*柴日記*
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#1 [向日葵]
:08/03/18 00:38
:SO903i
:☆☆☆
#2 [向日葵]
雨が降っていた。
もうすぐ秋の気配を感じながら帰宅した私は、まるで捨て犬みたいに縮こまって、悲しそうにうつ向いてる彼と出会ったのです。
*柴日記*
:08/03/18 00:42
:SO903i
:☆☆☆
#3 [向日葵]
「お母さぁぁん!人拾ったぁぁ!!」
「え、ちょ、アンタそんな犬拾ったみたいなテンションで!」
優雅に紅茶をすすっていたお母さんは私の叫びにびっくりした。
私はずぶ濡れの彼を家にいれて、タオルを貸してやった。
「ハイ。拭いて。風邪ひいちゃうから。」
私の言葉なんか聞いてないのか、綺麗な茶色い髪から滴る雫もそのままに、彼はぼんやりしていた。
お母さんが風呂を沸かしてあげると言って、風呂場へ向かった後、私は彼を拭いてあげる。
:08/03/18 00:46
:SO903i
:☆☆☆
#4 [向日葵]
そこで私はハッとする。
伸びている髪の毛の隙間から覗いた瞳は、グレーだった。
外人……さん……?
もしかして日本語通じないとかかな……。
「わ……ワットユアネーム?」
カタコトな英語で話かければ少し反応したのか、こちらを見た。
「分かるから……日本語。」
ぽつりとだけど、確かにそう言った。
「良かった!あ、私は神田 越(カンダ エツ)。この家の長女。貴方は?」
:08/03/18 00:50
:SO903i
:☆☆☆
#5 [向日葵]
さっきまで私に向けていた魅力的な瞳を僅かにそらして、またポツリと呟いた。
「勝手に……呼べばいい……」
何でだろう。
でも何故か分かる事は、彼はとても傷ついてるように見えると言う事。
何故そんな悲しい目をしているんだろう……。
「どうして……うちの前にいたの?」
「……疲れた。どこにも行く場所なくて、さまよって……休んでただけ……。」
:08/03/18 00:54
:SO903i
:☆☆☆
#6 [向日葵]
行く場所がない?
つまり家出って事なのかな。
そう思いながら、今日初めてあった人をあれこれ詮索するのはよくないと思い、私は何も聞かなかった。
「じゃあ……とりあえず貴方は柴(シバ)ね。犬みたいにうちの前にいたから!」
特に反応する訳でなく、柴は黙ったまま私に拭かれた。
―――――――……
「行くとこないっていうなら、まぁいてもいいよ。」
お母さんは寛大すぎる程寛大で、お母さんだけど男気溢れる人だ。
:08/03/18 00:58
:SO903i
:☆☆☆
#7 [向日葵]
柴がお風呂に入ってる間、さっき彼から聞いた事をお母さんに言ったところ、さっきのような返事が帰ってきた。
「今更家族が1人増えようが5人増えようがどうでもいいよ」
「5人て……。そうなったら大家族だよお母さん」
「あぁ!おねーちゃん!」
後ろから声がするので振り向いてみれば、三女で4歳の苺(イチゴ)と、長男で10歳の空(ソラ)がそこにいた。
苺はトテトテと走ってきて私の足に抱きついた。
:08/03/18 01:03
:SO903i
:☆☆☆
#8 [向日葵]
「おかえりなさぁい!あのね、いちご今日おうたおぼえたんだよー!」
「そうなんだぁ。またお姉ちゃんに聞かせてね。」
苺は「うん!」と元気よく言って、お母さんの膝によじ上った。
「越姉!俺今日野球でホームラン打ったよ!」
「空はさすがだねー!この調子で頑張りなよ!」
空はニカッと笑う。
それにつられて私も笑うと、玄関の方から叫び声が聞こえた。
「うわぁぁ!!」
:08/03/18 01:06
:SO903i
:☆☆☆
#9 [向日葵]
「あ、さくらおねえちゃんだ!」
桜とは、次女で14歳。
おそらく部活から帰って来たのだろう。
それはいい。
多分……柴がいたな。
玄関へつけば、風呂上がりで、さっきと変わらず頭びちょびちょの柴と、見知らぬ柴に驚いた桜がいた。
「え!?ちょ、お姉ちゃんこの人誰!?」
「柴。ちょっと柴。ちゃんと頭拭かなきゃダメでしょうが。」
すると柴は頭にタオルを乗っけて、私に頭を差し出してきた。
:08/03/18 01:10
:SO903i
:☆☆☆
#10 [向日葵]
拭けと言ってるらしい。
桜の叫びにかけつけた苺と空も、驚いていた。
「わ!誰!?」
「いちごのおにいちゃん?」
いっぺんに説明しなくちゃならないようだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小さな苺もいると言う事で、分かりやすく丁寧に話した所、最初こそ驚いたものの、皆次第に納得していった。
「分かったよお姉ちゃん」
「俺も」
「いちごもー!」
:08/03/18 01:14
:SO903i
:☆☆☆
#11 [向日葵]
皆が了解したと言う事で、私は柴が使う部屋へと案内した。
丁度1つ余っているので、そこにする事にする。
階段を上がって、空いてる部屋へと案内。
柴は黙々とついてくる。
ドアを開けると、何もない空間が広がっている。
「じゃあここね。布団はまた持ってくるから。」
「……てない。」
「は?」
柴は入口に止まったまま、窓を見つめて何か呟いた。
:08/03/18 01:17
:SO903i
:☆☆☆
#12 [向日葵]
柴よりも先に部屋に入ってた私は、柴に寄っていってもう1回何を言ったか尋ねた。
「何?」
「似てない……誰1人として、兄弟も、親子も……。」
「……そっか」
私はにこっとして、質問に答える。
「皆、施設からこの家に来たから。似てなくて当然なんだよ」
私は皆、桜も空も苺も……皆施設から今のお母さんの所へ引き取られた。
:08/03/18 01:20
:SO903i
:☆☆☆
#13 [向日葵]
お母さんは、子供が欲しいけど出来なくて、ずっと悲しんでいた。
そんな時、私達を見つけてくれた。
血の繋がりなんてないけど、愛情一杯に育ててくれた。
私は5歳の時、両親から捨てられた。
それでも今のお母さんが大事に育ててくれたおかげで、今は何も寂しくもないし、怖くもない。
「本当の兄弟じゃなくても、皆大切よ。」
柴は静かに私を見つめ返す。
灰色の瞳でじっと見つめられるば、少しドキドキした。
:08/03/18 01:25
:SO903i
:☆☆☆
#14 [向日葵]
「いいな」
「え?」
と突然、柴が被さってきた。
急なので、バランスを崩した私の体は、柴と共に倒れる。
ドスンと派手な音を立てると、私はムクリと起き上がった。
「あいったたたた。ちょっと柴!何すん」
「スー……スー……」
え、寝ちゃった?
確認するまでもなく、ピクリとも動かず柴は寝息を立てる。
:08/03/18 01:28
:SO903i
:☆☆☆
#15 [向日葵]
何か……謎めいた人だなぁ……。
歳は20ちょっとくらい。
長身、どちらかといえば美形。
そして灰色の瞳。
一体どこの人なんだろうか。
結果として膝枕をしなくちゃならない羽目になった私は、柴の寝顔を見ながらぼんやりと色々考えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
眠りがもとから浅いのか、1時間経つと柴は目を覚ました。
覚えてないのか、半目で辺りを見渡す。
そんな仕草に、私は笑ってしまった。
:08/03/18 01:33
:SO903i
:☆☆☆
#16 [向日葵]
「本当犬みたい!柴って名前あってたみたいね」
柴は少し首を傾げてから、座って頭をポリポリかいた。
私のビジョンからは、子犬が後ろ足で頭をかいてるように見える。
「お腹空いてない?喉は渇いてない?」
柴は頭をかくのを止めて、また私をじっと見つめる。
見つめながら、眉間のしわを深くした。
何か、私悪い事言ったっけ……?
「馬鹿らしい……。」
:08/03/18 01:36
:SO903i
:☆☆☆
#17 [向日葵]
は……?
「赤の他人家にあげるなんてどういう神経してんだか……第一そんなに親切にして何なの?媚売ってんの?」
最後の言葉を言い終わると同時に、私は柴の両方の頬をつねってやった。
そして間近で怒った顔をする。
「2度と、私の家族の悪口言わないで。」
媚なんて売った事はない。
困っているなら助けてあげたい。
そんな、ただ優しい心をそんな風に言うなんて許さない。
:08/03/18 01:40
:SO903i
:☆☆☆
#18 [向日葵]
「少なくとも、私はこの家族を誇りに思ってる。本当の家族であろうがなかろうが関係ない。本当の皆の心を見ずに、悪く言うのは止めて。」
そうして、私は頬から手を離す。
依然、まだ顔も気持ちも怒ったままだ。
柴はつねられた頬をさすりながら、ぼんやりと足元を見ていた。
少し……言いすぎた?
でも柴が悪いのよ。
私の家族を……あんな風に……。
「うらやましい……。」
柴がまたポツリと言う。
:08/03/18 01:44
:SO903i
:☆☆☆
#19 [向日葵]
私は眉を寄せて柴を見る。
柴はまたさっきのように悲しい目をしていた。
灰色の瞳に憂いの色が混ざる。
「悪く言ってごめん……」
あれ、意外と素直。
「でもお人好し」
でもやっぱり毒舌。
「いいの。誰かにとってはお人好しでも、誰かにとっては救いになってるかもしれないでしょ?」
柴は珍しい物のように私をじっと見つめる。
そんなにおかしい事言ったかな。
:08/03/18 18:50
:SO903i
:☆☆☆
#20 [向日葵]
カタと音がしたので振り向くと、そこに苺が覗いていた。
苺は恐る恐る部屋に入って来て、柴の近くで止まった。
最初は上から下まで何度も観察して、その内ににこぉっ笑った。
「しばおにいちゃん。いちごおにいちゃんとあそびたいな。」
柴は軽く目を見張ると、少し表情を柔らかくしたのが分かった。
目元も笑みを含んでいる。
苺も柴を気に入ったのか、生意気に膝の上に乗ってる。
:08/03/18 18:55
:SO903i
:☆☆☆
#21 [向日葵]
「兄弟いたの?」
「弟がね。」
柴は苺の頭を撫でながら言う。
苺のおかげで柴の警戒していた空気が緩和されてる。
だから私もなんなく喋る事が出来た。
「何歳くらい?」
「この子と同じくらい。」
「“このこ”じゃないよ。いちごだよ!」
苺の主張に、思わず笑ってしまう。
:08/03/18 19:00
:SO903i
:☆☆☆
#22 [向日葵]
「苺ー!ちょっとおいでー!」
桜の呼ぶ声に、元気よく「はーい!」と答えて苺は言ってしまった。
まるで空気を和らげに来ただけみたいな苺に、私は胸が温かくなった。
「あの子はいつからこの家の子?」
柴から喋り出したので、私は少し驚いた。
「苺は赤ちゃんの時から。でも本当の家族じゃない事はもう知ってるよ。」
柴は苺が行ってしまったドアを見つめる。
あんな小さな子に、そんな酷な事をとでも思ってるんだろうか。
:08/03/18 19:05
:SO903i
:☆☆☆
#23 [向日葵]
「俺もこの家に拾われたかった……」
「柴……?」
さっきもそうだった。
「いいな」とか「羨ましい」とか、どうして他の家庭を羨んでばかりいるんだろう。
そしてそういう時、いつも寂しくて悲しい顔をするのだろう。
「いいんだよ?ここにいても……」
柴の手に触れると、柴は少しピクリと震える。
柴の手は、さっきお風呂に入った筈なのにもう冷たくなっていた。
:08/03/18 19:11
:SO903i
:☆☆☆
#24 [向日葵]
「いたい……。ずっと……」
柴は膝を抱えてうつ向く。
一体この人には何があったんだろう。
心に、どれだけの傷をおっているんだろう……。
言葉の端々に、彼の心の叫びが聞こえる気がした。
「オイ越姉!イチャついてる場合じゃねぇぞ!」
今度は空がやって来た。
何でみんないっぺんに来ないかな。
「馬鹿。そんな訳ないでしょ。」
:08/03/18 19:20
:SO903i
:☆☆☆
#25 [向日葵]
「早くしないと母さんが焼きそばの上に目玉焼き乗っけてやんないって言ってたぞー」
私は空を軽くあしらって先へ行かせた。
先に立ち上がって柴の腕を引っ張って立たせてやると、柴が何かボソリと言った。
別に何言っても構わないからもう少しハキハキ喋って欲しいと思う……。
「何?」
「焼きそば……?」
「ウンそうだけど」
「何それ……」
:08/03/21 00:05
:SO903i
:☆☆☆
#26 [向日葵]
ハイ……?
ま、まさか焼きそば知らない……?
うっそだぁぁ!
と思いながらリビングへ連れて行き、即席で作った柴の席に座らせた。
いい香りを漂わせながら目の前に置かれた焼きそばを、柴はしげしげと眺める。
「いっただっきまーす!」
皆で行儀良く挨拶してから、ご飯を食べ始める。……と思われたが、皆初焼きそば(らしい)柴がそれを食べるかをじっと見つめていた。
:08/03/21 00:08
:SO903i
:☆☆☆
#27 [向日葵]
一方、マイペースを貫いてる柴は、焼きそばをよく観察した後、お箸を取って一口口に入れた。
一瞬止まってから、柴はまた一口、もう一口と、次々に食べだした。
どうやら美味しかったらしい。
それにホッとした私達も同じように食べ始めた。
「そーそー。アンタ細っちぃんだから、しっかり食べなよ。」
お母さんはにひっと笑って、柴の頭をぐりぐり撫でまわした。
別に気にした風もなく、柴は黙々と食べてくれたので、私も落ち着いて食べる事が出来た。
:08/03/21 00:13
:SO903i
:☆☆☆
#28 [向日葵]
*****************
柴は笑いに包まれる中、ぼんやりと昨日までの自分を振り返っていた。
安々と手に入った家族の温もり。
ただその温もりはいつか幻や夢のようにあっという間に消えてはしないだろうか。
早代(サヨ)の時みたいに……。
[出ていけ!お前などもういらない!]
激怒した父親の叫び。
離れたくなんて、なかったのに……。
ずっと、一緒にいたかった……。
******************
お箸が床に落ちる音がした。
その方を向けば、柴が箸を落とした状態のまま固まっていた。
:08/03/21 00:14
:SO903i
:☆☆☆
#29 [向日葵]
そして彼からは滴が流れ落ちていた。
「柴……っ!?」
「しばちゃん?」
苺が不思議そうに柴に問いかける。
このままだと皆に気をつかわせてしまう。
私は静かに柴を引っ張って行き、廊下に出る。
柴は灰色の瞳を潤ませながら細め、その目から涙を流し続ける。
それからは望みを失っているかのようにも感じとれた。
「柴……?」
:08/03/21 00:16
:SO903i
:☆☆☆
#30 [向日葵]
静かに私がつけた彼の名を呼ぶ。
彼は濡れた目で軽く応じた。
「俺は……家を追い出されたんだ……」
私は目を見開く。
握ったままの彼の手を、少し強く握った。
「俺は物心ついた頃から、愛情とか、そんなもの受けた事は無かった……。」
冷たい空洞の中にいるように、空っぽだった。そう柴は呟いた。
彼はポツリポツリと言葉を紡ぐ。
自分の素性をあまり話しはしなかったけれど、とにかく彼は“1人ぼっち”だったのだ。
そんな中、両親は離婚。
しかし彼は悲しいなんて感情は何も感じなかったと言う。
だって自分は、そんな感情を感じるほど何も与えてはもらわなかったから。
:08/03/21 00:17
:SO903i
:☆☆☆
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