*柴日記*
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#470 [向日葵]
「柴、アンタは越のそばにいるってあたしに言ったけどさ、越の事本当に大切に出来る?中途半端な思いなんだったら、帰れって言うよ」
「越が俺をいらないって言わない限り、俺はいつも越の隣にいます」
そういえば、なんで柴は今お母さんに敬語なんだろう。
そう思いながら、隣にいると宣言してくれた柴を嬉しく感じていた。
「じゃ、越。今度はアンタが柴に話す番だよ」
そう言うと、お母さんは立ち上がって、桜達がいる2階へと行った。
:08/08/09 02:13
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#471 [向日葵]
「越が俺に何を話すの?」
「……。柴は自分に闇があるって前に言ったよね」
柴はこくりと頷く。
「……私にもあるの。深い深い場所に、ずっと巣くってる小さな闇が」
それは、小さい頃。
親に捨てられた、ほんの少しの記憶。
「ただただ、その捨てられる時の事しか覚えてないけれど、私はあの瞬間で、小さいながら色々な事思った。」
自分が捨てられてしまうのは、お母さん達にとって自分はいらない存在で、どうして振り向いて、最後に手を降ってはくれないんだろうとか、そこまで嫌われていたのに、私はどうして気づかなかったのかとか……。
:08/08/09 02:20
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#472 [向日葵]
「お母さんやお父さんは私がいて幸せな時あったかな……とか……」
考えれば考える程、闇は私の中の光を食べていった。
そんな時、今のお母さんが私を見つけてくれた。
暮らしているうちに、この人は私がいて幸せなんだって思えるようになったけれど、同時に恐かった。
嫌いになられたらどうしようって……。
「お母さんはそんな気持ちになってる私に気づいてくれたの。そしたら……」
[越。あたしは絶対嫌いになんかならないよ。だからね、もっと壁を越えてあたし達に甘えな。それが迷惑だなんて、思わないからさ]
:08/08/09 02:27
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#473 [向日葵]
お父さんも、優しく笑って頷く。
[君は自分が嫌いなんだね。でもまずは自分を好きになろう。越、君のこの名はね、色んな試練の壁を乗り越えれる子になって欲しいからつけたんだ]
だからね、辛い事にぶち当たっても、頑張って行こう。
越1人でじゃなくて、家族で……。
その言葉が、どれだけ嬉しかったか。
当時の私は、緊張の糸が切れたように泣いた。
「だからね、柴の事も、仕方ないって思ったの。例え今は辛くても、きっと越えられる。ただ、時間がかかるけどって……」
:08/08/09 02:33
:SO906i
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#474 [向日葵]
「越……」
柴は座ったまま私を抱き締める。
柴の体温に、私は身を任せる。
「どこにも行かない。越のそばに、ずっといる……。だから、越の中の光を、見失わないで……」
うん。もう大丈夫。
だって私は、柴という光を見つけた。
柴が、そばにいてくれるなら、私は光を失う事はもう無い。
「ありがとう……柴……」
見つめあう。
綺麗な灰色の瞳には、私が映っている。
今度は緊張しない。
そう思いながら、近づいてくる唇を受けとめようとした。
:08/08/10 11:15
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#475 [向日葵]
「しばちゃんずっとここにいるのー!?」
突然入ってきた苺の声に、私と柴は勢いよく離れる。
「よかったぁー!いちごね、しばちゃんがいなくてずーっとさびしかったのーっ」
そんな私達の空気を知らず、苺は無邪気に立ち上がった柴の足に抱きつく。
そしてエヘヘと笑う。
「ごめんお姉ちゃん」
両手を顔の前に合わせながら、桜がリビングへと入ってくる。
そんな桜を引っ張って部屋の隅へ連れて行く。
「もしかしてずっと隠れてたなんて言わないよね」
:08/08/10 11:20
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#476 [向日葵]
小声で問う。
「いや、それは無い……よ?」
「桜、人の目見て話そうか」
「別に邪魔するつもりはなかったのーっ。苺が勝手にトタタターって……」
「しかし柴も面白いよな」
間に空がニョッキリと出てきて喋りだす。
「面白い?」
「越姉鈍いからさ、気持ちが通じる前も肩すかし、通じても肩すかし。こりゃ越姉のファーストキス奪うのはまだまだ先になりそうだなー」
10歳が生意気な……。
:08/08/10 11:25
:SO906i
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#477 [向日葵]
「ま、私達のいる所では、イチャイチャ出来ないと思った方がいいかもね」
イチャイチャって……。
ちらりと苺と遊んでいる柴を見る。
何はともあれ、柴がまたこの家にいる。
それが私は嬉しい。
また皆で生活を共に出来るのが嬉しい。
柴、おかえりなさい……。
:08/08/10 11:27
:SO906i
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#478 [向日葵]
―*最終ページ*―
柴を見つけた日から思えば、随分寒くなったね。
柴、あのね、私、ありきたりな事を言うけど、柴と出会ったのは運命な気がしてならないんだ……。
(神田家・長女・越談)
ゆーきやコンコン、あーられやコンコン……って歌詞の続きには、いーぬはよーろこーびにーわかーけまーわり……ってあるのに、どういう訳か、うちの犬は、寒さに弱い。
「越ー……」
いつものように、ご飯の用意をしていれば、柴がくっついてきた。
:08/08/10 11:37
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#479 [向日葵]
「何よ柴。寒いならコタツに入ってなよ」
「どっちにしろ寒いんだもーん……」
それでも私にくっついてるよりはあったかいと思うんだけど……。
「空ー苺ー。柴が寒いらしいから一緒に遊んでおあげっ!」
「いいぞー!」
「わぁいしばちゃん!なにしてあそぶー!?」
私が言った途端、空と苺は柴に駆け寄り引っ張っていく。
苺に至っては、柴の足にくっついたまま行く。
ふぅと一息ついて、今晩の夕食であるシチューの用意をまた始める。
:08/08/10 11:43
:SO906i
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