*柴日記*
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#538 [向日葵]
苺はすっかり怒っているのか、こちらに背を向けてまた絵を描いている。
その小さな胸に、どんな思いを秘めているのか、先生は突然の苺の怒りに戸惑っていた。
苺は一生懸命絵を描いていた。
大好きな人を思い、その人の笑顔を思い浮かべ、喜んでくれるかとワクワクしていた。
その人に1番に見て欲しいから、先生にだって見せたくはないのだ。
先生は、1番大好きな人じゃない。
1番大好きなのは……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「苺が?」
:08/08/30 03:35
:SO906i
:☆☆☆
#539 [向日葵]
あっという間に時間は過ぎ、保育園に柴が迎えに来た。
「ええ。ちょっと怒らせてしまいまして……。私が原因だとは思うんですが、もしかしたら何かあったのかなぁって……」
柴は足元にいる苺を見た。
苺は拗ねるみたいに口を尖らせ、柴の足にくっついている。
「苺ちゃん、じゃあまた明日ね。さようなら」
しかし苺は挨拶をしなかった。
柴は少し困った顔をして、苺の頭を軽くポンポンと叩き、挨拶を促す。
少しからかうように、また先生が言った。
「さようなら言ってくれないと、柴お兄ちゃんは先生がもらっちゃうぞーっ」
:08/08/30 03:41
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#540 [向日葵]
すると苺は先生を睨みつけ、目にうっすら涙を浮かべる。
「せんせいなんて、だいっきらいっ!」
苺は保育園を飛び出して行ってしまった。
「苺っ!すいません、失礼します」
柴は急いで後を追いかけて行った。
小さい子の足は思ったより早い。
なので柴は更に急ぐ。
転びでもしたら大変だと焦りながら。
そしてようやく捕まえる。
「コラ苺っ!先生にあんな事言っちゃだめだろっ!」
:08/08/30 03:45
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#541 [向日葵]
目の高さまで苺を抱き上げて、叱りつける。
苺は口を波のように歪ませると、大きな目を潤ませる。
泣く。
そう思った瞬間、体を軽く反って大声て苺が泣き出した。
「し、しばちゃんのばかぁーっ!いちご、わ、る、く、ないも、ぉーんっ!!」
うわーん!と甲高い声で泣かれれば、柴は慌てる。
苺をちゃんと抱くと、家まで急いで帰って行った。
その間も苺の機嫌は治る事は無かった。
「珍しい。苺が怒るだなんて」
:08/08/30 03:51
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#542 [向日葵]
帰ってきた越に、柴はぐったりとしながら訳を話した。
あれから苺は自分の部屋にこもってしまった。
柴がいくら呼んでも返事をしない。
強行突破と思い、ドアを開けようしたらしっかりと鍵がかけられていた。
途方にくれた柴は、大人しく越の帰りを待ち、越になんとかしてもらおうと考えていたのだ。
「ご機嫌ななめでも話を聞く限り今日のは酷いなぁ。ちょっと行って来るよ」
「……ごめん」
「気にしなくていいよ。すぐに「しーばちゃん」って来るから」
:08/08/30 03:55
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#543 [向日葵]
越は柴を安心させるよう微笑むと、リビングを出て2階へ行き、苺が閉じこもっている部屋まで行く。
立ち止まってしばらく中の様子をドア越しに読み取る。
そして優しくノックをする。
「いーちーご。いーれーて」
柔らかく、ちょっとおどけたように言ってみる。
返事はない。
でも越は辛抱強く待つ。
もう1度、優しく名を呼ぶ。
そして再び待つ。
するとゆっくり鍵が開けられた。
越は鍵が開けられた速度と同じくらいドアを開ける。
苺はベッドを背にしてちょこんと床に座っていた。
:08/08/30 04:00
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#544 [向日葵]
越はその隣に座る。
苺の目は、泣きすぎか擦りすぎか、赤くなってしまっていた。
「先生に大嫌いって言ったのはどうして?」
叱りつける訳ではなく、頭を撫でながら優しく問う。
すると段々苺の目に涙がたまってきた。
そして子供特有のせわしないしゃっくりをしながら訳を話し出す。
「しばちゃん、は、い、ちごの、おに、ちゃ、だ、もんっ……。せんせ、しばちゃ、が、ほし、とか、もら、ちゃうとか、いったぁ……っ!」
つまり。
苺は柴が誰かに取られるのが嫌だと妬きもちを妬いていたのだ。
:08/08/30 04:07
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#545 [向日葵]
遊ぶのは自分だけ。
自分だけのお兄ちゃん。
だから誰も近づくのは許さない。
そういう気持ちが強くなって、今日みたいな事が起こったのだろう。
しかし……と越は思う。
自分は柴と恋人同士にある訳なのだがそれはいいのか?と。
「柴がお姉ちゃんに抱きついたりしてるのはいいの?」
「おねえちゃんは、い、いの。いちご、は、おね、ちゃんがすき、だからっ」
基準がよく分からないな、と、苦笑いを浮かべていると、苺はそばに置いてあった丸めている画用紙を越に渡した。
:08/08/30 04:11
:SO906i
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#546 [向日葵]
受け取って、苺を見る。
「見てもいいの?」
苺は両手で目を擦りながら大きく首を縦に振る。
画用紙を伸ばして見れば、人が2人クレヨンで描かれてい。
片方の人にはピンク色で「おねえちゃん」と書かかれていて、もう片方人には黄緑色で「しばちゃん」と書かれていた。
「一生懸命描いてくれたの……。ありがとう……」
苺に微笑みかける。
しゃっくりは止んできたが、苺の涙はまだ止まりそうにない。
「だ、いすきなひと、をかきましょーって、せんせい、がいっ、たの。だからね、いちごね、おねうちゃんとしばちゃん、かいた、の」
:08/08/30 04:18
:SO906i
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#547 [向日葵]
「そっか……でもね苺」
越は伸ばした自分の膝の上に苺を乗せて目線を合わせて話す。
「何も言わずに“大嫌い”とか、“見ちゃだめ”とか言ったらだめだよ。先生がびっくりしちゃうでしょ?」
苺はしゃっくりを上げながらもしっかりと聞きながら相槌を打つ。そんな苺を優しく見つめながら越は背中をさする。
「なんで見ちゃだめなのか、どうして大嫌いって思っちゃったのか、伝えなきゃだめ。もしお姉ちゃんが突然苺に大嫌いって言ったら、苺どう思う?」
「……いや」
「だよね?じゃあ苺も、先生に嫌な事しちゃだめ。……ね?」
:08/08/30 04:23
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