*柴日記*
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#300 [向日葵]
「学校から電話があって、お姉ちゃんが倒れたって言うから、柴が迎えに行って家まで連れて帰ってきたの!過労ならちゃんと休んでなよねぇっ!」
じゃあ……。
頭にそっと触れる。
さっき寝ている自分の髪を撫でたのは、柴なのだろうか……。
「おねえちゃん、しばちゃんにありがとうしなきゃメッよ?」
「……そうねぇ」
と苺の頭を撫でた。
苺はされるがままになっている。
「今何時?」
:08/05/04 02:01
:SO903i
:☆☆☆
#301 [向日葵]
:08/05/05 12:36
:SO903i
:☆☆☆
#302 [向日葵]
「6時半くらい。おかゆ作ったけど食べる?」
桜が言い終わると同時にドアをノックされた。
答えたのは桜だ。
「桜、越起きた?」
聞こえたのは柴の声。
私は焦って布団をかぶって横になった。
そんな私を苺は不思議そうな顔で見る。
そして桜も目をパチクリさせて私を見る。
「まだ寝てるって言って!」
小声でそう告げる。
桜は首を傾げながらも頷いた。
:08/05/07 01:34
:SO903i
:☆☆☆
#303 [向日葵]
「まだ寝てるーっ。看病なら私がしとくから、柴は苺連れてってー」
ドアを開けると思ったので、壁側を向いた。
それを確認した桜は、苺を柴の元へ誘導する。
桜が小声で私が起きた事は内緒にするようにと苺に耳打ちするのが聞こえた。
苺は元気よく頷いて外へと出ていった。
大きくため息をついて、上半身を起こす。
「最近柴とギクシャクしてるみたいだけど、なんかあった?」
「え……、バレてたの?」
「バレてないと思ってたのはお姉ちゃんだ・け」
:08/05/07 01:40
:SO903i
:☆☆☆
#304 [向日葵]
もう1度ため息をついて、私は桜に訳を話す事にした。
「最初はちょっとしたケンカをしてたの。でもそれは私が原因だから、なんでもないフリしたら済むと思ってて……」
「ま、あたしの目にはそれは通用しなかったみたいだけどね」
苦笑いした後、今日の朝の出来事を思い出して顔が暑くなった。
「朝に……仲直りしたの……そ、そしたら……多分だけど……キスされそうになって……」
後半は声が出てないくらい小さい声だった。
:08/05/07 01:43
:SO903i
:☆☆☆
#305 [向日葵]
それでも桜は聞きとってくれたらしく、びっくりして目を見開く。
私は話を続けた。
「それで頭一杯になったら……クラスメイトに告白されて……」
「オッケーしたの!?」
「まっさか!だって私は……っ!」
突然言葉に詰まった私を桜は首を傾げながら待つ。
「“私は”――……。何?」
改めて口にしようと思えばすごく恥ずかしかった。
でも唐突に思い出す柴の姿が胸を切なくさせて、気付けば口が動いていた。
:08/05/07 01:48
:SO903i
:☆☆☆
#306 [向日葵]
「柴が……好きみたいなの……」
この想いを再度実感した。
桜は穏やかな表情を浮かべて「そう……」と頷いた。
まるで私がいずれそう言うだろう事を分かっていたかのように。
「じゃあ柴にも告げるといいよ」
「そんな事出来ない……っ」
「どうして?」
「柴が私を好きな訳ないから」
:08/05/07 01:51
:SO903i
:☆☆☆
#307 [向日葵]
今度は苦い表情を浮かべた桜は、私に近づいて「もうっ」と唸った。
「乙女思考がお姉ちゃんの頭にやっと導入されたのに、まだそこら辺は鈍いのねっ!」
やっぱり鈍いと思われてたんだ……。
「柴のあの態度見てお姉ちゃんが嫌いな訳ないでしょ!?そんな事あたしは愚か、空や苺だって分かってるよ」
「だって怖いの……っ」
小さい頃、私は両親に捨てられた。
その記憶はしっかりとインプットされてると言うか、こびりついてしまっている。
:08/05/07 01:55
:SO903i
:☆☆☆
#308 [向日葵]
[バイバイ]
冷たく言い放たれたその言葉。
振り返る事のない背中を「何故」と言う気持ちだけでいつまでも見送っていた。
昔の名前をそのショックで忘れてしまった私は、新たな「越」と言う名を貰って今まで乗り越えてきた。
でも大切な人が1人、また1人と増える度、その名前はふさわしくないのではと落ち込んだ。
ねぇ柴……貴方は私の側に、いつまでもいてくれるの……?
:08/05/11 18:26
:SO903i
:☆☆☆
#309 [向日葵]
―*7日目*―
お姉ちゃんがようやく……って思ったのに、どうしても何かに脅えてるみたい。
柴も何かありそうだし……。もう、あの2人ったら、一体何なのかしらっ!
(神田家・次女・桜談)
いつもの朝なのに、風景がいつもと違う風に見えるのはどうしてなんだろう。
でも今日は、学校へ行く事が許されない。
何故なら昨日倒れたのに学校へ行った事がお母さんにバレたからだ。
:08/05/11 18:31
:SO903i
:☆☆☆
#310 [向日葵]
こっぴどく叱られた上、言う事を聞かなければお小遣い抜きの脅しをされた。
それは困ると、大人しく今日はいるのだ。
時計を見て見れば8時を回った所。
よく寝たんだなぁー、と寝返りをうってドアの方を向けば、そこに柴が座り込んで寝ていた。
「し……っ!」
大声を出しそうになって、両手で口を塞ぐ。
どうしてここに?
体を起こしながら疑問に思った。
この頃朝方は冷え込んできたので、かぶっていた布団をかぶせてやる。
:08/05/11 18:38
:SO903i
:☆☆☆
#311 [向日葵]
柴が……好き。
間近で見つめながら自分が気づいた気持ちを復唱する。
柴が言えない心の闇。
それはもしかしたら、私と同じようなものなのかもしれない。
柴……私には、柴の闇を分かち合う事は、出来ないのかな……。
さらりと綺麗な茶色い髪の毛を撫でると、それに気づいたのか柴がゆっくりとまぶたを開いた。
間近で見つめていた私は、息を止めてしまった。
胸が当たり前のように高鳴る。
「お、おはよっ……」
「おはよう……」
:08/05/11 18:44
:SO903i
:☆☆☆
#312 [向日葵]
「なんでここに?」
「祐子さんが見張れって言ったから。ここにいれば越はでれないでしょ?」
「風邪ひいたらどうするのっ!もう、今日はちゃんと家にいるんだから。」
立ち上がろうとすると、手を握られた。
温もりを感じれば、鼓動の速度は速くなっていく。
「な、……何」
「昨日の事、怒ってる?」
昨日の事。
キスしようとした事。
一気に顔の温度が上がった。
:08/05/11 18:48
:SO903i
:☆☆☆
#313 [向日葵]
「や、そ、……お、怒ってない……っ。びっくりしただけ」
「許してくれる?」
「って言うか……その、な、なんであんな事……」
「なんで?分からないの?」
握られている手に力が加えられる。
灰色の瞳に熱が宿る。
泣きたくなるくらい戸惑ってしまう。
分からない。
心の中は、何1つ。
「じゃ、じゃあ教えて……くれない?」
:08/05/11 18:52
:SO903i
:☆☆☆
#314 [向日葵]
「教えても、越は大丈夫なの?」
え……。
それは、良い事ではないのかしら。
急に不安になってしまう。
気持ちの拒絶がこんなにも怖いと思ったのは初めてかもしれない。
どうしようか戸惑っていると、柴が静かに微笑んだ。
「大丈夫じゃないなら、まだ言う訳にはいかないよね」
と言って立ち上がった。
「何か作ってくる。待ってて」
:08/05/11 18:57
:SO903i
:☆☆☆
#315 [向日葵]
静かに閉まったドアを見ながら私は自分に呆れた。
ちゃんといつもの自分にならなきゃって思ってもうまくいかない。
好きって思ってしまうとどうしてこんなに臆病になってしまうんだろう……。
柴は優しい……。
私が悪いのに、いつも許してくれるのは柴だ。
私は、そんな柴に答えなくちゃならない。
しっかりしなきゃ……私。
決意を固めていると、携帯が鳴った。
どうやらメールのようだ。
:08/05/11 23:39
:SO903i
:☆☆☆
#316 [向日葵]
美嘉からだ。
<体大丈夫?今日の帰りお見舞い行くね!あ、立川君が心配してたよ。お見舞いには立川君も連れて行くと思うから!>
「た、立川君が……」
[貴方が好きです]
大きなため息をついた。
私の周りにいる人は、気まずい人ばかりだ……。
しかも立川君は、諦めないとか言ってたし……。
私どうなっちゃうんだろう……なんかグダグダだなぁ……。
「越。朝飯出来たよ」
「あ、ハイ!」
:08/05/11 23:43
:SO903i
:☆☆☆
#317 [向日葵]
とにかく今は柴だ。
柴の事に集中しよう……っ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
柴はサンドイッチを作ってくれていた。
間にはさんだ新鮮な野菜が美味しくて、ついさっきまで気まずかった事を忘れた。
「美味しい?」
「すっごく!」
そう言うと、柴は優しく微笑んだ。
なんだかホッとする。
「柴は食べないの?」
「食べたからいいよ」
:08/05/11 23:47
:SO903i
:☆☆☆
#318 [向日葵]
私の正面に座る。
じっと食べてる姿を見るので、食べずらい。
「あ、あんまり見ないで」
「幸せそうに食べるから嬉しいんだ。だから見てたいだけ。気にしないで」
気にするって。
「誰かに喜んでもらえるなんて、味わった事今まで無かったから……」
サンドイッチを食べる手を止めた。
あまりに柴が寂しげに笑うから、どうしていいかが分からなくなってしまった。
:08/05/11 23:51
:SO903i
:☆☆☆
#319 [向日葵]
:08/05/16 19:45
:SO903i
:☆☆☆
#320 [向日葵]
言葉のレパートリーが少ない自分がとても歯がゆくなる。
もっともっと、安心させて、悲しい顔なんてしてほしくないのに……。
「あ、あの、お昼は私が作るから!」
気を紛らす為に話題を作る。
それで十分だったのか、うつむいていた柴は私の方を見ると柔らかく微笑んだ。
それを見て、私もつられて微笑んだ。
そして、決意をしたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ぐーたらしていると時間が過ぎるのが早かった。
:08/05/16 23:43
:SO903i
:☆☆☆
#321 [向日葵]
ほのぼのと柴と過ごしていると、気づけば学校が終わる時間になっていた。
「ねぇ柴。これから友達が3人来るんだ。だからしばらく私は部屋にこもるね」
「ふーん。お菓子でも買ってこようか?」
「来てからでいいよ。ありがとう」
部屋を少し片付けようと階段を上る。
部屋に入って散らかっている机の上の教科書を綺麗に並べ、乱れている布団を整えた。
空気の入れかえにと、窓を少し開ければ、心地よい風がカーテンを揺らした。
:08/05/16 23:47
:SO903i
:☆☆☆
#322 [向日葵]
もう秋か……。
制服も衣替えだなー……。
とか考えていると、チャイムが鳴った。
開けた窓から下を見れば、予想通り美嘉と椿、それに立川君がいた。
美嘉が誰よりも早く窓から顔を出していた私に気づく。
「やっほ越!」
美嘉の声に気づいた他の2人も、美嘉と同じように手を振る。
「ちょっと待ってて!」
階段を駆け降りる。
:08/05/16 23:51
:SO903i
:☆☆☆
#323 [向日葵]
下まで降りようとすると、柴が腕を組んで壁に背を預けていた。
降りてくる私を一睨みする。
「何でアイツ、いるの?」
アイツとは多分立川君の事だろう。
下までとりあえず降りる。
「だって友達だもん。当たり前でしょ?」
「越は少し、いや大分鈍すぎるよ。アイツの気持ちくらい分かるでしょ?」
気持ちを分かるって何なんだと、私の中に疑問が浮かんだ。
:08/05/21 23:30
:SO903i
:☆☆☆
#324 [向日葵]
その人の気持ちを100%分かるなんて不可能な話。
少しでも分かりたいと思えって聞いてみても、その人は闇を持っていて話してくれる気配なんとない。
傷つけるのが怖くて、でも甘えて欲しい。
それでも無理矢理聞かないのは、精一杯の自分なりの気遣いだ。
聞くな、いつか話す、でも気持ちを知れ。
そんなの無理だよ。柴。
「柴だって……私の気持ち分かってなんかない……っ」
そう言うと、柴は目を少し見開いた。
:08/05/21 23:35
:SO903i
:☆☆☆
#325 [向日葵]
それに構わず、私は玄関に向かった。
ドアを開けて、皆を招く。
「いらっしゃい。わざわざありがとう」
「お体……大丈夫ですか……?」
「ありがとう椿。もう大分良くなったから大丈夫だよ。」
自分の部屋に入れる為、また階段を上ろうとした時にはそこに柴はいなかった。
小さくため息をつく。
また気まずくなっちゃったなぁ……。
:08/05/21 23:38
:SO903i
:☆☆☆
#326 [向日葵]
:08/05/21 23:40
:SO903i
:☆☆☆
#327 [向日葵]
どうして気持ちが繋がったと思った瞬間、こういう事態が起こってしまうのだろうか。
上手く立ち回る事が出来ない自分を悔いる。
そう思う反面、距離を置ける事にホッとしている自分がいた。
大事な物を得る前に、心構えをしておきたい……。
私は過去の闇を、柴と共に拭い去る事は出来るだろうか……。
「あ、ねぇ越、ケーキ買って来たんだけど食べない?」
階段を上がりながら美嘉が聞いてきた。
手にはケーキが入っているだろう箱が持たれている。
:08/05/27 23:31
:SO903i
:☆☆☆
#328 [向日葵]
「じゃあ先に部屋入ってて。お皿持って行くから」
上りかけていた階段をまた下がった。
お皿と飲み物の準備をしていると、「ただいまー」と声が聞こえてきた。
「おねえちゃんただいまー」
「今日部活休みだったからあたしが迎えに行ったんだー」
リビングに苺と桜が顔を出した。
「ところで柴どうかした?庭でなんかたそがれてたけど」
「え……。さ、さぁ……」
:08/05/27 23:34
:SO903i
:☆☆☆
#329 [向日葵]
リビングから庭へ出たのか、と思う。
てっきり部屋にでも行ったのかと思った。
「おきゃくさんきてるのー?」
用意している物を眺めながら苺が言う。
「うん。お姉ちゃんのお友達。桜、悪いけど晩御飯頼むね」
「おっけーい」
お盆に食器をのせて部屋へ向かった。
手が塞がっといるので声をかければ、立川君が開けてくれた。
「わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。でももう元気だよ」
:08/05/27 23:38
:SO903i
:☆☆☆
#330 [向日葵]
「本当ですか……?」
身を乗り出すようにして、心配そうな顔で立川君が訊いてきた。
私はにこりと笑って1つ頷く。
「でも……無理はなさらないで下さいね……」
「ウン。ありがとう椿」
「そうそう週末課題出てるよ」
と美嘉が出すので苦い顔でプリントを受け取った。
最悪な事に苦手な英語だ。
各自お皿に分けたケーキを食べる。
:08/05/27 23:42
:SO903i
:☆☆☆
#331 [向日葵]
これがまた体に染みていくように美味しい。
疲れた時は甘いものとよく言うけど正にだと思った。
すると誰かの携帯が鳴る。
鳴っているのは椿の携帯らしかった。
「電話?」
「いえメールです……」
「まさか椿、あの無神経な婚約者とまだ続いてたの!?」
「えぇっ!?」
美嘉より私の方がびっくりして声をあげた。
:08/05/27 23:45
:SO903i
:☆☆☆
#332 [向日葵]
「椿……婚約者いたの……?」
「うちの決まりなんです……17歳を迎えたら、婚約者を決めろと……。」
「これがまた最低最悪な奴でね!!」
美嘉が憤慨してるというのに、椿はただ静かに笑っていた。
その笑顔は幸せそうに見えたけど、少し寂しく見えた気もした。
椿はどうやって運命を共にする人を決めたんだろうか……。
「椿はその人のどこが好きで決めたの?」
何気なく訊いてみた。
すると椿はまた静かににこりと笑った。
:08/05/27 23:49
:SO903i
:☆☆☆
#333 [向日葵]
:08/05/27 23:50
:SO903i
:☆☆☆
#334 [向日葵]
すいません逆でした

233がアンカー、319が感想板です
:08/05/27 23:51
:SO903i
:☆☆☆
#335 [向日葵]
「必要としてくれているなら、それに答えようと思ったんです……」
必要……と口の中で椿が言った事を繰り返した。
柴は私を必要としてくれているのだろうか……。
好きになっても、いいのだろうか……。
悩んでいると、立川君が立ち上がった。
「おトイレお借りしてもいいですか?」
「あ、ウン。出た所にあるから。分かるかな」
「分からなかったらまた戻ってきます」
:08/06/04 23:44
:SO903i
:☆☆☆
#336 [向日葵]
扉が静かに閉まる。
立川君がいなくなって少しホッとすると思ってしまっては失礼だろうか。
でもなんとなく落ち着かない気分でいた。
「そういえば美嘉、どうして椿の婚約者は最低なの?」
「話せば長くなるのよ」
腕を組んでウンウンと頷く美嘉を見ながら、「最低」の烙印を婚約者に押された椿は苦笑いしていた。
同い年の椿ですら、既に決断して、自分の運命を受け止めようとしている。
自分を信じようとしている。
:08/06/04 23:48
:SO903i
:☆☆☆
#337 [向日葵]
私もいい加減くよくよしてないで、しっかり決めた事を実行しないと……。
深呼吸を静かにして、決意を固める。
そこへ立川君が帰ってきた。
「ケーキを食べ終えたら、そろそろお邪魔させて頂きましょうか」
立川君が言った。
「あ、私なら気にしないで。重病って訳でもないんだから」
「でも、休息をとられた方が、お体もよくなるのが早いですよ……」
椿の言葉に一同が頷く。
3対1ならば勝てる筈もなく、それ以上は何も言わなかった。
:08/06/04 23:52
:SO903i
:☆☆☆
#338 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・
「じゃあ、早く良くなってね」
「ウン。ありがとう」
美嘉と椿は迎えの車で一緒に帰って行っていった。
車が見えなくなるまで手を振ってから、まだそばにいる立川君を振り返る。
「立川君も、わざわざありがとう。もうちゃんと学校行けるから」
そう言っても、立川君の表情は、はれなかった。
心配してくれているのか、私の言葉を信用してないか分からない。
ただ眉を寄せて私をじっと見つめる。
:08/06/06 23:38
:SO903i
:☆☆☆
#339 [向日葵]
居心地が悪くなって、微妙に後退りし始めた時、手首を掴まれた。
びくりと体が震える。
何事かと立川君を見ても、先ほどと表情は変わっていなかった。
「な……何……?」
恐る恐る尋ねる。
「……神田さんにとって、神田さんの好きな人は本当に必要なのですか?」
さっきの椿との話だ。
その事なら、私も話があった。
唇をキュッとしめて、姿勢を正した。
「立川君……。私は柴が好きなのを勘違いだなんて思えない」
:08/06/06 23:42
:SO903i
:☆☆☆
#340 [向日葵]
立川君は眉間のしわを更に深めた。
「柴が好き。普通女の子って守ってもらうのが憧れかもしれない。でも私は、柴が抱えている闇や悲しみをまるごと包んで守ってあげたいの。……家族以外で、そう思った人は、初めてなの……」
「ならそれは、家族愛ではないので……」
「違うのっ」
立川君の言葉を遮り、否定する。
家族みたいな、親愛の情だけで、ここまで柴を想う事はない。
:08/06/06 23:48
:SO903i
:☆☆☆
#341 [向日葵]
さらさらの綺麗な茶色い髪や、神秘的で魅惑的なグレーの瞳。
甘える仕草、無邪気な笑顔、時々見せる苦しそうな、寂しそうな顔。
泣いたあの時の弱々しさ。
全てが、いとおしい……。
「私は立川君を好きにはなれない……。だって立川君を見ても、胸が苦しくなるような痛みは伴わないもの……っ」
手首を握る立川君の手の力が強まる。
あまりの力に顔をしかめた。
「ずっと……貴方だけだったのに……」
:08/06/06 23:53
:SO903i
:☆☆☆
#342 [向日葵]
「立川君……?」
「どうしても……僕は駄目なのですか……っ!」
背中に痛みが走る。
壁に押し付けられたのだ。
目の前にいるのは誰……?あのクールな立川君はどこに?優しい立川君は?
この人は……誰……?
「ずっとずっと好きだったのに、どうして僕じゃいけないんですかっ!」
恐い……っ。
「ご、ごめんなさ……」
「何故選んでくれないんですっ!」
そう言われた時、小さい頃の自分を思い出した。
:08/06/06 23:57
:SO903i
:☆☆☆
#343 [向日葵]
育てられなくて、私を捨てた両親。
どうして……。
どうして他の何よりも、私を選んでくれないの……?
どうして皆……私から離れてしまうの……?
足がガクガク震えだした時だった。
立川君が突き飛ばされて、私の前には長身の影が現れた。
「柴……」
「越になにすんだ」
私をかばって、立川君を睨みつける。
立川君も負けじと睨み返す。
:08/06/07 00:01
:SO903i
:☆☆☆
#344 [向日葵]
「邪魔しないで頂きたい。これは僕らの問題です」
「ふーん。怯えさせながらの話し合いで何が解決するの?」
立川君はギリッと歯を食い縛る。
「なかなか、いい根性してるみたいで」
「ありがとう。でもお互い様だよ」
立川君はしばらく柴を睨むと、落ちたカバンを拾った。
「神田さん、失礼します」
こちらの返事も聞かず、足早に立川君は帰ってしまった。
:08/06/07 00:05
:SO903i
:☆☆☆
#345 [向日葵]
いや、気付いたのだろう。
柴の背中で隠れるようにしながら、震えている私を。
柴の服の裾を、ギュッと掴む。
「越?」
優しい声で呼ばれたかと思えば、掴んでいた手を包むように握り、服から放させた。
依然、手は握ったままだ。
「ご……ごめ……」
フラッシュバックと、普段と違う立川君とで、頭がごちゃごちゃになっている。
震えがまだおさまらない。
:08/06/07 00:09
:SO903i
:☆☆☆
#346 [向日葵]
「大丈夫だよ。もう恐くない。ゆっくり深呼吸してごらん」
言われた通り、震えながらも深呼吸をする。
柴も私と一緒にやってくれた。
何回かやっていくと、段々と落ち着いてきた。
そして柴の顔を見る。
目の前に、茶色い髪が揺れている。
その向こうには灰色の瞳。
その色からは、私を気遣う温かさが感じられた。
穏やかに微笑まれれば、一層胸は切なくなり、頬に熱い滴が流れた。
それに柴は驚く。
:08/06/07 00:12
:SO903i
:☆☆☆
#347 [向日葵]
>>319に感想板がありますので、感想などあればよろしくお願いします

:08/06/07 00:13
:SO903i
:☆☆☆
#348 [向日葵]
「越……っ!?どうしたの?どこか痛い?」
慌てて壁に押し付けられていた背中をさすってくれる。
でも痛かった訳じゃない。
柴が来てくれた安心と、柴の笑顔がいとしく感じたのとが合わさって、なんだか胸が熱くなったのだ。
もっと柴がいると実感したくて、抱きつきたかったけど、恥ずかしいと感じる冷静な自分が心の隅に小さく存在していたのでやめた。
それでも、まだ涙は止まらない。
「とりあえず家入ろう?」
:08/06/09 00:16
:SO903i
:☆☆☆
#349 [向日葵]
優しく手を引いてくれる柴に素直に従う。
とりあえず、と、柴は皆がいるリビングより私の部屋まで連れて行ってくれた。
気遣ってくれたらしい。
ベッドに座らせてくれると、柴も隣に座った。
そしてまた背中をさすってくれる。
「痛くない?大丈夫?」
皆が来る前に、ヒドイ事を言ったと言うのに、柴は優しく私を心配してくれる。安心させなきゃと、必死に泣くのを堪える。
そのせいで、しゃっくりが出だした。
:08/06/09 00:19
:SO903i
:☆☆☆
#350 [向日葵]
そんな私を柴はクスクス笑った。
「まるで子供だね。しゃっくり出すだなんて……」
その笑顔にまた泣きそうになったけど必死に堪える。
「ご……ごめん……。すぐ泣きやむから……」
「いいよ別に。越も俺に甘えてくれてるから嬉しいし」
さっと顔が赤くなった。
柴に無意識の内に甘えていた自分が恥ずかしくなった。
おかげど涙も引っ込んでくれる。
:08/06/09 00:23
:SO903i
:☆☆☆
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