*柴日記*
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#716 [向日葵]
やり場のない怒りはどうしてくれよう。
こんなのでは何の罪もない翠がとばっちりをくらってしまう。
しばらく考えて、祐子はサッとラフな格好に着替えると、何も告げず家を出て行った。
向かう先は昔から決まっている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
気分が優れない時、家から少し離れた公園のジャングルジムにのぼる。
てっぺんに腰かければ、丘の上にある公園はちょっとした夜景が見えた。
昔から、ここはお気に入りの場所でよく来ていた。
暗くなりつつある今は、藍色の空と鮮やかな家の光がとても綺麗だ。
:08/11/08 01:49
:SO906i
:☆☆☆
#717 [向日葵]
少し蒸し暑いが、風があるので気にならない。
そして祐子はため息をつく。
明日どんな顔で会えばいいのだろう。
いや、むしろ一朗はどんな顔して会いに来るのだろう。
何も無かったように接するのだろうか。
もしそうならば、祐子はきっと殴ってしまうだろう。人の事をなんだと思っているのだと。
本当に好きなのかと……。
そばにいてもいいのかと……。
結局1番引っかかるのはそこだったりする。
自分はいつの間にこんな腑抜けになってしまったのだろう。
それでも、こうなる事を自分から望んだ。
全ては一朗の為に……。
:08/11/08 01:55
:SO906i
:☆☆☆
#718 [向日葵]
難しい事を考えるのは嫌だから、目を伏せて風と空気だけを感じようとする。
すると耳に砂利を踏む音が届いた。
ゆっくりと目を開ければ、少し離れた所に一朗がいた。
「いた。良かった、探したんだ。翠さんは正解だったみたいだね」
1度帰っただろう彼は、ストライブのカッターにジーパンといった格好だった。
やはりと言うか、いつもと変わらない微笑みを祐子に向けている。
だから祐子はつい叫ぶ。
「近寄るな!」
:08/11/08 01:59
:SO906i
:☆☆☆
#719 [向日葵]
祐子の元へ行こうとのぼりだした一朗の動作が止まる。
「……どうして?」
「何をするか、分からないから……。何を言うか、分からないから……」
「それでもいいよ」
「あたしが嫌なんだ!頼むから……」
しばらく考えた彼は諦めたように祐子がいる真下に来て、ジャングルジムを背もたれにして立つ。
「綺麗だね」
祐子は答えない
「こんな場所があるなら教えてくれればいいのに」
:08/11/08 02:10
:SO906i
:☆☆☆
#720 [向日葵]
やっぱり祐子は答えない。
「……さっき否定しなかったのも、肯定しなかったのも、君が負い目を感じないようにだよ」
祐子は一朗に目を向ける。
一朗は夜景を眺めたままだ。
「病院を継ぐのは、僕には向いてないと幼い頃から感じていた。両親もそれは承知だった。もともと2人共、固まった考えを持っていない人だから、僕が普通の職に就きたいと中学の時に話せば快く応じてくれた」
淡々と話す一朗の話を、祐子は一生懸命聞く。
「でも申し訳ない気持ちはあるから、せめて成績だけは優秀であろうと思ってるんだ。だから特に医者になる家系だからって言うのはない」
:08/11/08 02:18
:SO906i
:☆☆☆
#721 [向日葵]
口を閉ざした彼は、祐子を見上げる。
口元だけで、薄く微笑む。
「そっちに行ってもいい?」
迷ったが、さっきまでの怒りは薄れていたので、頷く。
1歩1歩、着実にのぼってきた彼は祐子の隣に座る。
「普通に憧れている訳でも、普通を求めるのは祐子さんがいるせいでもなんでもない。ただ僕の意思で、僕の人生がそうなだけ。でも祐子さんは肯定しても否定しても、何かしら気にしそうだから答えに詰まっただけ」
風で揺れ、顔にかかる祐子の髪の毛を、長い指先ではらう。
「だって……アンタは分かりづらい……って言うか、本音を言ってるかすら、分からない時がある」
:08/11/08 02:24
:SO906i
:☆☆☆
#722 [向日葵]
一朗は優しく肩を抱く。
彼の肩に頭をもたれかかせれば、そのまま眠りたくなる程、居心地がいい一方で胸が高鳴る。
「嘘を言ってしまうのは必要がある時だけ。でも祐子さんには全て本音だよ……って言っても、信じてもらえない?」
「まぁ、言うわ簡単だよな」
クスクス笑う彼は、そっと祐子の頬を手で包むと、自分の方へ向かせて柔らかく微笑む。
そんな一朗に、祐子はいとおしさで溢れた眼差しを向ける。
「でもこれだけは絶対信じて。僕は君が好きだよ」
そう言うとゆっくりと唇を重ねた。
触れ合う唇は、いつもより熱く感じた。
:08/11/08 02:31
:SO906i
:☆☆☆
#723 [向日葵]
:08/11/08 02:35
:SO906i
:☆☆☆
#724 [向日葵]
―――――――――…………
次の日。
早朝の爽やかな空気と友達との挨拶が交わされている教室に、どこからともなく騒がしい足音がやってくる。
「ゆ、祐子さんいるっ!?」
祐子のクラスメイトの1人だ。
丁度来て、机の中へ教科書を入れていた途中だった祐子は顔を上げる。
「なに?」
「大変よ!神田君のクラスに転校生……とにかく来て!」
説明するのもめんどくさくなったのか、女子は祐子の手を引っ張って一朗のクラスへと走って行く。
:08/11/18 01:17
:SO906i
:☆☆☆
#725 [向日葵]
息を軽く弾ませながら見たのは、一朗にべったりくっついてる女の子の姿。
しかも祐子は、その子を知っている。
昨日の、やたらうっとおしい奴だ。
祐子はズカズカと教室へ入っていく。
祐子に気づいた一朗のクラスメイトは、道をあけていく。
「オイ」
一朗の前に仁王立ちした祐子は、苛立っている元凶の杏を睨む。
一朗は明らかに焦っていた。
「祐子さん、これは違うからねっ……?」
「みりゃ分かるっ」
:08/11/18 01:21
:SO906i
:☆☆☆
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