*柴日記*
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#25 [向日葵]
「早くしないと母さんが焼きそばの上に目玉焼き乗っけてやんないって言ってたぞー」

私は空を軽くあしらって先へ行かせた。
先に立ち上がって柴の腕を引っ張って立たせてやると、柴が何かボソリと言った。

別に何言っても構わないからもう少しハキハキ喋って欲しいと思う……。

「何?」

「焼きそば……?」

「ウンそうだけど」

「何それ……」

⏰:08/03/21 00:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#26 [向日葵]
ハイ……?

ま、まさか焼きそば知らない……?
うっそだぁぁ!

と思いながらリビングへ連れて行き、即席で作った柴の席に座らせた。

いい香りを漂わせながら目の前に置かれた焼きそばを、柴はしげしげと眺める。

「いっただっきまーす!」

皆で行儀良く挨拶してから、ご飯を食べ始める。……と思われたが、皆初焼きそば(らしい)柴がそれを食べるかをじっと見つめていた。

⏰:08/03/21 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#27 [向日葵]
一方、マイペースを貫いてる柴は、焼きそばをよく観察した後、お箸を取って一口口に入れた。

一瞬止まってから、柴はまた一口、もう一口と、次々に食べだした。

どうやら美味しかったらしい。

それにホッとした私達も同じように食べ始めた。

「そーそー。アンタ細っちぃんだから、しっかり食べなよ。」

お母さんはにひっと笑って、柴の頭をぐりぐり撫でまわした。

別に気にした風もなく、柴は黙々と食べてくれたので、私も落ち着いて食べる事が出来た。

⏰:08/03/21 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#28 [向日葵]
*****************

柴は笑いに包まれる中、ぼんやりと昨日までの自分を振り返っていた。

安々と手に入った家族の温もり。
ただその温もりはいつか幻や夢のようにあっという間に消えてはしないだろうか。

早代(サヨ)の時みたいに……。

[出ていけ!お前などもういらない!]

激怒した父親の叫び。

離れたくなんて、なかったのに……。

ずっと、一緒にいたかった……。

******************

お箸が床に落ちる音がした。
その方を向けば、柴が箸を落とした状態のまま固まっていた。

⏰:08/03/21 00:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#29 [向日葵]
そして彼からは滴が流れ落ちていた。

「柴……っ!?」

「しばちゃん?」

苺が不思議そうに柴に問いかける。
このままだと皆に気をつかわせてしまう。

私は静かに柴を引っ張って行き、廊下に出る。

柴は灰色の瞳を潤ませながら細め、その目から涙を流し続ける。

それからは望みを失っているかのようにも感じとれた。

「柴……?」

⏰:08/03/21 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#30 [向日葵]
静かに私がつけた彼の名を呼ぶ。
彼は濡れた目で軽く応じた。

「俺は……家を追い出されたんだ……」

私は目を見開く。
握ったままの彼の手を、少し強く握った。

「俺は物心ついた頃から、愛情とか、そんなもの受けた事は無かった……。」

冷たい空洞の中にいるように、空っぽだった。そう柴は呟いた。

彼はポツリポツリと言葉を紡ぐ。

自分の素性をあまり話しはしなかったけれど、とにかく彼は“1人ぼっち”だったのだ。

そんな中、両親は離婚。
しかし彼は悲しいなんて感情は何も感じなかったと言う。
だって自分は、そんな感情を感じるほど何も与えてはもらわなかったから。

⏰:08/03/21 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#31 [向日葵]
そして、再婚。

「それが早代だった」

「早代?」

「俺と8つ歳の離れた優しい人。初めて俺に愛情を注いでくれた人……」

すると突然、柴は黙ってしまった。

先を促しては話ずらいだろうから、私は辛抱強く続きを待った。

しばらくして、柴はまた話始めた。

「あろうことか……俺は早代に恋愛感情を持つようになった。母親としてじゃなく、気持ちを、心を、もっとって欲しがるようになった……」

次に喋った時の彼の口調は、とても重かった。

⏰:08/03/21 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#32 [向日葵]
「関係を……持ってしまったんだ……」

「関係……?」

イマイチ分からなかった私は聞き返した。

柴は辛そうに細める目を閉じて、か細く言う。

「体……の事……肉体関係って……やつだよ。」

頭をきつく殴られた感覚がした。
だから彼は追い出されたのだ。

「出て行く時、早代が酷い目にあってる声が聞こえた……。俺の……せいで……っ!」

⏰:08/03/21 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#33 [向日葵]
柴は私に手を握られたまま床に座りこんだ。

私は今にも壊れてしまいそうな彼を見つめる。

「俺は不幸にしてしまうしかない……っ。愛情を求めても、相手を不幸にするしかないんだ……っ!」

私は、親から捨てられた記憶を持ってる。

私も柴と一緒だった。

私がいるせいで、お母さん達は不幸になった。
だから、私は捨てられてしまったんだと。

でも、この家に来てから、自分が誰かの力になれる事を知った。

⏰:08/03/21 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#34 [向日葵]
それを教えてくれたのは、“お母さん”であり、お父さんや桜や空や苺、家族だった。

「柴、大丈夫」

私は柴と視線を合わすようにしゃがんだ。
柴はまだ濡れている目で私を不思議そうに見る。

「私達の家族はね、どんな事でも力を合わせて乗り越えていける家族なの。」

柴のおでこと私のおでこを合わせて、そっと目を瞑る。

「それを受け継ぐのが私の名前、“越”。初めてここへ来た私がそんな子に育つようにつけてくれたのよ」

⏰:08/03/21 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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