていった可能性も十分ある。

⏰:08/04/06 13:57 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#102 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


わたしとアンドウさんはとりあえず職員室に行き、先生に特別な動きがなかったか調べにいくことにした。

「きっと残っている先生は少ないわ」

アンドウさんがそう言った時だった。

わたしは職員室から出てくる人影を見つけた。

⏰:08/04/06 14:03 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#103 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


カミヤマくんだった。

驚く暇もなくカミヤマくんはすぐにわたし達を見つけると、真っ直ぐこちらに走ってきた。

どうすればいいの、どう対応すればいいの!

唐突な展開にどうしようもないほど鼓動が高まる。

⏰:08/04/06 14:05 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#104 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「サエコさんとアンドウさん!いいところにいてくれたよ!」

カミヤマくんの柔らかくて優しい声が中庭に響く。

アンドウさんが飛びはねるようにカミヤマくんの方へと振り向いた。

⏰:08/04/06 14:18 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#105 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「か、カミヤマくん……!」

手を振りながらわたし達の名前を呼んだ時、ようやくアンドウさんはカミヤマくんの存在に気付いたようだ。

不意打ちをくらい、目を丸くし驚きを隠せないでいる。

⏰:08/04/06 14:19 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#106 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「二人とも、アサミ見なかった?」

髪をかきあげ、笑顔でカミヤマくんは言った。

アサミさんがどこへ消えたかなんて、そんなことわたし達が知るわけがない。

逆にこちらが訊きたいくらいだ。

⏰:08/04/06 14:22 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#107 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「み、見てないよ。どうして?」

動揺で声が震えた。

しかしそんなことはカミヤマくんが気付くはずもなく、カミヤマくんは、おかしいなぁどこにいるんだろう、とだけ呟いた。

⏰:08/04/06 14:22 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#108 [ちむ◆kIFO7LoPgI]


「今日はアサミと一緒に帰る予定だったんだ。なのにアサミはどこを探してもいないんだ。だからって無断で先に帰るわけにもいかないし……。サエコさん達なら知ってるかなと思ったんだ」

「そうだったの……。アサミさん、どこにいるんでしょうね……」

⏰:08/04/06 14:23 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#109 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

アサミさんがカミヤマくんとの約束を破るなんて信じられなかった。

約束を破ってまで校舎内で一体なにをしたかったのだろうか。

それを訊くべきアサミさんの姿はどこにもなく、地団駄を踏むばかりである。

⏰:08/04/06 16:01 📱:L704i 🆔:SMgbg5T6


#110 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「カミヤマくん、わたし達はもう帰るね」

「そう……。僕はもう少しアサミを探してから帰るよ。二人とも、どうもありがとう」

「どういたしまして」

⏰:08/04/07 08:46 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#111 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

カミヤマくんの横をすり抜け、玄関へと向かった。

振り向くとアンドウさんが驚いた目でわたしを見ていた。

わたしは鼻で笑う。

⏰:08/04/07 09:12 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#112 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

もちろんわたしは帰る気などない。

帰るのはカミヤマくんとアンドウさんだけでいい、悪いが校内に居残られると非常に邪魔なのだ。

何時になってもいい、あとは一人になる時を待つだけだった。

⏰:08/04/07 09:12 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#113 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

後ろから軽やかな足音が近づいてくる。

アンドウさんのものだとわたしは予感した。


「サエコさん、どういうつもりなの?このまま帰るなんて……」


わたしの肩を掴み、アンドウさんは眉をひそませて言った。

⏰:08/04/07 19:26 📱:L704i 🆔:Z502MtOA


#114 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「ねぇ、アンドウさん。これ以上、アサミさんの行方に首を突っ込むのはやめましょう。なんだか嫌な予感がするの。アサミさんがカミヤマくんの約束をすっぽかしたなんて尋常じゃないわよ。きっとなにか大変なことが起こったに違いな「どうして?アサミさんを突き落としたのはあなたなんでしょう……?」

⏰:08/04/09 21:15 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#115 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

わたしは立ち止まる。

アンドウさんは口の端をあげ勝ち誇ったように微笑んでいた。

おそらくこの微笑はわたしが犯人であると確信してのものなのだろう。

⏰:08/04/09 21:17 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#116 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「全く話が分からないわ、アンドウさん。わたしがアサミさんを突き落としたですって?」

ぴく、とこめかみが痙攣した。

正直、目の前のアンドウさんをすぐにでも蹴り飛ばしてやりたい酷い気分である。

⏰:08/04/09 21:18 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#117 [ちむ◆kIFO7LoPgI]

「あら、違うの?」

「…………」

「あなたしかいないじゃないの。アサミさんとは不仲だし、意味なく屋上にいたし、私とカミヤマくんを邪魔者扱いするように帰らせたがるそぶりをする。ここまで確たる証拠を並べてあなた以外が犯人だなんていう人はいないでしょうよ?」

⏰:08/04/09 21:34 📱:L704i 🆔:YFBN8oCc


#118 [我輩は匿名である]
あげます

⏰:08/04/13 03:11 📱:F705i 🆔:IJ6/AzD2


#119 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「まったくだわ、アンドウさん……。けれど残念ね。なにを言われようがアサミさんを突き落としたのはわたしじゃないわよ。無駄な油を売るなら他所でやってちょうだい」

⏰:08/04/17 23:23 📱:L704i 🆔:VHqkl5Ho


#120 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アンドウさんは怪訝げに目を細めた。

手で唇を隠す。

そして困った、とでも言いたそうに視線を泳がせる。

⏰:08/04/17 23:27 📱:L704i 🆔:VHqkl5Ho


#121 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

堂々と言い切るわたしに、さすがに疑いが薄れてたじろいできたかのように思えた。

わたしはヤレヤレと安堵の笑みをこぼす。

⏰:08/04/17 23:27 📱:L704i 🆔:VHqkl5Ho


#122 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……じゃあこれだけは訊かせて。アサミさんが突き落とされた……もしくは自ら落ちた後、なぜあなたは屋上にいたの?……理由はなに?」

「アサミさんに呼ばれていたのよ。教えてくれたのはあなたじゃない。忘れたの?」

⏰:08/04/18 00:05 📱:L704i 🆔:27x0vPxM


#123 [紫陽花]
あげッ(・∀・)

⏰:08/04/27 13:40 📱:F905i 🆔:wFdsYbZI


#124 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……それにしても長引き過ぎじゃないかしら……。いくら話し込んだとしても流石に一時間近くはかからないわよ」

わたしは屋上での出来事を思い出した。

「そりゃあ、色々あって少し長引いてはしまったけれど……」

⏰:08/04/27 20:02 📱:L704i 🆔:qKKRrT0s


#125 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしがそう言った後、重苦しい沈黙がしばらく続いた。

それを先に破ったのはアンドウさんだった。

「……ますます怪しいわね……」

⏰:08/04/27 20:08 📱:L704i 🆔:qKKRrT0s


#126 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

校内のスピーカーから四時を知らせるチャイムが鳴り響く。

同時にアンドウさんは鞄を背負い直し、無表情のままこちらに顔を向けた。

⏰:08/04/28 13:17 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#127 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「何はともあれ、面倒なことになりそうなのは変わりないみたいね。明日にはアサミさんの安否が分かるに越したことはないのだけれど。……これがもしあなた以外の殺人事件だったり、自殺のしそこないだったりしたら関わりたくはないわ」

「…………」

「楽しみよ、これからのあなたを思うとね。仲良くしていきましょう。ムラカミサエコさん……」

⏰:08/04/28 13:35 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#128 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アンドウさんはわたしに微笑んだ後、足早に玄関へと去っていった。

わたしはその背を黙って静かに見送る。

「とんだ好かれ方をされてしまったものだわ」

くけけ。

わたしは込み上げる笑いを必死に抑える。

⏰:08/04/28 13:37 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#129 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

面白い。面白いよ、アンドウさん。

あの子はなんて頭の冴える子なのだろう。

精神力も並みではない。

⏰:08/04/28 13:39 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#130 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

飛び降りてきたアサミさんにも動じず、ただ冷静に、半場楽しむかのようにわたしがアサミさんを突き落とした犯人だと推測し言い切った。

……くけけ。

⏰:08/04/28 13:40 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#131 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

教室へと戻り、テラスからアンドウさんが校内から遠く離れていくのを確認した。

ガラス越しに小さくなったアンドウさんをゆっくりと指でなぞる。

⏰:08/04/28 14:02 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#132 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「今日はとっても楽しかったわよ、アンドウさん……」

今日はアンドウさんの胸中で様々な思いが交錯するのが手に取るように分かった。

まさに疑い合い、探り合い。

相手の出方を見て聞いて探る。

⏰:08/04/28 14:13 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#133 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「わたしをもっともっと楽しませて頂戴」

ポケットに手を入れ、丁寧に畳まれたハンカチを取り出した。

そのハンカチには可愛らしい花のイラストがプリントされ、四方には質素な白いレースがあしらわれている。

⏰:08/04/28 14:28 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#134 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

畳まれたハンカチを広げると、そこには、まだ乾ききらないアサミさんの血が染みついていた。

「くけけ」

安心して探偵気取りで悩むがいいわ、アンドウさん。

ジョーカーは逃げも隠れもしない。

ジョーカーはわたしなのだから。

⏰:08/04/28 14:39 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#135 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アサミさんが屋上を去ろうとした時、わたしは咄嗟に引き止めた。

アサミさんが恐怖の悲鳴をあげる前に、息の根を止めなければとわたしは焦る。

⏰:08/04/28 14:53 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#136 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

アサミさんの美しい顔を何度も何度も殴った。

動脈を千切る勢いで首に噛みついた。

蹴った。引っ掻いた。えぐった。

フェンスに、コンクリートの地面に叩きつけた。

そして、とうとうアサミさんは動かなくなった。

⏰:08/04/28 15:04 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#137 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

瀕死なのだと思い、わたしはフェンスまで運び、アサミさんを屋上から突き落としとどめをさした。

アサミさんは目を見開き、悲鳴をあげながら落ちていった。

屋上にはアサミさんの遺品ともいえるハンカチと、わたしひとりが残った。

⏰:08/04/28 15:17 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#138 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはハンカチを拾い上げ、ハンカチに染み付いたアサミさんの血を舐める。

不味かった。アサミさんの味がした。


「アンドウさん」


次はお前だ。

真実にたどり着く前に殺してあげる。

⏰:08/04/28 15:21 📱:L704i 🆔:J.T5Ze1I


#139 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]



一週間後。

アサミさんが行方不明とみなされ、警察が本格的に動き始めた頃。

クラスメイト達はアサミさんのありもしない噂を流し始めた。

⏰:08/04/29 14:38 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#140 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

《スズキアサミは援交で妊娠して家出した。》

《精神異常者に誘拐されて今も何処かに監禁されている。》

《自殺した。》

⏰:08/04/29 14:39 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#141 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

どれもくだらないものばかりだった。

仲の良かった女子達でさえも、アサミさんのデタラメな噂に目を輝かせ喜んで食らいついている。

⏰:08/04/29 14:41 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#142 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

不意に、アサミさんと仲の良かった女子グループのひとりと目が合う。

するすると視線を下げ手首を見てみると、友情の証、といってアサミさんとお揃いでつけていたブレスレットが目に止まった。

わたしは簡単に断ち切れたその友情とやらを鼻で笑う。

⏰:08/04/29 14:43 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#143 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

お前達の言う友情とやらは、明らかなデタラメな噂に食いつき合うことを指すのか?

⏰:08/04/29 14:45 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#144 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「くだらないわ」

お前達の下劣な想像でアサミさんを汚すんじゃない。

アサミさんは、もっと華麗で美しい死に方をしてくれた。

わたしは目をつむり、アサミさんの最期の姿を思い出す。

⏰:08/04/29 14:46 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#145 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

身体中、血だらけになりながら命乞いするアサミさん。

それが叶わず、わたしに生きながら屋上から突き落とされ断末魔の悲鳴をあげるアサミさん。

⏰:08/04/29 14:47 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#146 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

最高に興奮した。

一生のあらゆる快楽を一度に味わったようだった。

それは殺した相手がアサミさんだったからかもしれないし、そうではないかもしれない。

しかし、今となってはどちらでもよいことなのである。

⏰:08/04/29 14:58 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#147 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

感想、ご意見お待ちしています
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2635/

⏰:08/04/29 15:11 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#148 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「サエコさん」

声の主はカミヤマくんだった。

ガールフレンドのアサミさんが行方不明になったというのに、いつも通りの優しい笑顔と眼でわたしを見据えていた。

困惑など影も形もない。それに驚きを覚えた。

⏰:08/04/29 17:07 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#149 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「アサミが行方不明になって一週間経ってしまった……。何か怪しいと思わないかい?」

「……ええ。自宅にも連絡を入れないなんて、アサミさんったら何をしているのかしらね」

「僕にも言えない事情でもあったのかもしれない……。早く無事な姿を見たいところだよ」

⏰:08/04/29 17:08 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#150 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんは小さな溜め息を吐いた。

アサミさんを心配する言葉に特別な感情は一切感じられない。

アサミさんが消えて、クラスメイトで一番悲観し嘆くのはカミヤマくんだとばかり思っていた。

しかし実際は違った。

⏰:08/04/29 17:09 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#151 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

いの一番に行方不明を至って冷静に解釈し、わたし以外には自分から話題に出さない。

殺人犯のわたしよりもはるかに「普通」すぎると言える。


「そういえば、おとといからアンドウさんも学校に来てないね」


ドキリとした。無意識の内に鼓動が高鳴る。

⏰:08/04/29 17:11 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#152 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……そ、そうね……」

「先生は風邪だと言うけど……もしかしたら……アンドウさんにも、何かあったのかな?」

わたしはうつむいたまま目を見開いた。同時に全身に妙な汗が滲む。

駄目だよ、カミヤマくん。それ以上は駄目。カミヤマくんが何をいいたいのか薄々は理解できる。けれど、駄目、だからこそ、駄目。

⏰:08/04/29 17:13 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#153 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「何か……って何? ……カミヤマくん……」

「もしかしたら、アサミとアンドウさんは、同じ理由で学校に来れないのかもしれない」




こいつ、殺す。

コイツもアンドウのように首を突っ込んでくるに違いない。

殺してやる。

⏰:08/04/29 17:16 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#154 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

抑えきれない感情を必死に抑え、わたしは問いかけた。

「そうかしら? わたしにはただ風邪で寝込んでいるだけのように思えるけれど……」

わたしがそう言うと、カミヤマくんは首を横に振った。

⏰:08/04/29 17:18 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#155 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「…………。実は、昨日アンドウさんの家にお見舞いに行ったんだ。それでアンドウさんのお母さんは『一日中、部屋の隅でぶつぶつの独り言を呟いて、ご飯もろくに食べずに引きこもってる』って……」

「…………」

⏰:08/04/29 18:01 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#156 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「その話が本当なら、アンドウさんは何か尋常じゃないことがあったんじゃないかな、と思うんだ。アサミが行方不明になったのと、ほぼ同じタイミングだし……関連があるのかも」

「か、関連が……。そうね、あるのかもしれないわね……」

⏰:08/04/29 18:02 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#157 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

気分は最悪だった。

アサミさんを殺害したことで続いていた幸福感は煙のように消え去り、変わりに土足で心の中を歩き回られているような気分だけが残った。

ようやくアンドウという邪魔者を消すだけの段階に入ったというのに、ここで再び思わぬ障害が現れてしまった。

⏰:08/04/29 18:03 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#158 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

畜生。

せめてアンドウをさっさと消していれば少しは負担が軽くなったかもしれないのに。

「本題に入るよ。サエコさん、君に付いてきて欲しいところがあるんだ」

「……付いてきて欲しいところ……?」

⏰:08/04/29 18:06 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#159 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはうなだれながら繰り返す。

カミヤマくんは静かに頷いた。


「アンドウさんの、家に」

⏰:08/04/29 18:07 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#160 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

カミヤマくんの申し出を承知した後、わたしはあまりの気分の悪さにトイレで嘔吐した。



……カミヤマくん。

……一体キミは何を考えているの。

⏰:08/04/29 18:08 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#161 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

感想、ご意見お待ちしています
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/7686/

⏰:08/04/29 18:15 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#162 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]



アサミさんの死体とアンドウさんを始末しなければならない。

一日中、そればかりがわたしの脳内を支配していて授業どころではなかった。

手始めにアサミさんを片付けよう。

アンドウさんを始末するのは、その後でも十分間に合うだろう。

⏰:08/04/29 18:16 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#163 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

深夜、わたしは家を抜け出し学校へと忍び込んだ。

真っ先に校庭の端に埋められた銀杏の樹に駆け寄る。

辺りには大量の銀杏の実が落ちて潰れ、腐敗臭に近い独特の臭いを放っていた。

⏰:08/04/29 18:17 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#164 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「今晩わ、アサミさん」

わたしは樹の下に列なる葉っぱの山に挨拶をした。

正確にいえば、その中で眠るアサミさんに。

「……貴方から出る腐敗臭も、銀杏の実のお陰で誰にも気づかれなかったわ。わたしにとっては幸運だけれど、貴方にとっては不運なことだったみたいね……」

⏰:08/04/29 18:19 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#165 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはアサミさんを突き落とした後、中庭の溝にはまったアサミさんの死体を見つけた。

それをアンドウさんは運よく見逃したのである。

校庭掃除係だったわたしは銀杏の実の臭いを利用してアサミさんを腐るまで銀杏の葉の山に隠すことにした。

葉の焼却日に合わせ、柔らかくなり処分しやすくなったアサミさんを燃やし処分するためだった。

⏰:08/04/29 18:20 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#166 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

焼却日は明日。

今、焼却炉にアサミさんを入れておけば、そんなことは何も知らない教師の手によって明日燃やさせる。

⏰:08/04/29 18:22 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#167 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「毎日、毎日……」

わたしはアサミさんの足を掴んだ。

グニャ、と異様に柔らかい手応えが神経から脳に伝わる。

爪を立てたら簡単に肉を削げそうなほどの柔らかさだった。

⏰:08/04/29 18:22 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#168 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「熱い火と自分の犯した罪への後悔に苦しむがいいわ! わたしが毎日見にきてあげるわよ、あんたの骨になった見るも無惨なツラをさぁ! あは、あはははははは!」

アサミさんの体を葉の山から引き抜く。

そこには目も当てられぬほど皮膚が変色し、ただれ、得体の知れない虫に全身の肉をついばまれるアサミさんがいた。

⏰:08/04/29 18:24 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#169 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

途端に込み上げてくる優越感と満足感。

たくさんの人を魅力的な笑顔で魅了していたアサミさんも、今では鼻をつまんで避けられる腐乱死体なのだ。

⏰:08/04/29 21:36 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#170 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

美しかった顔も、可憐だった華奢な身体も、もうすぐ土に還る。

つまりは無に帰すのである。

スズキアサミはこの世界から消えてなくなる。

⏰:08/04/29 21:37 📱:L704i 🆔:vX8MJVrM


#171 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「わたしの勝ち……。わたしの勝ちよ! やっぱりわたしが全てにおいて正しかったのよ!そのむくいとしてオマエは罰受けたっ……!」

わたしはアサミさんの顔を足蹴にした。

アサミさんの腐った肉はわたしの足の重みに耐えきれず、スポンジのようにスルスルと無抵抗にへこんでいく。

そのさまが酷く滑稽で、わたしは思わず笑い声をあげた。

⏰:08/05/07 23:33 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#172 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「あっはははは、あはははは! なぁにぃ、その不細工なツラは! カミヤマくんに見せてやろうかぁ? あははは!」

更に力を込めて顔を踏みつけると、頭蓋骨から顔の肉が削げ落ちた。

「あら、ごめんなさい。これじゃあカミヤマくんに合わす顔が本当に無くなってしまったわねぇ。あははははははは!」

⏰:08/05/07 23:36 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#173 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

なんて楽しいのだろう。こんなに楽しいことがこの世にあったなんて。

もっと……。

もっとわたしを溺れさせて、狂気に、溺れさせて……!


わたしが冷酷非道な行動に酔いしれていた、その時だった。

⏰:08/05/07 23:37 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#174 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……うぅ……」

すぐ近くの背後でうめき声が聞こえた。風や木々の音ではない、確かに人の声だった。

わたしは咄嗟にそちらを向く。

しかしそこには深い闇が果てなく続くだけで、人影など何処にもなかった。

⏰:08/05/07 23:50 📱:L704i 🆔:E0QSiT6M


#175 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「…………」

馬鹿な、こんな深夜に誰かいるのか? 誰かわたしをつけて来たのか?

うめき声が聞こえたその先、そこには花壇と飼育小屋がある。隠れるなら飼育小屋しかないだろう。


まさしく袋の鼠……焦ることはない。

⏰:08/05/08 21:52 📱:L704i 🆔:2yDdo7qU


#176 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……誰かいるのね?」

返事はない。

「隠れても無駄よ。貴方は今、飼育小屋にいる。逃げ場はないわ。大人しく出てきて命乞いなさい」

⏰:08/05/10 09:13 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#177 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

ゆっくりと、物音を立てないように、てさげ鞄から肉切り包丁を取り出した。

アサミさんを解体するために持ってきたものだった。

それは月明かりに反射し、ぎらぎらと妖しくきらめいている。

⏰:08/05/10 09:13 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#178 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

飼育小屋に近づき、暗闇に目をこらして飼育小屋付近を調べた。

しかし誰もいない。いや、いてはいけない。いるわけがないのだ。

飼育小屋の中も一応調べたが、誰もいなかった。

⏰:08/05/10 13:40 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#179 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……気のせいだったのかしら……」

ふに落ちないまま諦めかけた時、ちりん、ちりんと、何処からか鈴の音が聞こえてきた。

鈴の音は一定の軽やかなリズムと共にこちらに近づいてくる。

わたしは身を強ばらせ、暗闇に目を見張る。

⏰:08/05/10 13:41 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#180 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

……唐突に、飼育小屋の影から黒い小さな塊が飛び出してきた。


「……きゃ……!」


わたしは驚いて小さな悲鳴をあげた。

⏰:08/05/10 13:43 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#181 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

落ち着いて見てみると、それは鈴付の首輪をつけた、黒い子猫だった。

透き通る大きな瞳がわたしをじっと見ている。

真っ黒な毛並みを持っていたため、闇と同化しているように見えた。

⏰:08/05/10 13:43 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#182 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……悪い子ね、こんな夜中に子猫がうろついちゃ駄目じゃない」

先ほどの声の主はこの子猫だったのか、と、わたしは安堵して胸を撫で下ろす。

おそらく、飼育小屋の鶏でも狙って来たのだろう。

⏰:08/05/10 13:47 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#183 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……おいで」

わたしが手を差し伸べると、子猫はゆっくりと近付いてきた。

差し出したわたしの手に自ら体を擦り付け、ゴロゴロと喉を鳴らしている。

その人慣れした様子に、わたしは目を丸くした。

⏰:08/05/10 13:47 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#184 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「他人にもなついてくるなんて。……人懐っこいのね、キミは……」

わたしは猫を両手で持ち上げ、学校の柵の外へと連れ出した。

子猫はわたしを見上げ、ニャア、と幼さを孕んだ声で鳴いた。

⏰:08/05/10 13:52 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#185 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしはバイバイ、と小さく手を振った。

こうでもしなければ、ぴっとりと付きまとわれて無闇に鈴を鳴らされては落ち着いて《後片付け》も出来ないのだ。

⏰:08/05/10 13:53 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#186 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「じゃあね」

わたしがその場から立ち去ろうとすると、子猫は身をひるがえして暗闇へと消えた。

このまま自分の家へと帰るのだろう。そう思っていた。

⏰:08/05/10 14:52 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#187 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

しかし、子猫は数メートル先の木の下で立ち止まった。

暗闇の中でチリチリと鈴の音が数回に渡って鳴り、その音からして《何かにすりついている》ように感じられた。

⏰:08/05/10 20:01 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#188 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

わたしは眉をひそめる。

……何か、いるのか。

わたしは耳をすまし、鈴の音を聞き取ることに集中した。

⏰:08/05/10 20:02 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#189 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

その時、風に乗り消え入りそうな声が聞こえてきた。間違いなく、人の声だった。


「駄目だよ、鈴を鳴らしちゃ駄目……!」

………………
…………
……


お前は、誰だ?

⏰:08/05/10 20:03 📱:L704i 🆔:xNNDi4Qw


#190 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]



昨夜、わたしはアサミさんの《後片付け》を急遽止めて家に帰った。

死体は再度葉の山に隠し、頭を踏みつけた際に葉に付着した血痕は全て持ち帰り、証拠を残さないようにした。

⏰:08/05/11 15:35 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#191 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

外見的には死体を発見されないかぎり、怪しいところは何一つない。

つまりは、昨日にリセットされたのである。

⏰:08/05/11 15:35 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#192 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

……本来ならそれほど気に病むことはない。

死体の臭いはここまで腐敗すれば、あとは徐々に下降していくだろうし、今更わたしを怪しむ者は出てこないだろう。

⏰:08/05/11 15:37 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#193 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

しかし、昨夜問題は起きた。あんな深夜に、わたしの行動を監視していた者がいたのだ。

おそらくあの黒猫の飼い主なのだろう。

だから黒猫は学校の敷地内に、そしてわたしの近くで息を潜めていた。

飼い主と共に。

⏰:08/05/11 15:38 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#194 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……許せない。どいつもこいつも、わたしの計画を揃って台無しにして……タダじゃ済まさないんだから……」

爪を噛み続けていたはずが、指の先の肉を噛み千切っていた。

わたしは痛みで、ふ、と我に帰りいつの間にか指の先は血塗れになっていることに気付く。

⏰:08/05/11 15:40 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#195 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

血をハンカチで包むように拭き取る。

ハンカチにはアサミさんの血が大量にこびりついていて、仕方なく血で染まった部分で指を拭く。

……不愉快だ。

わたしの血とアサミさんの血が混じるのが不快に思えた。

⏰:08/05/11 15:41 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#196 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……汚ならしいアサミさんの血がわたしに触れるなんて。わたしまで汚れてしまいそうだわ」

ケケ、とわたしは笑う。

その時、唐突にわたしの肩に手が置かれた。

冷たい。見ると、白くて華奢な指が並んでいた。そして、いつもと変わらない優しい笑顔。

カミヤマくんだった。

⏰:08/05/11 15:43 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#197 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「おはよう、サエコさん」

カミヤマくんは首を少し傾げて笑う。

今はその優しさが鬱陶しい。

⏰:08/05/11 15:45 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#198 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「……お、おはよう、カミヤマくん……」

わたしの淡白な挨拶。

何か感づかれるだろうなと思っていた。

しかし、カミヤマくんは「今日もいい天気だね」と言ってアッサリと平穏な話題を切り出した。

わたしはそれに安堵する。

⏰:08/05/11 15:45 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#199 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

「ええ、本当に。こんないい天気は久しぶりだわ。休み時間に教室で読書なんて勿体ないから、今日は校内散歩でもしようかと思っていたの」

咄嗟に出た名案だった。

今日は本当に散歩でもしよう。

教室にこもっていては、余計な不安を生むだけだ。

⏰:08/05/11 16:14 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


#200 [ちむ◆Hi9o8eIXuA]

それに、校内を徘徊することで昨夜の《後をつけてきた人物》の足取りを掴めるかもしれない。

誰かは大体予想がついてはいるが、一応念のためだ。

人一人殺したのだ、手抜きは出来ない。

⏰:08/05/11 16:15 📱:L704i 🆔:5YNNSfM6


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