*柴日記*
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#576 [向日葵]
またおぶろうと思って屈もうすると青年は祐子の手を引いて、目の前の空いているもう1つの椅子に座らせた。
「オイなんだよ。さっさと帰っぞ!」
「まだ君の手当てが終わってないよ」
「はぁ?怪我なんざしてねぇよ」
「痛くないの、これ」
ふわりと彼の手が、彼女の手に触れる。
それが、さっき見た、綺麗で微かに羨ましく思った手だと思えば、祐子は払いのける。
「い、痛くなんかないっつーの……っ!」
顔が無駄に熱い。
:08/09/09 02:25
:SO906i
:☆☆☆
#577 [向日葵]
なんだコレ!!
しかし構わず彼はまた触れ、目の前で微笑む。
眼鏡の奥の柔らかい印象のたれ目が細められる。
「でも君、女の子だから。傷残っちゃ困るでしょ?」
「は……っ!?お、お、女の子ぉっ!?」
声が微かに裏返る。
ローラー付きの椅子を利用して、ザッと後ずさる祐子。
「寒い事、い言ってんじゃねぇぞ!そう言えば黙って手当て出来ると思ってんのか!」
「そうじゃないよ。一般論述べただけ」
:08/09/09 02:29
:SO906i
:☆☆☆
#578 [向日葵]
「難しい事言ってんなっ!」
「ハイハイ。とりあえず見せてね」
消毒駅を浸した脱脂綿が頬に当たる。
このくらいの傷なんて慣れっこだ。
もっと酷い怪我だってした事がある。
なのに何故、消毒する時、痛くないかドキドキするように、こんなにも心が乱れているのだろう……。
なんとなく、祐子は落ち着かなかった。
「ハイ、いいよ。次は気をつけてね」
「気をつけれたらな」
「ん?」
:08/09/15 00:59
:SO906i
:☆☆☆
#579 [向日葵]
「……何もない。家まで送る。さっさと乗れ」
青年は素直に祐子の背に乗る。
祐子は自転車通学していたので、彼を後ろに乗せるつもりでいた。
「あっ」
突然青年が祐子の耳元で声を上げる。
「うるせーな……。なんだっ!」
「君の名前思い出した!森下祐子さんだよね」
「だったらなんだ……」
「恐いって有名な」
「だから何」
:08/09/15 01:04
:SO906i
:☆☆☆
#580 [向日葵]
「鬼みたいだって噂の」
「だったら何なんだよっ!」
質問しているのに青年は聞いてるのかいないのか話続ける。
祐子は苛立ってつい声を荒げる。
いますぐ手を離して青年を乱暴に降ろしてやりたい衝動にかられるが、深呼吸して必死に感情を抑える。
「うーん……納得出来ない。やっぱり噂は噂だね。そう思わない?」
「てめぇ殴られたいのか……だったら何だって言ってんだろうがっ!」
「こんなに優しいのに、皆はどこを見ているんだろう……」
:08/09/15 01:09
:SO906i
:☆☆☆
#581 [向日葵]
祐子はぴたりと足を止める。
本気でそう思ってる風に喋るから、祐子は信じられない気持ちでいっぱいだったが、すぐに思い直す。
あぁ……コイツは変人なんだ……。
あたしを優しいだなんて思うだなんて、よっぽど頭がおかしいのだろう……。
「おいお前」
「何?森下さん」
「あたしだけ名前バレてるなんて気分悪い。お前、名前は……?」
コイツは頭がおかしい。
女の子扱いするし、寒い事言うし、ましてや自分と普通に接する。
そう思っていながら、祐子は少し、ほんの少しだけ、彼を知りたいと思っていた。
:08/09/15 01:14
:SO906i
:☆☆☆
#582 [向日葵]
関わる事は、もう無いだろうけど。
後ろから、クスリと息が漏れる音が聞こえた。
「神田 一朗(カンダ イチロウ)だよ」
――――――――
――――――――――――
「って言うのが出会い」
越は絶句する。
母は確かに荒れていそうな感じだったが、今は大人になり、大人の振る舞い方で人と接しているから、喧嘩で人を、ましてや血が出るほど殴っている姿が想像出来なかった。
「それでよく一朗さん口説き落としたね」
柴は越と違い平然としていた。
:08/09/15 01:19
:SO906i
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#583 [向日葵]
祐子はカラカラ笑い、エプロンを着け始める。
「ま、色々ある訳よ。さて、これ以上越がドン引きするといけないから、夕飯作るわ。チビ共の相手してやってて」
柴は頷くと越の背中を押してリビングへと戻って行く。
それを見ながら、祐子はまた思い出す。
「口説き落とした……ねぇ……」
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――――――――――――
「もーりしーたさんっ」
体育館裏で煙草を吸おうとしていた祐子は一朗の姿を見るなり呆れた表情を浮かべて、口にくわえていた煙草をポトリと落とした。
:08/09/15 01:25
:SO906i
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#584 [向日葵]
「なんなんだ……お前は……」
「神田一朗。前に教えたじゃないか」
関わらないだろうと思っていた。
だが神田一朗は何度も祐子の前に現れては無邪気な笑みを向ける。
「神田……なんでここにいんだよ……」
「森下さんの姿が見えたから。どこ行くのかなって追ってきたんだ」
だから何故追ってくるんだと言いたいのを飲み込む。
またくだらない理由が返ってきそうだからだ。
許可もしていないのに、神田一朗は祐子の隣に腰を下ろす。
暖かな日差しに目を細めて、その温度を慈しむかのように微笑む。
:08/09/15 01:32
:SO906i
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#585 [向日葵]
祐子はスカートの上に落ちた煙草を取り、またくわえる。
ちらりと神田一朗の方を見るが、対して気にした風はない。
祐子の視線を感じた神田一朗は、祐子の方へ視線を向け、首を傾げる。
「何?」
「別に……。口煩い教師達みたいに吸うなとか言うと思って」
「確かに法律上では未成年の喫煙は禁じられているし、女性は将来妊娠するだろうから控えるべきだとは思うけどね。そるに先生達に見つかれば停学は免れる事は出来ない確率の方が大きいけど」
「難しい事言うなっつってんだろ!頭痛くなるっての……っ」
「僕は先生じゃないし、森下さんの自由だから」
神田一朗はそう言うと微笑む。
:08/09/15 01:39
:SO906i
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