*柴日記*
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#726 [向日葵]
と言いながらも、語気を荒げるのは仕方のない事。
いくら一朗が自分を好きと言ってくれていても、自分以外の女子がべったりくっついていては怒らずにはいられないだろう。
「あらあなた、まだこりてなかったの?」
「そりゃこっちのセリフだ。夢見がちの世間知らずのお嬢ちゃんよ」
杏は祐子の鋭い視線に負けそうになるも、なんとか頑張って睨み返す。
祐子は余裕しゃくしゃくで杏を見下す。
杏に睨まれても全然怖くはない。
「放れろ」
:08/11/18 01:26
:SO906i
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#727 [向日葵]
杏はギュッと一朗の腕にしがみつく。
祐子は一歩前へ出て声を低くする。
「聞こえねぇのか。放れろっつってんだよ」
「い、嫌よ。あなたに指図される筋合いはないもの」
祐子の頭の中で、何かが派手に弾ける。
その音を聞く前に、祐子の手が出て、強制的に二人を引き剥がす。
小さく悲鳴を上げて、杏は尻餅をついた。
「いい加減にしやがれっ!いつまでもグチグチと諦めの悪い。アンタなんかお呼びじゃねぇんだよ!」
:08/11/18 01:30
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#728 [向日葵]
杏は下唇を噛み締めると、教室から出て行った。
祐子は一朗に向き直る。
「お前もしっかり拒否しろよ!」
祐子の怒りはまだおさまらない。怒りの矛先がこちらへ向かってくるとは思わなかった一朗は驚いて、目をまんまるくさせる。
「だって女の子だし、乱暴はあまり出来なくて……」
「じゃあお前はベタベタ触られてるのをあたしに黙って見てろって言うのかよ!」
「そうじゃない。僕だって祐子さん以外に触れられるのは嫌に決まって……」
:08/11/18 01:39
:SO906i
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#729 [向日葵]
「もういいっ!今日は一人で食べるから!」
祐子は回れ右をして教室を出て行った。
せっかく昨日仲直りしたのに。
こんな些細な事で、気持ちがすれ違うのが嫌だ。
そう思っても、「祐子以外の触れられるのは嫌だ」と言うのなら、力づくだろうがなんだろうが拒否すればいいのにと、ムカムカしてくる。
それもこれも、全部はあの杏とかいう奴のせいだ……っ!
廊下をあるく祐子の表情は、正に鬼の形相そのものだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「祐子さんてば……」
:08/11/18 01:44
:SO906i
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#730 [向日葵]
これで三度目。
一朗はホームルームが終わった後の僅かな休み時間と、一時間目の休み時間にわざわざ祐子のクラスまで謝りにくる。
その姿がまるで忠犬のようだとクラス中が思っている事を二人は知らない。
祐子はずっと窓の外を見たまま口を閉ざしている。
謝れば何でも許すと思ったら大間違いだと意地になる。
さすがの一朗も困り果てている。
「……お昼、祐子さんが一緒じゃなきゃ……寂しいよ……」
心底寂しいそうな声に、少し祐子は心揺れる。
:08/11/18 01:49
:SO906i
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#731 [向日葵]
それでも、と、半ば意地になって、許してしまいそうな自分をなんとか抑えて、祐子はじっと空を見つめる。いや睨む。
すると祐子を苛立たせる声がした。
「あーっ!もう一朗こんなとこにいたのー!?」
祐子の脅しもなんのその。
ケロリと忘れてしまっているのか、杏はずかずかと教室に入ってきた。
祐子の事をわざと無視して一朗の腕を引く。
一朗は祐子の方を気にしたが、二人を見れば更に怒りはおさまりそうにない祐子はそっぽを向いたままだった。
一朗は肩を落とし、小さく「またあとで」と言って教室をあとにした。
:08/11/29 22:18
:SO906i
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#732 [向日葵]
一朗がいなくなってすぐ、クラスの女子が祐子の元へと集まる。
「祐子さん、なんなのあの子っ!」
「……幼なじみらしいよ」
「あー……よくあるパターンだよね。“幼なじみは将来の旦那さま”っていう法則みたいなの」
そんな法則は滅びればいいと思う。
「でも一朗くんもまんざらじゃなさそう……」
「馬鹿っ!」
何気にそう言った誰かの口を、皆が一斉に塞ぐ。
皆が祐子をそろりと見るものだから、祐子は苦笑いするしかなかった。
:08/11/29 22:23
:SO906i
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#733 [向日葵]
「気にしなくてもいいよ」
本当はどうしようもなく不安。
それでも一朗を信じたいから、次来た時には仲直りしようかと心を入れ替える。
大丈夫だと思った。
こんな小さなすれ違いくらい……。
――――――――…………
ところが、お昼休みになっても一朗は現れなかった。
気になった祐子は、一朗の分まで作った弁当を持って、一朗の教室へ行く。
すると人だかりが出来ていた。
なんだと間から見れば……。
「はいアーン!」
「だからいらないって。僕にはお弁当が」
:08/11/29 22:28
:SO906i
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#734 [向日葵]
小さく、一朗と杏の姿が見えた。
杏は一朗の口に何かを運び、無理矢理入れようとしている。
皆はおろか、野次馬すら、祐子がいる事に気づいてはいない。
ふつふつと、また祐子に怒りが蘇る。
最早この怒りはどちらに向けられる怒りか分からない。
怒りながらも、祐子はしばらく二人の様子を見る事にした。
「いいからっ」
ぐっと強制的に箸が一朗の口に入れられる。
困りながらも、しばらく噛んでいた一朗は、段々と顔を輝かせていった。
「これ……」
「懐かしいでしょ?野菜があまり得意じゃない一朗の為の私のうち特製かき揚げ。何故か昔からこれだけはよく食べてたよね」
:08/11/29 22:33
:SO906i
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#735 [向日葵]
野菜が……得意じゃない……?
初耳だった。
弁当には、いつもなんらかの形で野菜が入っていた。
それでも一朗は、何も言わず、いつも笑顔で「おいしいね」と食べていた。
好きな人の、好き嫌いさえしらない……。
祐子は持っていた弁当をぎゅっと抱き締め、静かに後退りした。
すると弁当が音を立てて落ちた。
それに気づいた野次馬が、やっと祐子の存在に気づき、ざっと顔を青くする。
一朗と杏はまだ気づかない。
弁当を拾う気力すらおきない。
それでも力なくしゃがみ、ゆっくりした動作で弁当を拾う。
:08/11/29 22:37
:SO906i
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