*柴日記*
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#21 [向日葵]
「兄弟いたの?」
「弟がね。」
柴は苺の頭を撫でながら言う。
苺のおかげで柴の警戒していた空気が緩和されてる。
だから私もなんなく喋る事が出来た。
「何歳くらい?」
「この子と同じくらい。」
「“このこ”じゃないよ。いちごだよ!」
苺の主張に、思わず笑ってしまう。
:08/03/18 19:00
:SO903i
:☆☆☆
#22 [向日葵]
「苺ー!ちょっとおいでー!」
桜の呼ぶ声に、元気よく「はーい!」と答えて苺は言ってしまった。
まるで空気を和らげに来ただけみたいな苺に、私は胸が温かくなった。
「あの子はいつからこの家の子?」
柴から喋り出したので、私は少し驚いた。
「苺は赤ちゃんの時から。でも本当の家族じゃない事はもう知ってるよ。」
柴は苺が行ってしまったドアを見つめる。
あんな小さな子に、そんな酷な事をとでも思ってるんだろうか。
:08/03/18 19:05
:SO903i
:☆☆☆
#23 [向日葵]
「俺もこの家に拾われたかった……」
「柴……?」
さっきもそうだった。
「いいな」とか「羨ましい」とか、どうして他の家庭を羨んでばかりいるんだろう。
そしてそういう時、いつも寂しくて悲しい顔をするのだろう。
「いいんだよ?ここにいても……」
柴の手に触れると、柴は少しピクリと震える。
柴の手は、さっきお風呂に入った筈なのにもう冷たくなっていた。
:08/03/18 19:11
:SO903i
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#24 [向日葵]
「いたい……。ずっと……」
柴は膝を抱えてうつ向く。
一体この人には何があったんだろう。
心に、どれだけの傷をおっているんだろう……。
言葉の端々に、彼の心の叫びが聞こえる気がした。
「オイ越姉!イチャついてる場合じゃねぇぞ!」
今度は空がやって来た。
何でみんないっぺんに来ないかな。
「馬鹿。そんな訳ないでしょ。」
:08/03/18 19:20
:SO903i
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#25 [向日葵]
「早くしないと母さんが焼きそばの上に目玉焼き乗っけてやんないって言ってたぞー」
私は空を軽くあしらって先へ行かせた。
先に立ち上がって柴の腕を引っ張って立たせてやると、柴が何かボソリと言った。
別に何言っても構わないからもう少しハキハキ喋って欲しいと思う……。
「何?」
「焼きそば……?」
「ウンそうだけど」
「何それ……」
:08/03/21 00:05
:SO903i
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#26 [向日葵]
ハイ……?
ま、まさか焼きそば知らない……?
うっそだぁぁ!
と思いながらリビングへ連れて行き、即席で作った柴の席に座らせた。
いい香りを漂わせながら目の前に置かれた焼きそばを、柴はしげしげと眺める。
「いっただっきまーす!」
皆で行儀良く挨拶してから、ご飯を食べ始める。……と思われたが、皆初焼きそば(らしい)柴がそれを食べるかをじっと見つめていた。
:08/03/21 00:08
:SO903i
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#27 [向日葵]
一方、マイペースを貫いてる柴は、焼きそばをよく観察した後、お箸を取って一口口に入れた。
一瞬止まってから、柴はまた一口、もう一口と、次々に食べだした。
どうやら美味しかったらしい。
それにホッとした私達も同じように食べ始めた。
「そーそー。アンタ細っちぃんだから、しっかり食べなよ。」
お母さんはにひっと笑って、柴の頭をぐりぐり撫でまわした。
別に気にした風もなく、柴は黙々と食べてくれたので、私も落ち着いて食べる事が出来た。
:08/03/21 00:13
:SO903i
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#28 [向日葵]
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柴は笑いに包まれる中、ぼんやりと昨日までの自分を振り返っていた。
安々と手に入った家族の温もり。
ただその温もりはいつか幻や夢のようにあっという間に消えてはしないだろうか。
早代(サヨ)の時みたいに……。
[出ていけ!お前などもういらない!]
激怒した父親の叫び。
離れたくなんて、なかったのに……。
ずっと、一緒にいたかった……。
******************
お箸が床に落ちる音がした。
その方を向けば、柴が箸を落とした状態のまま固まっていた。
:08/03/21 00:14
:SO903i
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#29 [向日葵]
そして彼からは滴が流れ落ちていた。
「柴……っ!?」
「しばちゃん?」
苺が不思議そうに柴に問いかける。
このままだと皆に気をつかわせてしまう。
私は静かに柴を引っ張って行き、廊下に出る。
柴は灰色の瞳を潤ませながら細め、その目から涙を流し続ける。
それからは望みを失っているかのようにも感じとれた。
「柴……?」
:08/03/21 00:16
:SO903i
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#30 [向日葵]
静かに私がつけた彼の名を呼ぶ。
彼は濡れた目で軽く応じた。
「俺は……家を追い出されたんだ……」
私は目を見開く。
握ったままの彼の手を、少し強く握った。
「俺は物心ついた頃から、愛情とか、そんなもの受けた事は無かった……。」
冷たい空洞の中にいるように、空っぽだった。そう柴は呟いた。
彼はポツリポツリと言葉を紡ぐ。
自分の素性をあまり話しはしなかったけれど、とにかく彼は“1人ぼっち”だったのだ。
そんな中、両親は離婚。
しかし彼は悲しいなんて感情は何も感じなかったと言う。
だって自分は、そんな感情を感じるほど何も与えてはもらわなかったから。
:08/03/21 00:17
:SO903i
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